そのアイデアは尖っているか

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前回の記事では、アイデアには「市場仮説」「課題仮説」「解決策仮説(製品仮説)」「価値仮説」「戦略仮説」「ビジネスモデル仮説」の六つの要素があることを解説しました。

ただ、これらの仮説をすべて確実に検証している必要があるかと言うと、そんなことはありません。

複数の要素をほどほどに検証するよりも、むしろ一つの要素が尖っているほうが評価が高くなる傾向にあります。

たとえば皆さんが研究関係の優れたテクノロジを持っているとしましょう。これは解決策仮説に相当します。この場合は、他の戦略仮説などが少し弱くても投資やプログラムを受けられる可能性は高まるでしょう。

またすでに何年かその業界で働いていて、その業界の問題を明確に理解しているのなら、課題仮説の精度が高まっているはずです。その場合にも投資家からの投資などを受けられるでしょう。

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スタートアップのアイデアは平均点で評価されるものではありません。弱みよりも強みに目を向けられます。なので、アイデアの中の六つの要素すべてがほどほどによいものよりも、どれか一つでも秀でたものがあるアイデアが評価される、というわけです。

そこで、自分のアイデアのどの要素を尖らせるかをまず考えて、その要素を磨きこむところから始めていくのが良いのではないかと思います。

ただ、市場、戦略、ビジネスモデルは尖っているかどうかの認識が難しいので、課題と解決策のどちらかを磨いて、尖らせていくほうが良い場合が多いです。そのため、私たちのFoundX Fellows Programでは仮説を磨いていくプロセスを、まずは課題からやってみることをお勧めしています。

仮説を磨いて尖らせたという実績が大事

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スタートアップはアイデアを途中で変えることがしばしばあります。ピボットは特に初期のフェーズでは頻繁に起こることです。

そしてアイデアの一部が尖っている、ということは、その起業家は仮説を磨くプロセス自体はできる、ということを意味します。ということは、その起業家が別の良いアイデアを見つけてピボットしたとしても、新しいアイデアをまた磨きこめる可能性が高いということです。

だからこそ、一つのアイデアを磨きこんで尖らせたことがあるという事実は、投資家や評価者からも好かれる傾向にあるようです。

異なるアイデアを色々と考えることも良いかもしれません。しかしそれだけではなく、ぜひアイデアの一つの面を磨いて、尖らせて、刺さるようにしてみてください。アイデアや仮説の磨き方がうまくなれば、様々なところで応用できるはずです。

 

著者情報

馬田隆明

東京大学 FoundX ディレクター。University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリストとしてスタートアップ支援を行う。2016 年 6 月より現職。 スタートアップ向けのスライド、ブログなどの情報提供を行う。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』。

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