セールス向け報酬制度:気を付けよう、あなたは求めたものを手に入れるから (Lars Dalgaard)

優秀なセールス担当者たちにとって、適格な担当者たちを会議などで決定権をもつメンバーに加えることほど、モチベーションの上がるものはそうそうありません。彼らが、数字を達成したときにはその役割が評価されるけれどもそうでなければ軽んじられるという、「コイン投入式」の営業畑的なものの考え方にしか晒されてこなかった場合には、特にそうでしょう。しかしチームメンバーたちにやる気を起こさせるということになると、創業者がとることのできる方法としては、適切に実行された報酬プラン以上に、著しく成功と相関する(ルート2はほぼ1と等しい!)ものはありません。

その利点は、あなたは報酬プランで支払うのと同じだけの結果を得られるということです。欠点は、報酬プランが支払うのと同じだけの結果しか得られないということです。というのも、実行こそがすべてだからです。あなたは、自分が何に対してセールス担当員たちを動機づけたいかをわかっている(あるいはわかっていると思いこんでいる)が、実際には、彼らをなにか別のものに対して動機づけてしまっているとしましょう。その場合彼らは、あなたが彼らにしてほしいことをするのでなく、その「別のこと」をするでしょう。ここでは、それを避ける方法をお教えします。

報酬プランを「プラグ・アンド・プレイ」方式にする

あなたが報酬プランを公表したときにまず最初に起こるであろうことは、セールス担当員がそれをスプレッドシートに打ち込み、自分の給与支払報告書が実際どれだけの額になるかを計算することでしょう。そして彼らはそのスプレッドシートを眺めます。来る日も、来る日も、毎日欠かさず。もしそれをしないセールス担当員がいるのならば、別の人を雇いましょう。

これのどこかに不都合はあるでしょうか?いいえ、まったくありません。セールス担当員たちは実際、最も過酷な報酬体系で勤務しています。結果を出さなければ食べられないのですから。それは彼らについての最も明解な事実のひとつです。彼らが最初にこの職種を選んだのが、偶然の選択だったにしろ、意図的なものだったにしろ、彼らはそれ以来そこに居続け、よい成績を収めようと決心してきたわけです。それは、彼らを駆り立てるものです。

そこで私が提案するのは、彼らのためにそのスプレッドシートを作成してあげることです。第一に、彼らはいずれにしろそれを作成することでしょうから、あなたは彼らの作業を容易にしてあげるべきです。第二に、このスプレッドシートを提供することであなたは、自分が望んでいるつもりのものを(場合によっては誤って)伝えたりせずとも、自分が望む通りのものを得る道筋をさらに進めたことになります。この方法によって得られる方向性の一致というものは、かけがえのないものです。あなたの会社のセールス組織の規模がどれほどであろうと、たった1人であろうと1000人の大所帯であろうと、それは変わりません。組織の方向性がここまで強力に一致して明確であれば、あなたは全員参加の会議も1対1の会議もする必要はないのですから。

要請は2つ、それ以上はしない

CEOや首脳部は、自分たちが最も望むものは何かについて、決定する必要があります。なぜならすべてを得ることはできないからです。これは本当に大切なことであり、軽んじてはいけません。これはまた多くの創業者にとって、直観的に体得できることではありません。起業家的なものの考え方とは正反対のものだからです。起業家はすべてを「and(および)」で考え、「or(もしくは)」では考えないのが普通ですから。

しかしこれについては、しっかりと決定を下す必要があります。そして、あなたの望むことを明確な計算方法で数値化し、より高い結果には明確な区分で報酬が上昇していくようにしなければなりません。あなたが望む内容が、1)新たな正味売上高であれ、2)取引規模の大きさであれ、3)新製品の取引であれ、4)現在の製品の更新であれ、5)はたまた顧客満足度の高さであれ、あなたはおそらくそれらのうちの2つを得ることができます。たとえば1と2、あるいは1と3というように。しかしこれらすべてを得ることはできません。

3つのものを望みだした瞬間から、あなたは希望する最初の2つを希薄化するリスクを冒しています。そして4つ目を加えるのであれば、そのときにはあなたは(「おそらく」ではなく「間違いなく」)なにも得ることはなくなるでしょう。これは大切なことです。なぜならCEOや営業部長や、ほかにも人事部、財務部、執行部などが、営業部に実現して欲しいたったひとつのことを、結局、誰も理解できないほど複雑なものにしてしまうことが多いからです。さらに悪いことに、彼らは世間から隠れた会議室にこもり、誰にとっても意味をなさないプランを思いつくのです。もしあなたの会社が成長過程にある企業なら、このような間違いを犯している余裕はありません。

よって、もしもあなたが報酬プランを立てる過程のどこかで、これはさすがに複雑過ぎると気が落ち込んでいくようなことがあれば、そのプランはもっと早い段階ですでに複雑過ぎてやる気を失わせるようなしろものだったと考えるべきです。なぜなら、あなたやあなたの組織の財務部は、あなたのために毎日ものを売っている人々よりも、複雑すぎて使えないことに対して、はるかに高い耐性を持っているのですから。

この大罪は避けましょう

いかに営業報酬の意味を間違って解釈する人がいるかを説明するために、自分の組織で働く人々に嫉妬してしまうCEOの話をお聞かせしましょう。ある日あるCEOが、自分の作成した報酬プランによりどれだけの支払いがなされているかを見直していました。そして、セールス担当者のなかに自分自身が得ている報酬の2倍から3倍も稼いでいる人々がいるのを発見しました。当然これは多過ぎる、セールス担当にこれだけの額の報酬を与えようとする経営者などいるはずがない、たとえ自らが雇った人々であったとしても。そうでしょう?

そこでそのCEOと営業部長は、それを変えることに決めました。これは大きな間違いです。単刀直入に言いましょう。いったん提示した報酬プランについて、決して心変わりしてはいけません。たとえば、ふいにセールス担当者たちがほかの社員たちに比べてどれほど高額な報酬を得ているかに気がついたからといって、年度途中に歩合給を取り下げるなどはもってのほかです。

このようなことをしてはいけません。明らかにそして直ちにトップのセールス担当を失う(そして負けることが決まり切っている訴訟を起こされる)だけでは済みません。あなたはそれに続くトップテンに入る営業員たちをも失うことになるのです。そして残りの人々もあなたをもはや信用しません。つまり、あなたは彼らをも失うことになります。いくらインセンティブ分の報酬が節約できたからといって、評判やビジネスの継続性における損失をそれで埋め合わせることはできません。

そう、こうしたことは本当に起こるのです。それは、上記のように権力闘争が絡むシナリオだったりすることもあれば、別の事例では、重役が給与支払報告書の年間総支出額を聞き及び、自分が物事を正そうとして起こすこともあります。いずれにしろ、いちど約束したことを覆すのは良くないことです。報酬プランを打ち出す前に、すべての想定しうるシナリオについて考えてみるほうがはるかによいでしょう。もしプランの立案過程で給与支払報告書をサンプルとして見る必要があるのであれば、営業部や財務部に訊いて見せてもらいましょう。しかしもし、あなたがセールス担当に大きな報酬を稼ぐことを可能にしておいて、彼らがそれを達成したところでそれを撤回するとしたら、それはあなたの責任です。

私ならむしろ、セールス担当があなたよりも多く稼いでいることにあなたは満足を感じるべきだと考えます。なぜならそれはつまり、会社全体、あなた、投資家たち、そしてみんなのために、より多くの収益を上げているということになるからです。私は、自分の会社のセールス担当が初めて100万ドルの給与支払報告書を達成したときのそのセールス担当の名前、顔、身振り、そしてもちろん交わした取り決めまで、すべてを覚えています。そして私たちの作成した報酬プランが正しかったということで、取締役会もCEOもみな同じように喜びました。それは私たち全員にとって大きな利益をもたらしました。

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会社の創業時から私は、セールスやセールス担当者たちに絶対的な優先権を与えてきましたが、それは留まることなく私に見返りをもたらし続けてくれています。実際のところ、今日の最も重要な諸企業の成功には、セールスが主要な役割を果たしてきました。

ハングリー精神のあるセールス担当が必要です。ハングリー精神のあるセールスを雇ったうえで、彼らがさらにハングリーになるように支援したいものです。

セールス担当者たちは、部長がランダムに査定した特別手当によって管理されたいとは決して思いません。彼らは決まった算定法で査定されたいのです。彼らは競争したいのです。同僚たちと比較されたいのです。競争に勝ち、それに浸りたいのです。それにこそあなたは対価を支払っているのであり、それによって彼らが悪い人々だということにはなりません。それは彼らが、場合によっては起業家であるあなた方とは違ったタイプの人々であることを意味するかもしれません。しかし、それは良い違いです。会社の助けになる違いだといえます。営業職的な考え方を取り入れることで、あなたの会社を、偉大な企業へと成長する軌道に乗せることも夢ではありません。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Lars Dalgaard

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Sales Compensation: Beware, You Get What You Ask for (2015)

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