FoundX Podcast #02「次の Tesla」 - 髙橋卓巳さん

馬田
みなさん、こんにちは。FoundXの馬田です。FoundXは東京大学卒業生向けのスタートアップ支援プログラムです。FoundXでは無償で個室の提供や、スタートアップのアイデア発見のための支援のプログラムをしています。

FoundX Podcast では、起業家や投資家の方々をお呼びしてアイディアや、ノウハウに関してお話いただこうと思っています。

今日はKyuzanの髙橋さんにお越しいただきました。今日のテーマは「次の Tesla」です。髙橋さんよろしくお願いします。

髙橋
よろしくお願いします。

馬田
では、自己紹介簡単にお願いしてもよろしいですか。

髙橋
はい。髙橋卓巳です。株式会社Kyuzanというブロックチェーンのスタートアップを去年創業して今経営しております。

ソフトウェアによる産業の垂直統合

馬田
はい。そんな髙橋さんに「次のTesla」というようなテーマでお話しいただくんですが、元々は二人で話した時に、「産業の垂直統合がいろんな分野で起こってくるんじゃないか」というところと、そこにスタートアップの勝ち目があるんじゃないかという風な話から今回の Podcast に繋がりました。髙橋さん、そのあたり少し詳しくお話していただいてよろしいですか。

髙橋
はい。これは今までソフトウェアとかが、スタートアップがいろいろ出てきたりとか、AI とかブロックチェーンとかクラウドみたいな新しい技術が登場してきたことにより、産業がいったん水平分業をして、各種いろんなステークホルダーとかプレイヤーが、技術だったりとか、その領域でいろんなイノベーションを起こしてきたかなと思っていて。

そうしたら、今度からはソフトウェアだけじゃ解決できないところ、もうちょっとその深くサプライチェーンとか、バリューチェーンに乗っかるような所っていうのを解決する必要が出てきたのかなのかなと思っていて、そこをできるプレーヤーてのがこれから出てくるんじゃないかなと思ってます。

馬田
つまり、既存のいろんな産業でそうしたプレイヤーが出てくるってことですよね?例えばどういうところが…。

髙橋
そうですね、まあ一番今有名な所で言うと、建設業とかで、ソフトバンクのビジョンファンドが投資してるような「Katerra」とか。

Katerra はまさに次の建設業の中での次のアップル、次のTeslaみたいな立ち位置として、建設業に今までなかった垂直統合モデルというのを導入して、そこで AI とか IoT っていう技術を活用してそれらを新しいテクノロジーを前提としたインフラを自分達が新しく作って、自動化だったり使うことによって、最終的には顧客に直接、付加価値の高い商品をコストを削減して提供してるってところが、一例かなと思います。

ソフトウェアを前提とした産業のリビルド

馬田
つまり、ソフトウェアを前提にして今の産業をリビルトしよう、という流れっていう感じでよろしいですかね。

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髙橋
そうですね。いろんなタスクであったりとか、業務効率化みたいな、ソフトウェアにしやすいものから今までソフトウェア化されてきました。さらに例えばデジタルで完結するようなマッチングとか、マーケットプレイスみたいな物っていうのは今まで起こってきたんです。

ただ、それだけじゃできないリアルなものとか。ロジスティクスとか、販売みたいなものが絡んでくる分野ってのはまだまだソフトウェアにになってない、自動化されてない分野ものがたくさんあると思っていて。SaaS 化されていく、ソフトウェア化されて行く物っていうのはほぼほぼもう出てきてしまったかなと思っています。

それで、これからはよりリアルが密接に絡んできて、簡単にはソフトウェアとかに乗せて行けられないような分野で勝負が起こると思っています。かつ、例えばリアルなもの実際の物を売るようなビジネスって、顧客に直接売っているんですけど、売り切りのモデルだったりとか、顧客との接点が非常に小さいと言うか。

(そういう顧客との接点が)少ないビジネスには、そういう今新しく出てきてるような、サブスクリプションであったりとか、顧客との接点を長く保つことによって顧客の情報を、生産とか、プロダクトを開発するところにフィードバックしていくみたいなところがないような分野では、そういうリアルと、ソフトウェアを融合させて新しいビジネスっていうのができるじゃないかなと思っています。

馬田
なるほど。そういうのだと、Amazon Go とかは、バリューチェーンとか、サプライチェーンの一部をまあ確かにソフトウェア化はしてるけれども、プロダクトへのフィードバックはまだしてないので十分ではないとかそういう感じですかね。小売業だと。

髙橋
そうですね。あれも、どこまでフィードバックできているかという意味ではまだ全然わからないんです。例えば、今、日本で言うとコンビニがすごい便利とかです。地方行けばイオンがすごくいっぱいあるみたいな話で、最終的には地方って、コンビニとイオンだけ全て完結するんじゃないかみたい話もあって。

逆にそういう新しいテクノロジーとかサービスにとっては、日本ではコンビニとかイオンが便利すぎるから、要は、ライバルとか競合がそういうところプレイヤーになると思います。

今いろんな人口減少とかという問題も出てきて、コンビニもいろんな問題を抱えているなと思っていてま24時間営業が本当にこのままサステイナブルに続くのかとかっていう問題だったりとか、色んな問題抱えてます。そういうところには、新しいテクノロジーとか、サービスっていうのが入る余地があるんじゃないかなと思ってます。

スタートアップでどのように行うか

馬田
なるほど。でも本当に垂直統合して、end to end をカバーするスタートアップをやって行くっていうのは、スタートアップとして始めるには結構大変だなと思うんですけれど。スタートアップがもしそういうことにチャレンジするんだったら、どういうマーケットインの仕方があったりするんでしょう。

髙橋
そうですねマーケットインの仕方はかなり気をつけないといけないなと思っています。ただ自動車産業でいわゆるTeslaだったりとか、スマホを PC の分野で言うアップルだったりとか。そういうプレイヤーが最初にどういうマーケットインをしたのかなっていうところを見るというのが一つかなと思っていて。

例えば、最初に作るプロダクトっていうのは相当、付加価値を高めてブランドをどれだけ高レバレッジして高く売るかみたいなところも非常に大事だなと思っています。Teslaなんかは、最初、セレブリティ向けの、環境に配慮した、しかもスポーツカーと言うような高級志向で、かなり高付加価値高い価格で販売するっていうところからマーケットインしたみたいなところが一つあります。そういうのは一つの切り口かなと思っています。

馬田
なるほど。最初ブランドを作りに行く、顧客接点をまず獲得しに行くみたいなところが一個のやり方でしょうか?

髙橋
そうですね。そういう意味では最初っから、キャッシュフローが作れる。

それで、次の資金調達ができるって言うところいかにに作っていくかなと思っていて。最短で、最小限で作っていくかなと思っています。

それには、やっぱり高い最初に作るロットって、すごい小さくなっていくかなと思います。そういう意味では、どれだけ高い価格で、高い付加価値をつけて販売できるかってところがあるので、そういうところに目を付けると言うか。

マーケットの中でそういうターゲットとか、というのがどこにいるのかってのを見つけるというのは、一つかなと思います。

馬田
なるほど。なので、最初は一番いわゆる、上流下流で言うと下流側から始めて徐々に上流の方に統合して行くみたいな。

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髙橋
そうですね。マーケットインの仕方はもう一つで言うと、どのサプライチェーンの中で最初から全てやるのかみたいな話もあって、これで言うと、FinTech マーケットだとかが、結構参考になるかなと思ってます。

これからのよく言われる話で、もういろんな記事もなってると思いますが、これからの銀行は銀行業として始める必要はないみたいな話も結構あります。要は、銀行のインフラっての下にあるのですがその先に例えば、貯金アプリだったりとか、ローンのアプリであったりとか、色々な給与即日払いとか、色々なサービスっていうのは考えられています。

そういうプレイヤーっていうのは、最終的に、銀行業を持っていたりとか、直接資金移動業に持っていたりとかするわけではないのですが、銀行になっていくプレイヤーになるポテンシャルはあるなと思っています。

それで、そういう下流上流で言うと、そういうところから入っていくってのも一つの手かなと思っています。逆に、そういうインフラと言うか、いろんなサービスとか、アプリケーションがのるようなインフラだとか、 API とかがないような産業では逆にそういう新しいマーケットの、例えば建設業の AWS とか何かそういう次のプレイヤーがどんどん乗っていけるような所を簡単にするような、プレーヤーってのが出てくるんじゃないかなと思います。

馬田
では、フィンテック例えばStripeがもうすでに API を提供していて、「銀行ではない銀行業」がやりやすい環境があると。他の産業まだそういうAPIがないから、逆にそこから始めて、そういう建設業のStripeみたいなのを作って、それができてくると垂直統合できる何かが生まれてくるみたいなイメージでよろしいですか?

髙橋
そうですね。

ブランドの重要性

馬田
なるほど。ブランドの話に戻りますが……。ブランドが大事ってのはすごく感じてるところで、最近私がお話しした、海外のユニコーンになってるスタートアップの創業者の一人がいます。

有機栽培したサラダを売るっていうところなんですけれど、ブランドに力を入れていると。彼自身も Chief Brand Officer で、創業者がそういう職をやって、ブランドに力入れて、そして何度も何度もとサラダを改善しているそうです。かつ、顧客接点の店舗も持ってるみたいな、そういうところがあってですね。ブランドをちゃんと作るっていうのはとても大事かなと思っていまして。こういうのって、他にも何か他の領域で見れたりしますかね。

髙橋
難しいですけど、特に飲食で言った時にも、例えばコーヒーでは、スターバックスがあったりとか。中国で言うスタートアップで言うとラッキンコーヒーとか。そういう所ってやっぱり顧客と直接接点を持っているような、高いブランドバリューがあるような会社だと思っています。そういう所っていうのは、非常に心地よいサプライチェーンと言いますか、サプライチェーンにも大きいバリューがあると思っていて。逆にそういうところでのイノベーションっていうのも、起こしやすいかなと思っています。

服で言うと、例えばユニクロとか、工場のオートメーションとか、繊維のテクノロジーとか。そういうところにもどんどん投資していける。高い顧客との接点を非常に多く持っていて、そこにブランド価値がすごい高くあるからこそ、高い付加価値の商品を売ることができて、そこで、利益をさらにまたサプライチェーンであったりとか、新しい技術に投資するっていうのができるので、そこでやっぱりブランドっていうのが大事で、直接顧客との接点をもつということが非常に高いバリューになるなと思っています。

馬田
なるほど。D2Cが最近特にUSなどでは流行ってるイメージがありますけれど、あそこを見るときに、例えば単なるブランドだけではなくて、「そこから始まって徐々に、サプライチェーンもソフトウェアを前提としたサプライチェーンを組んで行って、垂直統合していくんだ」みたいな見方をすれば面白いかもしれないですね。

髙橋
そうですね。 D2C もただデジタルで、ただマーケティングして、直接インフルエンサーなどを活用したマーケティングによって、直接デジタル上で販売していくっていう所だけを見て、新しいサブスクリプションで新しいブランドを作るって言うだけで終わってしまうと(残念で、)本当にやっぱりD2Cがいわゆる、テクノロジーカンパニーと言うか、その後どんどんスケールしていくことってのはないかなと思っていて。

伸びてるDtoC を見ていくとやっぱりその顧客との接点を持っている、それで大きい顧客とのデータを上手くサプライチェーンにフィードバックして、そこの部分にどうやってイノベーションを起こしているかっていうところを見た方が、そこが伸びていくD2Cと、デジタルのブランドとを分けるっていうことかなと思っています。

15年かかることを前提としたアイデア

馬田
なるほど。先ほどの有機栽培のサラダのところとかも、結構自分達のフィードバックをサプライチェーンににかけてるみたいな話を少し聞いたことがあります。ソフトウェアを前提として、本当に素晴らしいサラダのデリバリーまで行くかは分かりませんが、より良い体験を作るためには最適化は毎回やってるみたいな話を伺った記憶もあります。

そういう意味だと、そういうことやっていこうとするとやっぱり10年とか20年とかのスパン、Teslaなんて、今2019年なので、15年以上行ってようやくここってかんだと思うんですけれど。やはり、時間かかっちゃいますよね。

髙橋
時間はかかると思っています。ただですね、15年でTeslaが出来たっていうところは非常にでかいなと思っていて。これは、ソフトウェアが出てきてからこその大きな現象だなと思っているんですけれども。

15年とか20年って単位でGoogle とか Facebook ってのがないところからは、世界でナンバーワンっていう所まで行くっていうところが、ここ20年とか15年で起きたことです。Teslaも、一個の自動車産業っていうところかなり高い位置に、15年でゼロから作るっていうことができたと。

これは非常に大きい現象だなと思っていまして。それが日本、日本に限らなくてもいいですけけれども、日本からもうこれから出てくるチャンスはあるんじゃないかなと思っていて、なので10年とか、15年をかけてそこの垂直統合モデルをつくれるプレーヤーっていうのが、これから日本に限らず必ずどの分野にも出てくるんじゃないのかなと思っています。

馬田
確かに、小売業とか、 IT 産業とかだと、多分 GDP の10%(※小売業は約14%、情報通信業は約 5%です)とかだと思うんですけど。他の業界からの大きな業界のうちの小売業の、例えば10%をもしその15年で取れたら、結構な売り上げになりますよね。

髙橋
そうですね。インターネットセクター、ITセクターっていうか、これまでITスタートアップだったりとか、っていうのが言われてはいたんですけど、かなり小さいマーケットで僕たち、やっていたんだなっていうところ最近痛感しています。やっぱり大きい市場規模のランキングみたいなものを見た時にも、やはり金融とか建設業とか不動産とか、農業だったりとか、小売りとか。そういう分野ってのが非常に大きな産業でそこには大きいプレイヤーもいますと。

そこには同じようにテクノロジーで AI とかIoTとか5G、みたいな、技術的な変革っていうのが起きているわけで。かつその業界の中でも、いろんなプレーヤーっていうか、プレイヤーとかが変わってきていると。

そういう状況の中で、必ずここどこかに歪みと言うか、生じる部分あると思っていて。そういうところを見つけて挑戦するってのはいいのかなと思っています。

馬田
確かに既存の企業だとSaaSを入れて、一部のバリューチェーンなり、サプライチェーンは効率化できるかもしれませんけど、大きなビジネスモデルの変更ってなかなか難しいですね。

髙橋
そうですね。ソフトウェアでやっぱり、日本でもいろんなサースであったりとか出てくると思いますけど、そこで解決してることって本当にすごい長い、特に大きい産業では色んな凄い深いサプライチェーンの中で、かつ、その1プレイヤー一個の企業の中の、一業務を自動化できたみたいなことがかなり大きいかなと思っていて。

そこの長いサプライチェーンをでかいボトルネックを解決するような自動化だったりとか、技術的なイノベーションだったりとか。そういうところに目を向けて、調整するのがいいのかなと思っています。

馬田
最近結構日本でもファンドサイズが大きくなってきて。しかも、10年以上のファンドの寿命、というところも多くなってきてると思うので。だからこそこういう一個の産業、大きな産業を大きく変革するみたいなスタートアップとか出てきてもいいタイミングなのかもしれないですね。

髙橋
そうですね。最近だと、レイターステージのVCだったりとか。さらににこの IPO 後の資金調達もやるようなプレイヤーて今度は VC がどんどん出てきています。それで、日本では特にここ最近だと海外のVCだったりとか、PE ファンドがかなりレイターステージの日本のスタートアップとかに目をつけているって言うような話も聞いていて。そういうとこにやっぱりチャンス、逆にそういう大きい産業で大きいチャレンジをしないと、そこのお金っていうのは絶対入ってくる余地はないので。そういうところは、やっぱりチャンスかなと思っています。

大きく考えるほうがファイナンスしやすい?

馬田
Teslaの話に少し戻りますけれど。Teslaなんか株価が本当にPERレベルで見ると高くて、やはりそういう産業がもしかしたら今マーケットではすごく期待されてるのかもしれないですね。

髙橋
そうですね。マーケットの期待感と、ユーザーのやっぱり期待っていうのは大きいかなと思っていて。やはり売上規模で見たら、全然Teslaよりトヨタの方が何倍もあるよね、っていうところはもうすでに分かっています。

ただその顧客との接点が全てデータとして取れているところと、そこから繋がるイーブイに変わっていくよね、みたいなところの期待値がやっぱり全てTeslaに向いているというところが、かなりPER を大きくしていくってところに繋がっているので、やはり、15年とか20年で絶対にこっちの方向に行くよねっていうところにベットして大きくチャレンジするってのは、そこの期待値の部分も取りながらファイナンスするっていうことが可能なので、そういう意味ではそういう15年とか20年とか、長期で技術的にどっちに向かっていくのか、マーケットがどっちに向かって行くのかってところを、方針を決めてそこにベットしていくってのが正しいのかなと思っています。

馬田
なるほど、ありがとうございます。次のTeslaが、いろんな産業から生まれてくることを期待したいです。是非視聴者の皆さんも良いアイデアを思いついていただければと思います。髙橋さん今日ありがとうございました。

髙橋
ありがとうございました。

 

 

髙橋卓巳さん

ブロックチェーンスタートアップKyuzanを2018年に創業。創業前から個人でブロックチェーン開発にフリーランスで携わる。大学ではプライバシー保護データマイニングと完全準同型暗号を用いた秘匿計算のビッグデータ分析への応用に関する研究に従事。東京大学大学院修士卒。

 

Kyuzan社について

Kyuzanは、東京に拠点を置くブロックチェーン専門のリサーチ、デザイン、開発のプロフェッショナル集団です。ブロックチェーンによって大きく変わるインターネットの未来に向けて、様々なバックグラウンドを持つメンバーや業界をリードするパートナーとブロックチェーン技術を活用して今までにない新しい価値や体験を作っていきます。

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