アジアでのマーケティング戦略について

1年半の間、アジアにおいてSurveyMonkeyのマーケティング活動を指揮した結果、アジア市場に関する知見が私の中に蓄積されました。もし遠く離れた米国にいたら、それらを学ぶのにかなり時間がかかっていたでしょう。SurveyMonkeyは世界有数の調査プラットフォームで、私の着任前に、すでにアジア全体でかなり大きなユーザーベースを有していました。にもかかわらず、この地域への私たちのマーケティング手法の特徴である現地での学びのおかげで、2桁の割合で成長を加速させることができました。

通常、国際的なSEOやSEM、それにソーシャルメディアは地域市場への埋め込みの必要性なしに常時実行することができます。しかしながら、成功するキャンペーンを手配する時間は、現地での露出により大幅に短縮されます。私にとって目の覚めるような発見がいくつかありましたが、アジアでのマーケティング活動があなたの最終的なロードマップのどこかにあるなら、そうした発見についてお伝えすることで、あなたの学習曲線をなだらかにできるでしょう。

方言の重要性

西側のオーディエンスは単純に「中国語」と定義していますが、実際には中国の言葉は何種類かあります。それらの複数の中国語の中にも独特の方言があり、同じ言語の話し手すらも混乱することがあります。マンダリン(北京官話)は中国や台湾、シンガポール(他にもマレー語、英語、タミル語の3つの公用語がある)、マレーシア(マレー語に加え、タミル語と英語)の公用語です。広東省にある製造業のハブである広州市や香港特別区、マカオでは広東語が話されています。

「中国」オーディエンスへのマーケティングでは、対象の市場を念頭に置き、その市場に向けた文章の執筆をネイティブスピーカーに依頼することが非常に大事です。北京人は北京のオーディエンスに向けた文章を書き、台湾人は台湾に向けた文章を書くべきです。

全能の文字はない

中国語の中にも、明らかに異なる2種類の文字があります。中国やシンガポール(中国語が使用される場合)では、画数が少なく、書きやすいと思われている簡略版の文字(簡体字)を公用語として使用します。香港やマカオ、台湾では伝統的な文字(繁体字)を使用します。繁体字を使っている人々は簡体字を簡単に理解できますが、簡体字の使用者は繁体字の理解に苦労する場合があります。結果として、中国語話者向けのコンテンツを作成する際にあらゆる状況に対応できる文字はありません。

決済方法は米国と大きく異なる

米国やユーロ圏とは異なり、アジアでは外貨や越境ビジネスの取引に関する問題が無数にあります。それに加え、クレジットカードやデビットカードを持たない富裕層の潜在顧客が多数存在し、そのためにあらゆるオンライン取引のハードルが飛躍的に高まります。このような現実に適応するため、多くの会社が代金引き換えを受け入れるオプションを用意したり、地元のコンビニ店舗を拠点として顧客が現金払いできるようにしたりしています。クレジットカードを持っている層についても、カードの海外使用が許可されていない場合があります。したがって本質的な問題として、クレジットカードの普及率からは潜在的な顧客ベースの全貌すら見えてきません。

アジア各地の新規顧客にアプローチする方法について考えることだけに時間を費やすのはやめましょう。それらの顧客に最終的に商品代金を支払ってもらうことも考えなくてはなりません。AlipayやPaypalといった決済ゲートウェイソリューションは顧客の代金受け取りの役割を担ってくれますから、それらについて検討しましょう。しかしこれも、すべての人に最適とは言えません。

収入増にしたがってインターネットへのアクセス方法も変わる

経済的な地位は、製品が対応できる市場の規模に最大限の影響を与えます。アジアでのスマートフォンの所有率を中産階級の成長の証だともてはやすメディア関係者は多数いるかもしれませんが、最安のスマートフォンを買うのに十分な月収すらない人もたくさんいます。さらに、アジアにおけるスマートフォンの所有率は、顧客の経済状況やデータ受信状態から、本体にデータプランが付属している保証にはなりません。データプランを契約せずにWiFiだけに頼るユーザーもいますし、制限付きのデータパッケージしか利用できないユーザーもいます。

対象市場の収入レベルを理解しておくことは、潜在的な購入者像を構築する上で重要な部分でしょう。収入が低い層には必ずしもオンラインでアプローチすることはできないかもしれませんが、他の手段によってオンラインサービスが見つかれば、サービスを利用してもらえるかもしれません。

アンドロイド用アプリを作成し、小型化する

ほとんどの人が認識しているように、アジアはモバイルファースト市場であり、アンドロイドが主要なOSです。アジア向けのキャンペーンや資源を構築する際は、モバイルファーストの体験を常に考えるようにし、選択を迫られた際はアンドロイド用のアプリを構築しましょう。低価格品の限られたデータプランを考慮し、ときには記憶領域が限られていることも考えると、開発者はアプリのデータ消費をできる限り最小限にした方がよいでしょう(上記のポイントを参照)。また、本体のメモリーを多く消費しないようにすることも必要です。

米国などのインターネット先進国では、モバイルに対応していないウェブサイトはGoogleによってランクを降格させられます。しかしながら、アジアの多くの地域ではこれが当てはまらないようです。そうだとしても、あなたの潜在的なユーザーベースの大部分に良質の体験を届けるため、製品やウェブサイトをモバイルユーザー向けに最適化する価値はあります。

結論

アジアは文化や歴史、高度成長が混在する魅力的な場所です。アジアでオーディエンスベースを成長させる方法を見出すのは欧米よりもかなり大変なことでしょうが、努力する価値は十分にあります。予測不可能性や複雑なビジネスの下には途方もない数の機会や可能性が横たわっています。上記のヒントで有利なスタートを切り、飛び込んでみてください。

 

イーライについて

イーライ・シュワルツは、世界最大のオンライン調査プラットフォームSurveyMonkeyのアジア太平洋地域担当マーケティング部長です。SurveyMonkeyのアジア太平洋地域におけるマーケティング活動を統括しています。また、同社の世界的なSEO活動や戦略を17の言語で指揮しています。SurveyMonkeyは世界全体で2500万(フォーチュン500社の99%を含む)以上の顧客にサービスを提供し、オンライン調査の回答を1日当たり300万件以上回収しています。

イーライは以前High Gear Mediaにおいて、有料検索・自然検索・ソーシャルメディア経由のすべてのユーザー獲得活動を率いていました。High Gear Mediaは、Internet Brandsに買収されたオンラインコンテンツのスタートアップです。イーライは世界有数の検索エンジンのブログの寄稿者で、米国およびアジアのマーケティングについて基調講演を行っています。彼のコンテンツをさらに読むには、http://elischwartz.co のブログをご覧ください。

 

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Strategies for Marketing in Asia (2016)

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