スタートアップがニュースを掲載してもらうためにやるべきこと (Michael Seibel)

私がこれまでに得た、メディアに関するアドバイスで最善のものは、Mike ArringtonとM.G. SieglerがSVエンジェルCEOカンファレンスの際に話していたものです。彼らはこう言いました。

 

PRはビジネスデベロップメントのように捉えよ。

 

それを聞いた瞬間に、すべてがしっくりきました。それまで私はメディアに対する話し方や私の会社について良い記事を書いてもらうための特別なルールが存在するものと考えて、精神のエネルギーを無駄に遣っていました。自分の書くメールにはカッコよくてキャッチーな件名が必要だ。新しい記事のアイデアをぶつけられる記者を100人は知っておくべきだ。私はプレスリリースを書かねばならない。言うまでもありませんが、これらの試みはほとんど失敗に終わりました。聞き覚えがありませんか?

PRをビジネスデベロップメントのように捉えるということが意味することは、人として記者との関係を育てたり、血の通わないメールではなく血の通った人間を通じて紹介してもらったり、フェアな価値交換を行ったりすることです。メディアに接する準備ができたYC企業に対して私がアドバイスするのは、以下のようなプロセスです。

 

第1ステップ:ニュースを作る

創業者が記者に対して自分の会社のプロフィールやストーリーを売り込む際、記事になるのが今日でも、来週でも、来月でもいいような内容である場合が多くあります。自分のスタートアップを紹介する記事を書いて欲しいと思うのは誰もが同じですが、そのようなストーリーは記者にとって価値がない場合がほとんどです。ストーリーを価値あるものにするのはニュース性です。

ニュースとは何か?

ニュースはタイミングです。明日より今日語ることに価値があるものです。ニュースは今注目を引くものであり、それが記者の求めるものです。ほとんどのスタートアップのニュースは以下の4つのカテゴリーに分類できます:

1. 新製品の発表、およびその特徴

このようなものは今日出されるものです。昨日でもなく、明日でもなく、今日です。InstagramやFacebookのタイムラインを考えてみるとよいでしょう。通常はユーザー向けの特徴を伝えたいものです。私の前の会社、Socialcamでは、動画やユーザープロフィールにサウンドトラックを追加できるビデオフィルターをリリースしたとき、メディアに呼びかけました。

2. 製品・売上に関する画期的な出来事

これは例えばユーザー数が100万人を突破したとか、MRR(月間経常収益)が10万ドルを突破したとか、一晩で100万人のゲストを獲得した、といったことです。数字は可能な限り大きいことが重要なので(スタートアップの規模に応じて)、数字を積み上げることを勧めます - 発表したい時点からさらに25%大きくなるまで待ちましょう - そうすれば次の発表タイミングも近くなります。

3. ビジネスデベロップメントにおける際立った取引や顧客

あなたの製品やサービスがAirbnbやInstacartのチームに採用されましたか? 自動運転車ネットワークを構築するためにGMと提携関係を結びましたか? もし先方の許可が得られるなら、発表することを検討すべきです。

4. 資金調達

良くも悪くも、資金調達は成功と一緒くたに語られるものなので、人が読みたがるトピックです。エンジェルラウンドやシリーズA・B等で資金調達したなら、ほとんどの記者はこれをニュースとして捉えますし、ニュースに触れた人の中からあなたの会社の未来の従業員が生まれるかもしれません。

注:私が挙げた例の多くは、アーリーステージのスタートアップにはちょっとハードルが高いかもしれません。私の目的はやる気を削ぐことではなく、一般的に理解しやすい例を提供することです。新製品や画期的な出来事、取引、投資ラウンド等があれば、それらのネタを売り込むことを積極的に検討するべきです。

第2ステップ:自分でメディアとの繋がりを作る

記者が話を聞きたいのはCEOや共同創業者であり、PRの人間ではありません。あなたはアーリーステージのスタートアップ創業者として、記者との関係を構築し売り込みを行うべきです。あなたの成功率は上がっていき、PRに費やす時間とお金は少なくなっていきます。信じてください - 私たちはこのことを理解するまでに、アーリーステージスタートアップとしてPR会社やPR担当者に10万ドル以上費やしたのですから。

メディアとの関係はどうやって作る?

バラまいて祈るだけではダメ。愚かなことです。

IT記者と出会う最善の方法は、別の会社のCEOか共同創業者から直接紹介してもらうことです。もしあなたがYCに入った会社の創業者なら、YC創業者のネットワークが大きく役立ちます。知り合いになりたいような記者は必ずあなたが知っている誰かの記事を書いています。その人に紹介してもらいましょう。適切なエチケットとしては、友人に対して一人の記者だけに紹介してもらうようお願いすることです。もしあなたがYC創業者でないなら、他のスタートアップと友達になって、スタートアップコミュニティで直接紹介をお願いしてみましょう。

紹介の際に織り込む内容は以下の通りです。記者が30秒以内に読んで返信できる内容です。

– ニュース。あなたのニュースを一文で説明します。

– もし独占的なニュースなら:その記者に独占的な情報提供であることを伝えましょう。

エンバーゴ(報道解禁日時)を設定するなら:いつ発表するのか、日時を伝えましょう。

– 20分間の電話での会話の依頼。礼儀正しく。直接会う必要はありません。

記者と電話で話す段になったら、あなたのニュースとあなたの会社が重要な理由を3〜5点挙げられるようにしておきましょう。明確に伝えたら、通話の終わりに、あなたのメモや関連情報があれば提供しましょう(スクリーンショット、グラフ、ロゴ、画像等)。こうすることで、礼儀を尽くしながらも自分が望む表現を記者に提供することができます。

第3ステップ:相手に独占的な情報提供を

ほとんどすべてのスタートアップは、一度につきIT記者1人に対して、独占的な情報提供を行うべきです。あなたのターゲットオーディエンス、すなわち投資家、将来従業員になるかもしれない人、前向きな顧客、アーリーアダプターのような人たちは、わずか数種類のITメディアに集中しています。たくさんのITブログに包括的に取り上げられることは多くの場合労力に見合わず、情報解禁タイミングが守られなかった場合には人を怒らせることに繋がります。

第4ステップ:一定のペースで定期的にニュースを発信

PRの世界には、一件のネタがメディアで何回取り上げられるかが重要な測定基準であるという哲学があります。このことにより複数の素晴らしいニュースが一本のストーリーにまとめられてしまい頻度が下がる、つまりより多くの記者が一度だけ記事にする、というようなことが起こるのです。これは実はスタートアップにとって最適な戦略ではないと私は考えています。

私にとってPRのメリットは測りにくいものの、確かにあります。科学の基礎研究に投資するようなものです。どう発展するのか予測できませんが、時間をかけて着実に投資していけば発展を見る日は来るのです。

スタートアップにとってPRから本当に結果を得るには、1年に一度大きな記事が出るよりも、1ヶ月毎、2ヶ月毎に記事が出るほうが良いのです。そのためには、複数のニュースを一本のストーリーにまとめるのではなく、複数のストーリーに分散してみましょう。また、数字を見ているときやチームと製品ミーティングを行なっているときにも、売り込めるニュースがないか注目しましょう。私はYCスタートアップに対し、6ヶ月内に発表したくなるニュースを常に3〜5点持っておくよう伝えています。そのうち1点が取り上げられなくてもプレッシャーを感じずに済みますし、あなたの会社のポジティブなニュースが定期的にメディアに露出されることを助けます。

他に留意すべきこと

ビジネスデベロップメントと同様、記者との面談や記事が毎回実現するものと期待しないことです。記者が「ノー」と言うとき、それがなぜなのか自分に問うてみましょう。本当にニュース価値のあるものを提供できていましたか? 他のすべてのこともちゃんとできていましたか? これらすべてをうまくこなしたとして、成功率は25〜50%くらいでしょう。

6〜12ヶ月間、定期的に価値あるニュースを発信し続ければ、2〜5人ほどの記者と比較的良い関係ができるでしょう。言い換えれば、あなたの会社の記事をある程度書いていく中で、直接会う機会があったでしょうし、あなたのメールにもほとんど返信してくれるようになったことでしょう。

この先、あなたのスタートアップの道のりの後のほうで、願わくば、メディアのほうからあなたの会社に有機的に注目し、あなたがやることについて自主的に記事にしたがるときが来ることでしょう––DropboxとAirbnbは素晴らしい例です。この時点になると、多くの場合CEO・創業者とメディアの間に距離を置き始めることが戦略的になってきます。このとき、PRの人間がとても有用になってきます。彼らは間に入ってクッションの役割を果たしてくれるため、あなたは発表する内容やその時期、伝える相手についてより戦略的に考えることができるのです。

最後に、PR活動は良いCEO・創業者であるうえでごく小さな一部であることを覚えておいてください。自分の時間の5%以上をメディアに費やさないよう注意し、PRから目に見える奇跡が生まれることを期待しないでください(たくさんのユーザーやお客、投資話の持ちかけが発生する等)。私がPRから得られたメリットのほとんどは記事が掲載されてから数週間、数ヶ月経って初めて明らかになったものです。

この記事の執筆に協力してくれたKat ManalacとCraig Cannonに謝意を表します。

 

著者紹介

Michael Seibel

Michael Seiebl は YC の CEO です。彼は Justin.tv と Socialcam の共同創業者であり、CEO でした。Socialcam は Autodesk に 2012 年に売却され、Emmett Shear の下で Justin.tv は Twitch.tv となり、Amazon に 2014 年に売却されました。スタートアップに関わる前、彼は US の上院議員選挙で財務ディレクターを1年勤め、2005 年に Yale University を Political Science の分野で BA を取って卒業しました。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Getting Press for Your Startup (2016)

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