セールス組織をスケールさせる (a16z)

SpiderNetの経営者は、先週、フリーミアムモデルを追求することを決定しました。同社は製品を無料で提供し、99ドルの付加価値機能のセットをアップセルします。この市場開拓モデルの一部として、SpiderNetは今、営業資源の分配と予算計画の方法を決定する必要に迫られています。

付加価値機能を販売促進するために、企業は、利益を生み出すためのインサイドセールスモデルを活用する決断をしています。フリーミアム製品を提供する他の会社にとっては、この取り組みはうまく機能しており、ダイレクト/ アウトサイドセールスの経費を省いています。 SpiderNetのインサイドセールス陣は、見込み客を追求し、有料のアップセルの需要を創出して、究極的には取引をクロージングする責任を負うことになります。

SpiderNetのCEOとして、あなたは今、このインサイドセールスの処理能力を伸ばすための業務計画を決定しなければいけません。現時点で、この会社にはセールスパーソンがいませんが、この次の四半期に製品が発売されるため、収益を生むために営業部隊の導入を開始するには今がちょうどいい時機だとあなたは感じています。

セールスパーソンを雇用することが重要であることには誰もが同意する一方で、社内の議論の中心は、その人数とタイミングです。エンジニアをはじめとする社内のほとんどの人は、会社が機会をとらえてすばやく活かし、最初から迅速に成長できるように、現実的な範囲でできるだけ多くの営業担当者の雇用を望んでいます。このグループは、また、営業部隊がすべての機会を網羅でき、需要に先んじてよく訓練されることを望んでいます。わずかな人々が、フリーミアムモデルが信頼性が証明されるまで待つことを提案し、また、最初は数人の営業担当者を雇用することを提案しています。

あなたは、自社のフリーミアム製品に対する需要が非常に高いことや、アップセルの需要が高くなること、インバウンドの要望を処理するために営業組織の処理能力が必要になることを予想しています。雇用する営業担当者があまりにも少ないと、SpiderNetは機会を失うことになるかもしれません。これを考慮に入れて、営業処理能力を拡大するでしょうか。それとも、精力的な雇用を控えるでしょうか。

それでは、どうするべきか?

新製品を発売しようとしている会社はどこでも、製品の将来については常に楽観的です。期待するのは、製品が大きな価値を提供し、その結果として、驚くほどの消費者や収益が付いてくるということです。しかしながら、正しい売り方を把握するには時間と繰り返しが必要になることもよくあり、ほとんどの企業は、製品が市場の要求に十分にうまく答える状態になる前に、雇用によって営業処理能力が過剰になる傾向にあります。製品を繰り返し販売できるかどうかを会社が把握しないまま、営業担当者を過剰に雇用すれば、厳しい結果となります。ですから、機会を活かすことと、製品を市場に投入した当初に、適切なタイプの営業担当者を適切な人数だけ雇用することとの間の賢明な均衡を確立する必要があります。

セールスラーニングカーブ

セールス学習曲線とは、私のよき友人にしてアドバイザー兼スタンフォード大学での共同講師であるMark Lesliegが、新製品の発売後にセールス処理能力を追加するための方法論として開発した概念です (訳注: 本概念に関する Sequoia の記事を翻訳しています)。会社が製品開発に時間をかける必要があるのと同様に、会社はセールスの知識と処理能力の開発にも時間をかけなければいけないというのがこの前提です。頻繁に起こることとして、顧客の分類や営業モデル、営業担当者のタイプの観点から機能すると会社が考えているものでは、最終的に最高の結果を得られません。数量的な根拠ではなく仮定に基づくような、費用がかさみ、高くつく間違いを避けるために、企業は製品の営業方法や市場への投入の仕方を学ばなければいけません。

セールス学習曲線には3つの段階があります——

1. 着手。着手段階は、製品が市場に出た時に始まります。この段階では、一般的に製品の購入を望む顧客はほとんどいないため、多くのノルマのある大規模な営業組織はうまく機能しません。そうではなく、顧客がどのように製品を利用したがっているかを把握することに注力する小規模な営業陣を配置してください。小規模な営業陣が、1人の営業担当者にかかった経費(基本給+報酬+経費)と同額の利益を生み出したら、会社は次の段階に進む準備ができたことになります。

2. 移行。移行段階では、営業組織は、市場での位置づけを向上させ、営業処理能力を拡大して、繰り返しの販売が可能なモデルに重点を置くべきです。ただし、それぞれの新しい営業担当者が、最低でも、自分たちにかかった経費と同額の利益を確実に生み出すことができることが条件です。会社が「ルネッサンス」営業担当者から「硬貨投入方式」の営業組織へと移行するのはこの段階です。それぞれの営業担当者が自分たちにかかった経費の2倍の利益を生み出している場合に、会社は移行段階から抜け出します。

3. 実行。この段階では製品の支持が証明されており、経営者は、財務上の制限が許す限りでできるだけ早く、予定通りに営業担当者を雇用することができます。 具体的に言えば、よくわかる営業訓練プログラムがあり、それぞれの新しい営業担当者がいつ、どのくらい利益を生み出すことができるかを会社は正確に把握しています。 また、販売の増加は、領域の配分と拡大からなる体系的な処理過程となります。モデル化の観点から、営業効率および出費は、一般的に売上高の割合として測定される、「業界標準」の配分に変更すべきです。

SpiderNet

SpiderNetの例では、真っ先に多人数の営業担当者を雇用するという選択は、会社がセールス学習曲線の方法論における、執行段階にあることを想定しています。 しかしながら、現実には、会社は製品をまだ売れておらず、インサイドセールスの取り組みが機能するかどうかの数量的な根拠がほとんどありません。SpiderNetは実際には着手段階にあり、妥当な販売頻度を会社が学ぶのに有益なルネッサンス営業担当者を数人、雇用すべきです。SpiderNetは、このようにして、営業の取り組みを何度も繰り返し、モデルが発達したときに、潜在的に高くつく過ちを犯さないようにすることができるのです。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Peter Levine

Peter Levine は Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーです。彼は以前 Citrix の Data Center & Cloud Division の上級副社長でありジェネラルマネージャーとして、売上、プロダクトマネジメント、ビジネスデベロップメント、戦略の方針について責任を負っていました。Peter は 2007 年に、XenSource が $500M で買収されたことにより Citrix に入社しました。XenSource で彼は CEO として、600 人の従業員を率い、Microsoft や Symantec、HP、NEC、Dell といった顧客と XenServer の製品ファミリに関する戦略的な契約を確立しました。

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: What Now: Scaling the Sales Organization (2012)

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