もっと多くの投資を受けるのにふさわしい理由を言えますか? (Michael Seibel)

創業者と一番厳しい会話をしなければならないのは、彼らがエンジェルラウンドで調達した1~2百万ドルを使ってしまったのに、Product/Market Fitを見出だせなかった時です。残念ですが、私は次のような非常に厳しい質問をせざるを得ません。「あなたの会社がそれ以上の投資を受けるのに相応しい理由は何ですか?」と。

最高の投資家から何百万ドルもの資金を調達できたことと、Product/Market Fitは別物です。ほとんどのYC企業がデモデーの後で、投資家の注目する創業者や製品の可能性に基づいて資金を調達します。それらの創業者の願いは、次に資金調達が必要になるまでに、Product/Market Fitを見出すことです。

もしあなたの製品にProduct/Market Fitがなく、人/オフィス/設備などの支出が増えているのなら、あなたは今後の資金調達ラウンドにおいて影響力を全て失う方向に向かうか、もっとあり得る可能性として、会社を潰すことになるでしょう。私はそのようにしてJustin.tvをほとんど潰しかけたことがあるので、それを知っています(Justin.tvに関する話:パート1パート2)。

2010年初頭、私たちは50人の従業員を抱え、ランウェイは8ヶ月でした。ユーザー(月間3,000万人のアクティブユーザー)もいて、収益(4~6百万ドルの収益ランレート)もありましたが、成長が止まっていました。そのため資金調達を試み、時間を稼ごうとしましたが、失敗に終わりました。正直に言えば、人員の肥大化と成長の鈍化にも関わらず、投資家は私たちを助けてくれるだろうと考えていました。これは、シードラウンド資金を使い果たそうとしている投資家に共通の心理です。彼らは製品を作り上げ、ある程度のユーザーを獲得したことで、自らの力を十分に証明したと考えます。そして、自社を「次のレベル」へ進めることのできる別の資金調達ラウンドを持てると、固く信じています。

4ヶ月の売り込み(そのプロセスも綿密に計画していませんでした)が失敗に終わった後、私たちに残された選択肢は、経費を削減し、損益分岐点まで戻すことだけでした(良いプロセスの計画方法はこちら)。多くの善良な人たちを解雇し、広告収入を強化した結果、2ヶ月で月間経費は25万ドルから10万ドルに減り、その年度を800万ドルの売上と100万ドルの利益で終えることができました(Mixpanelの共同創業者Suhailはこの方策のことを素晴らしいツイートで説明しています)。そのお祝いで、全従業員をハワイに連れて行ったほどです。

背中にのしかかる資金調達の重圧がなくなったことで、私たちはこれまで作り上げてきたものを評価し、次の段階へと進むことについて考える時間が持てました。Justin Kanと私は、「動画のInstagram」を作ることに特に関心がありました。これが後にSocialcamとなり、2012年に6,000万ドルで売却することができました。Emmett ShearとKevin Linは、Justin.tvでストリーミング配信していたゲーマーたちの小規模なコミュニティーに特に関心を持っていました。私たちは彼らに本当に適した製品を作ることに重点を置いた、新たな企画を実施しました。ご存知の通り、その新企画は今日のTwitch.tvとなり、2014年に10億ドルで売却しました。

シードラウンドを成功させたら、しゃれたオフィスを手に入れて10人前後の人を雇う前に、あなたの会社の本当の姿を確認しなければなりません。Product/Market Fitはありますか?もしないなら、できるだけお金を節約し、顧客と向き合う時間を増やして、彼らが必要とする製品を作りましょう。

もしランウェイが12~15ヶ月で、ユーザーの継続と拡大が見られないなら、私のアドバイスは次のとおりです。無駄を省きましょう。実際にはまだ使い道がないのに、人員を増やす必要が本当にありますか?多くのお金を使い、多くの従業員を雇うことで成長できるという考えは止めましょう。それはProduct/Market Fitの後では真実ですが、それまでは間違った考えです。

無理してシリーズA資金調達ラウンドに進んではいけません。初期投資資金を獲得し、それを人々が愛する製品を作るために上手に使ったと、示すことができなくてはなりません。シリーズA資金を調達するためには、持続的な成長が必要です。それを理解すれば、大部分のスタートアップよりも優れた会社になれるでしょう。

 

この記事の草案を読んでくれたKirsty NathooとCraig Cannonに感謝します。

 

著者紹介

Michael Seibel

Michael Seiebl は YC の CEO です。彼は Justin.tv と Socialcam の共同創業者であり、CEO でした。Socialcam は Autodesk に 2012 年に売却され、Emmett Shear の下で Justin.tv は Twitch.tv となり、Amazon に 2014 年に売却されました。スタートアップに関わる前、彼は US の上院議員選挙で財務ディレクターを1年勤め、2005 年に Yale University を Political Science の分野で BA を取って卒業しました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Why Does Your Company Deserve More Money? (2018)

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