アーリーステージのスタートアップにおける多様性と包摂 (Startup School 2017 #15, Kat Manalac)

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YC と多様性の問題

Kat Mañalac
私は2013年、YCの最初のアウトリーチ・ディレクターとして働き始めました。

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アウトリーチとは潜在的な応募者への働きかけ、という意味です。起業しようとしている人たち、つまり基本的にみなさんのような人たちですね。

私が仕事を始めた時点まで、YCは完全に有機的な成長をしていました。つまり、YCに申し込む人のほとんどは、Paul Grahamのエッセイを通して、またJessica Livingston'sの本を読んだり、Hacker Newsの読者だったから、YCについて知っていたのです。

f:id:foundx_caster:20200311233559j:plainHacker Newsはテクノロジーやスタートアップのニュースに関するradditのような存在として始まりましたが、コメントを読んだことがある方には、Hacker Newsコミュニティのほとんどが男性であるということは当たり前のことかもしれません。特定の人口統計データを持っていない状態でそれを推測しなければならないとしたら、私は白人男性が主だ、と推測するでしょう。

過小評価されているコミュニティから才能を探す

自分の仕事として担当して気づいたことがあります。PaulとJessicaも気づいていたと思いますが、世界中にはスタートアップを始めるべき賢くて勤勉な人々がいて、そういう人たちは Hacker News のユーザー層以外にも存在する、と。

私は、そういう賢く勤勉な人々はどこにいるのか、そしてどうしたら彼らにYCへの応募を検討してもらえるのかを明らかにする、というタスクを任されました。どうやったらYCは、まだ会社を始めていない人たちに起業を考えてもらえるのでしょうか?

私はYCで様々な仕事をするに至ったのですが、そのうちの1つが、一般的にテクノロジー業界で過小評価されているコミュニティから創業者を募集する方法を見つけることでした。

それから、そういうコミュニティから創業者に来てもらえた時、彼らが起業したとき、シリコンバレーに参入したときに、コミュニティをサポートするために何をすべきかについても、よく考えています。

女性や有色人種の問題

正直に言うと、2013年にYCで働き始めたときには、女性や有色人種がテクノロジーの分野で直面している課題にあまり気づくことができていませんでした。2012年時点の私が知っていたのは、テクノロジー業界は実力主義であるという、誰もが言っている大きな業界図でした。

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そう信じたかったんです。

私自身は非常にラッキーで、私をとてもよく支えてくれる環境で働いてきました。たとえば、最初にPaulとYCで働いて、それからSam、他のパートナーたちと。本当にラッキーなことに彼らが私にチャンスを与えてくれました。彼

らは私に主体的に働きやりがいのある仕事をする機会を多く与えてくれますが、このようなかなり素晴らしい経験だと思う状況でさえ、「私が男だったら私の人生が、仕事がもっと楽だったんだろうか」と思う瞬間や経験をしてきました。私はここにいていいんだろうか?、と不安になることもよくありました。自分にこの仕事をする資格はあるんだろうか、と。

女性であるがゆえに顧客に怒鳴られる

具体的な経験としては、例えば割と最近のことなんですが、ある創業者が感情的に抑えがきかなくなったことがありました。

彼がキレた内容は、率直に言って私やパートナーの誰もがコントロールできなかったし、彼もそれをコントロールできなかったことなんです。彼がどんなことをしたのかというと、電話してきて、怒鳴ったんです。彼は制御不能に怒鳴り始めて、だから私はこの創業者との電話口で、「どうして私がターゲットにならないといけないの?」と思っていました。

彼が他のパートナーに怒鳴っているところは見ませんでした。彼が他の男性のパートナーに怒鳴っているのを私は見ていません。そのことでとても嫌な気持ちになりました。この出来事を消化するのにはかなり時間がかかりました。正直、創業者たちと一緒に仕事をしていると、本当にまだまだ道は長いな、と実感します。

顧客や投資家からデートに誘われたり、酷いことを言われる

例えばひとつ前の期の創業者たちからは、顧客や投資家からデートに誘われたという話を聞きました。投資家から、ピッチをしてくれる白人男性の共同創業者を見つける必要があると言われた女性創業者もいました。

デモ・デイで登壇した女性がいて、彼女は非営利団体の創業者だったんですが、そこにある投資家がやって来て言ったんです。「ねえ、うちの子のベビーシッターをしてくれたら2000ドルあげますよ」と。

私は、「はあ、どういうこと?」と思いました。ショックだったのは、私たちが2017年に生きていて、世界中でとは言わずとも米国では最も進歩的な地域、最もリベラルな地域の1つに住んでいても、こんなことが起こるということです。

より良くするための機会がある

私が信じているのは、私たちがより良くする機会がここにあるということです。あなた方起業家はゼロから文化を構築するというとてもやりがいのある機会を持っています。そう考えるととても心が躍ります。企業というのは基本的にそれ自体で一つの国のようなものです。

起業するということは、あなたが住みたいと思う世界を作り上げる機会なんです。

私が一緒に働いた起業家のうちで最高だった何人かは、野心的で、理想主義的でした。この世界で目にした何らかのものを不満に思い、だからそういう大きな問題を解決しようと取り組んでいます。

そういう起業家は、「うん、出来る。ここに世界を変えるチャンスがあるんだ」と思っています。そして最終的に、独自のルール、独自の構造、独自の文化を持つエコシステムを作り上げるんです。あなたの会社のエコシステムは、あなたの個性と創業者としての信念に基づいて構築されます。

多様性とインクルージョンのプレイブック

Samが私にこのワークショップを主催するように頼んだとき、YCにはプレイブックのようなものがないな、と気付きました。多様性と包摂 (D&I) の問題について考える方法を初期段階のスタートアップに紹介しようと思った時に、YCには決まったプレイブックというのはありません。

でも過去数年間のテクノロジー業界のニュースに注意を向けてみると、D&Iに関する会話を中心に勢いが増していることに気づくでしょう。

基本的に、みなさんは今の時点で重要さに気づいていると思うんですが、ほとんどの企業がもっと早い段階でこのようなことを考えておけばよかったと本気で思っているのを私は知っているので、私がやろうと決めたのは、できるだけ多くのYC企業と話をすることでした。

彼らの会社でD&Iについてどう考えているか知りたいと思いました。なぜそれが彼らにとって重要だったのか、も。何がうまく機能していたのか、その分野で何が一番ワクワクするようなことだったか、そしておそらく一番大事なのが、うまくいかなかったことは何か。

今日のゴールと背景

今日ここに6人の方々に来てもらいました。私がこの分野で最も興味深く、思慮深い会話をしたと思う人たちです。これからみなさんに、彼らの起業ストーリーやその中で考えたことをシェアしてくれます。ここに来ている方たちはこの分野で本を一冊書けるくらいに十分な知識を持っていると思いますが、今日に関してはかなりシンプルな目標があります。

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まず、多様性とインクルージョンとは何かを、より明確にすること。特にメディアではこのような言葉はあまりにも過剰に使われているので、だんだん内容を伴わなくなっていると思います。このコンテキストでこれらの用語をどのように定義するか、簡単に説明しようと思っています。

次に、彼らの企業にとってD&Iが重要である理由と、それについて考え始めた時期についてお話しします。非常に初期の段階であっても、皆さんが今すぐにこの事項を考えるべき理由についても少し。

そして最後に、話しにくいことに関しても会話を持つ文化を会社内で構築する方法についてお話したいと思います。女性としての私にとってさえ、そして有色人種にとって多様性とインクルージョンは、本当に怖くて厄介なトピックのように感じられかねないのです。

私は他の人の気分を損ねたり怒らせたりするんじゃないかと、よく不安になることがあります。私にとっては、もっとも怖くてストレスを感じるものですが、あなたがたが共同創業者やあなたと仕事をしている人々とこれらの厳しい議論をしていることも理解しています。これらは、話し合いを持つべき最重要事項に含まれると言えます。

今日来てくださっている方々、これをご覧のみなさんは、まだ社員を雇う前の段階だと思います。今回はジョブディスクリプションの作成や面接の実施方法のような具体的なところには入っていきませんが、その段階の準備ができたら参照できるような資料のページをシェアする予定です。今日はこのメンバーで、誰もが最高の仕事をしようという意思を持っている会社の基礎を築くのに役立ち、かつ初日からあなたの企業文化に焼き付けることができることについて話していきたいと思います。

できれば、みなさんには本日ここで少なくとも1つ、興奮を感じ、実装や試用の準備をしたいと思うものを残してください。

多様性と包摂とは何か

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さらっと多様性とインクルージョンに触れたいと思いますが、これらは幅広い概念です。それらは企業ごと、属性の違う人ごとに違うことを意味します。

私がいいなと思う定義の1つは、法律業界で多くのD&Iコンサルティングを行う弁護士から聞いたものです。

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(多様性はパーティに招待されること。包摂はダンスをしないかと誘われること)

彼女は多様性はパーティーに招待されているようなもので、対してインクルージョンはダンスに誘われることだと説明します。この文脈での多様性は、さまざまな背景の人々を見つけて採用することに関連していると私は思います。

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多様性ではないのは、性別または人種をカテゴリわけする用語です。多様性ということばは多くのことを意味すると思います。

異なる学歴を意味する場合もあれば、さまざまな年齢、出身国、宗教、職歴、価値観を意味することもあります。あなたの会社にとって多様性が何を意味するかを決めるのは、あなた次第です。最初に注力したいことも、あなた次第です。

そしてあなたが最初に注力したいと決めたものは時に応じて変わります。特定の要因に応じて変化していくんです。会社がどこに拠点を置いているか、その地域の人口統計がどのようなものであるかなどに依存するかもしれません。プロダクトによるのかもしれません。

「優秀な個人」の前提にバイアスがかかっている

ここで重要なことは何でしょうか?多様なチームを作りたい場合は、慎重に考えなければなりません。それは、チームでなくて個人個人を雇うということばかり見てしてしまうというトラップが起こるからです。

何が起こるかというと、理想的な社員はこのような感じだろうという前提のテンプレートが思い浮かんでしまうんです。そして気づいたら、似たような人が集まったチームになっているのです。

私が話をしたことのある卒業生で、これを本当にうまくやっている起業家の多くは、自分自身を引き伸ばさなければならない、チームを雇うことを考えなければならないと言っていました。

基本的に、優れたチームがすべて同じ長所と短所を持っているわけではありません。個人がみな同じ長所と短所をもっているわけでもありません。彼らは互いに補完するスキルを持っています。あなたの状況に合わせて考えると、例えば共同創業者を選ぼうとしている場合、あなたは自分のクローンと一緒には働きたくないでしょう。補完的なスキルを持っている人と仕事をするのが理想的だと思うでしょう。

包摂

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さて、インクルージョンに移ります。ほとんどの創業者は、資金調達の後、仕事の中で最も困難な部分は人材採用であると言いました。

素晴らしい才能を持った社員を雇うことはできているのですが、人材関連の課題であまり話題にならないことのひとつに、就業を持続させることがあります。どのようにすると素晴らしい才能の持ち主にあなたの会社の社員で居続けてもらえるのでしょうか?

才能を持った人をうまく採用できても、企業文化がしょうもないものであれば、彼らはおそらくあまり長くはとどまってくれないでしょう。

包摂のなさがコストを嵩上げしている

Kapor Centerは最近、テクノロジー業界の退職者調査を発表しました。これは、テクノロジー業界で自発的な退職の理由について調べたものです。

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  1. アンフェアさが転職率を上げる
  2. グループ間で体験が劇的に異なる
  3. テック企業においてアンフェアさのコストは毎年約 $16B になる
  4. 多様性と包摂のイニシアティブは文化を向上させて、転職率を下げることにつながる(もし正しく行えば)

みなさん、これを全部通して読むことをお勧めします。本当に興味深いですよ。そこまで長くはありません。主に4つのポイントで構成されています。

Kaporセンターが研究で示したように、これは業界の大きな問題です。非常にコストの高い問題なんです。彼らはD&Iイニシアチブを観察し、それが正しく行われれば、企業文化を改善し離職率を実際に減らすことができるとわかりました。みなさんがいまから話を聞くことになるLeverのJen(Jennifer Kim)が言っていたのは、その真逆はなんだろうということです。

企業文化について早期から考えること

企業文化について早期に考えないとひどいことが起こるというケースはたくさんありますが、素晴らしい企業文化を構築すると、逆にアドバンテージになります。何を得るかというと、あなたの会社は社員がお互いに強い絆を持っている場所になります。そのような社員はあなたの企業ミッションに忠実だし、長い期間会社で働いてくれます。

Leverには、私は特に感銘を受けました。彼らは約100人の社員をかかえている会社で、社員の男女比は50パーセントずつです。Jenが今日ここに上がったら、非常に早い段階から企業文化とインクルージョンについて考えた結果、Leverにもたらされたポジティブな効果についてもう少し話をしてもらいたいと思います。

YCの卒業生との会話の中で、何度も何度も繰り返し耳にすることは、インクルージョンは素晴らしい企業文化をゼロから構築するために必要な側面のひとつにすぎないということです。

インクルージョンとは、誰もが安心でき、ためらうことなく非常に困難で厄介な議題をもちだすことができる企業文化を構築することです。

なぜ多様性と包摂を今から考えるべきなのか?

パネルディスカッションで、それぞれの企業がどうやってその課題に取り組んでいるかお話しますが、まずは、なぜ今すぐこのことについて考え始めたほうがいいのかについて簡単に話しましょう。

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2015年に発表されたマッキンゼーの素晴らしい研究がありますので、それを参考資料としました。そちらを読むことをお勧めしますが、ここではYC卒業生の考えをいくつか紹介します。

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Porter BraswellはJopwellと呼ばれる会社の創業者です。黒人やラテンアメリカ出身者、そしてアメリカ先住民を仕事先と結びつけるサービスをしている会社です。

彼はなぜこれが重要なのかをこのように説明しました。「世界中に存在するさまざまな視点を完全に理解していなかったら、どうやって世界を変えるプロダクトやサービスを構築することができると言うんです?」

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YCに参加していた別の会社ExVivoの創業者は、これを厳しい方法で学びました。彼らによると「同じような分野やレベルの学歴を持っている人を雇えば、同じような方法で問題に取り組むということが早期にわかった」んだそうです。ExVivoの事例はまさに要点を説明しているものです。

ケチャップをどこに置くかは文化によって異なる

ここで簡単な実験をしたいのですが、

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ケチャップを冷蔵庫で保存している人は何人くらいいますか?ケチャップを食器棚に置いている人は?...わあ!

Reply Allというポッドキャストに素晴らしいエピソードがあります。チームを研究をしているミシガン大学のScott Page教授にインタビューしている回です。Scottは、言語、年齢、居住地、経てきた困難などがすべて、私たちが問題を解決する方法に影響を与えると言っています。

彼があげていた例が、ケチャップをどこに保管するかだったんです。彼が研究を行った時、もしイギリス人または南部出身のアフリカ系アメリカ人であれば、ケチャップを食器棚に入れておく可能性が高いと判明しました。もしあなたがそのどちらでもないなら、ケチャップを冷蔵庫に入れておく可能性が高くなります。

「これがなんで大事なんだ?本当に些細な点のように思えるけど」と思うかもしれませんでは、ケチャップを使い果たしたらどうなりますか?あなたが「冷蔵庫にケチャップ」の人である場合、冷蔵庫を開き、冷蔵庫のケチャップの隣にあるものと置き換えるかもしれません。通常はマスタードまたはマヨネーズですね。

でも、もしあなたが「食器棚にケチャップ」の人なら、食器棚を開けて、ケチャップがないと気づくと、おそらくフライドポテトにモルトビネガーを入れます。

私はこの例が好きで、それはより多様な背景があるほど、より多くを連想することができ、連想の選択肢が多くなるほど、問題を解決するためのより多くの経路を得られるからです。

正直なところ、この研究を聞く前は、ケチャップを食器棚に入れる人がいることすら知りませんでした。そのような人々が存在すること自体を知らなかったんです。目から鱗が落ちました。

なんにせよ、採用はあなたが今考えていることではないかもしれませんが、みなさんがあとで話しを聞くことになるMakindeの言葉にあるように、インクルージョンは、早期に蓄積しておけるものです。

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早い段階で考えないと起こる問題

早い段階でこれについて考え始めないと何が起こるかについての、大変よく知られたストーリーがあります。

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あるライド・シェアリング会社に問題があって、この会社の名前はここではあげませんが、

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Airbnbについても同じような話があります。昨年のFortune Brainstorm Tech Conferenceで、Airbnbの創業者であるBrian Cheskyは、Airbnbが、特にアフリカ系アメリカ人コミュニティに対して、差別を助長したという主張への対応に苦戦していると話していました。

彼は、「私たちはこの問題に取り組むのが遅かったと思う」と言っていました。それから「プラットフォームを構築している時点では、私たちの会社はJoe,Nate,Brianという白人の男3人だった、ということに気付いたんです。」とも。「考え漏れていたことがたくさんありました」とも言っていました。

Airbnbは今になって多くのステップを再評価しなければならなくなっています。さて、D&Iについて、定義と、それについて考えた方がいい理由を簡単に説明してきました。

パネルディスカッション

ではパネルメンバーに来ていただき、彼らのストーリーや観察結果をみなさんと共有してもらいたいとおもいます、それから自己紹介もしてもらいます。では、ご登壇いただきましょうか。

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ありがとう、Steven。

Makinde Adeagbo
ああ、いや、私は…マイクはシェアしましょう…

Kat Mañalac
ええと、マイクは回してください...私が立ってるとちょっと変ですか?大丈夫?はい。では順番に、あなたの名前、会社名、役職、そしてあなたの会社が今どれくらいの規模かを紹介してください。

Ashu Desai
わかりました。私の名前はAshuです。MakeSchoolの共同創業者の一人です。コンピューターサイエンスのカレッジを作っています。会社の規模は約25人です。私と私の共同創業者が共同CEOをしています。

Jen Kim
こんにちは。私の名前はJenです。Leverの初期からの社員でした。人材採用のソフトウェアを作っています。みなさんの中で過去1年か2年で仕事やインターンシップに応募したことがある方がいれば、Leverを使ったことがあるかもしれませんね。

私に関して言うと、プロダクト、カスタマー・サクセス、採用、社員エクスペリエンス機能においてチームを構築し、リードするためのさまざまな役割を担ってきました。会社規模は100人を超えたところです。

Kat Mañalac
それからこの会社の男女比は50/50なんですよ…ええ。他のことも覚えてるけど....これは達成するのが難しいから。

Cristina Cordoba
こんにちは。CristinaCordovaです。Stripeでパートナーシップチームのマネージャーをしています。Stripeは、オンラインビジネスが支払いを受けられるようにするツールとインフラストラクチャを構築しています。会社規模は約750人です。私ですが、多様性&インクルージョン・イニシアチブにもかなりの業務時間を費やしています。

Cat Perez
マイクがあるので、これで。聞こえますか?

Kat Mañalac
大丈夫ですね。

Cat Perez
Cat Perezと申します。Health Sherpaの共同創業者であり、CPOです。私たちの会社は、テクノロジープラットフォームで、個人が医療保険市場で保険に入る支援をすることを目的としたチームです。

現在までに、私たちのプラットフォームには840,000人を超える人が登録されています。Health Sherpaでは、プロダクトやリーダーシップだけでなく、D&Iも私がリードしています。社員は約20人であり、シーズン中、つまり健康保険の受付期間中に約40、50人にスケールアップします。

Makinde Adeagbo
私の名前はMakinde Adeagbo、/dev/colorの創業者兼CEOです。黒人のソフトウエアエンジニアが高いキャリア目標を設定し、それを達成する手伝いをするサービスをしています。チームは3人です。

Mitchell Lee
Mitchell Leeです。二人いるPennyの共同創業者のうちの一人です。Pennyとはパーソナル・ファイナンスのアプリで、会話形式で操作することができます。全部で5人のチームで作っています。

多様性と包摂の各社の定義となぜ重要なのか

Kat Mañalac
はいありがとうございます。多くのYC卒業生と話をしたときに非常に明確なことの1つは、会社ごとに多様性が定義されていることです。数人に聞いてみたいんですが、なぜD&Iはあなたとあなたの会社にとって重要であり、またそれをどのように定義しているのですか?Jenから始めましょう。

Lever の事例

Jen Kim
なぜ多様性とインクルージョンが私たちにとって重要だったか?ですね。私たちはHRのスタートアップですが、非常に有機的な始まりかたをしました。人として、そして同僚としてどうしたいのか、といったところから。

インクルージョン的な職場を構築するにはどうすればよいか、ですが、実は、ブログ記事を書いて会社のストーリーを語り始めたらすぐに、私たちは、仕事への応募者と顧客の両方に、たくさん反響があるということに気が付きました。

私たちが何を違うやり方で実施しているのか、どこから学ぶことができるのか、知りたいと皆思っていたんです。この分野のリーダーとして、私たちがここでどういうことを試してみているか、そして正直に言うと、どういう間違いをこれまでしてきているか、それを見せるためにたくさんのことをしました。

正直とてもクールだと思ったんですが、経験を開示することで事業自体に大きな違いを生み、販売と企業の成長につながりました。このような方法で、こういう意図を持ってLeverは企業文化とインクルージョンにアプローチしていますよ、と外に見せることで、見込み客に、「この会社が企業文化を構築しているなら、こういう企業文化を持っているのなら、そのプロダクトのソフトウェアはどのようなものなんだろうか、知りたいな」と思ってもらえました。この会社のプロダクトがどんなものか知りたい、と思ってもらえ、それが継続的なコミュニケーションにつながることは、私たちにとって本当に大きなベネフィットでした。

Health Sherpa の事例

Kat Mañalac
次はCatに行きましょう。あなたがなぜD&Iをビジネスケースと企業文化の両方において重要だと思ったのか、聞いていて本当にいいなと思いました。

Cat Perez
ええと、私たちのチームにとって、というとその頃私は7人目として雇われたばかりだったんですが。つまり、私たちはかなり小さなチームなんです。私たちは本当に迅速に規模を拡大しましたが、サービスの性質上事業の対象者はずっと低所得者層、マーケットで補助金を受ける資格のある人々です。

2015年だったと思いますが、KaiserFamily財団は、米国の65歳未満で保険に未加入なのは有色人種が半分以上、55%から60%で、は、特にラテン系、ヒスパニック系コミュニティ、黒人やアフリカ系アメリカ人であるというレポートを発表しました。

私たちにとっては、簡単なことでした。何がいいたいかと言うと、私たちのミッションはこれらの人々の登録を進め、医療保険へのアクセスを与えることです。彼らが持っているオプションを教える、ということはそのオーディエンスを反映していないチームだとできません。私たちがなぜそういう事業をする必要があるのか、の理由は本当にシンプルでまっすぐなものでした。

Stripe の事例

Kat Mañalac
Stripeについても少し教えてください。なぜD&Iは重要で、あなたの会社ではそれをどのように定義してきたのでしょうか?創業者たちとどのようにこの課題に取り組んできたのかも、お願いします。

Cristina Cordoba
私たちは本当に早い段階でD&Iについて考えていましたが、その方法はおそらくみなさんの考える企業的なやり方ではないでしょう。創業者はどちらもアイルランド人であり、米国に移民してきた人間です。初期段階の社員の多くもまた、ホンジュラスからケニア、スウェーデンまで、世界中からの移民であり、最初の社員の20人ほどがみんなそうでした。

こうなっていた理由の1つは、コアになっている企業ミッションによるものだと思います。それというのは、世界のどこにいても経済的なチャンスとオンラインビジネスを創出できるようにする方法を見つけ出したいと言うものです。

当社ではAtlasのような、世界中の起業家が米国で法人や銀行口座のを登録できるようにするプロダクトをローンチしました。あなたがキューバの起業家である場合、またはカナダの起業家である場合、非常に難しいことなんです。20か国以上、できれば最終的にすべての国で機能するプロダクトをローンチする必要があるというのが明確なので、初期段階から自社の企業文化にこれをどのように組み込むことができるのか、考えていたんです。

そして社員に関しても、世界中のさまざまな起業家のために構築するのに適切なプロダクトとは何か、そしてどうすれば人々がもっと簡単に起業家になれるのかをよく理解している人を引き入れる必要がありました。

本当に早い段階で取り組んだもう1つの部分は、多様性とインクルージョンに取り組む中で、最終的に会社全体のD&Iに影響を与える決定を下す役員層に直接連絡できる術をもつようにしたことでした。

つまり、私がCEOとCOOと非常に緊密に協力し、隔週で彼らとミーティングをして、社全体のD&Iのために取り組んでいる様々なことを話しました。それによってCEOとCOOが何が進められているか把握でき、あらゆるステップの事柄を承認できるようにしました。そうすることで、社内で物事を実現するために必要なことを進めることが可能になります。

Kat Mañalac
自主性があるから実際に変化を生み出すことができるんですね。

Cristina Cordoba
その通りです。

Kat Mañalac
あなたが必要だと思える場所、でね。

いつ多様性と包摂について考え始めたのか

次の質問は、いつD&Iについて考え始めたのか、です。いくつか興味深い話がありましたよね。

MakeSchoolについて、2人でこの会社を始めたことについてAshuと話したいと思うんですが。最初にD&Iについての会話がなされたのはいつですか?

MakeSchool の事例

Ashu Desai
そうですね。自分たちの学生と話をし始めたとき、最初に議題に登りました。私たちのプログラムに初めて女子学生であるソフィーが入ったのですが、共同創業者の観点からすると、この女子学生は、自分に自信をしっかり持ったかっこいい子で、素晴らしいアプリを構築していました。

彼女が私たちの夏のプログラムに参加している時に少し苦労していたなんて、本当に気がつきませんでした。1年後、私たちがプログラムでの経験はどうだったかについて学生に聞いたとき初めて、舞台裏で彼女がどうしたら夏のプログラムの場にフィットできるかに多くの懸念があったと耳にしました。その環境が明らかに性差別的だったり差別的であったわけではないということはここで言っておかないといけないと思います。

しかし、企業文化や言語の観点からみると、とても微妙なラインだけれど、人に不快感を覚えさせたり、仲間に入れてもらえていない気持ちになるような言動がたくさんありました。彼女の経験を実際に聞くと言うことだけが、表面レベルの課題だけでなくひとつ深いレベルの課題を考えさせてくれました。

Sophieのような人々にとって夏季プログラムの環境をよりインクルーシブにするために、私たちはどうやって今以上の段階に進めるだろうか、と。彼女の経験について聞いたのは、本当にショックでした。なぜなら、私たちは実際プログラムはかなりうまくいったと思っていたからです。実際プログラムはかなり良い雰囲気だったのですが、そういう問題点について率直なフィードバックを得るまで、現状を改善するのにかなり長い道のりがあることを把握することはできませんでした。

Kat Mañalac
Sophieが経験したことのなかで、運営側では気づかなかった、彼女が苦労していたりうまくこなせなかったことの一例を挙げていただけますか?

Ashu Desai
ええ、ジェンダー問題によっているわけではない問題もありました。

彼女はコンピューターサイエンスとアプリ開発ができるだけでなく、非常に運動能力が高く、趣味がたくさんある人でした。ほとんどの学生はアプリ開発とコンピューターとビデオゲームにのめりこんでいたため、彼女は他の多くの学生たちとうまく馴染んでいるとは感じなかったようです。

その他のことに関しても、部屋に一歩踏み入れた時に自分が数少ない女子の一人であるとか、数少ないの有色人種の一人であった場合に、その環境の中に居場所を持っているように感じられるか、というようなことだったりしました。

そういう状況だと、自分が場にフィットしているように感じるのはずっと難しくなります。
疑念は、この機能を構築する方法がわからない、このバグを解決する方法がわからない、と質問や悩みを抱えているときはいつでも起こります。2つ疑問が浮かぶんです。それは、私がこれを学んでいないということなのか、それともプログラマーになるべき人間ではないのでここに合わないからなのか。そのようなレトリックがあります。

特に高校レベルでは、コンピューターサイエンスや数学のクラスでは男子の数の方が多くなる傾向があるため、社会はある意味そっちの方向に押されていきます。先ほどの2番目の疑問はまた、Sophieや他の学生の話によると、インストラクターのところへ言って助けてもらおうとする気を削いでしまうといいます。なぜなら、「私がこれを知っているべきで、このトピックについて手伝ってほしいと言いにいくべきじゃない」と感じてしまい、他人に手伝いを申し出ることで問題が大きくなる前に摘み取ってしまおうとするようになります。

Kat Mañalac
その中で私にひっかかった例は、その女の子が何か知らなかったとき、高校生だとか、クラスにいる若い男の子の何人かが「えっ、そんな事も知らないの。」って言ったりするんです。そんなとき私は、誰かが質問をしたら、こう返すのよ、とコーチのように振る舞うと思うんですが。

個人的な経験をシェアするとしたら、たとえば昔はいつもドレッシーなものをきていたのにYCでの最初の1年では着なかったんです。ジーンズやグラフィックTシャツばかりをきていて、それは、「ちゃんとここの一員になりたい」と思ったからです。場に馴染んでまわりに話を真剣に聞いてもらいたいと、必要以上に多く頭を使って頑張ってしまっていたんだと気付きました。

まあでも、もっとはやくこういう会話を望んでいればよかったな、と思います。なぜなら、他の人も同じことを感じていたと思うので。実はこれ、今までまったく話したことがありませんでした。初めてのストーリー共有、ですね。

Penny の事例

ここからMitchと、Pennyについて話をしたいと思います。Mitchの会社と/dev/colorはYCを通過する一番新しい企業なので。D&Iは、あなたがたくさん考えてきたことかと思います。なぜそれに取り組むことになったのですか?あなたの会社は5人のチームでしたっけ?

Mitchell Lee
5人です。言いにくい事を言っておきたいんですが、私はD&Iのパネルで唯一の白人男性なんですね。私たちはPennyの資金調達ラウンドを行なって、チームの拡大を検討し始めました。当時、私たちはたった2人で…

ちょっと背景を説明すると、Pennyは、金銭管理を支援する会話型アプリです。だいたいが多くのお金を稼げない人、低所得の人なんですが、金融リテラシーが持てないことに悩んでいる人や、金銭管理をただ気後れするものだと考えてしまう人を助けることを目的としています。

私たちは、このインターフェースを、個性のある存在として構築していました。私は絵文字のヘビーユーザーなので、したがってPennyは絵文字を多用することになりました。ある日、私の婚約者が肩をたたいてきて「Pennyが私に気があるみたいなメッセージをしてくるように思うんだけど」と言ったんです。

「ええっ!…いや、絵文字を使うのは、それが自分のスタイルだから...」と思いましたが、そのような経験は他の友人からも聞きました。誰もがアクセスできるプロダクトを構築するしたいと思ったら、プロダクトを役立ててもらいたいターゲットの属性に近い、プロダクトを届けたい層を代表するようなチームが必要なのだと学びました。それが転機の一つとなって、今私たちがD&Iに注力することとなりました。

Kat Mañalac
では、Makinde、あなたの言葉を先ほど短く紹介しましたが、インクルージョンはかなり初期の段階で考慮しておけるものであると思っているんですね。

あなたが一緒に仕事をしてきた会社の側面で、良い面でも悪い面でもいいんですが、うまくいっている例は何かありますか?

/dev/color の事例

Makinde Adeagbo
ええと、これについて言えることはたくさんあります。私自身の会社の例から始めましょう。明らかに、私たちは多様性がある組織です。ですから、私たちのチーム構成にとっても、また会社が構築しているネットワークにとっても重要です。

創業初期段階での私の大きな間違いの1つは、それを当たり前にあることだと思っていたことです。私は黒人男性なので、「ああ、これは簡単だね。」と思っていました。しかし実際に起業したとき、私はこのトラップにはまったんです。

まず最初に参加してもらうメンバーは私が知っている人になりますよね。なぜかというと、それがもっとも簡単な入口だからです。私が集めた最初のグループには、黒人女性ソフトウェアエンジニアはあまりいませんでした。

そしてすぐに、グループのジェンダーバランスが崩れていることが非常に明確な問題になりました。それ以来、私たちは取り組んできている課題です。

まだ理想としているところには届いておらず、取り組みの最中でつねに注意を払っていることではありますが、私にも死角があると気づいただけでも、私にとって目が覚めるようなことでした。なので、みんな自分と違う属性の人たちに対しては死角があるんだと思います。

Kat Mañalac
そうですね。

Makinde Adeagbo
小さなシグナルの違いだと思うんですよね。他に言おうとしてたことは、他人に合わせることで、どこかに属していると感じようとする人がいるということ。それも物事を簡単に台無しにしてしまう要素だとおもうのですが、気づいたのは、創業者と企業が、誰がそこに属し、誰が属していないかの信号を絶えず発信しているということです。私たちでいうと、プログラム参加者の課外活動のような、シンプルなことなんです。

「いくつか候補を載せておきますね」とリストを作成したりしましたが、私はただジップラインやロッククライミングなど、自分が楽しいと思うもののリストを載せただけでした。ある人にとっては魅力的かもしれません。他の人にとっては、「ええと、このグループに私が入るべきなの?ここにいていいんだろうか?」と考えさせてしまうようなかすかなシグナルを送っていました。

それを受けてサービスの設計図にいったん戻る必要がありましたが、ありがたいことに、チームには様々な視点を追加してくれるメンバーたちがいました。また、参加者ネットワーク内で、リストを埋めて誰もがやりたいことを見つけられるように改善するのを手伝ってくれた人もいました。

多様性と包摂のプログラムの中で話し合ってもらうには

Kat Mañalac
すごくクールですね。

ここの登壇者や卒業生がそろって言うのは、インパクトのあるD&Iプログラムを実施しようと思った時に大きな障害になるのが、皆に話しにくいことを話しあってもらうことだ、ということです。そういう話を分かち合うのが居心地良くなくても、そうしなければならないのです。

Jen、あなたについて少し話してもらえますか?ここからは、JenがPinterestで聞いたパネルについて私に教えてくれたことからインスピレーションを受けた話です。それから、Leverでそれをどのように取り入れたかについても話してもらいます。

Lever の事例

Jen Kim
1年半ほど前に私たちが解決しようとしていた問題は、インクルージョンと企業文化構築を全社的な活動としたいときに、インクルージョンという概念を真にインクルーシブにするにはどうしたらいいか、という事でした。

「これは女性の問題ね、こっちはマイノリティ人種の問題ね」ということではないんです。ひとつ気づいたことがあって、それはインクルージョンに関するイベントやさまざまな議論があったときに、この問題について特に活発で情熱的だったのは社のある一定の部分だったということです。

他の社員の多くは、傍観者の立場を決め込んでいました。誤解しないでくださいね。彼らはそうしたほうがいいと思っていたんです。彼らは非常に協力的でしたが、どうしてか、問題に深く関わり、その分野のリーダーとして皆の目に触れることを、ためらっていました。それがずっと私の頭に残っているんです。

イベントで、Pinterestのインクルージョン担当のヘッドに会ったんですが、彼女は "Sorry. I Didn't Mean to Offend"(ごめん、そういうつもりじゃなかったんだ。)と名付けたイベントについて話してくれました。そのイベントは、マジョリティに参加してもらうためのものでした。

マジョリティとは、多くのエンジニア、白人男性のことだと思います。このようなパネルに彼らを配置して、間違いやミスステップについて話せる安全なスペースをつくることを目的としていました。「こういうことについては、全く思いもよらなかったんだ」とか、「こういうことを言って、ある人を嫌な気分にさせてすごく恥ずかしく思った」とか。そういう経験について率直に話すリーダーや同僚がいるということは、会社の文化を決定づけるものですよね?「あなたは間違ったことを言うことによって中傷されることはありません。悪意はなかったという前提で、チームとして一緒に成長していきましょう。」と語っているようなものです。

そのアイデアに触発されて私たちが企画したのが "D&I for Our Supporters" (サポーターのためのD&I)というセッションでした。これは社内セミナーだったんですが、リーダーは私たちのチームのメンバーで、自身も多数派に属するストレートの白人男性エンジニアでした。

彼がそのセミナーを率先して企画したということには、二つの要素がありました。ひとつはおそらく、それをリードする人が多数派グループの人であると、それをみた人は「多数派がやっているのなら気になるな、前のイベントは自分のためのものじゃないと思ったけれど、これは行ってみないと。」と思えることです。

もう一つは、オーディエンスを念頭に置いて設計ができるということです。セミナーのサブタイトルは "D&I for Dummies" (初心者のためのD&I)で、「D&Iがよくわからなくて、間違ったことを言いたくなかったから積極的になれなかったんですよね、このイベントはあなたのためのスペースですよ。」ということを語りかけていました。最終的にこのイベントは大成功しました。以前は積極的に関与していなかった多くの人々が来てくれて、パーソナルな経験や思いをシェアしてくれました。

まとめると、同僚の誰かがこう言ったことがあります。これは私の同僚の黒人男性の言葉で、彼はこう言っていました。「問題の原因が自分に直接関係するわけではない場合、本当にやりたいと思っていても、代わりに発言するのはとても居心地悪く思えるものなんだ。なぜなら間違ったことを言ったり、誤解されたり、それで攻撃を受けたりすることはやっぱり恐怖に思えてしまう。だから、将来の社員や企業文化のために「声を上げていいんだ」と意図的に示していく努力をしなければいけない。成長中の企業の事業内で起こる問題と同じように、こういう課題も乗り越えていくんだ。」って。

多様性と包摂の失敗談

Kat Mañalac
社の皆に言いにくいことをお互いに言ってもらおうという精神にのっとって、パネルのみなさんに、自分がやってしまった間違いや失敗についてのストーリーと、職場でD&Iについて考え始めた時のことで、やり直したいことを共有してもらいたいと思います。私たちの間違いについても話しましょう。

さて、(Makindeに)始めますか?…自主的に。

Makinde Adeagbo
もう自分の間違いは言ったと思うので...まあ、はいでは自分から。当初うまくいかなかったのは組織のジェンダーバランスです。この課題を持続的に改善するためのストラテジーは、まだ構築している最中です。

Penny の事例

Mitchell Lee
色々と失敗をしてきました。私たちはまだかなりの初期段階にいると言えるので、間違いというとちょっと違うと思っていて。学習の機会だったな、と思います。D&Iのプロセスをはじめて、多くの学習機会を得ました。採用したいなと思っている人にこの話題をどういうふうに持ちかけるか、や、社内でどのような位置付けをし、オープンな対話をもてばいいか。

小さなミスもありました。たとえば、私たちのチームに参加することになったある女性がいたのですが、チームでディナーをしていた時に、そのディナーで私たちはかなりアグレッシブになってしまい、うるさくて落ち着けない環境にしてしまったと思います。彼女は男性に囲まれ、私たちはというと矢継ぎ早に質問を投げかけてしまいました。それは人にリラックスして、個人的なレベルで心を開いて話をしてほしい時にとる方法ではありませんでした。

間違いはたくさんあります。でも、私たちは学んでいると思いますし、D&Iについて会社は良くなっていると思います。そしてステップ1はなんにせよオープンに話す、ということだと思います。

Kat Mañalac
ええ。

Health Shapre の事例

Cat Perez
D&Iイニシアチブを開始した初期段階では、いくつかのミスがありました。私たちの会社は約2年前にスタートし、私は7番目の社員として働き始めました。私たちはまだかなり小さい組織で、多様性とインクルージョンはみんな同じ受け取りかたや体験をし、同じ意味で認識していると思いこむという大きな間違いをしていました。

それは、白人男性を含むチームの全員が、ということです。ジェニーも同じことを話していましたが、私たちの最大の失敗の1つは、白人男性チームメンバーと一緒にこのインクルージョンの概念を実践しなかったことでした。彼らの考えも重要です。彼らも会話に参加する必要があります。それは私たちの最大の間違いだったのは「7人くらいのチームなら、みんなこの必要性に同意しているだろう」と思ってしまって、話しにくいことをシェアしあう機会をもってこなかったことです。

次に追加したいことは、インクルージョンを単なるToDoリストとしてアプローチしてしまったことです。これはほんとによくないやり方なんですけど。私たちは野心的すぎて、同時に展開したいと思っていたイニシアチブが7つもありました。

そんなことは絶対にしないでください。1つで十分です。MVPスタイルでアプローチする方法を学びましたね。小さく始めることも。なぜならこのようなことは本当に感情的に負担がかかり、人々にとって強烈な体験になるからです。そうですね、小さく始める、ということは最初からそうしておけばよかったな、と思うことです。

Stripe の事例

Cristina Cordoba
Stripeで、私たちがかなり早い段階で犯した最大の間違いの1つは、初期の成長段階の非常に早い時期にかなりの数のエンジニアを雇う必要があるとしてしまったことです。約3か月でそれだけの人数のエンジニアを採用しようとする必要は必ずしもなかったんです。私たちの会社の歴史の中で、そのスピードで採用する必要があったことは一度もありません。

また私たちは、この短期間での採用する社内エンジニアのうちの女性とマイノリティの割合に関して、非常に大胆な目標を設定してしまいました。目標が高かったんです。これらの願望がありましたが、実際にはその目標を達成するための計画はなかったんです。もちろん、完全に失敗しました。会社にとって非常につらい時期だったと思います。

なぜなら、私たちは、雇いたい数だけエンジニアを採用しましたが、多くは有色人種でも女性でもなかったんです。その結果、私たちは集まって、「うん、完全に失敗したね」と認め合う必要がありましたし、会社の全体ミーティングをして、「さあ、どうやってこれを修正していこうか」と考えなければなりませんでした。エンジニアを採用し続ける必要はあったので、より効果的にそれを行えるように計画を立てる必要があったんです。

その時点から私たちがやったことですが、Stripeには人材募集担当マネージャーとチームの採用担当マネージャーとの間に断絶があったように思います。自分のチームにエンジニアを追加で入れる必要のある採用担当のマネージャーはよく、「人材募集担当が候補者を何人かあげてくれるから、その中から一番いい人を選べばいいよね。」と思っているようですが、現実を見ると、最終的にチームがどんな雰囲気になるのかは、チームの採用担当のマネージャーの責任です。採用プロセスでは主体的に動かなければならないんです。

当社では半年前、すべてのエンジニアリングのマネージャーはマイノリティの候補者を連れてくるのが必須であるという目標を設定しました。つまり有色人種または女性のエンジニアを、です。

Stripeの採用パイプライン(hiring pipeline)上の面接に至るところまでそういうエンジニアを引っ張ってくるべきだとしたんです。これは、採用したエンジニアを抱えるチーム直属のマネージャーにプッシュをかけるものになりました。なぜなら、社内でマネージャーの名前を載せたスプレッドシートを作成して公開し、そのうち誰が目標を達成したみられるようにしたからです。彼ら自身もですし、チームメンバーもこれをチェックすることができました。

この目標達成のために時間を必要なだけ費やしていないマネージャーがいたら、皆に知れ渡ることになるでしょう。そのおかげで採用担当マネージャーは「どうやって、私の直接のネットワーク上にいない人に会うことができるだろうか、そしてどうやったら確実に、様々なバックグラウンドを持つ人をより多く採用パイプラインのプロセスに取り込むことができるだろうか?」と問いかける声をあげる力を持つことができました。その努力を通じて、通常その期間中に雇用できる女性エンジニアの3倍を雇用できました。

Lever の事例

Jen Kim
素晴らしいですね。私が話そうと思うのは、どんな間違いをしたかと、本当に価値ある教訓というのはその間違いとその他の将来に関わる問題をどのように扱い対処するかということだった、ということです。Leveretsという社員リソースグループが社内にあります。Leverの女性社員のためのグループです。Slackチャンネルと食事会をするためのグループで、食事会というのは年に2・3回、課題点やリソース、メンターシップについて話すためのものです。

約1年半前、私は誰かがLeverDudesというプライベートSlackチャンネルを作成していたことを知りました。これは少しグレーの領域にあたります。グレーの領域のパターンというのは皆さんまた分かってくると思いますが、居心地が悪くて、心地よくなくて、曖昧な問題です。解決するのが最も難しいものの一部でもあります。

なぜならそのチャンネルを見ると、明らかにとても悪いことは全くなかったのですが、少しからかいを含むだろうと受け取れる空気感が存在していたんです。そこでは「女性たちはLeveretsチャンネルを持っているので、このチャンネルで活動するのはフェアだろう」ということが言われていました。冗談も書いてあって、これもまた本当にクレイジーだというわけではありませんが、実際にチャンネルに参加している他の男性社員が気分良く思えるものではありませんでした。

このことについて報告された時、私たちが持つD&Iに関する基準と原則の一つであるとあるフレーズについて話しました。「何かよくない言動に気づいたら指摘すること。よくない振る舞いをスルーするということはその振る舞いを受け入れることと同じである。」というものです。

スルーした方が気楽ではありますが、スタートアップ社員として、リーダーとして、問題があれば何か働きかけをする義務があります。創業者の一人であるRandallに声をかけてたらとても親身になってくれ、状況に耳を傾け、真剣に受け止めてくれました。

ここでの問題は何かということに戻ると、Leveretsチャンネルを弱体化するようなものだったし、またそれをそのままにしておくと、「私たち VS 彼ら」というメンタリティを生みかねないと思ったんです。Randellは最終的に、問題のチャンネルをつくった社員に話をしました。

「あのさ、これオーケーなことじゃないんだよね、何が起こったのか話を聞きたいんだけど」とただ言うのではなく、きちんとプロフェッショナルとして、本当に理解して耳を傾けようとしていました。もちろんそれと同時にきちんと線を引きながら。

それから、つぎに彼がやったのは、本当にリーダーとしてステップアップさせてくれる事だったと思うんですが、Leverとして私たちは次の全体ミーティング(AllHands)でその話題について話すことに決めました。

これはかなり重要な学びの一つだったと思います。お分かりだとおもうんですが、何か社員に話がある場合、もちろん楽しいことではないですよね。会社の全体ミーティングでの、こういう事があったんだ、という話をやりたがる人はいません。そうするのは非常に不快で気まずいものですが、そうしないと社内でみんなが言い出しにくいことになってしまいます。

Randallは本気で会社全体に向けて語りかけました。興味深いのは、彼が過去に犯した間違いについて正直に話をするところから始めたことです。Leveretsグループは最初に結成された当時、私たち4人だけの女性でディナーを食べに行くというものでした。彼は「じゃあ僕は同じ日の夕方、エンジニア何人かを連れてピザでも食べに行こうかな」と冗談を言ったらしいのです。そのあとすぐ彼はそれがあまり良いふるまいではない事に気付きました。

それに彼には揶揄しようとかそういう気持ちがあったわけではなかったのですが、でもそもそもなぜグループが存在するのかを考えてみたら、それは女性というのは全体でみて少数派ではないかもしれないですが、テクノロジー業界では少数派であるわけです。したがって、Randall自身は気づかないような経験をしたり壁を感じたり、苦労を抱えています。

このグループが存在する理由は、ただ楽しい時間を過ごしたり、遊びに行ったり、飲みに行ったり...わからないですけど例えばマニキュアについて話したりすることではありません。女性で集まるグループを作るというのは、本当に仕事のためで、お互いを、そして将来の社員のために、そして将来の会社のインクルージョンを向上するために私たちができることでした。

Randallがリーダーとして本当に正直でまっすぐな姿勢をとったことは大きな違いを生んだと思います。その日その話があった後で、複数の社員がRandallにSlackで連絡したり直接会いに来て、感謝の言葉をかけ、またこういう事を言いました。

「以前働いていたスタートアップの創業者は絶対こんな事してくれなかったでしょう」、「リーダーが人を本当に大切にしている場所で働くことができて、本当にありがたいと思うし、幸運だと感じています。人間として大事でまっとうな事だと思います。」

それが私たちが経験から学んだことです。

1対1で対応するだけでなく、将来的にそれが起こらないようにする必要があります。新規に採用した社員が6か月後に軽口を叩く事なんて簡単に起こり得ます。同じ事が何度も繰り返されてしまうんです。どのように課題と向き合い対処するかは本当にリーダーとしてのステップアップです。

時には楽しくないことですし、心地のよいものではありませんが、でもあなたの責任なんです。大切なのは、人はあなたが社内へもたらすトーン、あなたが言葉に出して言うことを覚えているだろう.ということです。社員は覚えています、そしてそれが会社が成長するにつれて企業文化に組み込まれるんです。

MakeSchool の事例

Ashu Desai
2つ簡単に言います。ひとつはCatが先ほど触れた、人がものを知らないときに驚いてみせるということについてです。最初の夏プログラムのとき、学生に「じゃあ、フォルダを圧縮してメールで送ってくれる?」と頼んだんですが、学生は「すいません、フォルダを圧縮する方法がわかりません」と言うんです。

「ちょっと待って、フォルダを圧縮する方法がわからないの?こんなに基本的なことなのに。」と返事をしました。でもそういう言動というのは、その人が自分と同じ教育を受けてきており、自分の言った事は当然知っているだろうという仮定に基づいたものですよね。それは、特に教師の立場からすると、大きな間違いで、それを聞いた生徒にとってはあまりいい気持ちのするものではありません。

2つ目は、会社の非常に早い段階からあったもので、会議で意見したもの勝ちである、というような企業文化があったんです。さまざまなトピックについて議論があるときはいつでも、かなりヒートアップして、あまり健全なディベートとは言えない形で意見が飛び交いました。

しかし、それはまた、内向的だったり穏やかに話すことを好む人の声を拾えなくなるということでもあります。そういう人たちが会議に参加していたらそれは本当に大きな問題になります、なぜなら彼らは話す機会を得られないで終わるんです。この二つが、自分たちの大きな間違いだったと思っています。

文化的な観点で、これらの過ちに社員に取り組んでもらうために行ったのは主に、このような状況をわざと悪意を持ってしたことではなく、過失だと想定したうえで、今の状況を変えてどこに向かうかという方向性を定めることに注力したことです。

共同創業者と私は二人とも、会社を始めたときはかなり若く、リーダーシップとマネジメントの面で多くの失敗をしました。でもそれは、会社の他のメンバーが私たちが会社をよくしようとしているの進んで理解してくれていたからできたことでした。そういう文化が社内にあったんです。

ですからみなさんも、社内で何か良くない言動やニュアンスに気付いたら、きちんと言ってください。そういう言動をしたのは自分の性根が悪いからだとその人に感じさせないことが重要ですが、実際にまちがいをした人たちのコーチとなりサポートすることで、一年後には社内のD&Iに対してきちんと理解しふるまってくれるようになるでしょう。

これからの取り組みについて

Kat Mañalac
素晴らしいですね。

さて、もう試してきたこと、うまくいっていることについて少しずつ皆さんに話していただきましたが、会社やみなさん自身の過去の失敗から少し話をずらして、これからしようとしていること、やってきたことが報われるだろうと思えてワクワクしていることなど、素晴らしい企業文化をゼロから作っていくという点においてうまくいくと思っていることについて話したいと思います。

Jen Kim
それがうまくいってる人っているんですか?

Kat Mañalac
ええと、もちろん簡単なことじゃないの知っていますが、でも何か皆が拾えるヒントになるようなことがあるかもしれませんし。

Cat Perez
自分たちの会社でうまくいったことしかお話しできませんが。

私たちのためにうまくいったことは、すべての人のために働くとは限りません。みんなに当てはまるような決まった規格のプレイブックや青写真というのはないですから。

Health Sherpa で採用時に行ったことは、ポット(POT)ツールを活用したことです。"pot"のもう一つの意味(*つまり大麻)とは違いますよ。POTとはPeople Ops Tools(戦略的・効率的な人材配置のためのツール)という意味です。[*People Operations:Hum anResourcesに対し用いられる人事用語]

使った具体的なツールのひとつは、Unitiveというものでした。KaporCapitalのポートフォリオに入っている会社の一つで、今はTalentSonarという名前になっています。かつて私たちは、そのサイトを使ってジョブディスクリプションを掲載していました。

ジョブディスクリプション・チェックの機能は、ジョブディスクリプションのスコア付けをしてくれるものですが、偏見になるようなワードを見つけ出してくれるんです。それを使っていた理由は、もっと広いネットワークから人材を採用するためです。とても使いやすいツールです。

質問事項のスコア付けや、履歴書のブラインド・レビューなど他の機能もあって、それぞれの面接官が採用の考慮に必要な能力やスキルを図る質問をしているか、そして全ての人に同じ質問をしているかを確認することができます。

スタートアップですから粗雑な方法で物事を進めてしまいがちですが、これを使うことで私たちは最終的に面接のプロセスに関してそれなりの枠組みを構築することができました。このイニシアチブを展開した後、私たちが多様性の目標値を達成することができました。黒人メンバーやヒスパニック系、ラテン系の社員・チームメンバーが二倍に増えました。この方法はとてもよかったです。

そのイニシアチブを活用した新しいチームに関してもう一つ述べておきたいのが、プラス85%の収益成長もあったということです。これは、新しいメンバー構成で作ったチームのおかげだと思っています。多様なチームメンバーを採用することが実際に収益に影響を与える証拠です。特に、多様性のあるコミュニティにサービスを提供しているような会社の場合は。

Makinde Adeagbo
私たちの組織が多様性のあるものなので、実際よくこの質問を受けるんですが、小規模企業の創業者がたくさん「あの、どうすればラテン系や黒人または女性のエンジニアをもっと雇うことができますかね」と尋ねてきます。

「ほら、会社は4、5、10人の規模ですよね、本当に考えるべきことはチームに必要な属性とスキルであり、そういうことに本当に正直になることですよ」と通常答えます。

たとえば、アグリ・テクノロジーの会社を起こしている場合を考えてください。すべての社員は都市部の出身です。実際プロダクトを販売しようとした時に誰も農業をしたことがないとなったら、それはセールスにとって効果的なことではないですよね。

私が思うステップ1は、現在の段階であなたの会社にとって社員にどういう能力がある必要があるか、そしてその段階で会社に具体的に必要なことは何かを正直に見つめることです。そうして、そういう状況に応じて採用をするべきです。ただTodoリストの項目にチェックを入れるとか、会社が大きくなったときにメディアが会社の統計資料に注目するからというような理由ではなくて。自分の今の段階で何が重要か明らかにして、それからそれに対して採用をしてください。

Mitchell Lee
私たちがしたことでおそらく最善だったのは、早く始めたことだと思います。D&Iについては社員が2、3人のときに考え始めました。これは重要なことで、なぜなら早期に採用した人たちは、最終的にはあなたの会社のリーダーになり、その人自分のチームを採用する側になるからです。最終的にこうあってほしいというチームを構築するようにしておく必要があります。

あなたの会社が白人とアジア人の男性が15人ほど働いている状態になって、その時点からチームに多様性を取り入れようとするなら、頑張ってください。というのも、多様性の象徴にされたり、既存の企業文化の中で疎外感を感じることを望む人はいないからです。これはかなり重要なことです。

また、当社ではかなり予防的に取り組んできました。Catが履歴書の名前や性別を見えない状態にすることやジョブディスクリプションを修正することについて述べていましたが、初期段階の企業だと、目標到達までにあまり多くのプロセスを経て採用活動をしないため、十分にD&Iに考慮できていません。

Pennyではかなり主体的に「いえ、うちは会社の早い段階から様々な出自と文化背景をもつ人々を探してチームに入ってもらうようにしよう」と言ってきました。リクルートプロセスの拡大を支援してくれる様々な組織と提携することで、当社ではこの取り組みが早くからうまくいったと思います。

Ashu Desai
私たちでは、課題そのものと、それがコミュニティ、文化、多様性にどう関わるか、を話し合うこと、効果的なリセットポイントでそれらについて話し合うことでした。教育プログラムの文化を作る場合は、プログラムが実際に開始される時が良いタイミングです。

しかし、会社ではいつも初期状態にリセットできないので、たとえば冬休みから全員が戻ってきた直後の1月なかがいいでしょう、これらのトピックに対処するのに適したタイミングです。なぜなら、新年の最初の数週間に創業者であるあなたの言動が与えた印象や作り始めた企業文化というのは、通常は年間を通して影響し続けるからです。

2つ目はメンターシップの際に、同じような属性のメンターを学生につけるということです。私たちのプログラムの卒業生で、実はLeverで働いている、Leslieという人がいます。彼女は、私たちが大学で行なっているプログラムの現在の参加女子学生のためのサポートグループを作成するという素晴らしい仕事をしてくれました。それを実現するまで、長い道のりでした。

それから最後に、実際の数値について会話をすることが大切です。会社の多様性に関する数値があまり良くなくても恥じる必要はありません。昨年度、私たちの大学プログラムの最初の年には、22人の生徒のうち1人しか女性がいませんでした。しかしそれでも私たちはきちんとそれを議題にあげて、主体的に改善する方法を考えました。それは、オープンな対話でした。だから対処の計画をちゃんと立てる方法を考えることができたんです。

現在、40人、いえ36人の学生のうち7人女性がおり、年間を通じて100%の定着率を維持しています。昨年からみれば大きな改善です。社内のスタッフに対してのプログラムについてもそうで、D&Iについての統計数値があまり良くないときに社内対話を始めました。その後、年々数字は改善しています。

Jen Kim
時間はどうですか?時間通りですか?

Kat Mañalac
できるなら1分にしていただけたら、ええ。すみません。

Jen Kim
じゃあ手短にしますね。多様性とインクルージョンの両方で多くの答えを聞いたと思いますし、私ももっと話すことはあるのですが、最後にこれら両方について言いたいのは、あなた自身の会社に何が役立つかを理解するのが大切だということです。自分の会社にあっているのは、他のすべての会社に当てはまることではないかもしれません。

私たちはというと、私たちはSaaSの会社です。ですので、販売部門が会社の大きな部分を占めています。なにがいいセールスパーソンかということに一般的に関連付けられることのひとつですが、「そうだ、体育会系の人をこの部門に持ってこよう」というようなことが言われますよね。さも「体育会系アスリートが最高のセールスパーソンだ。」と言わんばかりに。

最高の営業担当者の一部が実際に以前運動をしていたことは間違いありませんが、でもそれは体育会系でなければ資質が十分ではないという意味ではありません。シリコンバレーと職場の全般に存在するこのようなステレオタイプのいくつかを検証するのに本当に時間がかかりました。それは本当のことなのか、実際にLeverにとってうまくいくのか。

そうすることによって、過去に大学で運動部に所属していたというような経歴の要件を、ジョブディスクリプションから外し、ほかの人たちがこのような特定の経歴を持っていなかったために取り残されたように、ペナルティを受けたように感じないようにしました。

Cristina Cordoba
私が最後に言いたいことですが、私たちの会社ではこの1年間、インターンの多様性を改善するためにおそらく20くらいのことをしてきました。2016年のインターンには、女性とマイノリティは11%しかいなかったのですが、これは私たちの失敗、間違いでした。今年インターンでは女性とマイノリティが41%以上になりました。インターンプログラムで2倍以上になったんです。

特にその効果があったことの1つは、インターン獲得のパイプラインにつながる複数の方法を用意したことです。たとえば、キャリアフェアに参加したり、当社のWebサイトで募集をしたりする従来の方法も使って候補者を探しますが、でもそのやり方では他のテクノロジー企業もまったく同じ候補者に当たっているということに気づいたんです。たとえば、GoogleとFacebookなどの素晴らしいインターンシップも候補にしている人を採用しようとしているんです。きまった候補者を奪い合っている状態です。

現実的には、インターンシップの段階ではただ能力を基準に決めるんです。必ずしも豊富な経験を持っている人を探しているわけではありません。大学生の場合、おそらくあまり経験は持っていないでしょう。Stripeで本当にうまくやっていけるだろう、そして私たちが必要とする素晴らしい能力を持っているような人をどうやって探すことができるか、というのが課題でした。

私たちがしたことのひとつは、インターンへの応募方法をあと二つ追加で用意したことでした。まずひとつは、自分の自由時間にできるコーディング・チャレンジです。その課題を当社に提出したら、そのあとストレートで電話インタビューにつながります。リクルーターと話す必要さえないんです。

もう1つの方法は、書けるコードのオプションを見せてもらうことでした。私たちは、Black Society of Engineersのような、大学イベントにたくさん参加しました。例えば、イエール大学Grace Hopperカレッジなどです。そこで「コンピューターの中にある、あなたのコーディングしたプロジェクトを見せてください。私たちが見てそのコードが良いものだったら、自動的に次の採用ステップに進めます」と学生たちにアナウンスしました。

候補者を履歴書以上のところで考えるにはどうすればいいか、が大事です。特に大学の段階では、実際は履歴書はそれほど重要ではないですから。

まとめ

Kat Mañalac
ありがとうございます。そろそろ時間ですね。様々な経験をシェアしていただいて、ありがとうございました。

オーディエンスの多くは社員を雇う前段階にあります。こういう問題をまだ考えてはいないとは思いますが、参照資料のリストを作っておきました。このリストは生ものですので、登壇者の皆さんが言及したものの全てをまたリストアップしておきます。のちほどクラスの皆さんとオンラインにいらっしゃる皆さんに、Stevenがすべてのリソースとツールの情報をシェアしてくれます。

Jen、あなた方が進行中のD&Iプログラムのようなものを作成するためのフレームワークについて少し話してほしかったのですが、時間がないので後ほどあなたにブログ記事をお願いしたいと思います。

Leverの一連のブログ記事も素晴らしいんですよ。10回シリーズの記事で、企業向けにD&Iについて紹介したものです。D&Iについて詳しく調べたいと思ったときに最初に読むのにとても適したものです。これもリソースリストに入れておきました。

このリストをオーディエンスの皆さんと共有しますね、それから登壇の皆さんのメモやYC側が書き漏らしたことも追加したいと思います。これはとても濃厚な内容だったと思いますが、たくさんの人に来ていただきました。ご参加ありがとうございました。スピーカーまたは私に質問がある方は、お気軽にご連絡くださいね。

私はKatです。Kat@Ycombinator.comのアドレスで、連絡がとれますし、必要に応じてこちらに登壇された方々と皆さんをお繋ぎします。皆さん本当にありがとうございました。そして登壇者の方々ありがとうございました。拍手をお願いします!

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
動画: Diversity + Inclusion at Early Stage Startups - CS183F (2017)

トランスクリプト: Diversity & Inclusion at Early Stage Startups - Kat Manalac

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