スタートアップの起業家に最もよく聞かれる質問は、どのようにしてスタートアップのアイデアを得るかということです。2番目に多い質問は、彼らのためのスタートアップのアイデアを私が持っているかどうかです。
しかし、起業家にアイデアを与えても、ほとんどの場合うまくいきません。アイデアを持つことは、スタートアップの起業家が持つべき最も重要な資質の一つです。スタートアップを運営していく中で、あなたは多くの新しいアイデアを生み出す必要があります。
YCは、アイデアがないけれど優秀そうに見える起業家に資金を提供するという実験を試みたことがあります。このアイデアがない人向けのコースでは、どの会社も失敗したと思います。優秀な起業家は何事にもたくさんのアイデアを持っているので、もしあなたが起業家になりたいと思っていて、起業のアイデアを得ることができないのであれば、まずアイデアを生み出すことができるようになることを目指した方がいいかもしれません。
ではどうすればいいのでしょうか?
適切な環境で、適切な種類の人々と一緒にいることが重要です。未来をよく感じ、ありえないような計画を立て、楽観的で、クリエイティブな意味でのスマートさがあり、アイデアの流動性が非常に高い人たちと一緒にいたいものです。この種の人々は、ほとんどの人が持っている制約を受けずに考える傾向があり、多くのフィルターを持たず、他の人が何を考えているかをあまり気にしない傾向があります。
最高のアイデアはもろいものです。バカげているように聞こえるので、ほとんどの人はそのことについて話し始めることすらありません。おそらく最も重要なのは、悪いアイデアを口にしてもバカにせず、そうしたことを実行していても愚かだとは感じないような人たちと一緒にいるということでしょう。
世間体を気にしている人や、あなたの野心を軽んじるような人には近づかないようにしましょう。残念ながら、世界のほとんどがそうです。しかし、彼らは過去にしがみついていて、あなたは未来に生きたいと思っています。
20年先の自分を投影して、そこから逆算して考えられるようになってください。自分を信じましょう。20年は長い時間です。ものすごくラディカルなように見えるアイデアを考えてみても良いのです。
もう一つの方法は、今起きている最も重要な地殻変動について考えることです。世界はどのように根本的に変化しているのでしょうか?変化の最先端とそれがもたらす機会を特定できますか?2008年から2012年にかけての携帯電話の爆発的な普及は、その最も最近の重要な例です――次のものへの機は熟しています!
このような地殻変動の中では、世界の変化は非常に速く、通常、大手の現存企業は、動きが速く、集中力のあるスタートアップに負けてしまいます。(ところで、本当のトレンドと偽のトレンドの区別を上手につけることは有用です。重要な差別化要因は、新しいプラットフォームが少数の人に多く使われているか、それとも多くの人に少しだけ使われているかということです)。
今年は可能で、去年は不可能だったことが思いついたら、常に注意を払うべきです。あなたは素晴らしいスタートアップのアイデアの種を持っているかもしれません。来年になってからでは遅い場合は特にそうです。
「これは絶対に実現すると確信しています。私たちがそれをやるかどうかを迷っているだけです」と言えるようになったら、それは良い兆候です。Uberは私にとってはこんな感じでした-初めて利用した後、そんなに長くタクシーを呼ぶことはないだろうということは明らかでしたが、Uberがこの領域を制覇するとは思っていませんでした。
アイデアを考える初期の段階で自分自身に問いかける良い質問は、"これがうまくいったら、これは巨大なものになるのか?"というものです。世の中には良いアイデアはたくさんありますが、スタートアップを大規模に成功させることができる固有の優位性を持っているものはほとんどありません。ほとんどのビジネスは、規模を拡大しても、価値のある蓄積的な優位性を生み出すことはありません。アイデアがなぜそのような性質を持っているかもしれないのか、早い段階で考えてみましょう。FacebookやAirbnbを見れば一目瞭然ですが、もっと微妙なところに存在していることが多いでしょう。
自分が何に向いているのかを考えることも重要です。これは純粋な内省では難しいことですが、理想的にはメンターや一緒に仕事をしてきた人に、自分が特に得意なことを聞くことができます。私は、起業家と会社の適合性(Founder/Company Firt)は、プロダクトマーケットフィット (PMF) と同じくらい重要だと考えるようになりました。
最後に、アイデアの良いテストは、多くの人がそれを悪いアイデアだと思っているけれど、何がそれを良いアイデアにできるのかを理解していて、それを明確に説明できるかどうか、ということでしょう。
これは2018年に中国で開催されたYCのイベントで行った講演のメモです。投稿を促してくれたEric Migicovskyさんに感謝します。
これは私が主にスタートアップについて考えていたときに書いたもので、今では主にAI開発について考えています。その中でも特に5~9段落目に当てはまる部分が多くて心を打たれました。
著者紹介 (本記事投稿時の情報)
Sam Altman は OpenAI のCEO であり、Y Combinator のアドバイザーです。彼は 2014 年から2019年の間、YCの社長でした。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Idea Generation (2020)