有料ニュースレターのプラットフォーム、Substack有料ニュースレターのプラットフォーム、Substack で最も稼ぐライターは、読者サブスクリプションで年間500,000ドル以上稼ぎます。動画クラスやデジタルメンバーシップのプラットフォーム、Podiaのトップのコンテンツクリエイターは月に100,000ドル以上稼ぎます。そしてアメリカ中の講師たちが Outschool や Juni Learning を利用して生配信のバーチャル授業を行うことで、毎月何千ドルも稼いでいます。
これらの話はより大きなトレンドを暗示しています:「クリエイタースタック」または「消費者のエンタープライズ化(企業化)」と呼べばよいでしょう。以前は最大手のオンライン労働マーケットプレイスは働く人の個性を潰しましたが、新型のプラットフォームでは誰もがユニークなスキルをマネタイズすることができます。ギグワークは今後もなくなりません—しかし今では創造性をお金に換える方法が増えました。ユーザーは大規模なオーディエンスを構築して、自分のパッション(情熱)を生かして生計を立てることができるようになりました。ビデオゲームをプレイしたり、動画コンテンツを制作したりといったことによってです。このことは、起業家であることや私たちが将来何を「仕事」とみなすかに対して大きな示唆をもたらします。
パッションエコノミーの進化
過去10年間で「X用 Uber」時代のオンデマンドのマーケットプレイスは、即時的にお金を稼ぐための方法を確立しました。ワーカーは、食の宅配や駐車場、交通等の、具体的で狭いサービス領域で簡単に時間をお金に変えることができます。これらのマーケットプレイスは需要と供給のマッチングを自動化すると同時に流動性を高めました。これらのプラットフォームはユーザーと提供者の双方にとって便利なものでした:顧客獲得や価格設定等の従来からのビジネス上のハードルをクリアすることで、ワーカーはサービスの提供だけに集中することができました。
しかし、これらのプラットフォームは何百万人もの人に自営の道を開いた一方で、一貫性と効率を優先したことにより、サービスワーカー間の多様性を均質化しました。掲げられた約束が「自分で自分の上司になる」というものだったにも関わらず、仕事内容は表層的なことも多かったのです。
個性をマネタイズする
新しいデジタルプラットフォームは、人が個性を生かしながら生計を立てることを可能にします。これらのプラットフォームは提供者に顧客関係を構築する力、ビジネス成長のサポート、競争の中で差別化するためのツールを与えます。そしてこの過程で、インターネット稼動型の起業家における新しいモデルを推進しています。
標準化・大量生産の一枚岩的なアマゾンと、インディーズ(独立系)に特化し、ユーザーが顧客との関係を直接構築できるShopifyとの力関係に似ています。この流れは物理的製品のマーケットプレイスではすでに顕著に現れています。そして今や、サービス領域にも広がってきています。
これらの新しいプラットフォームにはいくつかの共通点があります:
- 既存の会社・プロフェッショナルだけでなく、すべての人が利用可能
- 個性をバグではなく機能として捉えている
- デジタル製品やバーチャルサービスに特化している
- ビジネス成長・運営のための包括的なツールを提供する
- 新しい仕事の形への扉を開く
1. 既存の会社・プロフェッショナルだけでなく、すべての人が利用可能
新しい消費者向け製品の登場により、誰もが簡単に起業家になれるようになってきています。2010年代中期には、インフルエンサー業界の隆盛によりトップレベルのクリエイターが広告を通じてマネタイズすることが可能となりました。これらのプラットフォームはさらに拡大し、物理的な製品の製造(Vybes、Hipdot、Genflow等)からパーソナライズド動画(Cameo、VIPVR、Celeb VM)に至るまで、お金を生み出す活動をより広範にサポートするようになりました。
今ではクリエイティブなスキルで生計を立てるスキルは個人レベルに広くトリクルダウンし、一般の人がビジネスを立ち上げ、育てることを助けています。以前は、ウェブサイトやアプリが作れるソフトウェアエンジニアリング人材へのアクセスは実績ある既存の企業に限られていました。今では、Webflow や Glide のような、コーディング不要のウェブサイトやアプリの制作ツールにより、このスキルもデモクラタイズ(民主化)されました。スタートアップもまた、現在利用されているデスクトップソフトウェアのモバイルファーストで軽量なバージョンを開発しています。例えばKapwingは、従来型クリエイティブソフトウェアに代わることを狙う動画・GIF・画像用のウェブ・モバイルエディターです。
会社には起業家を初期の段階で捕まえ、起業家が成長するとともに経済的価値を取り込む機会がもたらされます。最初は非常に基本的なところから始め、顧客が収益を生むとともに新たなニーズが生まれるにつれ、プロダクトの機能を追加することができます。
2. 個性をバグではなく機能として捉えている
以前のサービスマーケットプレイスが標準化された仕事のために作られていた一方、新しいプラットフォームでは、ユーザーにとってより多様な選択があることがメリットとなるカテゴリーにおいて多彩なワーカーを持つことが特長となります。
例えばライブ動画授業のオンラインマーケットプレイスの Outschool は、講師のほとんどは学校で教師だった人と専業主婦(夫)です。このプラットフォームでは、講師は独自のカリキュラムを作ったり、ユーザーからリクエストされたコースのリストをブラウズしたりできます。マーケットプレイスのUIはコース内容を超えて、各講師の経歴、経験、自己紹介を強調します。親と生徒は講師に直接メッセージを送れます。
新しいプラットフォームにとって、このモデルはある程度のリスクも呈示します:ひとたび消費者が優先利用する提供者と共に継続的に取り組めば、その関係をオフラインに持ち込まれるかもしれません。マーケットプレイスは中抜きを防止するため、スケジューリングや請求等のワークフローのツールを提供したり、サービス提供者とユーザーがプラットフォームに残るメリットを感じられる追加インセンティブを構築したりすることができます。このような直の関係を醸成するマーケットプレイスは、例えば教育や家庭教師等、多様な提供者への反復的なマッチングニーズが生じる分野に特化することでも成功できます。
3. デジタル製品やバーチャルサービスに特化している
前世代の起業支援プラットフォームが通常物理的な製品に特化するか(Amazon、 Etsy、 Ebay、 Shopify)、あるいは対人サービスに注力していた(Taskrabbit、Care.com、Uber等)一方で、新しいクリエイタープラットフォームはデジタル製品に特化しています。デジタル製品のパッケージングと販売のために開発されたプラットフォームは、有形の製品のために特に作られたプラットフォームとは違って見えます。
Podia、Teachable、Thinkific(左)はすべて、クリエイターが動画コースやデジタルメンバーシップを作ることができるSaaSプラットフォームです。かつては、このようなタイプの「ナレッジインフルエンサー」は、対面で授業を行うか(地元の顧客相手にしか提供不可能)、Shopify のような物理的製品用に意図されたプラットフォームで間に合わせを作るか、Wix や Squarespace 等のサイトをカスタマイズするしかありませんでした。新型プラットフォームは、専門性にはローカルでの直接対面のオーディエンスを超えて経済的価値があるという考えに則っています。
インテリアデザインのマーケットプレイス Havenly では、デザイナーはクライアントと完全にオンラインで遠隔でやりとりします。デザイナーにとってのメリットは、Havenly がマーケティングを担当するため、大きな負担なく一定の顧客の流れといつでもどこでも働ける柔軟性が得られることです。顧客にとっては、これまで高価で手の届かなかったサービスにアクセスできることです。
4. ビジネス成長・運営のための包括的なツールを提供する
広告やメンバーシップフィー、CPL(Cost per Lead: リードあたりのコスト)によりマネタイズする発見型マーケットプレイスと異なり、クリエイタースタックの新しいプラットフォームは顧客の成長に伴い増加するSaaSフィーによりマネタイズされます。他のプラットフォームはクリエイターの収入の1%を得ます。このことは、プラットフォームは個々の取引を促進することではなく、クリエイターが成功したり育ったりすることを助けるようインセンティブ化されていることを意味します。
カスタムのランディングページやクーポン、アフィリエイトプログラムのようなマーケティングツールを提供するプラットフォームもあります。舞台裏のサポートを提供するプラットフォームもあります:例えば Walden は、新たに始めた起業家に戦略と業績責任のコーチを紹介します。
提供者がビジネスを始めるサポートが、プラットフォームにバンドル化されていることもあります。例えばK-8(訳注:幼稚園〜8年生)マイクロスクールの管理マーケットプレイスである Prenda は、教師(ガイドと呼ばれる)に対して、カリキュラムやコンピューター、ソフトウェア、消耗品、規制上必要な要件や保険に関する案内や支援を提供します。
5. 新しい仕事の形への扉を開く
新しいデジタルプラットフォームは、これまで見られなかった仕事の形を可能にします:
人的資本がいかに新しい産業を生み出せるかを示すより広範囲なモデルを見るには、中国に目を向けてみましょう。例えばマイクロブログのサイト Weibo では、ユーザーがQ&Aや限定チャットグループ、メンバーシップを通じた招待制ライブストリーム、アラカルト購入のコンテンツを売っています。これにより美容やファッションのトレンドセッターの範疇を超えた、金融アドバイザー、ブロガー、教授等の、従来とは異なるインフルエンサーの波が生まれました。
考慮すべき要素:マーケットプレイス対SaaS
この領域で会社を作る際には、ターゲットするクリエイターおよび望むオーディエンスのニーズを考慮することが重要です。マーケットプレイスとSaaSプラットフォームの間にはトレードオフ(二律相反)があります。違いは何でしょうか?
マーケットプレイスは完全にプラグ・アンド・プレイで、つまりサービス提供者は最小限のセットアップで登録し、稼ぎ始めることができます。マーケットプレイスの二面型ネットワーク効果の強みは、需要と供給の仲介者として提供する価値に直接相関します。このモデルの一例として Medium があります。Medium は読者にプラットフォーム全体のすべての記事へのアクセスを提供し、サブスクリプションフィーを請求します。ライターが稼ぐ金額は、読者がライターの記事にかける時間量に比例します。
対比すると、SaaSプラットフォームでは、クリエイターが各自で顧客獲得に取り組むことが要求されます。このようなプラットフォームはマーケティング、顧客との関係管理、アトリビューションのためのツールを提供するため、流通には役立つかもしれませんが、ビジネスを成長させることはほとんどユーザーの責任となります。例えば Substack では、機能にはライターのホームページ、メーリングリスト、支払い、アナリティクス、様々なサブスクリプション種類のセットが含まれます。Substack はクリエイターのサブスクリプション収益の一部を徴収します。
マーケットプレイスのモデルでは、ライターは読者トラフィックとサブスクリプションの促進については Medium を頼ります。SaaSプラットフォーム(Substack)では、ライターは自分でトラフィックとサブスクリプションを促進します。そしてサブスクリプションメンバーのリストはいつでもエクスポートできます。
マーケットプレイスは、時を経て発見されたり顧客を獲得したりすることを望むクリエイターに対しては価値をもたらします。SaaSツールは、すでに顧客ベースを持つ、より確立したクリエイターにとっては、多くの場合理に叶うでしょう。この力学に対応し、多くのスタートアップは既存のマーケットプレイスから大型クリエイターを奪うことを狙い、SaaSプラットフォームを開発しています。
将来を覗く
新しい統合型プラットフォームは、起業家が個性とクリエイティビティをマネタイズできるようエンパワー(力づける)します。今後数年間、パッションエコノミーは成長し続けるでしょう。私たちは、ユニークなスキルや知識の価値が解き放たれ、増大され、消費者に届く未来を思い描いています。
この領域で会社を作っている人がいれば、ぜひお話ししたいです!
著者紹介
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The Passion Economy and the Future of Work (2019)