新マネージャーへのアドバイス

会社を始めるにあたり最も困難なことの一つは、人に愛されるプロダクトを作ると同時に、人が働きたがる会社を作らなくてはならないところです。通常、すばらしいプロダクトを持つこと、あるいは働きやすい職場であること、そのいずれか片方だけでは十分ではありません。なぜなら優秀なプロダクトを作るのは優秀な人材であり、優秀な人材は悪い環境に長くはいてくれないからです。

人はマネージャーに愛想をつかせて辞めるのであり、会社に愛想をつかせるのではありません。なのに、ほとんどの創業者が人に愛されるプロダクトを作ることに熱中する一方、初めて創業者となった人の多くは、経営経験ゼロのまま多額の資金を調達し、チームの構築を始めます。

私も初めて創業者となった一人であり、実際に仕事をしながら早急に学ばなくてはなりませんでした。そこで、私が Creative Market でチームを育て経営を始めた当初に誰かに教えて欲しかったと思うアドバイスをここに書きます。

権限委譲しましょう!

あなたは創業者としてすべて自分でやることに慣れているので、これまでずっと自分の責任だったことを手放すことに恐怖を感じるかもしれません。しかし、自分のやるべき仕事を減らさなければ、自分を最大限活用してレバレッジを最大化する機会に集中することは不可能です。あなたが特に遅い時間まで働かなくてはならなかったり、あるいはその日のうちに着手しなければならないことに手が届かなかったりするなら、チームに仕事を任せるべきことを示す兆候だと考えてください。

成長の機会を作る。

優秀な人は、お金やその他あなたが提供できる有形のメリットよりも、個人的成長をずっと大切にすることがあります。ですから責任を委譲すると、チームメンバーが新しいことをやり、学び、成長する機会を同時に作ることにもなるのです。これらの機会を独り占めしてはいけません。

自社のスター社員に投資する。

新規顧客を獲得するより既存顧客を維持するほうがずっと簡単であるのと同じように、新しいスター社員を探すよりも、すでにいるスター社員に居続けてもらうほうがずっと簡単です。自分は大切にされている、感謝されている、報酬が得られているとスター社員が思えるよう、手を尽くしましょう。

高い目標を設定しましょう。優秀な人は意味のある大きなことを成し遂げたがるものです。ハードルの高い目標でチームに圧力をかけると、驚くような成果を達成してくるかもしれません。

手本を示してリードする。

チームはリーダーの性質を体現するもので、あなたが気にすることはチームも気に掛けるようになります。あなたが細部に注力すれば、チームも細部に注力するようになります。

チームの成功はあなたの成功。

あなたのチームの成功から、満足感と達成感を得ましょう。個人であれば、一週間の終わりに振り返って自分が直接生産した仕事に満足することは簡単です。一方マネージャーとして、あなたはチームの成果に対して責任を持つことになります。これは多くの人にとって難しい移行となります。これにより得られるアドバンテージは、あなたが自分と自分のビジョンを何倍にもスケールアップできることです。

功績はみんなのものに、責めはすべて自分に。

ミスを語る際は「私」を、成功を語る際は「私たち」を主語にして語りましょう(または具体的に貢献した人の名前を挙げられるならなお良しです)。小さな承認であっても、自分は大切にされていると思わせるのに大きく役立ちます。

全体像を共有する。

自分の仕事や役割がビジネス全体の中でどんな位置づけなのか、なぜその仕事を行っているのかをチームメンバーに理解してもらうのは重要なことです。それにより、ビジネスの成功にどのように貢献しているかを理解するための目的意識ややりがいを与えることができます。チームはこれらを当然理解しているものと考えがちですが、こういったことを通して常にそのつながりを確認しておきたいものです。

同じことを繰り返し言う。

あなたの会社のミッションやビジョン、KPI等、あなたの会社にとって重要なことは、壊れたレコードのように繰り返し口にしましょう。あなたがいつもそれらについて考えていても、チームメンバーがいつも考えているわけではなく、ほとんどの人にとって記憶の中に本当に埋め込まれるには何度も聞く必要があります。チームの全員がまったく知らない人に対して、あなたとまったく同じ言い方で説明できるようになったら、あなたがキーメッセージを十分繰り返し言っている証拠です。

仕切るのはあなた。

経験がない場合、人に指示するのに抵抗を感じることがあるかもしれません。しかしリーダーはあなたであり、チーム全員があなたに指示や助言を求めるのですから、しっかりと掌握してください。人はちゃんとした体制と指示を求めますから、チームをあなたのイメージ通りに形成するために「~が必要だ」「~が欲しい」という言い方をすることを恐れないでください。

「どのように」ではなく「何」にフォーカス。

あなたにとっての成功のビジョンを伝えることで、チームの意思決定と仕事を導くためのフレームワークと目標を与えましょう。チームを細かくコントロールしなくても、まるであなたが「同じ部屋にいて」、一緒に仕事に参加しているかのような効果を与えることができます。

締め切りを設け、責任者を設定する。

誰かにタスクを与える際には「いつまでに?」と尋ね、カレンダーに印をつけて完了をチェックしましょう。基準や締め切りが守られない場合、今後のやり方を変えさせるよう直接フィードバックを与えましょう。

あなたの考えを言語化する。

単に「この仕事には落胆している」のような言い方をするだけでも、あなたの立ち位置を人に理解させる上では非常に強力となります。人は他人の心を読めませんから、フィードバックを与える際には単にいきなりソリューションを伝えるよりも、あなたの気持ちを
はっきりと率直に伝えましょう。

従業員のためにマネジメントを行う。

私がマネージャー候補者の面接で尋ねる質問で最も好むものは「あなたのマネジメントスタイルはどんなものですか?」というもので、最善の答えは「従業員により異なります」となります。人にはみな様々に異なる経験値やモチベーション、人柄等の組み合わせがありますから、相手の成功を導き相手の貢献の最大化を助ける、相手に合ったマネジメントのアプローチを取るのはあなた次第となります。

人はみんな違うことを理解する。

あなたが自発的に物事を成し遂げるタイプの人だからと言って、チームの他の人たちがそうだとは限りません。みんなが自分と同じだと思い込むのではなく、チームの一人一人のモチベーションがそれぞれ何か、何にやる気を感じるのかを探る好奇心を持ちましょう。

採用はゆっくりと、解雇はすぐに。

誰もが口では言いながらも実際に行える人は少ないのですが、良い人材を採用することは、あなたのビジネスとチームにポジティブな影響を与えられることの中でも非常に重要なものです。優秀な人は他の優秀な人と一緒に仕事をしたがりますから、空いたポジションを凡庸な人材で埋める誘惑に抗い、妥協しないことです。新たに採用を行うたび、ワクワクするような人材を選ぶべきです。

ハングリー精神がある人を採用しましょう。その職種で成功するためのスキルがすべて揃った候補者がやってくるのはすばらしいことですが、具体的なスキルよりもあなたのミッションやビジネス、チームへの情熱を持っているほうが、長期的に大きなインパクトをもたらすことにつながります。情熱のある従業員は新しいスキルを習得するのも早くなります。あなたのビジネスが変化と成長を遂げていく際には特にです。

チームを成功に向けてセットアップする。

よほど優秀な人であっても、きちんとしたオンボーディング(導入準備)を行わずに初日から全力を発揮することを期待するのはアンフェアというものです。マネージャーとしてのあなたの責任は、早い段階で彼らに期待されることを設定し、コツを伝授し、あなたのビジネスについて教え、訓練し、明瞭な指示と明確に定義された役割を与えることです。そのどれが不十分でも、彼らが成功するための能力は低減してしまいます。

あなたの信頼を勝ち取らせる。

新人や経験の少ないチームメンバーが初日からフル稼働し、あなたの期待値を理解してくれるものと思い込んではいけません。まずはあなたと緊密に仕事させ、その中で自分たちの能力を示させ、あなたの信頼を彼らが完全に勝ち得るまでは、彼らの仕事内容を頻繁にチェックしましょう。

気が散るものからチームを守る。

チームが戦略を遂行するための能力を最大化できるよう、しっかりとした体制、焦点、明瞭な目標を提供しましょう。自分たちが毎日何の仕事をするのか、具体的に何に取り組むのかを明確に理解した上で出社できるよう、生産性の低下や時間の無駄遣い、チームの脱線につながるような邪魔な要素はすべて排除しなくてはいけません。

意思決定にチームを巻き込む。

優秀な人材を雇ったならば、重要な意思決定のプロセスに参加させないことは考えられません。意思決定のプロセスを事前に定義して、チームに期待されることを明確にしましょう。委員会による意思決定になるのでしょうか、チームの他の誰かの決定案件になるのでしょうか、それともあなたがフィードバックを集めたのち自分で決定するのでしょうか? 彼らの考えや意見に心を開いて耳を傾け、全員が自分の意見を聞いてもらえていると思える状態を確実に作ったら、取るべき最善の道を決めましょう。時にはチームのコンセンサスに反することもあるかもしれませんが、事前にプロセスとチームに期待されることを明確にしている限り問題ありません。チームが最終判断に反対したとしても、プロセスに関与させることで判断をよりよく理解してくれ、自分の意見が尊重されたと感じ、前に進む決断を支えるために積極的に協力してもらえることにつながります。

多少のプロフェッショナルな緊張感があるのは健全なこと。

異なる視点があると、チームやプロダクトの改善を助けます。ですから多少のプロフェッショナルな緊張感は、チームに物事を新しい角度で考えさせるのに役立つという点で大変貴重です。ただし概ねポジティブであるべきで、もしそのせいで決定案件の多くが膠着状態に陥ったり、緊張感がプロフェッショナルなものから個人的なものに変わったりしたら、チームの士気が下がったり爆発したりする前に解消すべく手を打つ必要があります。

あなたの仕事を見せる。

意思決定のプロセスを説明しましょう。賛否両論の行動や難しい決断を行う際は、あなたがなぜその決定に至ったのかを完全に説明することは特に効果的です。チームがあなたの思考プロセスや根拠を理解でき、そして最終的にはあなたの決断を支持してくれることを助けるからです。

常に答えがわかっていなくてもいい。

質問し、調べ、何かへの答えがわからないときはそのことを認めましょう。重要な決断をする前に少し考えたり調べたりする時間が必要だと伝えても、何の問題もありません。

毎週 1 on 1 ミーティングを継続的に実施する。

これは従業員のために行うことですから、毎週の議題と進行は従業員に任せましょう。あなたにとっては、毎週個別に話し合うことを目的とした時間を設け、互いにキャッチアップし、「最近どう?」「今どんな気持ち?」「今週頭に発表された大ニュースについてどう思う?」「Xについてはどんな意見?」等のオープンクエスチョンを尋ねる機会となります。これらのミーティングはあなたのスケジュールの中でも優先させ、可能な限りキャンセルやリスケジュール回避に努めましょう。そうすれば、あなたが一貫して時間を割き気にかけている姿勢から、チームの幸せに気を配っていることが伝わります。

現場担当からマネージャーへの移行を助ける。

個人が集まったチームからよりしっかりと構成された組織へとスケールアップする際、現場担当からマネージャーへの移行は優秀な人にとっても大変なこととなります。個人として優秀だからといって、すぐに優秀なマネージャーになるとは限りません。まったく異なる一連のスキルと経験値が要求されるからです。そして移行の最中には、本能的にそれまでの現場任務と新しいマネージャー任務を両方ともこなしたくなるものです。現場仕事75%、管理仕事75%、結果150%のワークロードとなってそれぞれが100%以下のアウトプットになってしまいます。まず何よりもマネージャーであることに集中できるような体制を構築し、現場仕事を減らせるようにしてあげましょう。

キャリアパスを作る。

従業員に対して6ヵ月毎に、2、3年間でキャリアのどの辺りに到達したいかを聞きましょう。一緒に取り組んでプランを作り、必要なスキルや経験が得られるよう助け、そこに到達するためのコースに導いてあげましょう。

 

著者紹介

Aaron Epstein

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Advice for New Managers (2016)

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