消費者向け製品を作るためにデータを活用する (Sequoia Capital)

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これまで、私たちは成長、リテンション、およびフレームワークについての議論を行ってきました。それらが消費者向け製品の開発に関連するためです。ここで、一歩引いた視点に立ってこれまで議論してきた全ての概念を文脈として捉え、次のステップへと進むモチベーションを上げるのが得策だろうと私たちは考えました。

製品の増加、コネクテッドデバイスの増加、そしてネットの利用時間の増加が組み合わさったことで、ユーザーインタラクションのデータ量は急増しています。同時に、「A/Bテストと実験の増加→製品の反復型開発の高速化→開発リリースの加速→複合的な製品成長」という好循環により、増大し続ける生成データがもたらす洞察を明らかにしたいという内部からの要求も高まっています。全く異なる複数のソースに及ぶ膨大な量の非構造化データセットをどれだけ巧みに分析できるか次第で、製品に関する企業の競争力と革新力が決まるという傾向はますます強まっています。

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世界有数の大企業は、データから情報を受け取る (データインフォームド) 文化を基盤として成り立っています。AmazonやFacebookを例に挙げてみましょう。この2社はともに強固な「テストと学習」の文化を持っており、製品決定のためにデータを活用しています。分析は「数のカウント」やダッシュボードを作成することだけではなく、ゴール・ロードマップ・戦略の設定における指針としても非常に有効です。

「私たちのAmazonでの成功は、1年、1月、1週、1日あたりの実験の量に応じています」
――Jeff Bezos

 

「私が最も誇りに思っている事の一つであり、私たちの成功のまさに鍵となったのが、このテスト用フレームワークです。いかなる時点においても、実行されているFacebookのバージョンは1つだけではありません。おそらく10,000ぐらいです。」――Mark Zuckerberg

データインフォームドな製品決定の推進にますます注目が集まる中、一般的に企業は分析による助けを借りて推進される3つの成果に注目しています。

  • ダッシュボードまたはレポートの作成による、事業の健全度の評価
  • A/Bテストの利用による、適切な製品と機能の発送
  • 深い予備解析による、製品に対するロードマップと戦略の設定

これらの成果は次に挙げることによって実現します。すなわち、道しるべとなるメトリクスおよびゴールを製品に対して設定すること、拡張可能かつデータインフォームドな組織構造を作り上げること、そして製品の持続可能な成長、継続率、スティッキネス、エンゲージメント、収益化を推進する方法について深く理解することです。先述のテーマの一部は、私たちがMediumで公開しているシリーズ記事で取り上げています。この記事では、取り上げてきた様々な各テーマを結びつけながら、私たちが今後公開する予定の記事の雰囲気についてご紹介したいと思います。

ゴールとメトリクス

北極星のメトリクスとゴールのセットは必須です。製品に対するビジョンと企業のミッションを最適な形で要約した第一のメトリクスを特定することが重要です。このような道しるべとなるメトリクスは利用の実態を表し、簡単に測定できて、あなたの事業の原動力と関連するようなものです。組織のゴールは、このようなメトリクスと密接に結びついています。

ゴールは成功を定義・観測するうえで大切です。ゴールが設定されていれば、例え道筋が変わることがあったとしても、目的地は明確なままです。ゴールはあなたが最も気に掛けるべきただ一つのメトリクスを、ターゲットおよびそれを実現する時間枠と結び付けることにより、ミッションを戦略、ロードマップ、イニシアチブ、戦術へとつなげるのに役立ちます。このプロセスはあなたのチームが成功を定義するうえで、他の何よりも役立つことでしょう。

組織構造

どんな企業であっても、真にデータ駆動型の企業となるには、組織構造がその成功における重要な役割を担います。一般的に言うと、会社のビジョンとミッションがその会社の組織構造を決定づける可能性があります。自分の会社の異なる部門がどのように相関しているかを理解することにより、会社全体のための方程式を構築できるかもしれません。Facebookでは、その方程式は「ユーザー数 * 利用時間/ユーザー数 * $$$/利用時間 = $$$」となります。「全ての人をFacebookに参加させ、その人々を製品に深くエンゲージさせ続け、彼らがそのサイト上に費やす一分一秒を収益化する」ということです。

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この方程式が各チームにとっての注目点を明確にしました。グロースチームはユーザー数に、エンゲージメントチームはユーザーごとの利用時間に、広告チームは利用時間ごとの金額に注目したはずです。そのようにして、全てのチームが会社レベルでの成果を実現するために調整された、明確な道しるべとなるメトリクスを手にしました。これらの中核的な各事業部門の下には、多くの小規模な下部チームを設けられます。そのチームはそれぞれが事業レベルの成果を実現するために調整された独自の方程式をもっています。例えば、グロースチームの下には海外ユーザーの成長に焦点を当てた国際化チームがあるかもしれません。国際化チームの下には各国向けのチームが存在し、それぞれが独自に一連のメトリクスをもっている可能性があります。この結果として、自分の仕事が全体としての事業とどのようにつながっているのかを全ての人にはっきりと示す、一連の下方に波及する方程式が作られます。このゴールとメトリクスに関する調整はボトムアップ式でデータインフォームドな実行を行う文化の土台となります。この文化こそが真に偉大な企業と単なる優良企業とを分かつものです。

製品の進化、健全性、持続可能性

組織構造および主なゴールとメトリクスが定まったならば、健全な製品について多角的な側面から調査してみましょう。この際には、消費者向け企業が成長、持続、スティッキネス、エンゲージメントといった側面の測定で使うべき方法に特に注目します。

製品は時間をかけて進化します。アーリー段階の製品がもつ特性はマチュア段階のものとは大きく異なります。強い製品の場合、成長していく段階はS字カーブに似ているのが普通です。アーリー段階において成長は控えめかつ、ゆるやかに進みます。その後、グロース段階中には傾斜が上向きに弧を描くように成長が加速します。これに続くのが「ハイパーグロース」の段階です。この期間中は指数関数的な成長が見られます。成長が最大にまで達すると、成長率は徐々に弱まって製品は成熟段階に突入します。この期間中、成長率はゼロか、それに近い数字となります。皆さんが製品に対する予想を立てるのに役立つように、各段階の変遷過程を解説していきます。

長期的な成功を収めるために、製品に本物の価値がなければいけません。それが深くエンゲージしており、採用率も高い場合、ユーザーは自らの意志で何度もリピートするでしょう。空前の成功を収める極めて健全な製品は長期にわたって持続的に成長できます。その製品が根本的な問題に取り組んでいるからです。持続的な成長とは、将来の資源を消耗することなく維持できる成長のことです。現在の急成長と将来の成長の間にはトレードオフが存在します。現在の急成長は有効市場を利用し尽くし、長期間にわたって製品を持続させることを不可能にします。ここで持続的に成長させる方法について検討し、「プロダクト・マーケット・フィット」と「ポジティブな純増」という二つの主要因に左右されることを示します。リテンションはプロダクト・マーケット・フィットを測るのに最も良い方法で、製品を成長させる手段としてもずば抜けて優秀です。リテンションがなければ、成長している製品であっても最終的にユーザーが一人もいなくなります。

製品の成功を達成するためにはメトリクスの監視が欠かせません。第一のメトリクスを定め、そのメトリクスを正しい方向に向かわせることが最優先事項です。メトリクスの変化はほぼ必ず、次に挙げる要因のうちの一つ以上が原因で起きます。すなわち製品の変化、季節変動要因、競争、構成の変化、データの品質です。

次回

これまでの記事では、成長と継続についての考察に多くの時間を割いてきました。消費者向け製品の製品開発に関連するからです。まだ詳細な考察を行っていない重要な構成要素はエンゲージメントです。

エンゲージメントはユーザーがある製品を本当に気に入り、そこに価値を見い出しているかどうかを反映しています。プロダクト・マーケット・フィットを示す最初期のメトリクスです。また、リテンションと持続可能な成長の両方にとっての最も重要な原動力でもあります。したがって、エンゲージメントという原動力を深く理解することが製品の成功にとって重要です。最も根本的なレベルでは、エンゲージメントが成長とリテンションという二つを推進します。エンゲージされた支持者がいなければ、製品は無益なものとなります。

次回の記事でエンゲージメントという概念を紹介するとともに、それが継続と成長にどう関わってくるのかを説明できることを私たちは楽しみにしています。これまでの私たちの記事についてご意見、ご感想がございましたら data-science@sequoiacap.com までメールをお寄せいただくか、以下にコメントをお願いいたします。

 

この記事は、Sequoia CapitalのData Scienceチームによるものです。Jamie Cuffe、Avanika Narayan、Chandra Narayanan、Hem Wadhar、Jenny Wangが執筆協力しています。質問、コメント、その他のフィードバックにつきましては、data-science@sequoiacap.comまでメールでお送りください。

 

著者紹介 

Sequoia Capital (Medium)

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記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Leveraging Data To Build Consumer Products (2018) 

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