ピッチ資料をより良くデザインする方法 (Kevin Hale)

(※この記事は私が YC のスタートアップに対して、デモデーのスライドデッキ作成用に行ったプレゼンテーションからの編集版です。)

これから信頼できるデモデー用プレゼン資料の作成方法をお教えします。覚えておくべきなのは、素晴らしいプレゼンテーションを行うために必要な全てをあなたはすでに持っているということです。

もしかすると、あなたの会社が素晴らしい理由は100個あるかもしれません。しかし、短いプレゼンテーションやピッチのあと、人が実際に覚えていられるのはその内の2つか3つだけです。私たちは皆さん一人一人と腰を据えて、人々があなたのスタートアップについて知っておくべき最も重要な5~7個のアイデアを解き明かしました。この5~7個のポイントこそ、あなたが投資家に覚えて欲しいものです。

あなたがPrototype Day 1で自ら経験したとおり、自分以外に100社の企業が一緒に参加している状況では、自分が挙げたポイントの内1つか2つを覚えてもらっただけでも、幸運と言えるでしょう。

単にそのポイントをはっきりと伝えるだけでも、他の99%のスタートアップよりも良い結果を出せるはずです。なぜなら誰であれ、覚える前にはまず理解しなければならないからです。これから、物事を分かりやすくする方法をお教えします。

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  • 読みやすくしましょう。
  • シンプルにしましょう。
  • 明快にしましょう。


以下は理解しづらくなるやり方です。

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  • 読みにくくすること。
  • 複雑にすること。
  • あいまいにすること。

スライドは読みにくく、複雑で、あいまいなものであってはならない――私はこのことを何度か繰り返して強調していきます。スライドは読みやすく、シンプルかつ明快であるべきです。

私のプレゼンテーションを進めていく前に、私が注意の言葉を口にするのはこういう場合だということを伝えさせてください。このプレゼンテーションにはひどいスライドがとても多く含まれています。これがデモデー本番のプレゼンテーションだったなら、私は数スライド前で止めてしまっていたでしょう。これは図入りのエッセイです。それはプレゼンテーションとは大きく異なります。どうか図入りエッセイを作らないようにしてください。

読みやすさ

さて、それでは読みやすいスライドについてお話しましょう。読めなければ、それを理解することも不可能です。デモデーでは、500名を超える人々で部屋が埋め尽くされることでしょう。全員が前列に座ることはできません。年配の方もかなりの数いらっしゃるため、その視力も最高の状態ではないかもしれません。

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読みやすいスライドとは、後列に座っている視力の悪い年配の方でも読めるものを言います。以下にそれを実現する方法を挙げます。

  • 大きな字体を使うこと。
  • 太字のテキスト。
  • シンプルなフォント。
  • 背景色とのコントラストを良くする。

また、一番上のテキストの方が部屋の後ろから読みやすくなります。いくつかの例をざっと見て行きましょう。

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これはそれほど酷いわけではありません。問題はテキストのコントラストと位置決めです。やり直してみましょう。

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良くはなりましたが、このスライドには読みやすさが最適化されていない他のテキストが多数あります。スクリーンショットのせいで窮屈になっているためです。あらゆる人が部屋の後方からでも読めると考えるバージョンはこちらです。

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(もし選べないならここから始めましょう:Helvetica で、Bold にして、100pt 以上の文字サイズにする)

以下のスライドはShred Videoが作成したものです。これは同社がPrototype Dayにおけるプレゼンテーションで使ったスライドで (私がこれを使うことを快諾してくれた人たちに感謝します)、 このスタートアップが構築しているものの説明となるべきものです。

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ご覧のとおり (もしくはご覧になれないとおり)、このテキストはあまりに小さくて細過ぎます。このスタートアップの業務を実際に説明しているテキストもスライドの下部に書かれています。この企業の技術は驚くべきものです。Shredのソフトウェアは数時間の無加工の映像をまるでプロが作ったかのような動画へとわずか数秒の内に自動編集できます。残念なことに、その話は背景がライトグレーのスライドの下部にほとんど隠れてしまっています。デモデーまでには、記述が簡略化され、そのポイントを表現するのに使われるテキストも大きくて立派なものになりました。

シンプルさ

ではシンプルなスライドについて話しましょう。シンプルなアイデアは理解しやすいものです。

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ですが、それが本当に意味するものは何でしょうか? 「シンプル (simple)」と「複雑 (complex)」は共通の語源をもっています。

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「plex」という言葉には「編む」「より合わせる」「折り重ねる」といった意味があります。

シンプルなアイデアとは他のアイデアと絡み合っていないもののことです。それは折り重なっていません。一つのアイデアです。したがって、シンプルなスライドは一つのアイデアを表現します。スライドを複数のアイデアで渋滞させないようにしましょう。それこそが、複雑になっている状態です。ポイントを示すために2枚以上のスライドが必要なアイデアもあるかもしれません。ですが、それを一つに収めるよう努力すべきです。

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投資家に理解させたいアイデアは5~7個のみに抑えるので、スライドの数をあまり多くすべきではありません。デモデー用のスライドはおよそ5~7枚のみに収めるのが理想です。

私たちのスタートアップの一つが作成したもう一つの例を見てみましょう。以下はAfrostreamが自らの業務を説明するために作成したスライドのごく初期のバージョンです。

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彼らはここに2つのアイデアを書きました。自分たちがまさに構築しているものとそのターゲットについて伝えようと試みたのです。残念なことに、ここに書かれたテキストはあまりに多過ぎます。強調してある部分だけを配置しておけば悪くなかったかもしれません。しかし、彼らは非常にありがちなミスを犯しました。私は多くのスタートアップがこの間違いを犯すのを目にしています。彼らは自社の事業に関する細かいところまで全てこのスライドに詰め込もうとしました。その結果できたのが、誰にとっても覚えづらいスライドです。

このスライドと、彼らがデモデーで自分たちのスタートアップを説明するために使った最終稿のスライドを比べてみてください。

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ああ、まるで新鮮な空気を吸うような清々しさです。短く、美しく、思い出しやすい。どんなアイデアをスライドで伝えようするのかが決まり次第、聴衆にそのアイデアを確実に理解してもらう方法を見つけ出さなければなりません。人々が各スライドに書かれた一つのアイデアを理解するのに役立つ最適な方法とは、それを明快にすることです。

明快さ

では、明快なスライドについて話しましょう。明快なスライドとは、ひと目で理解できるスライドのことを言いますす。あるスライドが明快かどうかを試すのに使える単純なテストを教えましょう。すなわち、スライドを全くの他人に見せ、その人にそのスライドの意味を言ってみてもらうという方法です。その人がすぐにあなたのアイデアを言えなければ、あなたの負けです。

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なぜなら、明快なアイデアであれば非常に素早く理解できるためです。なぜ理解の速さについて気にするのでしょう? そう、デモデーでのプレゼンテーションの場合、次の2点が発表者にとって厄介な問題となります。

  1. あなたには2分30秒しかありません。
  2. 人々の注意はそれやすいものです。

実際、投資家というのは他の大抵の人と比べると、はるかに気が散りやすい人々です。投資家はせっかちなので、気が散りやすくなります。あなたの話のポイントがすぐに理解できなければ、メールチェックを始めることでしょう。

投資家たちに対して、最初から最後まで自分のことを見つめ、耳を傾けるよう強いることはできません。そして正直に言えば、たとえそれが自分の仕事だったとしても、100を超えるプレゼンテーションにひたすら集中するのは困難です。相手の身になって考えてみましょう! これを軽減する方法とは、自分が見せるスライドはどれも一瞬で理解できるものとなるように徹底することです。そうすれば、投資家たちがメールチェックから顔を上げたときに、辛うじてスライドを理解できます。

物事を明快にする方法を教えましょう。私はまず、読みやすくシンプルにするところから始めます (前述した2つのポイントを参照してください)。その後、自分のアイデアをはっきりさせようと試みます。以下は一例です。

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これは減点です。このスライドは明確ではありません。おそらく、これがある種の成長グラフを表しているのであろうことを推測し、見当をつけることはできます。しかし、すぐにははっきりしません。

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こちらの方が良くなっています。ですが、私が伝えたいアイデアはもっとはっきりと表せるはずです。

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(毎月 50% 売上が成長中)

すばらしい。スライド上で要点が整理されています。このスタートアップの状況を推測する必要はありません。私は明確に示しています。次は私たちのスタートアップの一つが作成した別の種類のものです。

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この説明文がなければ、それと同じ結論に至るまでこのグラフを吟味しなければならなくなるでしょう。このように結論を書き出しておくだけで、グラフをじっくり見る必要もほとんどなくなります。

スライドを明快にするために私が行っているもう一つの方法は、スライド内に邪魔なものを置かないようにすることです。ここで私が言う「邪魔なもの」とは、「情報を邪魔するもの」を意味します。以下はDropboxがどのように機能するかについての表し方の一例です。

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悪くはありませんが、明快でもありません。問題は人々がこのスライドを瞬時に理解できない点です。いったいなぜでしょう? そう、このスライドには情報が多く存在しています。わかりますか?

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あらゆる無駄なものは把握するのに時間がかかります。実は、人間が行う相互作用には「ヒックの法則」と呼ばれる法則が存在します。この法則は、ある問題に対して追加する情報、その一つ一つがどれほどコストになるのかを説明したものです。選択肢の数が増えると、意思決定にかかる時間も対数的に増加していきます。

私の考えでは、略図とはアイデアにとっての小さな迷路も同然です。通常、略図は伝えたいアイデアに至るまでの道を長くし過ぎます。そして、投資家には略図を把握しようとすることに時間を浪費して欲しくありません。あなたは投資家が一瞬にして理解することを望んでいます。そう、あなたが優れている理由を一瞬にして。そのため、アイデアに至る道のりはまっすぐ、短くあるべきです。

以下に挙げるのは、スライドで避けるべきそれ以外の邪魔なものです。

  • 多過ぎるテキスト。
  • 過剰な説明とただし書き。
  • スライドごとに記される過剰なブランドマーク。
  • 見出しも説明文もない写真。
  • アニメーション。
  • 転換。
  • インターネット・ミーム。
  • 微妙なユーモア。
  • 突然のユーモア。

基本的に、スライド自体を記憶に残そうとするのはやめましょう。

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投資家が投資するのはチームにであってスライドにではありません。スライドとは、あなたのアイデアをより明確にするものであるべきです。スライドのせいで、あなたが声を大にして話している内容から投資家の注意がそれることのないようにしましょう。あなたが望むのは、投資家があなた自身に対して好印象をもつことです。あなたのスライドに対してではありません。

ところが、このルールについては1つの例外があると私は考えます。すなわち、あなたの主眼が複雑性を示すことにある、または聴衆を情報量で圧倒することにある場合です。この状況は通常、スタートアップが自分たちの解決している問題がいかに難しいものであるかについて話したい場合に起こります。Magicのプレゼン資料から一例をお見せしましょう。

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このスライドで成されている主張は、自社のソフトウェアが数千のサービスをただ一つのインターフェースに集約するということです。そのポイントを覚えて帰ってもらうため、あらゆる業種、市場、垂直産業内に存在する、考え付く限りのあらゆるオンデマンドサービスがタイルのように並べて配置されているスライドを彼らは示しています。

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普通、市場内に存在する潜在的な競合他社を全て示しているスライドはふさわしくありません。しかし、この複数のロゴがその問題を象徴しています。ユーザーがこれら全てのサービスを活用するためには、その一つ一つでアカウントを作成しなければならないでしょう。これは発見と利便性に関わる問題です。また、それぞれのロゴはMagicがユーザーの問題を解決することにより、手数料を上乗せできる全ての事業を象徴してもいます。情報量で圧倒することに理由があります。そして、通常その場合はルールを曲げても構いません。

クソなスクリーンショット

では、スクリーンショットについて話しましょう。私は基本的にデモデー用プレゼンテーションで使われるスクリーンショットが大嫌いです。スクリーンショットはほぼ必ず読みにくく、複雑で、不明確です。3つのルール全てを破っています! 大半のインターフェース内のテキストは小さ過ぎます (つまり読みやすくありません)。大半のインターフェースは複数のことを行っています (つまりシンプルではありません)。大半のスクリーンショットはひと目見ただけでは理解できません (つまり明快ではありません)。これは最低です。

以下は「スクリーンショット」でGoogle画像検索をした結果です。

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果たして、この画像の中にすぐ理解できるものはあるでしょうか? 答えは否です。

自らがしていることを示そうとしているのであれば、そのもっとも簡略化されたバージョンのものを示すことをお勧めします。この場合、手順の箇条書きが私の一番好きなテクニックです。

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このスライドはSparkGiftのプロダクトの使い勝手の良さを説明するうえで、その実際のインターフェースを使ってワークフローを示すよりも、はるかに優れています。企業が幸運にも、自分たちの業務を2つのポイントで説明できる時もあります。以下はMeadowがそれをやってのけた方法です。

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思うに、彼らが同じアイデアを表現するために発表していたかもしれないボタンとリンクとChromeブラウザを組み合わせたスライドよりも、これははるかに優れています。

プレゼン資料内のスクリーンショットに対して私が抱いているフラストレーションはスクリーンキャストや動画にも同じく当てはまります。そのどれか一つでも使おうとする前に、よく考えてください。

さて、皆さんがプレゼン資料を向上させるためにできることはおそらくまだまだ多数あるはずです。ですが、今回述べたことは手始めとしてなかなか良いものだと思います。もう一度、以下に信頼できるデモデー用プレゼン資料の作成方法を示しましょう。

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読みやすくする。シンプルにする。明快にする。

この3つを守るだけでも、おそらく誰もが理解できるであろうプレゼンテーションを作れるでしょう。そして、理解してもらうことこそ、あとであなたと話したくなるほどに誰かをワクワクさせる土台となります。ですから、理解をしてもらうことが良い出発点と言えます。

グループに入って2週間、全てのスタートアップがお互いに初めてプレゼンテーションを行う「Prototype Day」と呼ばれるイベントを私たちは開催します。彼らがすぐに実感するのは、自分たちが自分のスタートアップを説明することが下手すぎるということです。そして自分と同じバッチの仲間に覚えてもらうことすらもうまくはいかないでしょう。

 

著者紹介

Kevin Hale

Kevin は YC のパートナーです。彼は2006年にY Combinatorによって投資され、2011年にSurveyMonkeyに買収されたWufooの共同創業者です。彼はWufooのデザインの担当で、UXについて広く語っています。Wufooの前に、彼はParticletreeでデザインについて書いていたほか、Web開発に関する雑誌であるTreehouseの主要編集者でした。彼はStetson University のデジタルアーツと英語の学位を持っています。

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:  How to Design a Better Pitch Deck (2015)

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