SaaS を理解する: なぜ専門家たちは勘違いをするのか (a16z)

どのケーブルネットワークの株式市場チャンネル、また、どの電波放送も、耳を傾けると一つの一貫した主題を繰り返しています——「SaaS企業は高くつくだけだ。我々はバブルの中にいるのかもしれない!」

主張は次のように続きます——「利益の伴わない高収益は、これらの事業が基本的には崩壊していることを意味している。1999年から2000年までの間と同様に、我々はどんな犠牲を払っても成長のために資金を使おうとする投資家の意欲を目の当たりにしている。しかし、そうした意欲はいずれなくなり、多くのSaaS企業は取り残されるだろう」と。

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画像——Andreessen Horowitz

しかし、その論理は、1999年から2000年のハイテクバブルの教訓と今の状況を混同するものです。直近のハイテクバブルで失敗した事業は、いずれも、企業の状態の貧弱な指標である測定基準(サイトへの「訪問数」など)によって評価されていました。そのような測定基準は、一般的に認められた会計原則(GAAP)にはないものばかりでした。これとは対照的に、SaaS企業の評価の基盤となる測定基準は、財政状態の的確な指標で適切に評価される可能性があると同時に、企業のGAAPの提出に直接利用することができます。

それならば、なぜ有識者はこんなにも間違えてしまったのでしょうか。その理由は、私たちが、大きな見出しになるような単純な損益計算書の筋書きを好み、収益や一株あたりの純利益(EPS)に基づいて企業の業績を判断するように世間へ教え込んできたからです。実際、それは単純な基準であり、正直に申し上げると、上場企業のほぼすべてに関して正確でもあります。

しかしながら、SaaSについて言えば、そのような単純さは、投資の誤った決断に結びつく可能性があります。ここに理由を挙げます。

従来型のソフトウェアとサービス型のソフトウェアの主な違い——成長の痛み(ただし、最初だけ)

従来型のソフトウェアの常識では、OracleやSAPなどの会社の事業のほとんどは、自社のソフトウェアの永久ライセンスの販売と、その後のアップグレード版の販売で成り立っています。このモデルでは、顧客は事前にソフトウェアのライセンスに対する支払いをし、通常は、その後で、定額の年間保守料金(元のライセンス料の約15%から20%)を支払います。この業界出身の私たちの仲間は、この取引を「お金の切除手術」と呼ぶでしょう—— 顧客がソフトウェアにいくらかかるかを尋ねたら、販売担当者は顧客に対し、予算がいくらかを聞きます。不思議なことに、費用は予算と等しくなり、ほら、切除手術は完了です。

これは古いタイプのソフトウェア会社にとってすばらしいことであり、従来型の損益計算書勘定にとってすばらしいことです。なぜでしょうか?収益と出費のタイミングが完全に一致しているからです。すべてのライセンス料の経費は収益線に直接影響し、すべての関連経費も同様に影響を受けます。ですから、四半期に売却された100万ドルのライセンス料はその四半期の収益に100万ドルとして示されます。これが、従来型のソフトウェア会社が、その成長サイクルの初期に、損益計算書上で収益を上げることができる理由なのです。

では、それをSaaSに起こったことと比較してみましょう。顧客は、ソフトウェアの永久ライセンスを購入するのではなく、サービスベースの継続的な利用契約をします——このような理由で「サービスとしてのソフトウェア」という言い方があるのです。顧客が一般的に12ヶ月から24ヶ月の契約をするとしても、会社はその12ヶ月から24ヶ月 の課金されている期間を事前の収益として認識しません。むしろ、会計規則で必要なのは、会社が収益をソフトウェアサービスの提供として認識することです(したがって、12ヶ月の契約の場合、収益は合計契約金額の1/12が月ごとに発生します)。

けれども、まず第一に、会社はその顧客を獲得することができるように、営業、マーケティング、開発、ソフトウェアやホスティング・インフラの保守などの経費のほぼ全額を、事前に負担しています。それらの事前の経費の多くは、長期にわたり、損益計算書の中で認識されませんが、そこに問題があります——収益と経費のタイミングが一致しないのです。

そのため、SaaSの事業評価に関して私たちが知るべきことのすべてを教えてくれるのは、もはや、損益計算書だけではありません。

さらに重要なことは(というのも、金は事業の活力源であるため)、キャッシュフローのタイミングが一致しないことです。顧客が一度に1ヶ月分または1年分だけの料金を支払うことはよくありますが、ソフトウェア事業では、直ちに全額を支払わなければいけません。

このように、多くの革新的な新規事業がそうであるように、キャッシュフローは事業の財政状態の先行指標ではなく、遅行指標なのです。

SaaSモデルにおける1人の顧客の累積キャッシュフローを見てみましょう。その顧客についてだけ見ても、1年を経過するまでは、収支が合いません——

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A社が顧客獲得のために6,000ドルを使い、顧客に月額500ドルを請求する場合、その顧客について収支が合うのは13ヶ月目です。

より多くの顧客を獲得し始めると、キャッシュフローはさらに赤字になります。

しかしながら、企業が顧客を獲得するのが早いほど、インストール数の増加率は高くなり、キャッシュフローが黒字になった時のキャッシュフロー曲線がよくなります——

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キャッシュフローは、劇的に改善するまでは、さらに赤字がひどくなります。

ここで学ぶべき重要な点は、若いSaaSの事業においては、成長がキャッシュフローを悪化させるということです——成長速度が増すほど、それに相当する顧客の登録料の現金流入のない状態が続き、事前の販売経費の負担は大きくなります。(この現象に関するより大規模な批評については、David Skokの“SaaS Metrics 2.0”をご参照ください。)

それならば、合理的な人物がSaaS企業に投資する理由は何でしょうか。

それは、顧客がインストールをすることにより、SaaS企業は現金を十分に増やし、それによって新規顧客獲得の経費を埋め合わることができた時に、顧客が長くとどまるからです。

これらの事業は、粘着質な性質をはらんでいます。なぜなら、顧客は基本的にはソフトウェアの運用をベンダーに委託してきたからです。事業は非常に予測がしやすく、モデル化できるものとなり、高いキャッシュフローを生み出す可能性が高くなります。究極的には、私たちは、企業のスタートアップの局面で目にしたものとは逆のものを目の当たりにします——その顧客を獲得するための経費のすべてが、かなり前に事前に発生した負担であり、今や会社は、顧客から流入する現金のほぼすべてを利益として収穫することになります。

長期的経費の利点として、SaaS企業が享受し、永久ライセンスの事業が手にしないものとして、見過ごされがちではありますが、興味深いものがあります——それは研究開発です。

永久ライセンス事業においては、研究開発(およびサポート)チームが、ソフトウェアの複数のバージョンを、無秩序な状態で保守していることがよくあります。ATMのオペレーターから連邦政府や地方自治体、国際統治機関まで、あらゆる種類の顧客がその喪失を嘆いていたにもかかわらず、Microsoftでさえ最終的(12年経過後)にWindows XPのサポートをやめました。

これは一般的にはSaaSには起こりません。なぜなら、すべての顧客が同一サーバ経由のソフトウェアを運用しているからです——あるバージョンで保守、別のバージョンでアップグレード、別のバージョンでは不具合の修正、そして、物理的な環境(ストレージやネットワークなど)でサポート、といったように。成熟したソフトウェア会社が収益の12%から15%を研究開発に使っているという状況では、この経費の利点は非常に重要です。特に彼らがマルチテナント・アーキテクチャを利用している場合は、SaaS企業がさらに大規模に利益を拡大することを可能にします。SaaSの顧客の長期の成功と継続のためには、この単純化されたホスティングおよびサポートのモデルが非常に重要であることは言うまでもありません。特に、「シェルフウェア」と呼ばれる特徴と比較した場合にそうです。これは、企業向けの永久ライセンス取得済みのソフトウェアによく見られることで、購入してはみたものの使わないことを指します。

しかし、顧客がSaaSに執着しがちな理由はまだ他にもあります——

…事業の作業工程に一旦組み込んでしまったら、SaaSのベンダーを切り替えるのは非常に困難です。SaaSの顧客は、当然のことながら、外部のベンダーにアプリケーションの管理を任せる決断をしています。 永久ライセンスの事業モデルでは、社内のIT担当者がソフトウェアについての一切を管理していたので、ベンダーの切り替えを選択した場合は、社内経費を負担する可能性がありました。

…現在では、予算はかなり分散しています。なぜなら、担当部門がSaaS技術を採用して、集中型のIT組織から独立して購入の決定を下すことがよくあるからです。過去には、上意下達の技術販売モデルにより、CIOは、一方的かつ非常に手軽に、アプリケーションのベンダーを入れ替えることができました。

…SaaSは部門レベルで活用されるので、社内の利用者が従来型ソフトウェア製品の利用者のこれまでの数よりも多いことはよくあることで、切り替え経費はさらに高くなります。多くの場合、担当部門は、自社のIT部門よりもSaaSの顧客サポート担当者との間に親密な関係を築きます。

これが、現在の多くのSaaS企業が、たとえ当期の収益を圧迫したとしても、採用率が高い場合には、営業とマーケティングに積極的に投資している理由です。その初期の成長が要です——勝者総取りのハイテク市場では、それが一気に顧客を獲得することに繋がります。

そうならば、投資家が本当に評価すべきなのは、現在の収益やEPSのマルチプルが非常に高いかどうかではなく、SaaS企業が現在行なっている投資(その性質上、次期収益とキャッシュフローを低迷させます)が適切であるかどうか、またその結果、時間の経過とともに本物のフリー・キャッシュフローの誘発となるかどうかです。

SaaSの事業の健全性はどのように判断できるでしょうか。

これらの力学を前提にして、初期のSaaS企業が優れた投資収益を生むかどうかを判断するために、投資家は何をすべきでしょうか。有難いことに、いくつかの指標があります。

私たちは、まず顧客獲得単価(CAC)を算定する必要があります——これを行う簡単な方法は、四半期ごとのその会社の営業およびマーケティング費用を足し、その四半期に獲得した新規の顧客数で割るというものです。けれども、そのCACがふさわしいものであることをどのようにして知るのでしょうか。あるいは、会社が単純に顧客獲得のために資金を使いすぎて、財務報酬を決して生まないことをどのように判断するのでしょうか、

この疑問に答えるため、私たちはその顧客の生涯収益または生涯顧客価値(LTV)を見る必要があります。LTVは(年間経常収益 × 売上総利益)÷(解約率+値引率)で算出します。一般的な法則として、LTVがCACの3倍またはそれよりも大きい場合は、事業モデルが機能しているというよい証拠です。

LTVがCACと近い、またはCACより小さい場合は、何かが均衡を欠いていることがわかります。それは、企業が顧客の生涯全体から得るであろう利益よりも顧客獲得に費やす金額の方が多いことを示唆しています。これは、企業が顧客から効果的に資金を得る方法を案出してこなかったことが原因であると言えます。あるいは、顧客がプラットフォームに対して資金を使ってCACを埋め合わせる前に、顧客が去って行くからかもしれません。あるいはまた、企業がCACを効果的に拡大する方法を考えてこなかったからかも知れません。いずれにせよ、ぜひ調査をする必要があります!

そしてさらに、顧客満足に関する究極の尺度があります——解約率 (チャーン) です。

解約率が低いということは顧客が満足しているということです。解約率の高さは顧客の流出傾向の高さを意味しています。ただ、少し付け足すと、新規顧客の増加率との関係で解約を見る必要があります。水漏れしているバケツのような問題です——穴(解約)が小さいうちは、流出し切らないうちにさらに水(顧客)を注ぎ入れることで、バケツをいっぱいにしておくことができます。

解約には2つのタイプがあります。事業の健全性に関して、それぞれが別々のことを教えてくれるので、2つを別のものとして考えることが重要です。顧客解約率とは、指定された月または年に解約した顧客数が全体に占める割合です。これは顧客を満足させ、契約を継続させる企業の能力を把握するのに優れた方法ですが、収益ベースの解約率に注目することでより多くのことがわかります。収益ベースの解約率とは、定額収益全体に占める割合としての、顧客の解約による収益損失の割合です。

全解約数が顧客獲得率と釣り合ったら、新しく加わった顧客数は、立ち去った顧客数と完全に一致します。成長は勢いを失い、止まります。そのため、非常に長い目で見て、成長の見通しをさらに深めるためには、解約が最も重要です。これはとくに、企業の規模が大きいほど当てはまります。失った顧客を埋め合わせる必要性が桁違いに高まるからです。

企業が解約率を相殺または克服することができる方法はいくつかあります。かなりの速度で新規の顧客を増やす、「マイナスチャーン」(顧客の解約による損失収益よりも収益が拡大した状況) を実現する、解約率そのものを下げる、など——つまり、顧客の契約の継続です!マーケティング、営業、顧客管理の機能がSaaSにとっては非常に重要で、SaaS企業がこれらの領域に、収益を上げる前に投資しているのを目の当たりにする理由はこれなのです。

けれども、早い段階での損益計算書が誤解を生みやすいものとなる可能性がある理由は、もう一つあります。

ここでの重要事項は、新規に顧客を獲得するよりも既存の顧客を維持し、そこでの収益を拡大する方が経費がかからないということです。そのため、SaaS企業は次の四半期の現金を顧客管理の機能に使い果たします。それを正しく行えば、これらの投資がそのうちに、巨額の配当金となって返ってくるからです。

最後にもう一つ、将来の成長および好材料の重要な指標となるのは、前受収益または繰延収益 (unearned or deferred revenue) です。先ほど述べたように、SaaS企業は、サービスが提供される取引期間全体をかけてはじめて収益を認識します——顧客が大きな前払いの取引契約を結んだとしても、です。では、その「契約」はどこに行くのでしょうか。ほとんどの場合、それは貸借対照表の負債明細の前受収益と呼ばれる項目に反映されます。(貸借対照表は収支が合う必要があるので、資産側で相当する項目は、顧客がサービスの前払いをした場合は「現金」となり、会社が請求をして将来的に受領する予定がある場合は「売掛金」となります。)企業がSaaSサービスに起因する収益を認識し始めたら、貸借対照表の前受収益が減り、収益が増えます——ですから、24ヶ月の契約に関しては、それぞれの月で前受収益が1/24分減少し、1/24分の増収になります。

SaaS企業の成長(そして究極的には健全性)を測るための優れた尺度は、請求額 (billings) に注目することです。ある四半期の収益をとりあげ、先行する四半期から現在の四半期までの前受収益の増減分を足して計算します。あるSaaS企業が受注額を拡大しているならば、新規事業であろうと、既存の顧客に対するアップセル/更新であろうと、請求額は拡大するでしょう。

請求額は、SaaS企業の健全性の先行指標として、単に収益を見るよりもかなり優れています。これには2つの理由があります——(1) 収益は、予測可能な状態で認識されるので、顧客の本当の価値を過小評価します、(2) 収益の反復性により、SaaS企業は(未処理分の請求を徐々に処理するだけで)長期にわたって安定的な収益を示すことができるため、実際よりも事業を健全に見せかけることができます。

例を見てみましょう

これらの指標の適用を説明するために、実在の会社の例を使いましょう。Workdayを選びました。このSaaSの人気企業は、過大評価されているとして頻繁に批判にさらされているからです。すべての財務情報は、公開されているGAAPの開示に基づいています。

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Workdayの過去3年間の売上高の成長および利益率の簡単な要約。

おわかりのように、売上総利益率と営業利益率は過去3年間で着実に伸びてきました。これは筋が通っています——Workdayは、ソフトウェア運用の巨額の事業費や研究開発費、より大規模な顧客ベースに対するソフトウェア・サポートを行うためのアカウント管理費を定期的に返済しているのです。さらに重要なことに、彼らは、私たちが開発の早い段階で目にする収益と経費のタイミングの不一致を、ある程度修復しています。先立つ四半期でCACを負担した顧客が料金を支払い、彼らはそれにより、定額収益を手にするからです。

CAC/LTV

WorkdayはCACを開示していないので、CACを探る尺度として私たちが用いたのは、新規の顧客に関する売上とマーケティング費用でした——

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その年の営業およびマーケティング費用の70%を新規顧客獲得のための費用として想定し、その年の新規顧客数の合計で割れば、CACとなります。

一見すると、これらの数字は、心配なものにみえるかもしれません——未処理の現金においては、Workdayが新規の顧客を獲得するための費用がより多くかかります。しかし、CACだけを分けて考えるのは、それを顧客のLTVと比較することができるようにしないかぎり、それほど有益ではありません。

ここでも、WorkdayはLTVを公表していないため、私たちは先ほどの方式を使ってLTVを見積もりました。Workdayは年間経常収益または年間発注額を公表していないため、私たちは尺度として顧客平均単価を使用しています——

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解約率を3%、値引率を8%と想定して計算しています。

 ここで私たちは、より完全な図式を把握しました——CACに対するLTVの割合が、3倍よりも大きく、また、さらに重要なこととして、顧客がWorkdayに対して費やす年間費用が増加するにつれ、LTV/CACの割合が時間の経過とともに増加しています。これはSaaS企業に典型的にみられることです。

CACを査定するもう一つの方法として、CAC率に注目するというものがあります。私たちはその算定方法として、1つの四半期と次の四半期の定額課金売上総利益の差額を年率換算し、その数値を先立つ四半期の新規の顧客獲得のための営業およびマーケティング費用で割っています(ここでもまた、各四半期の営業およびマーケティング費用の70%が新規顧客獲得に割り当てられたと想定しています)。

これにより本質的にわかることは、企業がCACを完全に回収するのにかかる、月単位での時間です。例えば、CAC率が1倍の場合は、収支が合うまでに12ヶ月かかっているということです。一般的な法則として、解約率が低く、成長率が高い企業は、0.5倍以上(元金回収期間が24ヶ月)であればよいとされています。

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WorkdayのCAC率は、高成長のSaaS企業としては健全な範囲に入っているように見えます。

最後に、Workdayの請求額に注目してみましょう。Workdayは顧客に対し、クラウドアプリケーションの年間、または複数年でのインストール契約に関する請求書を送っており、顧客は、契約日から30日以内に管理費の合計の一部を支払います。

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Workdayの2012年、2013年、2014年に終了した会計年度の前受収益の収支は、それぞれ、1億8800万ドル、2億8500万ドル、4億1400万ドルで、これらが請求額に反映されています。

ここで目に飛び込んでくるものに注意してください——拡大するSaaS事業においては、収益は実際の事業の業績を著しく過小評価するものです。例えば、2014年だけをとっても、請求額が収益を1億2800万ドル分超過しています。このことでわかるのは、評価を決定するのに単純な収益のマルチプルを用いることが、いかに間違いだらけかということです。Workdayの請求額の健全な拡大は(2014年の会計年度で、最高60%でした)、市場シェアで継続的に勝利を収めていれば、その事業には依然として実質的な成長の可能性があることを示唆しています。これこそが、投資家が株式にことさら資金を使う理由なのです。

* * *

それならば、私たちはこれらのすべてをどのように活かすべきなのでしょうか。

私たちと同じように、皆さんがハイテク市場が勝者総取りの傾向にあると信じているなら、どのカテゴリーであっても、そのリーダーたちは経済全体に対して身に余る分け前を手にすることになります。

確かにすべてのSaaS企業が、好意的に評価されるのにふさわしいわけではありません。けれども、自らの業界を牽引し、明らかに成長する事業モデルを使って大規模市場を狙っている企業について、私たちは見出しに目を奪われ、ものごとの本質を見失うことのないようにしなければなりません。

 

著者紹介

Scott Kupor

Preethi Kasireddy

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Understanding SaaS: Why the Pundits Have It Wrong (2014)

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