SaaS マニフェスト Part 3: 特急レーンを作る

SaaS Manifestoの連載では、部門ユーザーが企業の購買決定における主要インフルエンサーとなるに至った過程について、また真の営業チームを構築することがプロセスにとっていかに重要かについて語ってきました。今回の最終回では、最後の重要な考慮事項として、SaaSの調達プロセスの再検討の必要性について述べます。

アプリケーション調達のための企業の画一的なプロセスはもう壊れています。SaaSを採用する多くの企業は今なお、何年も前にオンプレミスソフトウェア購入用に書かれた、85ページにもわたる永久ライセンス契約を使用しています。SaaS会社が中央IT部門や購買部門を毛嫌いして避けるのも不思議ではありません!幸い、解決は簡単です。すべての会社はSaaSポリシーを採用し、SaaSソフトウェア購入をオンプレミスのやり方とは完全に異なるものとして扱うのです。

永久ライセンスとSaaSは相性が悪い

永久ライセンスは、オンプレミスソフトウェアやサービス、またそれらに対応するインフラに企業が何百万ドルも投資していた時代には理にかなっていました。これにより購買部と法務部では、無数の契約条件が必要となりました。これらの条件には、免責と責任限度、将来のアップデートとリリース、メンテナンス料、永久使用、契約終了と継続使用、将来のソフトウェアモジュール、インフラ調達、ベータテストクライテリア、展開、その他多数が含まれます。

既存の調達慣習に従うことは、SaaSにおいては理にかなわず、関係する全員にとって、もたついた苛立たしい経験となります。必要なビジネス機能への素早いアクセスを求める部門ユーザーにとっても苛立たしいです。無駄な条件の交渉に多大な時間を費やす購買・法務グループにとっても苛立たしいです。プロセス全体を避けて通りたいSaaSプロバイダーにとっても苛立たしいです。そしてSaaSアプリの不正な導入や、それによるセキュリティやコンプライアンスへの影響を恐れるCIOにとっても苛立たしいことです。

水と油のように、二つの慣習は混じり合わず、相性が悪いのです。そんな状況を抜本的に変え、ユーザー・SaaSプロバイダー・CIO間の効果的な三者パートナーシップを形成する時が来ました。

「優先レーン」SaaSポリシーを作る

CIOは従来型よりも著しく速い、繰り返し利用可能で効率化された購買プロセスを作ることにより、SaaSの採用をスピードアップできます。SaaSのポリシーや購買チェックリストはこれを反映すべきです。そうすればCIOは、ビジネスの主要ステークホルダーが自社ニーズを特定し、対応するSaaS製品と紐付けることを助けることができ、適切なデューディリジェンスが行われることを確実にできます。

手始めに、ミッションクリティカルなアプリケーションや、各部門のアプリケーション用に、それぞれ異なるポリシーを作成するところから始めるべきです。それでもミッションクリティカルなアプリケーションは年中無休サポート、高い可用性のサービスレベル合意書(SLA)、データセキュリティおよび障害復旧の検討が必要となります。これらのアプリケーションは直接売上や顧客に影響を及ぼしうるため、事前に相当のディリジェンスが要求されます。とはいえ、多くの古いオンプレミス契約要件はここでも不適切です。インフラも、メンテナンスも、永久性もないからです。

ミッションクリティカルなSaaSアプリは別にすると、全SaaSソリューションの80〜90%は部門用アプリであり、これらは購買の「特急レーン」を設けるべきものです。ほとんどのSaaS購買に適用可能な効率化されたプロセスで、早く簡単で安全な展開が可能になれば、全員が利することになり、結果に感激することでしょう。

部門用アプリのための「特急レーン」チェックリスト

以下のチェックリストは特急レーン設置のためのフレームワークです:

  • データのオーナーシップと管理 – すべてのデータはSaaSプロバイダーではなく会社が所有し、いつでもプロバイダーのシステムから引き上げることができることを、明確に定義すること。
  • セキュリティ – SaaSプロバイダーおよび会社の従業員によるアクセスレベルをコントロールできること、および従業員の退社時にアクセスをオフにできること。
  • 専任サポートとエスカレーションパス – スタッフが揃ったサポートチームへのアクセス。ただし、年中無休である必要はありません。
  • 信頼性 – ダウンタイムとデータ損失の無さを含む、プロバイダーの歴史的信頼性のベースラインを設定します。
  • 障害復旧プロセス – ベンダーが廃業したりユーザー契約に違反したりした場合の情報損失を最小に抑えるための社内プラン。

フレームワークを適用すると、全てのステークホルダーとの間にパートナーシップが形成され、以下のメリットがあります:

  • コストセーブ – プロバイダーへの承認プロセスの説明に必要な社内リソースや長期契約における前払の手数料の面でのコストカット。
  • スケーラビリティ – ビジネスの特定の部分で、あるいは会社全体で、SaaSソリューションを使用できること。
  • 効率 – 法務や請求の効率化されたプロセス。
  • 柔軟性 – SLAではなく月毎の契約により、会社が長期契約に縛られずに済みます。
  • 不正なソリューションを一掃 – IT部門は従業員が個人クレジットカードや経費でサービスを契約するという慣習をなくし、よりしっかりしたコントロールが可能となります。

SaaSアプリケーションで永久ライセンスの慣習を止めれば、SaaSプロバイダー・社内ユーザー・CIO間でずっとよく整合性がとれるようになります。そして部門用アプリの大多数のための特急レーンを作れば、IT部門が急速に進化するSaaSの世界を監視しながら、部門ユーザーがビジネスアプリケーションを急速に採用することができるようになります。

SaaSの革命は製品の開発やユーザーに届くまでのあり方を変えただけでなく、製品のリリースのあり方をも変えました。SaaSやIT部門は、部門購買と新規の営業アプローチが、フリーミアムやインサイドセールスで購買担当者を狙っていることを認識しています。これにSaaS調達の効率化されたプロセスを組み合わせれば、アプリケーション展開と生産性に大規模な変革をもたらすための状況を作り出すことができるでしょう。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Peter Levine

Peter Levine は Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーです。彼は以前 Citrix の Data Center & Cloud Division の上級副社長でありジェネラルマネージャーとして、売上、プロダクトマネジメント、ビジネスデベロップメント、戦略の方針について責任を負っていました。Peter は 2007 年に、XenSource が $500M で買収されたことにより Citrix に入社しました。XenSource で彼は CEO として、600 人の従業員を率い、Microsoft や Symantec、HP、NEC、Dell といった顧客と XenServer の製品ファミリに関する戦略的な契約を確立しました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The SaaS Manifesto: Part Three – Creating an “Express Lane” for the Procurement of Departmental SaaS Applications (2013)

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