中程度の成功をうまく乗りこなす (Sam Altman)

スタートアップを始めるというのは、航空宇宙関係の部品の入った袋を持って崖から突き落とされるようなものです。1 あなたは袋の中身が宇宙船の部品だといいなと思い、外見からそんな感じはするものの、すべて袋の中なので判断できません。

なので、あなたは落下しながら部品がどのように組み合わされるのかを考え始めます。時折、宇宙船を作る部品は十分に揃っているらしいとわかることがあります。市場は大きく、すばらしいプロダクトがあり、自社の独占状態に自然となっており、信じるに値する勝利への道が見えます。そんな場合、あなたのためのアドバイスはたくさんあります。

ほとんどの時には、何かを作るのに必要な部品は足りておらず、そういう時はとにかく穏やかに着地することを目指すべきです。

しかし、時には飛行機を作れる部品が揃っていることもあります。飛行機でも十分素敵ですし、作る価値はありますが、月まで飛行機を飛ばそうと思うと痛い目を見ることになります。その飛行機をどれほど上手に組み立てて飛ばしたとしても、このことは変わりません。

このケースでは、新しい部品(つまり新規市場、新規プロダクト、それまでと全く違う戦略等)の入った袋の入手方法を見つけて宇宙船を作り続けてもいいですし、あるいはとても優れた飛行機を作ることに決めてもいいです。月に行くチャンスのためならそれまで作り上げてきたすべてを賭けることも厭わない人もいます。この場合も、このタイプの人々に向けてのアドバイスは世の中に多数あります。しかし合理的なタイプの人の多くは、作りあげた飛行機に満足するので、その場合はどうするのが良いかというアドバイスはあまりありません。

ここで「とても優れた飛行機」の定義を、利益が手の届く距離にあり、あと数年頑張れば1億ドルの価値になる道筋に乗っている会社であるとしましょう。これは恥ずべきことではありません。むしろ明らかにその反対です。ほぼどんな指標からしても勝利と呼べるものです。これは、スタートアップを始めようと決意した人の中でも非常に運が良く、非常に頭がよく、非常に意志の強いほとんどの人に起こることです。彼らは、完璧な市場に当たる以外、すべてがうまくいった人たちです。

理解すべき最も重要なことは、ここでよく創業者と投資家の足並みが揃わなくなるところだということです。スタートアップの投資家の多くは宇宙船を求めています。彼らにとって飛行機は割とどうでもいいものです。創業者にとってはかなり大事なのにも関わらず、です。あなたの既存の投資家は、あなたが飛行機を宇宙船に変えることができないか試すために通常どんなリスクも取ることを厭いません(しかし彼らのアドバイスは通常、「飛行機を月に向けてみて、もっと燃料を燃やして、どうなるか見てみよう」程度に過ぎないものです)。

既存の投資家に対してはフランクで現実的な姿勢を見せましょう——やがて「小さな多数」は損失よりもよいということを説得できます。優秀な投資家はベンチャー投資の仕組みを理解しており、このような結果について争いません(実際、多くはあなたの次の会社への投資を希望するので、非常に手厚く扱ってくれます)。しかしおしなべて、ここで投資家を惑わせば惑わすほど、状況は悪化します。

理解すべき二つ目に重要な点は、多すぎる資金調達や高すぎるバリュエーションでの資金調達は、選択肢を著しく狭めうるということです。私は創業者が内心では自分たちにあるのは飛行機だとわかっていながらも、良心ある投資家に対してそれは宇宙船にもなりうると説得してしまうケースを数多く見てきました。これは多くの心痛を生み、あなたの会社が後々良い条件で買収されるチャンスが失われてしまいます。

これに対する答えは、理論上はシンプルですが、実践上は誘惑に抵抗するのが難しいものです。会社の価値がおそらく10倍には増えないと思っていて、近々会社を売却してもよいと思うなら、多くの資金を高値で調達しないことです。これは通常あなたの会社の経営の仕方を変えなければならなくなることを意味し、また現在ある資金で利益を上げる方法を見出さなくてはならないことを意味することもあります。しかしあなたが思う最良の選択肢が取れなくなるような立場に会社を置くよりも、今対処する方が痛みはずっと少なくて済みます。

最後に、後々の買収を想定して会社をどのようにポジショニングするかを考え始めるとよいかもしれません。会社は買収されるのであり、売却されるのではありません。買収が強制的に起こるようにするのは非常に難しいですし、何か本当に価値のあるものを作っていない場合買収はほぼ不可能です(どういうわけか、「うちの会社を買収してもらいたい」と言う創業者はこれを聞くと大抵驚きます…)。しかし買収してくれそうな候補者との関係を構築し始めることは良い考えです。通常それは長い時間がかかりますし、個人的な関係は通常役立ちます。

そして、この結果はそれでも大きく胸を張れるものだということを覚えておいてください。もし望むなら、またいつでも新たに会社を始めればよいだけです。シリコンバレーには1社か数社の会社を作ってそこそこうまくやった後に、場外ホームランを打った人たちがたくさんいます。

 

備考
1. この比喩に関して、David Weidenに謝辞を述べます。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Sam Altman

Sam Altman は OpenAI のCEO であり、Y Combinator のアドバイザーです。彼は 2014 年から2019年の間、YCの社長でした。彼は Stanford でコンピュータサイエンスを学び、その間 AI lab で働いていました。 

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Navigating Mid-Success (2017)

FoundX Review はスタートアップに関するノウハウを届けるエンジニア向けのメディアです

運営元