ビジネスにおける価値 (value) とは何でしょうか。これについては所説ありますが、スタートアップにおいては、価値は課題が解決されることによって生まれる、と考えるとうまく整理されるのではないかと思います。
「価値」は課題と解決策のフィット
まず顧客に課題(プロブレム)があります。そしてそれを解決できる解決策(ソリューション)があって、それらがうまくフィットすることで、顧客にとっての価値が生まれます。生まれた価値に応じて、顧客からお金をもらえます。
その際には「課題がどの程度解決されたかで価値の大きさは決まる」と考えてみてください。
課題の大きさが100の場合、完璧に解決できれば100の価値が生まれます。一方、20程度しか解決できなければ、20しか価値が生まれません。
たとえば文章の翻訳という課題に対して、完璧な翻訳が帰ってくれば100の価値を生むかもしれません。しかし期待の20%程度の精度しか出ない自動翻訳であれば、20の価値しか生まれない、ということになります。
この場合は、解決策の出来を上げれば、100の価値を生み出せる可能性があります。
課題の大きさが価値の大きさを決める
では解決策の出来を上げていけば良い、ということでしょうか。
もちろんその面もありますが、ここでのポイントは、価値の最大値は課題の大きさによってほぼ決まるという点です。
たとえばフードデリバリーのようなサービスを、最先端のロボットやドローンなどのテクノロジを使って高精度に行おうとしても、支払う額はおそらく500円を超えないでしょう。フードデリバリーにおける「食事を届けてほしい」という課題をどれほどうまく解決したとしても、大きな価値が生まれることはありません。
繰り返しになりますが、課題の大きさが生み出せる価値の最大値を決めます。
- 10,000の価値を生み出せそうな課題の 10% を解決する
- 100の価値を生み出せそうな課題を100% 解決する
のでは、(1) の10,000の価値の10%のほうが生まれる総量は大きくなります。
そのため、「どの課題を選ぶか」が非常に大事になってきます。課題が価値の最大値を決めるからです。
普通のビジネスであれば、十分なお金をもらえるだけの課題を見つけて、それなりに解決できれば良いかもしれません(それもかなり難しいことです)。しかしスタートアップは急成長を目指します。課題の大きさとその人数(=市場の大きさ)がスタートアップの成長度をほぼ決めてしまうので、課題の選定はとても大事になってきます。
なのでスタートアップのアイデアを考える皆さんに対しては、(怖気ずくかもしれませんが)大胆で大きな課題に挑戦しよう、まず顧客の課題を聞きに行ってバーニングニーズを確かめよう、とお勧めすることになります。
そうした課題の確認のために、顧客インタビューの技法を学んでおくのはお勧めです! 😀
著者情報
東京大学 FoundX ディレクター。University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリストとしてスタートアップ支援を行う。2016 年 6 月より現職。 スタートアップ向けのスライド、ブログなどの情報提供を行う。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』。