ピッチの仕方

投資家があなたの会社は何をしているかを理解していると、彼らとの会話が大幅に容易になります。創業者として自身のスタートアップをピッチしなければならない機会は無数にあります。その際に効果的であるためには、そのピッチは明瞭且つ簡潔でなければなりません。

この投稿ではそのようなピッチの作成プロセスを7つの質問の回答に要約しました。7つすべての質問を簡潔に回答できたら、あなたは一歩先を行っていると言えるでしょう。

7つの質問

1. あなたの会社は何をしているのですか。

まずは会社の名前と何をしているかから始めましょう。例えば「Socialclamは動画を撮ってそれを友人や家族と共有することを簡単にしてくれるモバイルアプリです」という具合です。問題を提起する必要はなく、直接論点を突きます。

多くの人は自身のアイデアを印象的に表現することに労力を使い過ぎています。本来は簡単に表現すれば良いだけです。むしろ実際にはその方が望ましいです。あなたが何をしているのかを最もシンプルな言葉で表現するべきです。このことは理解しやすいようにあらかじめ工夫する必要があります。エレベーターピッチはベビーフードのようなものであるべきです。

製品の概要をシンプルに伝えることが難しい場合は、利用者の視点で使用行程を説明するのが1つの効果的な手段です。例えば、「私たちはGoogleです。ボックスのあるウェブサイトを作っています。そのボックスに質問をタイプして頂くとその質問に答えるウェブサイトを表示します」という具合です。

利用者の視点で使用行程を説明することで「私たちはGoogleです。私たちはウェブに索引をつけることで世界の情報を整理します」といった説明を省くことが可能になります。その説明では何がなんだかわからなくなってしまいます。

この質問に回答する際のゴールは、あなたのビジネスをすべて理解させることではなく、補足質問をしてもらえるレベルで興味を持たせることです。

2. 市場の規模はどれほどですか。

市場規模を理解するには2つの方法があります。(中小企業金融のような)既存の市場に参入する場合にはその調査を行うことができます。(Slackのような)新規の製品や市場を開拓する場合は、その製品を欲しいと思う顧客数を推定し請求できる金額を概算します。

例えばこうです。Bellabeatは女性のためのアクティビティートラッカーを製作しています。米国には14歳から45歳の女性がX人います。私たちのアクティビティートラッカーの寿命は2年です。私たちの米国における市場機会はYです。

市場規模とそのうち占有できる可能性のある割合を推定するにはトップダウンとボトムアップの2つの方法があります。トップダウンのアプローチでは全市場を測定し、そこでのあなたの潜在的なシェアを推定します。ボトムアップでは同等の製品が販売されている場所、その販売数、そしてその販売数の何%をあなたの製品が奪えそうか特定します。トップダウンの手法では、顧客の絞り込みが甘くなるという弱点があります。この罠を避けることができる、ボトムアップの方法を私はより好みます。絞り込みが甘くなるとはどういうことかというと、上記の例では、年齢や国籍に関わらず全ての女性があなたの市場の対象者であるとみなしてしまうことです。

3. あなたの進捗はどのようなものですか。

この質問で私が理解しようとしているのはあなたがどの程度の速さで仕事をこなしているのかです。仕事の結果とそれに費やした時間の比率はどれぐらいなのかを知りたいと思っています。

私はあなたが仕事に費やした時間で達成した結果に対して良い印象を持ちたいと思っています。これは会社の起業から1週間でも10年経っていても該当することです。

また、私は普段、製品開発と顧客を第一に評価し、それと比較してその他の例えば資金調達やビジネスデベロップメントに関する取引といった事柄の評価は、はるかに軽視しています。

4. あなたユニークな洞察は何ですか。

これは「答えを出している問題は何ですか」と似た質問ですが、よりハードルが高いです。私が本当に知りたいのは、問題についてあなたが知っていて他の誰も知らないことです。これは一般的に顧客と対話を重ねることや、市場における現行品の詳しい分析、およびしばしば個人的な体験から導かれます。

例えばGmailではこうです。電子メールの受信箱は個人的な通信や書類のデータベースであることがユニークな洞察でした。利用者が個人的なデータベースから何かを削除したいと思うことはありません。そこでGmailは会話を削除する必要が無いよう人々に十分な保存容量を提供しました。人々は電子メールが必要だったのではありません。すでに存在していましたから。また人々はより良い電子メールが必要だったのでもありません。それでは抽象的過ぎます。ユニークな洞察は、具体的で複雑な言葉を含まずに説明可能であるべきです。

あなたが独自の見解で市場について語る際、私に何かを教えられる機会が2回あります。その会社の活動の説明よりもスタートアップの持つユニークな洞察によって目から鱗が落ちるような経験をすることが多くあります。

ここでは情熱が助けにならない事は特筆に値します。無理矢理に質の悪いユニークな洞察を述べることは印象が良くなく、かえって悪い印象を与えます。例えば、「よう、今の電子メールはぶっ壊れてるよな」といった具合です。

5. あなたのビジネスモデルは何ですか。

スタートアップには2種類あります。お金の稼ぎ方を知っているものとそれをまだ見分けていないものです。大方の場合、2種類目のスタートアップは、規模を拡大して広告を展開するか、市場の優勢なビジネスモデルをコピーすることによって儲けます。2種類目の中でもごく一部の企業は、市場を塗り替える製品を武器に、合理的な新しいビジネスモデルを提唱します。フリーミアムはそのいい例です。

Justin.tvにおいて私が何度も犯した間違いは、様々なビジネスモデル(バーチャル製品・プロダクトプレイスメント・チャット広告・コンテスト・その他)をごちゃ混ぜにした提案を行うことでした。私はJustin.tvが広告によって収益化すると述べることが、それが唯一の解決策であったにも関わらず、恥ずかしかったのです。シンプルなビジネスモデルに自信を持ちましょう。

6. あなたのチームには誰がいますか。

私が知りたいことは多くはありません。創業者は何人ですか。技術的に明るい共同創業者はいますか。お互いに知り合ってどれほどの期間ですか。全員が常勤ですか。創業者同士のエクイティの分配はいかほどですか(等分かそれに近い分配率であるとより良いです)。

極めて深く関連する資格証明があれば、それも知っておきたいです。例えばこうです。あなたはロケットの企業を設立していてあなたは以前にSpaceXのロケット科学者でした、という具合に。基本的には、非常に複雑であるか規制の多い市場をターゲットにしている場合、そうした様々な問題に対処できそうな専門家が社内にいることが重要です。

ロケット企業であれば、通知表の成績や過去にGoogleで勤務していたことに言及する必要はありません。

7. 何を求めていますか。

回りくどく求める必要はありません。投資をして欲しいのであれば求めましょう。質問があるのであれば回答を求めましょう。でもはっきりさせたいのは「どう思いますか」は良くない質問です。「私のアイデアは良いですか」も良くない質問です。

援助を引き出せるような話し方を心がけましょう。私はあなたを援助したいと思っているのですから。

回答の改善法

7つの質問の回答が準備できたら、その回答を出来るだけ明快にすることが次の課題です。専門用語や頭字語、マーケティング用言語、および「プラットフォーム」といった不明瞭な単語をなくします。つまり、あなたが理想と思っているよりも単純に聞こえるようにします。

あなたが実践できる1つの手段を私は「電子メールテスト」と呼んでいます。あなたのスタートアップが何をしているのかを2文にまとめて、賢い友人に電子メールで送ります。そして、その質問を自分の言葉に直して説明してもらうよう頼みます。そしてその確認のための質問をされたら、そのピッチは修正する必要があります。電子メールでは、会話とは違って説明を加えることができません。その状態でも通用するピッチを作る手段として、電子メールは重要なのです。

YCバッチの開催中に私たちが行なっていることの1つで多くの人が知らないのは、私たちは企業の2文の紹介に関して助言をしているということです。「何をしているのですか」という質問の回答に関して、私たちはバッチ期間中を通して全てのグループの業務時間中に助言を行なっています。それがデモデーにおける良質なプレゼンテーションの要です。これさえ抑えてあれば、良質なデモデーのプレゼンテーションを書き上げることは簡単なことです。

回答を改訂する際に覚えておくべきことはカッコ良く聞こえる必要はないということです。明快でなければなりません。派手さを求めてはいけません。派手さは要りません。

結論

私は天才的なアイデアよりも進捗に関心があります。多くの画期的なアイデアは初見では画期的に見えないものです。よって、あなたの仕事の進捗を示す才能とこれらの質問に回答する知性はとても前向きな2つの兆候となります。あなたが何に取り組んでいるかを私が理解してしまえば、あとはあなたの成功に真実味があることを私に信じさせるだけです。

推奨資料

スタートアップのスタートの仕方、レクチャー19

この原稿の草案を読んでくれたJared FriedmanとAaron Harrisに謝意を表します。

 

 

著者紹介

Michael Seibel

Michael Seiebl は YC の CEO です。彼は Justin.tv と Socialcam の共同創業者であり、CEO でした。Socialcam は Autodesk に 2012 年に売却され、Emmett Shear の下で Justin.tv は Twitch.tv となり、Amazon に 2014 年に売却されました。スタートアップに関わる前、彼は US の上院議員選挙で財務ディレクターを1年勤め、2005 年に Yale University を Political Science の分野で BA を取って卒業しました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: How to Pitch Your Company (2016)

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