学生のサイドプロジェクトからスタートアップをする方法

皆さんが学生企業家ならば、サイドプロジェクトからスタートアップへの移行の段階は、創業者としての道のりの中でも最も重要なことのひとつです。この移行は、うまくこなせば、スタートアップの先に待っている課題の克服に必要な決断と責任を生み出します。生半可な気持ちで取り組むと、新しく立ち上げたスタートアップと自分が抱えるその他のコミットメントの両方にとって害となる可能性があります。

共同創業者のHenryと私は、大学時代にサイドプロジェクトとしてMeetingbirdを始めた時に、この移行期の重要性に気づきました。サイドプロジェクトからスタートアップへと飛躍する中で、私たちは、他の学生創業者にとっても該当すると思う3つの段階に特に注力しました。

1. 「サイドプロジェクトの世界」という楽園から抜け出しましょう

サイドプロジェクトは楽しいものです。なぜなら、この上なく幸せな別世界で何かに取り組むことになるからです。否定的な意見や責任はありません。しかしながら、サイドプロジェクトからスタートアップへと進むことは、自分の興味のあるものの構築から、人が望むものの構築へと移ることを意味します。

自分のサイドプロジェクトを人が望むものへと展開させる最善の方法は、自分が作ってきたものについて、実際のユーザーと話をしてみることです。これは苦痛に思えるかもしれませんが(そしてその可能性はあります)、これこそが他の創業者に対して学生創業者が持っている独特の優位性です。皆さんは既に何千人もの協力的で役に立つ試験製品の検証者に囲まれています(同級生や同窓生です)。

この利点を最大限に活かすための効果的な方法がいくつかあります。

– 関連する学校(エンジニアリング、企業家クラブなど)のLISTSERVに電子メールを送って自分のプロジェクトに関して15分間、人とチャットをさせてもらえないかと頼みます(これは共同創業者と会う場合にも優れた手段です)
– 自分の製品をキャンパス内のハッカソン、大会、求職求人フェアで学生向けに実演する
– 売り込みのコンペに自分の製品を提出する(コンペに時間をかけすぎないよう注意してください。応募に費やす時間は30分を超えるべきではありません)
– 事業に自分の製品を売ろうとしているなら、LinkedInや学校の同窓会名簿で自分の製品を使う可能性のある同窓生を探し、コールドメールのタイトル欄の内容の一部に「(〜あなたの学校〜学生)」と入れてください。

2. 大きな夢を見ましょう

皆さんのサイドプロジェクトは、おそらく、面白い、楽しい、と思ったものから始まったと思います。世界を変えることができると思ったわけではないでしょう。しかし、サイドプロジェクトをスタートアップにするということは、自分の作ったものが重要である理由を考えることです。そしてその鍵となる部分が、大きなビジョンです。私はこれに関して2つの問いかけが役に立つと気づきました。

I – サイドプロジェクトを始める原因となったそもそもの問題について慎重に考えましょう。自分のスタートアップがその問題を解決したら、世界はどのように変わるのでしょうか。

約1年前、Henryと私は、自分たちは会議を改善する道具を作ったに過ぎないと考えていました。しかし、YCのキャンパス内でのオフィスアワーの際に、Kevin Haleが私たちとの面談の締めくくりに、よくない会議を改善することで、世界のGDPが大きく向上する様子を思い描くように強く勧めました。自分のスタートアップが解決する問題について、より大胆に考えることで、刺激的でやる気を起こさせる将来像を描くことができます。

II – 初期のユーザーがいる場合は、自分の製品について彼らがどのように思っているかを調査し、そこから将来像を描いてください。Airbnbはその素晴らしい例です。Airbnbのホストに会い、その家に滞在することで、宿泊客は異国の地でくつろぐことができます。自社サービスのユーザーが「場所を問わずにくつろぐことができる」ように手助けをするという会社の理念は、宿泊客のこうした感覚を力強くとらえたものです。

これらの問いかけについて考える中で、私はまた、次のようなリソースが有益であることにも気づきました。

I – Jessica Livingstonの著書、Founders at Work (日本語訳) ——Max Levchinに関する章を読んでみてください。著者は、あるプロジェクト(暗号書記法の図書館)が世界を変える企業(PayPal)へと発展した様子を克明に描いています。
II – Paul Grahamのエッセイ、 “A Student’s Guide to Startups”日本語訳) ——「クラス・プロジェクト症候群」を注意深く読んでください。
III – スタートアップを始めるための「もっともよい理由」日本語訳)についての、Dustin Moskovitzによる議論。

3. 多くの時間を割きましょう

この最後の段階は最も過酷ですが、最も重要でもあります。皆さんが非常に多忙な類の学生ならば、おそらく自分の時間の約90%を、学問、体育、課外活動、社会活動のいずれかの組み合わせに費やし、残りの10%をサイドプロジェクトのために残していることでしょう。しかし、自分のサイドプロジェクトが成功するスタートアップに変わるチャンスをわずかでも得るためには、その割合を逆にして、自分の時間のほとんどを会社のために費やす必要があります。

この劇的な変化を実現させるための最善策は、意欲的な締め切りを設定することです。去年の今頃、Henryと私は、業務時間後にKevinとともに、自分たちの試験的な製品を5ヶ月でははく3週間で販売することに決めました。ひとりは春休みの旅行を取り消し、その後に寝ずの夜が続き、Meetingbirdの試験版が完成しました。 バグだらけで、性能に欠陥があり、ぎこちない製品でしたが、私たちはその瞬間に、自分たちが作っていたのはサイドプロジェクトを超えるものだと悟りました。

締めくくりの考察

この移行に関して、私は主に「いつ」ではなく「どのように」に注目してきました。それは、「いつ」に対する答えが、ほとんどの場合において、みかけによらず、簡単だからです。サイドプロジェクトをスタートアップに移行させる適正な時機は、単純に、皆さんが上述の三段階の困難さを経験してもなお、飛躍できる状態の時です。How to Start a Startupの講義 (日本語訳) において、Paul Grahamは、皆さんは次のいずれかであるべきだと説明しています。つまり、「本職の学生であって、スタートアップを始めていない人、または、本格的なスタートアップを始めていて、学生ではない人」のどちらかです。飛躍をするか否かは二者択一です。皆さんの直感が既に答えを出していることでしょう。

皆さんの今日の答えがどのようなものであろうと、学生企業家の旅路にお役に立てるならば、私はいつでも次のアドレスでお待ちしています。 paul@meetingbird.com および @PaulDornier

 

著者紹介

Paul Dornier

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: From Student Side Project to Startup (2017)

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