どうやってプロダクトマーケットフィットを見つけるか (Startup School 2018 #06, David Rusenko)

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Geoff Ralston
次のスピーカーは、私と共通点があります。それは私も彼もウェブサイトを簡単に作成できるビジネスを始めたことです。違いといえば、Davidのビジネスは大きく成功したことです。David Rusenkoは、今年の始めSquareに買収されたWeeblyの創業者です 。今日は、どうやってWeeblyがプロダクトマーケットフィット (PMF) を探り当てたのかについてお話しいただきます。

自己紹介

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David Rusenko
ありがとうございます、Geoff。ここに来られてとても嬉しく思います。Burning Manのフェスティバルの直後なのにこの部屋がこんなに満杯だなんてすごいですね。今年行った人はいますか?あまりいないんですね、あぁ、あちらに一人。

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では、簡単に自己紹介をします。

Weeblyについて聞いたことがない方へご説明すると、Weeblyはウェブサイトやオンラインストアをビジネスオーナーが簡単に作ることができるサービスです。

Weeblyができるまでは、ウェブサイト作成には自分でコーディングを学ぶしかありませんでした。今ではドラッグ・アンド・ドロップでサイトを作れるツールやサービスがたくさんあります。私がWeeblyの最初の一行のコードを書いたのは2006年の2月でした。ですからもう12年以上前になります。

会社は5000万人のユーザーをもつまでに成長し、350人の社員がいます。今年の5月にはSquareに3億6500万ドルで買収されました。こういう数値が出ているのが嬉しいのですが、アメリカの人口の半分が、月に1つはWeeblyを使ったウェブサイトを訪問しています。私がこのデータを好きな理由は、それが起業家の、ウェブサイトを自分で作り実際に結果をだしている人たちの成功を反映しているからです。

さて今日は、プロダクトマーケットフィットを見つけるにはどうすればいいかをお話ししたいと思います。スタートアップに取り組む誰もが一番頭を抱える問題です。理論ではなく、実践的なことをなるべく述べたいと思います。

なぜならプロダクトマーケットフィットを見つけることは実践の際の最重要事項で、努力を必要とする事なので。

Weebly の辿ってきた道

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さて、さっと当社の経てきた道のりについてお話しします。先に言いましたように、12年と少し前に、プログラムコードの初めの一行を書きました。こういうと、そんなに長くたったのかと、変な感じがしますが。

2006年2月 最初の一行目

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 この写真は、2006年2月、ペンシルバニア州立大学のBeaver Stadiumにてコードの最初の一行を書いた時に撮ったものです。こういう状況で、大学にいました。

2006年8月 六か月目

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 2006年の8月。始めてから6ヶ月経った頃ですが、このグラフは、これはWeeblyに登録する1日あたりの新規ユーザー数です。

累積ではありません。誰かが登録をしたらそのときに1増加、と数えます。これが6ヶ月目でした。この時点では、まだローンチしていなくて、DanとChrisと私はその夏、みなインターンシップをしていました。ここまでで一番大きい1日あたりの新規登録数は12ユーザーでした。友人や家族のアカウントを作っていたんだと思います。6ヶ月経ってもまだローンチできていなくて、時間がどれだけかかっているか、お分かりいただけるかと思います。6ヶ月取り組んでまだローンチしていなかったんです。

2006年10月 8か月目

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 2006年10月、これは始めて8ヶ月目ですが、まだローンチしていませんでした。バズりたくてフォーラムに出て頑張っていたころです。それから、登録用のリンクを作りました。記録的にいい日には、30人の登録があったことが分かります。しかしこの時8ヶ月目ですが、まだローンチはしていなかったわけです。

f:id:foundx_caster:20190715032024j:plain2005年10月、 SlashdotでY Combinatorのことを読みました。そこに書いてあった締め切りは、その日の3時間後でした。アメリカ東海岸で午前1時のことだったと思います。太平洋側の時間帯で深夜0時が締め切りだったんです。つまり、YCの応募用紙をつくるのに実質2時間ありました。共同創業者のDan とChrisに電話して、一緒に大学を中退してサンフランシスコに移住できるか聞く時間はありませんでした。だから、憶測で応募用紙は書きました。私の憶測というのは、Chrisは学校をやめるだろう、Danはそうしないだろう、というものでした。

実際、次の日の朝一番にChrisに電話をかけて「ねぇChris、大学をやめてサンフランシスコに引っ越さない?」と聞きました。その電話口でChrisは「いいね、そうしよう」と即決でした。次に電話したDanはというと、「あのさ、すごく将来的に有望な考えだとおもうんだよ、両親に電話して、2時間後にこっちからかけ直すから」 ということでした。より責任感を伴ったやりかたでしたね。

なんにせよ、締め切り1時間を切るくらいに応募書類を提出しました。それからサンフランシスコまで行って、面接をうけ、合格しました。

2007年1月 11か月目

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実は面白い話があって、YCのインタビューの日にTechCrunchに載ることができたんです。だからこれはプラスに働いたとおもいます。

このグラフが当時を表したものです。これは普通のメディア掲載のグラフの伸びとは形が違います、普通の伸びというのは後でお見せしますが。2つしかサーバーがなかったので、 この件に関してはサーバーが焼け落ちるんじゃないかと本当に心配しました。AWSが当時は存在していなかったので。

だから、登録だけしてもらって、「順番待ちのリストに名前をのせました、アカウントにアクセスできるようになったらご連絡します」と言うことにしました。だからグラフが数日にわたって広がった形になっています。

メディア掲載があったあと、これが一時的な伸びがあった後のより通常状態のグラフです。これは、かなり低くなっていることがわかります。同じくらいのレベルに留まっています。よく観察すると、ある日に、ユーザーがゼロの時があるのが分かります。これはおそらくウェブサイトが(アクセス集中で)ダウンしていたからです。それは実は良いことなんですが。

Weeblyの事業開始から11ヶ月めの2007年1月には、学校を中退して、サーバーを全部私の車に積み込み、サンフランシスコまで国を横断しました。一月の寒い時期に80号線を車で移動して、ワイオミング州で3日間ストップしてしまうなんて体験はお勧めしませんが、それでもなんとかここにたどり着きました。これが11ヶ月目のことです。 

コードの最初の行を書いてから11ヶ月が経ったころには、サンフランシスコでYCプログラムの参加者として、フルタイムで仕事に取り組んでいました。

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これが、当時のYCがどんな感じだったかの写真です。今見ると、とても昔のことのように見えるので、このTVが当時の最新技術だったことがショックですね。

3つのデスクをくっつけて、ほとんど一日中ずっと仕事をしていました。四六時中働いていました。一つだけあったルールは、土曜日は休みだということです。でもそれ以外は、疲れきるまでは仕事をしていました。疲れが取れるまで寝て、疲れるまで働き、また疲れが取れるまで寝て、その繰り返しでした。

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ここで、2度目のTechCrunch掲載があり、1月にグラフがまた鋭く伸びます。

これはもっと通常の状態です。これはまさにあなたがTechCrunchやその他のメディアに掲載されたときに予想しておくべき様子です。まっすぐ上にのぼり、その日はとても盛り上がるのですが、次の日にはまっすぐ下がります。でも少なくとも少し上には留まります。

2007年4月 14か月目

f:id:foundx_caster:20190715032642j:plain2007年の4月、これは14ヶ月目でした。ここで、いくつかその他のメディア掲載があった事にお気づきいただけるでしょう。ここでわかるのは、間違った方向にグラフが動いているということです。1日あたりの新規ユーザーの数はどんどん下がって行っています。この二回のグラフの伸びは、どちらもよくない方向に向かっています。

これが意味するのは、当社はまだプロダクトマーケットフィットにたどり着いていなかったということです。14ヶ月、1年以上を過ぎていて、まだプロダクトマーケットフィットを得ていなかったのです。この頃が当社の経歴のなかで興味深い時期で、なぜなら銀行口座には100ドル以下しかなかったからです。

YCのデモデーが間近に迫っており、投資家と会って資金を調達できるだろうという事にいくらかワクワクしていました。もちろん、確証はありませんでしたが。Costcoというスーパーに買い出しに行ったばかりで数週間分の食料はありましたが、家賃支払いは迫っていましたし、みなさんご存知のとおりサンフランシスコの家賃は安くはありません。その一週間後に、私はまさにこの部屋へきて、デモデーで大勢の投資家を前にピッチプレゼンを行い、65万ドルを調達することに成功しました。当時はシリーズAと呼ばれるラウンドでした。今なら、プレシードラウンドと呼ばれるかもしれません。

f:id:foundx_caster:20190715032849j:plain 14ヶ月目、これがシリーズAラウンドの資金調達量の書類の束です。どれだけクレイジーなことになっていたか、少しわかっていただきたいと思い載せました。プレマネーの評価額200万ドルに対して65万ドルを調達したので、ポストマネーで265万ドルですね。これは平均よりも上、少しだけ平均より上だと考えられました。私たちは皆500万ドルのポストマネー評価額を調達したDropbox をとても羨ましく思っていました。今だったらおそらく1500、2000万ドルぐらいだろうかと思います。

このことは、おそらくみなさんに今日の評価額が低く見えても、もうちょっと高い数値を目指しているところでも、もしくはどうやったら大きく成功することができるかを示唆してくれます。そのような見方がここからわかるでしょう。

2007年5月 15か月目

f:id:foundx_caster:20190715033118j:plainこれは2007年の5月のグラフです。今はもう印刷されていない、Newsweekに掲載されました。ここを見てください、グラフは伸びて行って、やがて下がっています。そして前より少し高い位置にとどまっています。これはいいことですね。しかしみてください、またよくない方向に向かっていますね。これは15ヶ月目です、未だプロダクトマーケットフィットには達していません。

2007年8月 18か月目(まだPMFなし)

f:id:foundx_caster:20190715033213j:plain2007年の8月、18ヶ月目になって、Time Magazine に掲載されました。グラフはまた伸び、そして下がってきています。

ここまできたら、もう少し高い位置にグラフがあります、

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また、これもいいことです。ですが18ヶ月目ですね。18ヶ月目になって、プロダクトマーケットフィットはまだわかっていませんでした。みなさんには、ユーザーが快適に繰り返して使うような最低限のベーシックな商品を作るのに、どれだけ長くかかるのかおわかりいただけたらと思います。18ヶ月たってまだなかったんです。ここで少し話を先にとばします。これは2007年10月の様子です。

2007年10月 20か月目

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ここで20ヶ月目になっています、ここで、ブームが来て、グラフの伸びの様子が変わっているのがわかります。グラフが進むにつれて、伸びるようになって来ました。本当に突然、毎日千人がやってくるようになったのです。これはNewsweek Magazine や TechCrunchに掲載されてたとき以上の量でした。これが私たちが獲得した最初の本物のトラクションでした。

2010年2月 48か月目(PMFの達成)

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2010年2月に話を進めますが、4年目になって、競争を始められるようになったことがわかります。

ここまで、創業からの早期にプロダクトマーケットフィットを見つけるというのはどういうことだったかを、プロダクトマーケットフィットについての基本に入っていく前に、少しイメージがつくように、とお話しました。

PMFとは何か?

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では、プロダクトマーケットフィットの定義とはなにか、から始めましょう。おそらく皆YCのマントラについて聞いたことがあるかと思います。

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これですね「人々が欲しがるプロダクトをつくろう」。

私がこれを変更するのなら

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「たくさんの人に欲しがられるプロダクトをつくろう」にしたいと思います。なぜなら、これはマーケットのことを少し包含しているからです、まぁ、後で話します。

スタートアップのフェーズ

では、最初に会社の各段階についてみていきます。きっと最初はみなさん、

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「自分にはいいアイデアがある」といって始めるわけです。友達たちに話すアイデアはとてもワクワクしたものでしょう。これがまさに一つの会社の誕生です。他のフェーズをみていきましょう。

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これが会社の経るフェーズのおおまかな全てです。アイデアから始まるんです。

プロトタイプフェーズがあり、ローンチ、トラクション、マネタイゼーションそして成長があります。マネタイゼーションをとトラクションの後に置いたのは、たいていこういう風に進むからです。それに実際ローンチからトラクションに到ることというのがプロダクトマーケットフィットです。マネタイゼーションはプロダクトマーケットフィットよりもずっと簡単なことなのです。

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ここがプロダクトマーケットフィットの探索期になります。最初のプロダクトマーケットフィットの探索はアイデア期とトラクション期の間で行われます。

アイデアからトラクションに移行するのはおそらくもっとも難しいことです。そしてこの段階がほとんどの会社をつぶしてしまいます。では、次に進みましょう。

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忘れてはいけないことの一つは、このフェーズにきたときも、プロダクトマーケットフィットを修正し続けるということです。多くの会社がそれを忘れます。皆、会社のスケーリングと事業の成長に注力しすぎていて、この段階でもプロダクトマーケットフィットを修正し、構築し続けていることを完全に忘れてしまうのです。

ですから、これは忘れてはいけない本当に大切なことです。はい、ではスタートアップをするにあたって最も大変なことは何でしょうか。

スタートアップで大変なことはPMFをすることと、チームを作ること

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私は基本的に二つ大変なことがあると思っています。一つ目はプロダクトマーケットフィットを見つけること、これはめちゃめちゃ大変です。ほとんどの会社は プロダクトマーケットフィットを見つけられません。信じられないぐらい得難いものなのです。

二つ目は社員を雇用することと世界基準にあるチームを作り上げることです。これもまた信じられないぐらい大変です。とても非直感的な事だし、この勢いの早い成長のフェーズで培っていくのは、そして逆に息の長い会社と企業文化を作るのはとても難しいことです。

お金を稼ぐこと、これをかなり距離を開けて3番目に置きたいと思います。 大勢の人に本当に欲しがられるようなプロダクトを作る方がそのプロダクトを持ってどうお金を稼ぐか考えるより基本的にはずっと簡単です。ですからこれをちょっと離れた3番目としたいと思います。お金を稼ぐ方法はたくさん思いつくでしょう。もちろんたくさんの収入を得るために実験的な試みをして学ぶことはやってくださいとお勧めしますが、顧客が夢中になるような商品があればお金の稼ぎ方はいろいろあります。

4番目ですが、これはあまりカバーしないつもりです。でも持続性のある大きな会社としてスケーリングさせていくのは、スケーリングが可能で、しかも繰り返し素晴らしいプロダクトをローンチしていける組織を作る必要があります。そしてこれが本当に本当に難しいことで、なぜなら創業者だけの話ではなくなるからです。 スケール可能でしっかりした組織を考えなければなりません。

最高の企業は市場を作る

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こぼれ話ですが、最高の企業はマーケットを作るということです。Weebly が行なったことを見れば、Airbnbが行なったことを見れば、Dropboxが行なったことを見れば 、こういう会社が自身の領域のマーケットを作ったとわかります。

私がここで言う市場調査は役に立たないと言う定義、これはマーケットリサーチャーは既に存在するマーケットのリサーチを行いますが皆さんは新しいマーケットを自分で作っていくからです。

では新しいマーケットいうのはどうやって作るのでしょうか。

初めに隠れたニーズを見つけなければなりません。マーケット内には多くの会社が存在すら気づいていないニーズがあります。もしみんながそのニーズの存在に気づいているなら、そのニーズが明らかなら、みなもうそれに対する事業をやっているでしょう。だから隠れたニーズを見つけるというのが最も大変な部分なのです。

みんながそのアイディアはろくでもないと言うでしょう。皆に馬鹿げていると言われるでしょう。覚えています、2006年の夏に、はじめの一行のコードを書いた後、New York Tech MeetupにWeeblyのピッチをするために行ったのです。そこには1000人くらいました。私たちはアルファステージにでていました。なので1000人の前で5分間のデモをしたんです。

そこでmeetup.comの創業者Scottがステージに出てきて、Weeblyは自分が聞いた中で一番馬鹿げたアイディアだと言ったのです。当時は誰も Webサイトを必要としていなかったし、 Webサイトを作る必要があった人は皆コードをかける人か、もしくはコードを習う必要があった人達だったんです。1000人規模の前で彼は自分が知る中で一番馬鹿げたアイデアだと言ったんです。私がこれを今述べているのはもししていることが常識的なことだったら、誰でもそういうことをやりかねないからです。 新しい理由を見つける必要があります。

このケースでの隠れたニーズというのは、ウェブサイトを自分で作る必要がある人たちがたくさんいる、でも Web サイト作成はとても大変だった、ということでした。当時の Web サイト作成ツールというのは、FrontPageやDreamweaverのように、ウェブサイトをコーディングするのが得意な人達に向けて工夫されたものでした。

私たちはホームページを作りたがってる人はたくさんいると気づくことができたので、皆がそうできるようなサービスを構築したいと思いました。でも、 みなさんのプロジェクトは何を置き換えるのか、より良いサービスを届けるには何が必要か、 顧客が皆さんに求めている仕事がどんなものなのか、探ってみてください。顧客側がなにを求めているのか理解できたら、とても役立ちます。

今ユーザーとなってくれる人は Web サイトを作ろうとはしていない、自分の事業をローンチしてビジネスを成長させようとしている、でしょう?

ですからユーザーとなってくれる人がしようとしている仕事を知っておくこと、そしてあなたのプロダクトがその仕事に対して何を代替するのか、を知ろうとする態度で臨むと、考えられるんです。「ウェブサイトが必要かもしれない、 Facebookページも作るかもしれない」、と。そのようにユーザーの仕事に対して置き換えられるものは様々あります。本当に重要なことはあなたのプロジェクトがどの方向に引っ張られているのかを理解することなのです。

顧客はどこに興味を示しているのでしょうか。 顧客をひとつのソリューションに向けて誘導するべきではありません。物事がうまくいっていれば、顧客はあなたの所まで押しかけて来て言うのです「こういうことやらなきゃダメですよ」と。あなたが「そうですね、しかし私達のプロダクトの役目ではありません」と答えると、「なんにせよ、ハックして実現できるようにするから」という人たちもでてきます。

プロダクトを何かのためにハックするような人たちを見つけた場合は、よく注意を払ってください。たいていその場合、元々作ったプロダクトは既存のマーケットにフィットはしているけども、十分な機能性がありません。 iPhone でも同じことでした。Weeblyでも同じことでした。3Gやアプリといったものは始めにはないのです。

でもその初期のプロダクトは全く新しいマーケットを開拓します。多くの人が新しいマーケットに来てプロダクトを使ってくれるのです。 iPhone の成功というのはスマートフォンに対して上手く競争に勝ったというものではありません。スマートフォンのようには見えますが、でもその他のスマートフォンと競争していただけではないのです。

当時はアメリカ全土でのスマートフォン使用者は数百万人ぐらいでした。そこでiPhone が成し遂げたのは、誰でも彼でもをスマートフォンユーザーにしたことです。ですから突然大勢が新たにマーケットにアクセスしてきました。それから時間が経つにつれて既存のスマートフォンマーケットに食い込んでいったのです。新規の市場を作っている場合、よく他人があなたのスタートアップのことを既存の大企業だと間違えることがあります。

MRPを作る

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さて次は、素晴らしいプロダクトを作ることに関してです。このプロセスというのはどのようなものなのでしょうか。 私はここで何をすべきかを分解して、段階に分けて説明しようと思います。

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皆さんこれは分かっていますね、ステップ1、いいアイディアを持っていること。 ステップ2、顧客に会って話すこと。ステップ3、ここで何かが起こり、それからステップ4、 利益が出る。これはわかりますね、

しかしステップ3というのは何でしょうか。ここは、皆誰でもが、砂漠の中で一体全体何をしたらいいのか何もうまくいかないじゃないか、と作戦を練っているところなのです。というわけでこのステップ3について話しましょう。ステップ3というのはまさにこのリストの中の事項です。

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顧客に会って話し、マーケットに関する理論を構築する。顧客がどういうところに困難を抱えているか、彼らの仕事が何を目的としているか、それをなるべく早く、より良い結果で成し遂げるために何の手伝いができるかを理解しようとする。これはとても大事です。解決方法ではなくどのような問題があるかを聞きましょう。 顧客は今直面している問題を話してくれますからそれをききましょう。彼らが解決策、計画された解決策について話した場合は、完全にスルーしてください。なぜならそれは大抵あんまり良いとは言えないので。

3番目に、プロトタイプ作成とユーザーテストのフェーズに迅速に進むこと。4番目に、 顧客の持っている問題に対するソリューションを開発すること。5番目に、そのソリューションを顧客と一緒にテストすること。6番目に、それがうまく行かなかったら一番目に戻って繰り返す。

7番目に、それまでの時間で1から6までのポイントを繰り返しているはずで、もしかすると20数回も試して何か面白い示唆が得られたかもしれません。でも始めてのトライでうまくいく人は誰もいません。初回からうまくいくことなんてありません。ですからここで何か学びがあるわけです。

顧客の課題を聞く

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いくつかについて話していきますが、顧客の解決策ではなく問題について聞くことについて、Michaelも本物の Steve Jobs と偽物の Steve Jobsについて触れていましたね。Steve Jobs は顧客と話をせずに、ただ自分のイマジネーションからまっすぐ世の中が求めていた魔法のようなプロダクトを作り出したという逸話があるのですが、これは本当にこの通りに行ったのではありません。

これは彼の言葉の引用ですが、「顧客に彼らが求めるものを渡せという人もいるが、それは私のアプローチではない。かつてHenry Fordが『もし私が欲しいものを客に聞いていたならば彼らはもっと早い馬だと答えるだろう』と言ったように、こちらがプロダクトを見せるまで本当は何が欲しいかわかってはいないのです。だから私はマーケットリサーチを全くあてにしないのです」

これは100%正しいです。人々の提案する解決策を聞かないこと。マーケットリサーチは事業の方策を示してはくれません。Steve Jobs は顧客と全く話さなかったとは言っていません。 彼は、顧客がどんな問題を持っているか全く聞かなかったとも言っていません。彼は自分が全くイテレーションしなかったとも言っていません。イテレーションはAppleがずっと何度もやっていることだからです。 

というわけで絶対的に重要なのは、顧客に話を聞くこと、彼らの問題を理解すること、完全な解決策は外から運ばれてこないことです。

迅速にプロトタイプを作りテストする

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三番目の迅速なプロトタイプ作成とユーザーテストですが、これは本当に大事だと思います。Weeblyを作るとき、ここでの間違いを何度もしました。完璧な機能を備えたプロダクトを作って、それがうまく動くかどうかを調べるのは、仮説のテストとしてはとてもとてもコストが高いことです。

プロダクト開発のイテレーションのループにはまることもあるでしょう。 ローンチして、うまくいかなくて、潰して、また繰り返す。プロダクトを作って、ローンチする、うまくいかない。特にMichaelがいっていたように、ホームランをいつも探しているのであれば、プロダクトを開発するのに3ヶ月はかかるでしょう。イテレーションし続けるにはこの開発期間は本当に長い時間です。

一番いいのは、最終的にどこにたどり着こうとも、機能するプロトタイプをできるだけ早く作ることです。今ならばおそらくたくさんのツールがあって、それでモックアップを作り、クリックをしたりアプリを使ってるような感じをイメージできます。

使い捨てのコードを書くことで、とても迅速に何かを試すことができます。機能するプロトタイプを書く方法はたくさんあります。でも、ユーザーの前にはでても、まだスケーリングのことは心配しないでください。予想の上では、ローンチしたらすぐに何百万もの人々が押しかけてくると思ってしまうので、私たちはスケール可能なコードを書くことに本当に取り憑かれていましたが、そういうことは起こりません。起こらないのです。ですから必要になるまでスケーリングのことは心配しないでください。

マネタイズは心配せずにインテレーションを回す

また、 最初にマネタイゼーションのことも心配しないでいいと言っておきます。プロダクトが提供するサービスがきちんとしているかを確かめることに注力すべきです。プロダクトから金銭を生み出すことにためらったりもしないでください。プロダクトに料金を課すことにも迷わなくていいです。

でも最初は、 ユーザーに対してプロダクトがうまく機能しているかを確実にすべきです。それから、イテレーションを何度もすることになります。もしかしたら10回もしなければいけないと予想しておいてください。だから一つ目に、出費は低く抑える。もしイテレーションを2、3回するのに十分なお金しか銀行になかったら、もし20、30回もすることになってしまった時にうまくいかないので。

二番目に、このイテレーションを素早くできるチームを作ること。これは、コーディングを早期にアウトソーシングする事が上手くいかない大きな理由のひとつです。 もしプロジェクトをアウトソースすると、 それは一回きりの試みになってしまうからです。20回30回もテストする場合はうまくいきません。イテレーション、洗い出し、繰り返しをめちゃめちゃ素早くできるチームを作り上げることが必要です。

顧客と一緒に解決策をテストする

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はい、こちらはまた重要なポイントですが、顧客と一緒にソリューションをテストするということです。これにはいくつか役立つツールがありますが、一番大事なルールは第一に絶対に自分のターゲットとする顧客と話していること。誰とでも話したら役に立つというわけではありません。ちゃんとユーザーをターゲットしているようにしてください。しかしまた、誰をターゲットとするかの考えを柔軟に変えられるようにもしておいてください。

ですから、誰かの話を聞くときに、「この人は私のターゲットではないな」 となるかもしれませんが、突然、その類の人たちがたくさん現れ、あなたのプロダクトをハックしてとても面白いことをしている、となったら、そのような人たちに注目し、ターゲットを彼らに変える可能性も考えなければなりません。

二番目に、考えすぎないことです。これは頭がいい人が良く抱える問題です。データに頼りたい、マーケットリサーチに頼りたい、と思うでしょうが、草むらの奥深くに入ってしまって、全てを考えすぎてしまいます。考えすぎないようにしてください。確証がないお話の段階で大丈夫です、ただそれを信じてプロダクトを作ってローンチし、どうなるか試してみてください。イテレーションをするのが最も大切です。持っている課題を全てこなし、リサーチをし、マーケットを観察していると、戦略は完璧になるだろうけれども、でもあなたのプロダクトを使ってくれる人が誰もいない、となります。ですからどうか考えすぎないようにしてください。

基本的に3つのツールがあります。

おそらくこの3つだけが必要になると思います。1つ目は顧客へのインタビュー。5人から10人にインタビューすることが必要です。基本的にこれは、電話でも彼らの会社の所在先をたずねてでもいいですが、大体1時間もしくはそれより少し長くユーザーと話して、 何が動機付けとなって仕事をしているか、どんな問題や悩みがあるか、理解してください。ユーザーの経験していることに対する定説的な視点を持ってください。

2番目はUX テストのセッションです。3回から5回、おそらく必要です。 この UX テストをうまく行う方法ですが、次のスライドにあると思います。

3番目は、メトリクス・数値の測定です。 メトリクス、正しい数値をトラッキングすることはとても大事です。ひとつ言っておきたいのは、 欲しい量に十分なだけの大きなサンプルサイズを手に入れることはできないということです。今日のWeeblyの会社規模になっても、いくらかのテストでは、統計的な有意性を得るのに苦労しています。統計的な有意性に基づいていないメトリクスについて語りすぎることに対しては、よく注意してください。

A/Bテストについて、どのようにして赤から青に色を変えるか、そしてそれがコンバージョンを27%増やすかについて書いたブログをしばしば目にします。しかしこういうものを何人分のデータがあるのか見ると、あぁプログラムテストをしたのは17人だけなのね、ということがわかります。ですからこういうものに私はあまり注意を払いませんね。

UX テストを行う

はい、ではUXテストセッション。

 

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しなければならない一番大事なことだと思います。とてもシンプルですが、しかし苦痛を伴う可能性のあるものでもあると思います。

1つ目に、あなたの目の前でプロダクトサービスを使ってくれる人を見つけること。それがスマートフォンでも、 ラップトップやデスクトップでもいいのですが、とにかく使ってもらうのです。

2番目に、正直なフィードバックをくれるようにお願いすることです。被験者はいつもオープンで正直なフィードバックをくれるわけではありません、 なぜならそれは親に向かって赤ちゃんが可愛くないと言うのと同じで、気まずい雰囲気にあるからです。でも絶対にオープンで正直なフィードバックをしてくれるように最大限お願いしなければなりません。

3番目は、被験者にタスクを完了してもらうことです。あなた自身はそのスマートフォンやキーボードに触ってはいけません。一度タスクを完了するようにお願いしたら、それに対して何もしてはいけません。

4番目に、これが最も難しいのですが、被験者には何も言ってはいけません。これは本当に本当に難しいことです。被験者が本当に基本的なところ、 例えばアプリ上でのアカウント登録で一体全体何をすべきなのかを判別するのに苦労しているのを見るので、黙っているのはとてつもない苦痛だと思います。この苦痛に耐えて2, 3分を過ごせば、何か直感的な気づきが得られるでしょう。

被験者がうまくタスクをちゃんと完了するまで、たとえ助けを求められても、デバイスに触ったり被験者に何かを言ったりしてはいけません。これは本当に難しいです。必要なのは、3-5つのテストセッションのみです。おそらく本当に重要な UX のバグがあるとしたら、それを見つけるためには3セッションすればいいと私は思います。

これに関して一つエピソードを話したいと思うのですが、私たちがかつてホームページをローンチしようとしている時、Weeblyへの登録の障壁や摩擦を減らすために、登録フォームの項目をなるべく削減しようとしていました。

テスト段階で、「パスワードの確認」はいらないな、となったら、それを削除しました。実際、それまで当たり前だったメールアドレスの再確認は特に必要ないものなのです。 それで私たちは結局、E メールとパスワードを聞けばいいだけで、それで充分じゃないかと判断しました。

もしパスワードを間違えたら、メールアドレスがリセットされます。万が一メールアドレスとパスワード両方をうち間違えたら、新しいアカウントを作り直さなければならないでしょうが、それは大きな問題ではありません。そんなわけで、登録フォームを設置したのですが、そこには「ここから登録」という文字が100ポイントほどの大きさのフォントで表示してあり、メールアドレス、そしてパスワードと書かれている2項目が存在していました。ここまでして、もうすぐさまローンチしたいというところだったのですが、ローンチする前にテストをするという習慣がありました。

それで、数人、友人たちを連れてきました。ノートパソコンの前に座ってもらって、登録してくれるよう言いました。彼らはテクノロジー業界の人たちだったのですが、45秒ぐらい経ってから「どうやって登録をするのかわからないよ」、と言われました。わからないなんてことにどうしてなるんでしょうか。ここに、100ポイントの大きさで「ここから登録」と書いてあるんです。どうなっているんでしょうか。

だから言いました。「登録の仕方がわからないってどういうこと?ここからできるよ?」と。友人は「ああ、わかった。分からなかったのは、これがメールアドレスとパスワードだから、どうみてもログイン画面だから。」と言いました。

というわけで、登録フォームでなくログインフォームのようだったのです。だから、不必要な「名前」という欄を加えて、項目を記入する欄を3つにしました。すると突然、みな登録の仕方が分かるようになったのです。ああ、これが登録フォームか、と。

信じられないようなことでした。UXテストをしなければ絶対に発見できなかっただろうことでした。だから、何をローンチするときにもいつもテストをすることをオススメします。セッションはたくさん必要なわけではないので。

いつローンチするべきか

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ここで、また別の疑問がでてきます。いつローンチすべきなのか、と。

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Minimum Viable Product (最小限の実用可能なプロダクト、MVP) と呼ばれるものがあるのですが、私たちがローンチしてからでてきた新しい考え方で、私自身なかなか良いと思うのですが、ただ、私はviable (実用可能な) という言葉があまり好きではありません。

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それは「しょうもないものをリリースしようとしている」ということを言外に匂わせているからです。

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remarkable  (注目すべきに値する)ということばのほうがずっと好きです。ですので、Minimum Remarkable Product (最低限需要をみたした注目すべきプロダクト) 、人々を注目させるのに最低限のプロダクト、と呼びたいと思います。

というわけで、

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これはPabloの言葉からの引用なのですが、「ローンチは、プロダクトがすでにマーケットにあるどれよりも良いものとなったときに行うべき」です。

これは、とても重要なことだと思います、なぜなら基本的に「他のどれよりもいいプロダクトを開発すべきだ、そのようなプロダクトをもてるまでローンチするな」、という考えを包括しているからです。

しかし一旦そういうものを持ったら、すぐにローンチしましょう。それが正しいタイミングだと思います。

優先順位をつける

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次は、優先順位。これもまた別の重要なポイントだと思います、どうやって優先順位をつけるか。創業初期には、構築すべきものが延々とあるので、そのなかのどれを作り上げる時間も十分にとれません。だから、次に何を作るかどうやって判断するのでしょうか?

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優先順位をつけるのには2つの重要なポイントがあると思っています。

重要なことは一つしかない

1つめは、重要なことは一つしかないということです。

アイデア段階から成長のステージまでのスタートアップの道のりを考えてみてください。次のステージに導いてくれるための事柄にのみフォーカスすべきです。それ以外のことには力を注いではいけません。

カンファレンスに行ったり、ブログポストを書かないでください。ニュースも読まないでください。今これをお話ししているのは、私がそうやってきてしまったからです。まったくやらないというのは不可能ですが、極力こういうことをしないで下さい。

次のマイルストーンに事業を導いてくれないことは何もしてはいけません。この特定のケースに関しては、次のマイルストーンというのは、プロダクトマーケットフィットです。

学習に最適化する

2番目のポイントは、とても面白いと思うものです。これはGoogle Xを経営していたAstro Teller から聞きました。ほとんどの人が、同じようなやり方でリストの優先順位をつけるのですが、それというのは全てのタスクを載せた、なんらかのスプレッドシートです。

そのシートにはそれぞれのタスクの困難度、期待される見返り、どれくらいの影響があるかを書きます。それから基本的にコスト、時間、利益で順番を並べ替えるのです。これは継続的な業務改善をしたい時にはいいアプローチだと思います。

しかし継続的な改善を求めていない時には、学習できるように最適化してください。そのためには、自分自身が今一番知らないこととは何かを考えてください。

自分の事業の中で、知らなければならないけれども一番今わかっていないことは何か。それを学べるようタスクを最適化すると、一番大きな問題には見えなくなるかもしれません。これはあまり力のいらないタスクかもしれません。優先順位の低いタスクかもしれません。学習を最優先して最適化するには、なにをするべきでしょう?

優先順位リストをまるまる書き直すのです。自分のわかっていなかった分野について学習すると、古い優先順位を全て取り替えて新しいリストを作ることになるからです。

どうやればPMFを達成したかわかるのか

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はい、では、プロダクトマーケットフィットを達成したか、どうやったら分かるのでしょうか? これもまたよくある疑問です。

三つの基準

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ここには追跡測定すべき3つのメトリクスがあります。

1つ目は、リピーター利用割合 (returning usage)。2つ目はNPS、そして3つ目は有料会員の更新率です。

リピーター

リピーター利用割合は、登録をした、またはサイトやアプリを訪問したユーザーが何人くらい1日以内にまたサービスを訪問するのか、3日以内ならどうか、7日、30日以内ではどうか、を観察します。  

このメトリクスを追跡したら、他の何よりもあなたのサービスがうまくいっているかの指標になります。初期段階では、Weeblyのログインを、アカウントを作った友人と家族にすべて託したら、そのうち誰も再びサイトを訪問することはありませんでした。

この人たちというのは、あなたのことを最も好いてくれていて、成功を願ってくれている人なのです。こういった人たちがサービスを再訪問してくれなかったら、他の誰もそんなことしてくれません。だから、この1つ目のリピーター利用割合というのは本当に大事なんです。

NPS

2つ目はNPSです。これを調べるには様々なツールがあります。

NPSについて。40という人もいますが、私は50くらいだと思います。それが50を超えたら、おそらくプロダクトマーケットフィットを達成していると思います。NPSとは何か。こういう質問に答えたことがありますでしょうか、「このプロダクトまたはサービスを友人に勧めたいと思いますか?」。それがNPSです。この一質問です。

0から10まででランクづけをします。基本的には、9か10と答えた人のパーセンテージが、プロモーターの数になります。0から6はデトラクター、評価を引くパーセンテージです。7か8と答えた人たちは無視します。

創業初期には、Weeblyはこの NPS で 80%を保持していました. 88% の人が9か10と答えており、8%が0から6とこたえていたのです。だから、私の計算が正しければ、12%が7か8と答えていました。だから最良の答えだった88% から 8% を引くと80%になります。

この数値が50を超えている場合うまくいっているといえます。このメトリクスのしくみ上、マイナス数値を得ることもあるかもしれませんが、それがスタート地点です。

有料会員の更新率

3つ目は、有料会員の更新率です。有料会員がいる場合、彼らの更新率を見ます。ここでちょっと余談ですが、私は、年間の契約をやめる顧客の数である顧客流出率をメトリクスとして使うのが好きではありません。計算が簡単なので多くの人は使うのですが、でも顧客流出率は、契約更新に関するコホートに基づいていないのです。

顧客流出率はただ、ある一定期間での、全体の有効な有料会員数で失った会員数を割った数をみます。分母が変わる場合、あなたの事業がとても早く成長しているとしたらあまりオススメしません。そうすると、分母は分子よりも早く変化しますから。分子は、昨年の分母に基づいているものです。ですから、本当の流出率は何かということを惑わす結果になりかねません。

それに対して更新率は優秀です、なぜなら更新をした人のパーセンテージを観察するので、実際のコホートに基づいた更新率が得られるのです。だから、私は更新率を使う方がずっといいと思っています。

含めなかったメトリクス

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さて、含まなかったメトリクスについて話しましょう。

先の3つ以外のメトリクスとしては、まず登録数があります。これは私たちが事業をはじめた時にはあまり理解されていなかったものでした。私なら登録率にはあまり注意は払わないでしょう。

アクティブユーザー数には注意を払います。リピーター利用率と登録数がいい場合、アクティブユーザー数にかなりうまく換算することができます。もしリピーター利用率が良くなくて、登録数も落ちこんでいるなら、アクティブユーザー数はほとんどいないでしょう。実際、アクティブユーザー数というのは、登録をした人がサービスに再び戻ってこなかったら、登録数が伸びていたとしても減るかもしれません。

二番目は、コンバージョン率です。SaaS事業を考えているなら、コンバージョン率では低いところから始まります。時間をかけて伸びるものなので、わたしは始めはコンバージョン率にはあまり注目しません。その他にも、いくつかのメトリクスに注意しておきたいものです。

PMFをしたときの感覚

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では、これが最後のポイントですかね。プロダクトマーケットフィットが見つかった時というのはどういう感じがするものなのでしょうか。

大勢の顧客が雪崩れ込んできたら、プロダクトマーケットフィットが見つかったとわかるでしょう。この状態にない時には、全ては厳しく感じられます。大きな岩を山の上まで押し上げてる感じです。ユーザーをソリューションに導こうとしているのです。

ユーザーは、プロダクトが良くない、といってくれるほど親切ではありません。ただ単にもう戻ってこない、プロダクトを使わないようになるのです。

プロダクトマーケットフィットがあるときは、世界中の人が押しかけてきます。みんながサービスを使いたがるのです。メディア報道もあるでしょう。全てが簡単に思えて、全ての意思決定がうまくいくので、自分は天才なんじゃないかと感じます。

油断しないようにいっておくと、だいたい現実はこの事例の間のどこかになります。時間が経つにつれてビジネスをスケールしようとしていると、自分は思っていたよりも賢くないんじゃないかと思うようになります。でも、この段階はまた後に来ます。とにかく、こういう風に感じると思います。

ですから、顧客に引っ張られてる感覚がなければ、顧客が押しかけてこないのであれば、まだプロダクトマーケットフィットはないのでしょう。

PMF後

では、プロダクトマーケットフィットが見つかってからに関するポイントをいくつかお話しします。

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もう少し理論的になるのですが、最も重要なのが、どうやって事業を進め、プロダクトをつくるかにおいて、めちゃくちゃ戦術的であることだと思います。顧客と話し、彼らの思っている解決策ではなく問題を聞き取り、何回も何回もイテレーションを行い、なんらかの反応があるまでローンチし続ける。いくつかの鍵となるメトリクスにフォーカスする。ここで加えていくつかのポイントをお伝えします。

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はじめに、基本的にスタートアップが成功するにはプロダクトマーケットフィット以外にも3つの要素があるということ。

その1つ目が、代替品よりも確かに優れたプロダクトであること。これは、「自分のプロダクトが他のどれよりもいいものであるように」という、ローンチについての引用句で述べられていましたね。

2つ目は、顧客の獲得方法をスケールできるようなやりかたで学習しなければならないということ。

そして3つ目が、トラクションをつぶさないようにしてビジネスモデルを構築する必要があるということです。

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これは少し広げたバージョンですが、プロダクトマーケットフィットよりももう少し進んだところです。基本的にはプロダクト・マーケット・チャネル・モデル・フィットです。

あるマーケットに対してとてもうまくいくプロダクトを作ることができてもモデルが壊れている場合があるということです。例えば料金が高すぎたり安すぎたり、そういった請求の仕方が壊れていたとしたらチャネル間でたくさんの相互作用があります。それが顧客の獲得をしてく方法なんです。なので例えば、あなたが何かソリューションを作っていてそれを毎月75ドルの料金で請求したらそれはビジネスとしてはなかなかキツイ立ち位置でしょう。中途半端ですから。

営業部隊をもつお金の余裕はありません。顧客に直接プロダクトを売る人材で部隊を実際に作るわけではないのです。ですが同時に誰もがクレジットカードをパッと出して支払いを始めるには高価すぎます。だから大抵モデルとチャネルの間にも、適切なフィットが必要なのです。

営業部隊をもつのであれば、その部隊を維持するために、顧客から月に$200 から $300 を徴収しなければなりません。そうしないのであれば、月に$25かそれ以下の料金をもらうのがいいでしょう。

これはもちろんプロダクトマーケットフィットと作用しあいます。これが全てがうまくいくための仕組みなんです。このリンクは HubSpot 成長フレームワークというもののエッセイで、一読を強くお勧めします。

チームをスケールさせる

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もう一つ付け加えたいのはチームをスケールすることに関してです。これもとても大事だと思うんです。

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プロダクトマーケットフィットが見つかるまではチームをスケールしてはいけません。わたしは20人を超えてのスケールはしません。20人くらい、だいたい23から25人でスタートアップ内にある全てが壊れていきます。完全に皆平等であることができません。

当時を顧みるエッセイをどれでも読んで見れば、完全にフラットな企業であるにはどうするかが書いてあります。例えば、37 Signalsのエッセイには、みなが平等な立場の会社は素晴らしい、だれもマネージャーを雇わなくていい、そしてあなたの会社の規模はおおよそ23人から25人ぐらいでしょう、とあります。実際にその通りです。

それというのは、23人、25人ぐらいがちょうど良いんです。そこまでは完全にフラットなのですが、それが一人か二人増えるだけで崩壊します。

そうなると最初のマネジメントの層を構築し始めなければなりません。プロダクトマーケットフィットを探し出すためにはあまりいい企業構造ではありません。その目的に最適な形ではないのです。

ですので、チームは小規模にとどめてください。マネジメントを少々するのはありだとおもいます。この段階では、創業者のみなさんは、会社で何が起こっているか全て把握しておくべきです。顧客、プロダクト、マーケット、チャネルに関する全ての重要なことを知っておいてください。

全てを把握しておく、これは何を意味するかというと、それによって意思決定が的確なものになるということです。全ての情報を持っているというのは実際大きなアドバンテージです。

一度会社がスケールしてしまったら、全ての情報が社員の間に分散されてしまいます。だから情報が何人もの異なる人の間に散らばってしまっている場合に本当にいい意思決定をするというのはとても難しいことになりますし、何かをする時に異なった意見がでてくることになります。

ですので、ここではまだ何も重要な事を委任しないでください。ただ、これは私たちも間違えたと思うのですが、プロダクトマーケットフィットが見つかった時にはがんがん会社をスケールしてください。

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おそらくこの時点で、新しいマーケットを見つけたか作り出したかと思いますが、そのマーケットにいるのはみなさんの会社だけではありません。まだ競合についてなにも聞いてはいないかもしれませんが、同じような事をしている会社はおそらく存在します。

競争のなかにいて、新しいマーケットを手にしようとしているのです。そして、アドバンテージは一番成功したプレイヤーに与えられます、これはいつも同じです。みなさんのビジネスにネットワーク効果がなくても、より早くプロダクトを開発できるよう多くの社員をもつことで、多くの収入をうみだし、より多くの投資を集め、またそれがもっと多くの人を雇うことを可能にし、そしてまた生み出される収入が増えます。

つまりこれは全て弾み車 (flywheel) のようなもので、アドバンテージは一番になった会社に生じます。1番になりましょう。チームを勢いを持って、しかし徹底的に作り上げましょう。おそらくどの段階をとっても、1年以内に会社を2倍以上のサイズにはするべきではないです。うまくいった超成長の例を私は知りません。

1年間で20 人の社員を300人に増やした会社でうまくいった例です。なぜならそれは砂の上、とても脆い土壌に基礎を立てていることになり、スケールをしている間はいいのですが、摩天楼は結局崩れ去ります。いつもこのような感じに思えます。仕事を委任するなど、仕事に取り組む方法を完全に変えなければいけないし、創業者が全てにおいて少しずつマネジメントするということはなくなります

会社をスケールするには屈折変化点があり、これを考えるのが大切です。プロダクトマーケットフィット以前に会社を20人以上にスケールさせることは私はしません。プロダクトマーケットフィットが見つかったらすぐに、できるだけ積極的に会社をスケールさせましょう。

ブランドを構築する

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そして最後にブランドを構築することについて話そうと思います。ブランド構築にあまりに時間をかけすぎるような価値はないのですが、初期段階にあるうちに少し時間をとって考えておくのはいいと思います。

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さて、いいブランドというのは、根本をなす深い理解、コンシューマーの理解の上に構築されています。一般的に受け入れられていない真実の上に。理想的には、プロダクト構築の際に基づいているものと同じです。自分の会社が何を体現しているのか、早いうちにわかっておけば、またブランドメッセージにこめて、プロダクトを作れば、これはとても強い力となります。ブランドの基礎となるのです。一つ例をお話しします。

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ヴァージン・アメリカ(VA)のブランドを構築した人と話したことがあります、このような話です。彼らの事業は、航空会社のスタートアップから始まりました。航空会社では、規模の経済が大きく働きます。VA社の創業者たちは顧客に会って話すことを始め、そして人々が航空会社を選ぶ理由には4つしかないことに気がつきました。スケジュール、値段。もし3ドル安かったら、そっちを選ぶでしょう。そして目的地、例えばサンフランシスコからオークランド、そして会員プログラムでした。VA社はこの4つを見たときに、「勝てっこない、勝てないんだ。他のところに勝つのは無理だ」となり、そして「うちのマーケット理論はなんだろう、どうやったら違うことができるんだろうか」と考えたのです。それで彼らは社外にでて、たくさんの人と話すことを始めました。皆、「搭乗のエクスペリエンスって本当に最悪なんだ」と口々に言いました。

それで彼らは思いました。「スーパープレミアムではなくチケットの値段は$15 高くなるかもしれないけど、でも搭乗エクスペリエンスは素晴らしいものになる。そんな航空会社を始めたらどうなるだろうか」 。これが彼らのプロダクトとブランドだったのです。創業してすぐにブランドを作っていたのです。彼らのすること全ては搭乗エクスペリエンスの周りで動いていました。だからより高い金額を払ってでもすごくかっこいい照明に投資する判断を取るんです。それが搭乗エクスペリエンスに繋がりますから。

同じ理由でスタッフの給与も高めにします。搭乗者に対してより素晴らしい態度で接客してくれるでしょうから。VA社が行うPRイベントの一つ一つが飛行機上で行われるのも、搭乗エクスペリエンスをハイライトしたいからです。皆がVAのチケットを買う理由を新しく作り出し、それがうまくいっていたのです。理解すべきは、これに時間をかけすぎてはいけません。自分の会社の売りは何か考え、その結果をわかっておく程度に取り組むのは、プロダクトを作るとき、またブランドの基礎として効果を発揮するでしょう。

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では、ここで終わりにしようと思います。なにか質問はありますか?

Q&A

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Speaker 3 
プロダクトマーケットフィットには時間がかかるとおっしゃいました。その間、何がモチベーションになっていたんでしょうか

David Rusenko
ご質問はプロダクトマーケットフィットを見つけるのに18ヶ月かかったが、その期間のモチベーションは何だったか、ですね。言いたいのはただ私たちは若くてバカだった、そしてそれがすごくよかったということです。

起業家に関する理論で、起業家とはものすごくリスクをとる人たちだというのを聞いたことがありますが、ほとんどの起業家はそんなにリスクは取りません。むしろ計算した上でリスクを取る人たちだと思います。しかし起業家になる人には根本的な資質が2つあると思います。

1つ目は楽観的であることです。他の人たちがリスクだと思う所に対してリスクだと感じません。

2番目は覚悟が決まっているということです。腹を決めているから、あきらめないのです。一般的に言うと、この2つです。会社が失敗するのはあなたが諦めたときだけ、でしょう?創業者であるあなたが取り組んでいるなら、定義的には、事業継続中なのです。ですから覚悟を持っていること、が大事だと思います。

もちろん全ての証拠がこの事業がうまくいかないと物語っているのであれば、闇雲に作戦を立てたりはしませんが。しかし、このプロジェクトが皆が必要としているものだという自信を持って取り組み続けること、それが鍵です。

Speaker 4
皆が[inaudible]..どうやって創業期にアプローチしましたか。

David Rusenko
ご質問は、言い換えるとニッチでバーティカルなユーザー層をターゲットするべきだという一般的なアドバイスについてですね。その通りだと思いますよ。

私たちはいつもパターン化されたものには反したやり方をしていて、パターンからは真逆に進んできました。なぜかははっきりとはわかりませんが、その理由について私たちのケースに関して言うと、バーティカル市場の構造が十分深くなかったので、プロダクトを作るのに必要なかなり大きな投資をサポートすることができなかったんだと思います。

そもそも、顧客はみんなそれぞれ多量の機能性を必要とします。それというのは、ブログやEコマースやフォーラムやフルCMSや、そういうもの全てが必要だ、といったことです。Weebly や他のウェブサイトビルダー、Eコマースプラットフォームでの出来事のパターンというのは、まずホリゾンタル市場から初めて、プラットフォームを構築し、時が経つにつれて、全ての機能が作成され、バーティカル市場向けにカスタマイズし始めるのです。私たちのケースでうまくいったのは、これだと思います。しかし特定のバーティカル市場に向けてプロダクトを作るというのは、一般的にいい考えですね。

Speaker 5
知見をシェアして下さってありがとうございます。メモを見返すと、どこかの時点で、マーケットを作らなければならないことになると仰いました。隠れたニーズを見つけだした場合、何が変わるのでしょうか。また、顧客に質問をするとき、誰も必要性に気づいていないマーケットの秘密を握って売り込みをするとき、どんなことを言うんですか?

David Rusenko
ご質問は、マーケットを作り出す場合、相手が必要性に気づいていないような新しいものをプロダクトとして持っていると伝えるために何が変わるか、ということですね。誰でも似たような経験だと思います。

Weeblyの第一編、Weeblyの最初の3、4年は、ただ…メディアのレポーターになぜ彼らがストーリーを書いたりしなければいけないのか伝えていたことを覚えています。誰もこれが可能だと気づいていないからしなきゃいけないんだ、と。

最初の3、4年の私たちは、皆を「新しいウェブサイトを自分で作れるんだ」と説得しようとしていました。誰もが不可能だと思い込んでいたので。コードを書くことを知らない限り、皆がウェブサイト作成は自分の能力を超えていることのように思っていたので、4年はただ周知するのに努めました。それでやっと少しずつ試す人が出てきて、マーケットが作り出されたのです。

たくさんの人が、そういうことが可能なんだと気づいた時にブームは起きます。Uber や Airbnbがまた別のいい例だと思います。 Airbnb の創業期には、私は「他の人のところに泊まるなんて嫌だな、変だよそれ」と、Uberに関しても「知らない人の車に乗りたくはないな、怪しいから」と思っていました。

しかし突然にそのブランドの名前は皆が知るものとなりました。一度試したら、皆そのサービスが気に入ったのです。評判は広まりました。そうなると、そこがマーケットが誕生した瞬間です。その時点であなたの問題は完全に違ったものになってしまいます。

もう、誰にも売り込みをして説得する必要はありません。皆、このサービスを使うのは避け難いことだと考えるので。あなたの抱える問題というのは、もっとスケーリングのことだとか、プロダクトを改善し続けることになります。

Speaker 5
ありがとうございます。

Speaker 6
創業から18ヶ月くらいの期間において鍵となるKPIに関してなのですが、正しい方向に向かっていると確認するために、何を測っていましたか?

David Rusenko
ご質問は、創業から18ヶ月の期間において鍵となるKPIに関してですね。答えとしては残念なのですが、私たち自身は測っていなかったのです。だから18ヶ月もかかったのかもしれません。おそらくもっと短期間でできるはずです。この時点では、他の会社もほとんどが見ているだろうと思いますが、登録数は観察していたと思います。そんなにいいメトリクスではないですね。もし登録数がどの様にアクティブユーザーに変換されていくかを観察していたら、かなり低かっただろうと思います。登録数がどのように日毎、週ごとに変遷しているかを観察していたら、減少傾向にあったでしょう。どのプロダクトにおいてもプロダクトマーケットフィット状態にありませんでしたし、プロダクトマーケットフィット状態になかったことはわかっていました。驚くほどのことでもなかったです。何か引っかかるものを見つけるまでイテレーションを続けることがとにかく重要です。

Speaker 7
Weeblyの価格決定とその変遷について、お話しいただけますか。

David Rusenko: はい。ご質問は、当社が価格設定に関して経てきた道のりということですね。今の方たちは、 私たちが創業した時よりも価格設定に合理的だと思います。2007年、2008年にシリコンバレーで一般的だった考えは、あまり積極的にお金を取らないようにしたほうがいいと言うものでした。

取らない方向に積極的に行ったほうがいい、とも言えます。これが一般的だったのですが、今聞くとクレイジーに聞こえますね。でも当時の論理としては、Twitter の例のように、お金をとると収益は得られるものの、あまり大きくない額で、複数年の収益で評価額が決定されるでしょう。

だから、夢を売って、歳入を全く見せないほうが、収益を得て会社の評価額を下げるよりもずっといいのです。これが当時皆が考えていたことでした。私たちも全く料金を課さないところから始めました。2006年にローンチしたときから2008年の夏までは基本的に完全に無料のサービスだったのです。

冗談でなく、「お金が不足しているでしょうから、送りますね」と百ドルの小切手を郵送してくるようなおせっかいな人がいるほどでした。私たちはありがたく受け取りました。しかしプロダクト自体は完全に無料だったのです。小切手を郵送してこない限り、お金をいただくことはありませんでした。ただ2009年、いえ2008年9月に調達したラウンドからは、お金がなくなっていくだろうとはわかっていました。

2008年の1月、プロダクトからお金を得るほうが、別のラウンドで資金調達するよりももっと見栄えのいいことだと判断したので、プロダクトから収入を得ようと決めました。1月から6月までの6ヶ月間取り組んでWeebly Proの最初のバージョンをローンチしました。料金は月に4ドル。初めての有料のバージョンでした。ロ

ーンチの前の日には友人たちが皆アパートに集まってきていて、それで次の日に何百万ドルくらいを稼げるかに賭けをしました。そこでは、ボタンを押したらすぐにお金が入ってくるような予想がされていました。

次の日ローンチをして、一週間後に売り上げを見て見ました。そしてそこで一番低い予想額の10分の1しか得られていないことがわかりました。うーん、そんなに早くうまくはいかないか、とわかったので、イテレーションを続け、2008年6月から12月までは数字は伸び続けました。

またほとんどお金が尽きかけていたのですが、今回は創業者の給料をカットするという選択肢がありました。それから、キャッシュフローはプラスになりました。2009年1月からはキャッシュフローは黒字で、その後の会社の経歴を通して多少はうまくいってきていると思います。

Speaker 8
お話しいただきありがとうございました。ずっと前からWeebly のユーザーでした。Weebly を実際使っているので、古いインターフェースも新しいインターフェースも知っています。ウェブサイト作成に取り組んだ自分の経験からいうと、実際ユーザーは金額に見合うためにサービスを使っているのを見てきました。この場合、どのようにアクティブユーザー率を得るのでしょうか。本当にユーザーがいたとしても、そのユーザーは(聞き取れず)です。

David Rusenko
Weeblyユーザーなんですね、素晴らしい。ご質問は、ユーザーが離れて行っているときにどうやってアクティブユーザー量を計算するということですね。この場合でも同じ方法で計算できると思いますよ。そしてそれでも価値のあるメトリクスだと思います。

ここでの疑問は、ウェブサイトビルダーの専門的なことに関してですが、ユーザーが実際うまくプロダクトを使ってくれているのか、ということです。ウェブサイトビルダーのユーザーは毎日はサービスを使わないし、もしかしたら6ヶ月に一度くらいサービスを使うかもしれない。おっしゃったメトリクスを観察するのは役立つと思いますよ、そうでなければ全くもって左右がわからなくなるので。

Speaker 9
(聞き取れず) についてお願いします。

David Rusenko
ご質問は断続的な改善ということばについてですね。それがどういう意味なのか。継続的な改善についてはたくさん書かれたものがあります。私が思うに、断続的な改善というのは大きく跳躍しているときに効果的なものです。定期的な小さい改善は大きなジャンプにはならないことがあります。

スマートフォンのPalm Treo から始めようとしている、と想像してください。それを継続的に改善しようとしている、と。何ができるでしょうか、OSを少々改善し、アプリのあり方を少々変え、キーボードのクリックやタイピングを少しずつ改善するなどでしょう。

しかし、新しいマーケットを作り出しているのなら、たいてい断続的改善が必要になります。大きな跳躍をする、というのはどういうことでしょうか。大きな跳躍は、段階を小さく踏んでいくのと同じようには起こりません。

隠れたニーズを見つけ出す、本当に欲しいと思ってもらえるものは何か探りだし、ソリューションを構築し、迅速なイテレーションを行い、しかしそれを自分たちの学びのために最適化する、このようなことです。学習のために最適化するというのは鍵となる事項だと思います。一番わかってないことはなにか、その疑問に答えるにはどうすればいいか。ではあと2つ質問を受け付けます。

Speaker 10
購入者とユーザーの間のデモグラフィー間の乖離をどう扱うのですか?当社はハードウエアの会社なのですが、主要な購入者はおそらく60年代から80年代生まれの「X世代」になるでしょう。その世代の人はアナログバージョンを欲しがるんです、なぜならそちらの方がもっと信頼がおけると思っているので。

主なユーザーはミレニアル世代、彼らはタッチスクリーンが欲しいと思っています。そちらは私たちには好都合なんですが。あなたならどうやって「テクノロジーロードマップで後々古いデバイスを回収して、新しいものを渡します」と、どうやって説得的な説明をしますか? 

David Rusenko
ご質問は、ハードウエアのスタートアップにおいて、購入者とユーザーのデモグラフィーが異なっていて、それぞれの属性で異なる行動を取るということですね。どうやったらそのデバイスへの志向をスムーズに推移できるでしょうか。私自身はあまり情報を持ち合わせていません。おそらく教育ですかね、え、コーヒー?じゃあ全然わからないです。後で私のところに来てくだされば、もう少し深掘りできるかもしれません。

Speaker 11
プロダクトマーケットフィットへの道のりで、資金調達のプロセスをはじめるタイミングについてのお考えをお話しいただけますか?

David Rusenko
いい質問ですね。プロダクトマーケットフィットに到るまでに、資金調達のプロセスをいつからはじめるか。よく人に説明するのですが、わたしが一番役に立つと思うのは、会社の事業段階に関するスライドをみてもらうことです。ほとんどの会社は初期のトラクションフェーズに入るまで、資金調達をすることはできないのです。今のあなた方にとっての状況は違うかもしれませんが。創業期には友人や家族で初期に投資をしてくれる人がいるかもしれません。

YCのようなプログラムに参加できるかもしれません。また他にも違った手があるかもしれません。もちろん可能なのですが、ほとんどの会社は、成功した創業初期の大きなラウンドをみて、あの会社はプロダクトをローンチするにあたって4千万ドル調達した、うちもできるだろう、と思うのですが、できません。私はそう考えました。成功事例をみてみると、裏にそれなりの経緯があるのです。創業者が以前にも大きく成功したプロダクトを作ったことがあるとか、大企業がある業界に参入して来ているとか、そういうことです。

トラクションフェーズの初期になるまではラウンドで資金調達はできないと予想しておくと、それは現実的だろうと思います。で、それが意味するものはなんなのか。トラクションフェーズに入るまで資金調達せずにどうやってたどり着けるのでしょうか。鶏が先か、卵が先かという疑問ですね。皆がそれを違うやり方で、工夫して解決していっています。本当に本当に大変ですが。たくさんの人がその問題を解決できた方法というのは、ただ労力を投入して、その分を節約して得るスウェット・エクイティだと思います。

少しの本当に賢い人たちを集めて、その他のメンバーなしに、アウトソースせずに、社員を雇わずに、バーンレートを低く低く抑える。そしてある地点に到達するまでは、一室にこもってできる限り早くプロダクトを開発し続ける。そうすると、資金調達はフォローアップのようなものです。

Speaker 11
他よりもいいアプリなどをローンチせよ、とおっしゃいましたが、... (聞き取れず)

David Rusenko
ご質問は、他よりもいいものができた時にローンチする、完全に開発が終わったプロダクトをローンチする、ということに関してですね。いえそうではありません、ちょっと追加で言いたいと思います。プロダクトにたくさん機能を盛りこむという点からは見ないでください。そういう風に考えていると、絶対に勝てないです。いつも出遅れてしまい、絶対に追いつけないので。

特にもしどこかと比較している場合、顧客ということばについて考えるほうが、競合について考えるよりも私は好きです。競合のすることを見ていたら、無意識的にそれを追ってしまうでしょう。なにを相手がローンチしていたとしても、3ヶ月前に開発しはじめているんですよね。

ですから、みなさんがそれを開発してローンチしているころには、もう相手は新しいものをローンチしようとしているんです。それというのは....競合の会社の一つ、名前は言いませんが南アメリカから来た会社が、4千万ドルを調達していたのを覚えています。対して私たちは65万ドルでした。あちらの会社は、あまりうまく行っていませんでしたね。

だからその会社は完全に私たちのインターフェースをコピーし、プロダクトをそっくりそのまま似せて作ってローンチしました。私たちはといえば、ちょうどアップデートをローンチするところだったので、それをみて笑い転げました。ちょうど私たちは画面のトップにあったツールバーを左側に設置しようとしていました。その変更を作るのに多くの時間を費やしていました。その二週間まえにその競合先はコピーのプロダクトをローンチしたのです。というわけで、競合ではなく、みなさんの顧客にフォーカスをするべきです。

それから、プロダクトはたくさん機能があればいいということではありません。プロダクトにはひとつ、特定の特徴的な機能があるほうが、使いやすいし、その有用性が新しいマーケットを開くことになるからです。ユーザーがどうしても欲しいとおもう機能が一つあったら、残りの欠点をカバーしてくれます。ユーザーは、「このプロダクトは他のプロダクトにはついている○○みたいな機能は持っていなくて、まあそれらも付いていたらいいなと思うけれども、でもこのプロダクトのこの機能がどうしても必要なんだ」とおもったら、あなたのプロダクトを使います。他のなによりも多くの機能があるとかそういうことではありません。みなさんのプロダクトが特定の一つの動作、一つの機能を他のどのプロダクトよりも優秀に果たしてくれるものかどうか、です。みなさんありがとうございました。

Geoff Ralston
はい、今日はこれでおわりです。少し遅くなってしまいました。素晴らしいスピーカーのスライドの進行やみなさんのいい質問を時間制限でとめてしまうのは難しいですね。来週はMixpanel のSuhail Doshi と Y Combinatorの Gustaf Alstromer が、今回に続いてプロダクトについて深く見ていきます。測定と成長について話します。重要事項2つです。今週のトークのビデオもまたアップロード予定です。 [inaudible] がGobble の創業者 Ooshma Garg  を迎え、バンドBee Geesのような感じで、どうやって会社をステイ・イン・アライブ(持続)させるかお話しします。ご参考までに。それでは、ありがとうございました。
 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: David Rusenko - How To Find Product Market Fit (2018)

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