優れた起業家になる方法 (Startup School 2014 #13)

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私がこの講義のシラバスに目を通して「役立つスキルとは何だろう?」と考えた時、頭に浮かんだのが、「自分をどのような創業者だと思っているか?」、「どのようなスキルセットが必要だと思うか?」といった疑問、また、「自分は準備ができているのか?」、「どのように準備するべきか?」、「これは自分にとって正しいことか?」といった疑問に対して皆さんが考えるべきことは何か、というテーマでした。

優れた起業家のイメージ

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ではまず、優れた創業者とはどういう人物なのか考えてみましょう。

まず思い浮かべるのがSteve Jobs、Bill Gates、Elon Musk、Mark Zuckerberg、Jeff Bezosといった人々でしょう。こうした創業者たちはスーパーマンまたはスーパーウーマンのような人だというイメージを持たれがちです。スキルのパノプティコン(全て)を持っている人、というわけです。パノプティコンという言葉を使えるのはStanfordで話をしていればこそですね。

要は、Product/Market Fitに詳しくて、プロダクト作りに秀でていて、素晴らしい戦略を立てられ、マネジメントが得意、資金調達もできる、というように、全てのことに秀でている人物のことです。

「優れた創業者」というのは、スーパーマンやスーパーウーマンで、あらゆるスキルに長けている人、と思われがちです。それは多才で多様性を備え、あらゆるスキルを駆使する人物とも言えるでしょう。

私がこの点を強調する理由に、まだ自分が駆け出しの起業家時代に読んだ記事が挙げられます。それは「Bill GatesはEinsteinより賢い」というものでした。確かにBill Gatesは賢く、そして大成功を収めていますが、彼自身、「Einsteinより賢い」と言われたいとは思っていないのではないでしょうか。

これは、創業者とはスーパーマンやスーパーウーマンである、という世間のイメージに原因があります。優れた創業者であれば「高いビルもひとっ飛び」、不可能はない、というわけです。

優れた起業家の実際

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しかし実際には、創業者は様々な悩みや問題に頭を抱えているのです。全能の人間などこの世に存在しないのですから。

一般的に、人は何らかの「スーパーパワー」を持ちたいと願うものです。自分の強みとなる何か、自分が解決しようとしている問題に特有の何か、自分を有利にしてくれる何かを持ちたいと願います。競争において差別化や優位性は非常に重要だからです。しかし、実はこうしたものは天才的な要素によるものではありません。

往々にして、狂気と天才を見極めるのは非常に難しいことです。なぜなら、それは結果によって判断されるからです。

不確実な状況と向き合っている時には天才であったのに、後に狂人とみなされるかもしれません。あるいは、本当は狂人であるのに、運が良ければ天才と呼ばれることになるかもしれません。実際には、そういったスキルセットについてどういう見方をするか、という非常に難しい話なのです。

では、私たちのような凡人がこうした戦いに参戦する時、どのように考えたら良いのでしょうか?

どうすれば優れた起業家になれるか?

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この「どうすれば優れた創業者になれるか?」という問題について考えた時、非常に重要なものとして私が思い浮かべたのがこのスライドに示したスキルです。

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どれも非常に重要です。極めて重要な、「なすべきこと」で、しかもうまくこなさねばならないことです。しかし、これら全部をこなすなんて超人的な仕事に思えてきますね。

そこで私がしたことは、この中から優先度が高いものを選び出し、「優れた創業者となるための要件とは何なのか?」といった考えるべきポイントにフォーカスすることでした。なぜなら、これらについて10点満点を取れたなら起業家オリンピックでメダルが取れる、全てにおいて一番である、という話ではないからです。

優れた操業チームとは何か?

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では、チームに関する考察から始めましょう。まず、創業者はスーパーマン/スーパーウーマンであるという説を捨てましょう。

創業者というのは、1人ではなく2~3人のチームである状態がベストだと思います。単身創業者ではうまくいかない、成功できないと言っているわけではありません。しかし、大抵の場合は2~3人のチームのほうがずっとうまくいきます。こうした点について投資家として見る場合でも、成功する可能性があるプロジェクトや創業者の組み合わせは2~3人のチームであることが多いです。

その理由として、先ほどお話しした非常に広範なスキルセットが挙げられます。自分の会社をいかに順応させるか、成功させるか考える際、膨大な課題が生じます。人は誰でも弱点がありますが、2~3人の創業チームであれば各自が持つ異なるスキルでそれを補い合うことができます。創業者として直面する問題の多様さに現実的に対処できるわけです。

創業チームを組む際に基本的となるポイントは、「共同創業者選びは非常に慎重に行うこと。また、共同創業者との深い信頼関係を築くこと」です。なぜなら、起業が失敗する理由の1つに、1年間、共に立ち上げをしてきた共同創業者と喧嘩別れしてしまう、といったものがあるからです。常にそうなるというわけではありませんが、よくある事で、そうなってしまうと致命的です。さらに、自分がする業務の多様性も挙げられます。

どこでスタートアップを始めるべきか?

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次のポイントは立地です。

よく言われるのが、シリコンバレーとはあらゆる逸材が集まる場所である、ということで、確かにその通りです。シリコンバレーのスタートアップがこれほどの成功を収めているのはあらゆる優れた人材が集まっているからです。才能のある人や創業者にとって、シリコンバレーに移住するというのは非常に重要なことです。

ここで、基礎的な数値からこれを考えてみましょう。シリコンバレーが非常に強いと思われる分野を考えた際、ここ20年間においてはソフトウェアに関するスキルが挙げられます。しかし、全ての優れたソフトウェア企業がシリコンバレーに移住しているわけではなく、できるわけでもありません。世界の様々な場所で活躍している優れたソフトウェア企業は数多く存在します。

では、なぜ立地が重要なのでしょうか?それは自分が優れた創業者であるかどうかを考える際のポイントにもなります。優れた創業者は、自分の仕事に不可欠なネットワークを求めるからです。優れた創業者は、「自分はスーパーマンだから、南極でもどこでも起業できる」とは考えず、成功するためには、自分にとって最高のネットワークが存在する場所に行く必要があると知っています。

事業に適した場所で起業すること

ちなみに、シリコンバレーはある種の特定の問題を解決するには実に適した場所ですが、あらゆることに適しているわけではありません。それを2つの例で説明しましょう。

1つ目はGrouponです。私は、Grouponはシリコンバレーでは創業できなかっただろうと思っています。Grouponのプロダクトはソフトウェアですが、ネットワークも生み出しています。もちろん、シリコンバレーには多くの優れたネットワークがあり、モバイルプロダクトとしてのインターネットテクノロジーなどを利用しています。シリコンバレーには多くの優れたスキルが集まり、それらに関するネットワークは実に素晴らしいものです。

アーリーステージのGrouponにとって重要だったことの1つは、大規模な営業力を持つことでした。大規模な営業力とネットワークのメリット/デメリットは表裏一体でありがちです。シリコンバレーは、「25階建てのビルを借りてそのうち20階をセールススタッフが働くフロアにする」といったものごとの進め方とはまるで逆の発想を持った場所です。シリコンバレーでそのような計画を立てようものなら、ほとんど関心を持たれず、多くの批判を集め、人材も集められず、資本効率やネットワーク効果、その他のシリコンバレーで重要となることについて資本家から口出しされることになります。

ですから、Grouponがシカゴで創業をしたのは、それほど意外なことではないのです。シカゴはそうした営業力の分野にとても強いからです。これは、ソフトウェアのスタートアップであっても、シリコンバレー以外の場所で起業し成長していけることを示しています。しかし、この点について考え始めると、「シリコンバレーに向いていないスタートアップは他にどんな種類があるのか?」という疑問が浮かんできます。

ファッション系スタートアップを立ち上げる人を想像してみてください。Poshmarkのようなモバイルマーケットプレイスではありませんよ。シリコンバレーはそうした分野には強いですから。そうではなく、「自分は新しいファッション企業を立ち上げるのだ」という場合です。

そこで「起業のためにシリコンバレーに行くのだ」と考えるのは良いアイデアではありません。ファッション企業というアイデア自体は優れているかもしれませんが、そのためには自分のビジネスをサポートしてくれるネットワークが必要なのです。

場所を選べることが優れた創業者の条件

そこで、「自分は優れた創業者か?」というテストの1つとしてスタートアップの場所決めが挙げられます。

起業する時には自分のビジネスが成功する場所に行く必要があるからです。私はよく、「起業とは崖から飛び降りながら飛行機を組み立てるようなものだ」という例えを使います。困難で、基本的には死ぬことが前提とも言える状況ですから、成功するためには、目の前にあるあらゆるチャンスを掴まねばならないのです。

ですから、優れた創業者はネットワークがあるところにやって来るのです。テクノロジー系やモバイル系、マーケットプレイス系スタートアップにとってはシリコンバレーが非常に適しています。しかし、他の多くのことに関しては、別の場所を考えるべきです。

逆張り屋であるべきか?

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では、今、流行の話をしましょう。ここ最近、コントラリアン(逆張り屋)という表現がよく聞かれますが、このコントラリアンとは何か説明しましょう。

実際、コントラリアンになるのは簡単です。難しいのは、逆張りであり且つ正しくあることです。「自分のアイデアは十分に逆張りか?賢い人はどう反論してくるか?」と考えている時は特にそうです。

無知や非常識ではない賢い人、何らかの専門家である人があなたのアイデアは挑戦に値すると考える可能性があるなら、それは本当の逆張りではありません。逆張りは大衆と関係しています。

本当に優れた逆張り的アイデアとはどういうものなのでしょうか?例えば消費者向けインターネットについて考える時、他の消費者向けインターネット企業の人々はどう考えるだろう?と想像するのは良い方法ではありません。

考え抜くこと

逆張りについて考える場合、「他の人は知らない、自分だけが知っていることは何だろう?」と考えます。「自分だけが優秀で、他の人はそうではない。だから、自分は正しい逆張り屋だ」と考えるのは非常に良くないことです。実際、その通りである時もあるかもしれませんが、誰もいない平原では雷に打たれやすいのも事実です。

つまり、自分が知っていて他者が知らないことは何かと考え抜くことです。

例えば、LinkedInの初期時代、私は創業者の皆に「自分の話を聞いてフィードバックをくれる賢い人全員を訪ねなさい」とアドバイスしていました。LinkedInで私は「こんなアイデアがあるのだけど、あなたはどう思う?」と言って歩き回っていました。

私のネットワークの3分の2以上の人たち―非常に賢い人たちも含まれます―が、私を見て、頭がおかしくなったのではないかと思っていました。彼らの言い分はこうでした。

「君の言うネットワークプロダクトとは、多くの人に使われて初めて価値が生まれる。最初の人が2人目を連れてくるまでは価値がない。2人目にとっても1人目と同様に価値はない。彼らはすでに知り合いだからだ。ユースケースが実際に機能し始めるのは50万~100万人だ。君のアイデアがその規模になることはなく、成長することもないだろう」。

批評家たちが知らなくて、自分だけが知っていること

こうした批評家が知らずに私が知っていたことは、「このビジョンを信じてみよう」、「これは面白いと思う」、「こんなプロダクトが存在するべきだ」、「このプロダクトを試してみたい」といった人々の話から様々な方法を考えることができる、ということです。そうした興味・関心からネットワークを成長させ、価値ある提案を提供できるだけの規模、LinkedInのような規模に達することができるということです。

これが、私が知っていて、批評家たちが考えていなかった具体的なポイントでした。つまり、逆張り屋になることを考える時は、賢い人たちがどうして反対するのかを考える必要があります。自分に反対する人は、何らかの知識ある立場から反対しています。しかし、彼らが知らずに私が知っている何かが、やがて事実であると判明するのです。このケースから、一般的に創業者は現実的な感覚の中で逆張り屋になるべきだと言えます。

逆張りに関するまとめですが、逆張り屋になるには様々な方法があると知っておきましょう。例えば、周りからはとても小さなアイデアだと思われているけれど、実は小さくなくて、とても大きい、ということがよくあり、実際に人材を集められることもあるのです。

また、LinkedInに関する別の例ですが、消費者向けセルラー系スタートアップの大半はロケットシップ型成長を見せるものだけが成功する傾向にありますが、実際には複利成長曲線に大きな価値があるのです。

LinkedInにはロケットシップ型成長はなく、年ごとに複利成長をしていました。しかし、消費者向けインターネットの世界ではパターンが定まりません。

いつ自分が行い、いつ移譲すべきか?

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創業者が必ず直面する多くの問題として、「自分が仕事をするべきか?あるいは人を採用して仕事を任せるか?」というものがあります。この質問に対する典型的な答えが「両方やる必要がある」というものです。

実際、創業者はその両方をする必要があるだけでなく、ある時には片方を100%、またある時にはもう片方を100%やる必要があります。数学的には矛盾しますが、両方を100%やるのです。

ありがちな話ですが、優れた創業者になるにはどうすれば良いかと考え始めると明白な矛盾を行き来することになります。

柔軟であるべきか、頑固であるべきか

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私がよく話しているもう1つのポイントは、「創業者は柔軟さと頑固さを兼ね備えるべし」というものです。

その理由ですが、往々にして起業家は「ビジョンを持て」、「逆境に耐えろ」といったアドバイスを受けます。他の人が考えない逆張りのビジョンを持っていることを自覚して、道を外れず、困難を乗り越えながら目的地を目指せということです。

これと同じくらいよく言われるのが、「データと顧客に耳を傾け、ピボットし、柔軟であれ」というアドバイスです。優れた創業者になるには、柔軟さと頑固さのどちらを発揮する場面なのかを見極める力が重要です。

私がよく言っているのは、会社であれ投資であれ、自分のプロジェクトがなぜ、コントラリアンとしても潜在的に優れたアイデアだと思えるかを明確にするべきだということです。そこには他の人は知らないだろうと思われることが含まれていなければなりません。

そして実際に戦場に出向くようになると、「自分はこの投資テーマに対して自信を深めているのか?あるいは投資テーマの価値が下がっているのではないか?」と考えることになります。自信を深めているのであれば、そのまま頑固に突き進むべきです。

ちなみに、逆境が自信を深めることもあります。下向気味だからといってすぐに止めるべきだという意味でもないのです。私が携わったPayPalやLinkedIn、Airbnb、その他多くのスタートアップには「どうしてこれが優れたアイデアだなんて思ったのだろう?」と思ってしまう、死の影の谷を歩いているような時期がありました。

PayPalの例でお話しましょう。2000年8月、私たちは1,200万ドルの収益を上げていながら費用曲線は累乗していて利益はなく、自信を失っていました。しかし、私たちは「状況を改善するために何をするべきか?」と話し合いました。そこから次なるアクションプランが生まれるのです。

自信を持つべきか、懸念を持つべきか?

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もう1つのポイントは、「持つべきは確信か懸念か?」です。「こうあるべきだ」というビジョンがあるなら、他のあらゆることを無視して突き進むべきなのでしょうか?

繰り返しになりますが、優れた創業者になるためには、自分が何を目指しているのかをしっかりと考え、確信を持ちながらも、批判やネガティブなフィードバック、競合他社の声に耳を傾ける賢さが必要です。「自分はどこに向かっているのか?」「投資テーマを変えるべきか?」、「自分の計画を変更すべきなのか?」と常に疑うことです。

これは自信を失うこととは違います。自信を持ちながら、同時に疑いも持つのです。繰り返しますが、要するにこの2つをいかに組み合わせるかがポイントとなるのです。

内部にフォーカスするべきか、外部にフォーカスするべきか?

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内部にフォーカスすべきなのか?プロダクト作りに集中し、外の世界や競合他社は無視すべきなのか?あるいは、外部にフォーカスすべきなのか?人を採用すべきなのか?色々な人に会うべきなのか?ネットワークインテリジェンスを駆使するべきなのか?繰り返しますが、答えは「両方やる必要がある」です。

私がこの、「片方ではなく両方」を重視する理由は、優れた創業者になるための条件の1つが、こうした境界を柔軟に行き来する能力を持つことだからです。時には一方に90%の力を注ぎ、時にはもう一方に80%の力を注ぐのです。「今、何が問題なのか」を見極めるために判断力を使うのです。

では、問題を解決するにあたって「これが私たちのすべきことだ」とわかった時、どのように仕事を分けるべきなのでしょうか?

ビジョンに従うべきか、データに従うべきか?

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昔からよく聞かれるのが、全てデータに従うべきだ、顧客やユーザーグループの言葉なのだから、という主張です。

私は様々な起業神話を知っていますが、その中に「データを集めて、それに従え」というものがあります。しかし実際には、データは自分が掲げているビジョンのフレームワークの中、どこを目指すかといった仮説の中にしか存在しないのです。そして、データはネガティブなものとなる可能性もあり、「このネガティブなデータは、方向性を変えろという意味なのか?」と考えることになるかもしれません。

そのようななかで、自分がやろうとしていることに関して具体的なビジョンを保つべきです。ちなみに、具体的なビジョンを持っているからといって必ずしも自分が考えていた大きなビジョンに辿り着けるというわけではありません。

例えばPayPalでは、「新しいグローバル通貨」と書かれたTシャツを配りました。Peterもここで講義をしたそうですが、当時の私が彼に言ったジョークに「世界的に通用する新しい通貨なんて実はもう持っているよね?ドルだよ。かなり前からあるから、聞いたことがあるかもしれないけど」というものがあります。

私たちは本質的にはドルのマスマーチャントだということです。もちろん、これはBitcoinにもあてはまりますが、それはまた別の話ですね。重要なのは、誰もが相手を問わず商取引の決済ができ、エレクトロニクスを活かしてあらゆる商取引を迅速に行えるユニバーサル・ネットワークを生み出すのだというビジョンなのです。

このビジョンがブレることはありませんでしたが、私たちはまず銀行モデルを考え、次に借金モデルを考え、最終的にマスマーチャントモデルを考えつきました。どうなっているのでしょうか?つまり、常にビジョンとデータを組み合わせるのです。データはビジョンというフレームワークの中にあります。そして、学んだことからビジョンが変わることもあります。

では私が非常に重要だと思うことをお伝えします。

リスクを取るべきか、リスクを最小化するべきか?

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一般に、起業家や創業者はリスクテイカーであると思われています。リスクという概念に不安を感じて萎縮するような人々とは違い、彼らはリスクを取る、と言われています。

これは事実で、起業家や創業者はリスクテイカーでなくてはなりません。そして非常に整合的なリスクの取り方を考える必要があります。なぜなら、賢い人でも反対するような大きな機会、唯一の逆張りの機会は、より多くのリスクを伴うからです。

一方、起業家としてリスクを考える時に必要となるスキルセットは「インテリジェントなリスクの取り方は?」、「フォーカスされたリスクの取り方は?」といったことになりますが、1つのことに関して正しくても他の多くのことが邪魔をしてきます。

いったん始めたら「成功の可能性を極力高める方法は?」、「その他のリスクを最小化する方法は?」、「賢いリスクの取り方は?」と考えることです。「リスクなんて気にせずやってみよう」という姿勢ではいけません。この写真は、こうしたリスクに対する感覚を非常によく表しているものだと思います。では、投資テーマを持つことに関する話に戻りましょう。

「テーマを持つ」とは、リストを作って計画を立てることです。例えばLinkedInでは、公開された専門家のネットワークが全ての人に恩恵をもたらすと考え、企業を含む全ての人々が私たちのやり方に共感してくれるだろう、と考えていました。

まずはLinkedInの世界感をイメージしてくれる人、実践してくれる人たちをアーリーアダプターとして展開し、彼らによる「価値ある提案ができるネットワークの展開」を最終的にはマスマーケットに成長させる、というものでした。これがいわゆる投資テーマの一例で、これに基づいて経済力をつけ、初期の採用を行い、事業を拡大していくのです。

投資テーマを持ったら、「自分の投資テーマは自信を深めるものか?弱めるものか?」、「市場から得られるデータを見たり、賢い人と話をしたりした時、自分の自信はどう変わるだろうか?」と考えるようになります。これがリスクを最小化するということです。

PayPalの初期時代、私たちがやろうとしていたのはPalm Pilotでのモバイル決済で、理由はそれが一番簡単だったからでした。しかし私たちは、プロダクトのリリース前の時点でPalm Pilot決済はうまくいかないだろうと悟りました。

そこで私はMaxとPeterに会い、「ここが正念場だ」と言いました。ここにいる皆さんはPalm Pilotのことを覚えていないかもしれませんね。Palm Pilotとは初期のPDA(携帯情報端末)です。当時、私たちの世界はPalm Pilotを中心に回っているようなものでしたので、全員がPalm Pilotを持っていることが前提となっていて、レストランで夕食代を割り勘にする時などあらゆるユースケースとなる、と考えていました。世の中のあらゆるレストランで「ゼロ・トゥ・ワン」が起きる。私たちはそう思っていました。

つまり、自分が進んでいる方向性に沿って考えていても、地雷原に遭遇してピボットが必要になることがあるのです。そしてその時、今や伝説の男であるMaxが、メールを使用した支払いというアイデアを思い付いたのです。

PayPalはメールを使用した支払いを主軸にできるので、「それはいいアイデアだ」と私たちはピボットしました。これが実行しながらリスクを最小化するという考え方の例です。

短期にフォーカスするべきか、長期にフォーカスするべきか?

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もう1つの古典的な問題が、「長期的ビジョンを持つべきか?あるいは目先の問題を解決すべきか?」というものです。繰り返しになりますが、答えは「両方やる必要がある」です。

問題は、この矛盾する2つの世界を行き来できるかどうかです。長期的ビジョンは常に頭の中に持っておかなくてはなりません。なぜなら、方向性がなくなってしまえば、結果的に出口のないフィールドにはまりこんでしまうからです。しかし、目先の問題解決にフォーカスしていないと痛い目にあいます。

この2つをどうやって両立させるかというと、短期的には「今日するべきことは何か?」、「今日は進展があったか?」、「今週は進展があったか?」、そして、「全体的に正しい方向性であるか?」と自問することです。

資金調達や戦略という観点からこの例を説明しましょう。世間では、スタートアップにはプロダクト戦略が不可欠である、とよく言われています。自分にはプロダクトのアイデアがあるから起業しよう、という感じです。

しかし、戦略に関してもっと基本的なことは、大抵、プロダクトの流通です。消費者向けインターネットであれ企業であれ、どんなにプロダクトが優れていても顧客に届けられなければ無意味なのです。

つまり、一般的にはプロダクトの「流通」が必要となります。流通は、プロダクト自体よりも基本的な要素です。そしてさらに基本的である要素が資金調達です。なぜなら、資金が底を突いてしまったら、あらゆる努力が無駄になるからです。素晴らしいアイデアを持っていたとしても、うまくいきません。

私は、優れた戦略を実行する時、資金調達をしながら、さらに次の資金調達のことを考えています。そのための準備ができているかを考えていますし、資金調達にとって重要と思われる関係の構築もしています。

かといって、「次の資金調達だけが最重要事項だ」と考えているわけではありません。自分が築こうとしているビジネスについて考えつつ、プロダクトの流通と資金調達がうまくいくにはどうしたら良いのか?をコア戦略として頻繁に考えるのです。ものごとを1つのつながりとして捉えるのです。

自分が優れた創業者になれるかを知るにはどうすればよいか?

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では、自分が優れた創業者になれるかどうか、どうしたらわかるのでしょうか?創業者は何らかのスーパーパワーを持っていなければなりません。

一般的に優れたプロダクトパーソンであることは役に立ちます。リーダーシップやネットワーク構築、説得術に長けていることも役立ちます。そして、これは重要な点ですが、自分が道を外れていないかを見極める能力も役立ちます。

また、そうしたことに確信を持つのと同時に「自分の投資テーマから逸脱していないか?」とパラノイア的に考えることも必要です。これらを正しい方法で行い、学習し、人を集めて束ねる。一般的には、それが優れた創業者になる方法だと言えます。

さて、典型的な話をしましょう。

理想と思われている創業者たち

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私は意図的にこの5人の白人男性の画像を集めました。彼らはいわゆる理想的な創業者とされています。

実際の多くの創業者たち

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しかし実際には、創業者は非常に多様で、様々な分野に関して並外れた才能を持っているのです。なぜなら、世の中には様々な会社が存在し、創業者が解決しようとしている問題は多種多様だからです。

私が言う多様性とは、性別や人種といった意味ではなく、年齢や経験の多様性です。Jack Maは起業する前は教師でした。こうしたことをよく考えてみてください。

問題は、「どのようにして平坦でない道を越えていくか?」、「どのように自分の周りにネットワークを築くか?」、「どのように人を集めるか?」です。

こうしたことは、創業者であれば直面する、そして絶え間なく変化していく問題です。

学習し、適応していく能力

皆さんに考えてもらいたいのは、1つのスキルセットではなく、学習し適応していく能力です。

自分を突き動かすビジョンを持ち続け、あらゆるソースからインプットを得て自分の周りにネットワークを築く能力です。これが、優れた創業者に求められる能力なのです。

起業家は、霧の中の平坦でない道を歩みながらこうした能力を発揮する必要があるのです。そうやって道を歩んでいる時、「これは必ずうまくいく」と常にわかっているのでしょうか?

答えは「ノー」です。そんなふうに信じられるのはクレイジーな人だけですよね。クレイジーであることが役立つ時もありますが…。

では、質疑応答に移りましょう。まとめになりますが、本日の講義のポイントは創業者のマインドセットでした。

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質問がなければ…はい、どうぞ。

Q&A

戦略について

Q
あらゆるスタートアップが直面する問題だと思いますが、自分の投資テーマを補強し、発展させるための戦略の選び方について聞かせてください。

A
非常に基本的なことの1つですが、プロダクトの流通が重要なポイントであると考えることです。LinkedInでは色々なことがありました。

まず、2003年のウェブは退屈なものでした。人々は皆、コンシューマーネットはもはや終わったと思っていましので、クリーンタックやエンタープライズソフトウェアなどを手掛けていました。今は当時よりも難しい状況になっています。なぜなら、あらゆる人が「インターネットとモバイルは面白い」と思っているからです。

様々なノイズの中で道を切り開いていくことが重要です。当時の私たちが使った戦略はもはや通用しないでしょう。

私たちは当時、セットアップをして、人々にインビテーションを送り、メカニズムを調整し、PRをしました。私たちが初期時代にした正しい決断の1つは、「招待に基づく登録のみを許可するか?あるいは招待なしの登録も許可するか?」について話し合ったことでした。

招待なしの登録を認めた理由は、このサービスにとても熱心な人が、必ずしも私たちの知り合いではなかったからです。知り合いでなくても、彼らはサービスに登録して広めてくれるわけです。私たちはこういった決断を数多くしていました。

今はさらに難しい問題に直面しています。プロダクトの流通に関して、「いかにして潜在顧客や潜在会員に時間を費やしてもらうか?」、「彼らが信じるべきものは何か?」ということを考えなくてはなりません。2003年当時は、「専門家のネットワークか…良いアイデアかもしれないね。よし、ひとつやってみようか」と思える時代でした。他に見るべきものもなかったですしね。

しかし、現在はあらゆるものがあふれています。つまり、現在の世の中でプロダクトの流通戦略を練る時は、「自分にとっての決定的な強みは何か?」、「他の人が知らずに自分が知っていることは何か?」を考える必要があります。

優れた創業者を見分ける方法

Q
優れた創業者を見分ける方法は何ですか?

A
私が非常に重きを置いているのが紹介です。私は誰かの紹介で来た人としか会いません。ちなみに私はこの後、次のミーティングが待っているので急いでそちらに行く必要があります。

ですから、私に関心を持ってもらいたい、時間を取ってほしいという人は、自分を紹介してくれる人を探してください。LinkedInを使ってくれという意味ではないです。時間は賢く使いましょう、という話です。

そこにいるSamが私を知っているように、私は実際、「紹介」によってものごとを決めています。例えば、私がAirbnbの人たちと会った時、彼らの売り込みを2分聞いただけで「あなたたちに投資しましょう。すばらしく魅力的なビジネスだと思うので、話の続きを聞かせてください」となったわけですが、その理由の1つは、彼らに関してすでに紹介を受けていたからです。

30分ではなく、わずか2分で決断ができたのは、あらかじめ彼らのことを知っていたからです。ちなみにこれは優れた投資家の大半に概ね当てはまる話です。ネットワークが非常に重要なのです。

洞察力の重要性

Q
洞察力は優れた創業者であるために必要な能力だと思いますか?

A
自分がターゲットとするものについて理路整然と説明できる能力が求められることは確かです。これは、自分が「海を沸かす」ような実現不可能なことやスイスアーミーナイフ的なアプローチをしようとしているのではないことを明確に説明できる能力です。

きちんと焦点をしぼり、自分は正しいし、うまくやれるということを相手に伝えられるようにするのです。その人が優れた創業者であるか判断する時、この能力は非常に重要なポイントになります。

高いレベルでものごとを明確にできなければ、ネットワークも築けません。投資家や従業員も集められません。自分のビジネスに関するミッションを非常に明確な形で表現できる必要があるのです。洞察力は有益ですが、状況による部分も少しあります。

私は優れた方法で問題を分析する創業者に魅力を感じますが、優れた分析はしていなくても自分のビジネスに関する直観を持っている素晴らしい創業者も多く存在します。自分の周囲で起きていることに関するより多くのチャートを持っておくことです。

貫き続けること

Q
立ち上げにあたり、方針を貫き続けるにはどうしたら良いのですか?

A
覚えている人もいるかと思いますが、LinkedInはFriendster、Myspace、そしてFacebookの下位にあるものと認識されていました。ずっと、有名な巨人の隣にいるちっぽけな存在でした。

私はLinkedInについて考えていた時、投資テーマはメカニズムであるという考えに行き着きました。あらゆる個人および組織の生活のために設計された正しい経済システムとは、公開された専門家のプロフィールであると信じていました。それが、世界があるべき姿で、そうなることで誰もがより良い生活ができる、と思っていたのです。

私たちは今、その点において他の誰よりも進んでいます。ただ、私が望んでいたような速さで発展したわけではないかもしれません。LinkedInが2003年の夏にニュースに取り上げてもらえたのは、「ソーシャル系って面白いよね」と世間が言っているなかで、「私たちはFriendsterのビジネス版です」と言ったからでした。

これは実際には相当ずれた表現なのですが、当時は「Friendsterのビジネス版か…それならニュースに出してあげよう」という感じでした。しかし、これは人々に関心を持ってもらうために重要なことでした。

私は今も、自分が信じる世界に自信を持っていますし、存在するべきだと思っています。そして、私たち以上にそこに近づいている者はいないという自信もあります。思っていたよりも時間がかかっているかもしれませんが、それでも良いのです。

なぜ優れた創業者の判断を間違うのか

Q
成功しそうな人を見極める際、間違った判断をしてしまう原因は何なのでしょう?

A
ある程度までは地雷原に足を踏み入れないと分かりません。自分の仮説が間違っていることもあります。他人に対する見立てを間違いやすくしてしまうものは何でしょう?私がよくやっているのは、会話の中で敢えて自分のアイデアを強引に推し進めて、相手の柔軟さと頑固さの両方を見る、というものです。

私が求めているのは、「私には信念があり、自分の考えがあり、主張があります。でも、あなたの話にも耳を傾けていますし、あなたが抱いている懸念についても考慮します」という姿勢です。

たまに、こういった姿勢を演技できる、という人がいます。きちんと話を聞いているように見せかけ、相手の主張について検討しているように見せながら、実際には無視している、という人です。私を無視するのは構わないですが、世間一般を無視していたら悲惨な結果になるでしょう。

これは、本質的な測定を誤る、という話です。創業者に関して紹介時によく尋ねられるのが順応性に関する質問です。私が好きなのが「無限の学習曲線」というフレーズです。

起業パターンとは、どれもユニークで新しいものです。「新しいことを学べるか?」、「学習能力が欠如していないか?」あるいは「何らかのスキルセットはあるか?」、「エゴが邪魔をしていないか?」といった点を見る必要があります。「自分は称賛されるべきだ」といった考えは間違った行動につながり、問題をうまく対処できなくなるでしょう。では、次で最後の質問にしましょう。

優れたチームを作る方法

Q
優れた共同創業チームを作る方法と、共同創業者を評価する良い方法について聞かせてください。

A
まず、とても良い形で協働ができるかが非常に重要です。これが私のチーム作りのポイントでした。深い信頼関係が必要なのです。複数の創業者について考える時に重要なのは、ビジネスに必要となる多様な強みを揃えることです。

一般的に、技術担当になる人が少なくとも1人必要です。それに資金調達などのビジネス面を担当する人も必要です。これが古典的なスキルセットで、幾つかの強みを組合せるのが一般的です。

創業チームは創業者がひとつになって作るものなのです。もう一段掘り下げた話になりますが、「夫婦のチームには投資するな」というのもよく言われることです。これは夫婦特有の力学によって余計なリスクが発生するためです。

創業者にとって必要なのは、「このメンバーはうまく協働できるか?」、「互いを支え合って正しい道を見つけることができるか?」と考えることだと思います。私はチームと話している時、「お互いに理性的に話ができているか?」という点を重要視します。

意見が一致していれば良いのではなく、「この点について考えたか?」、「この問題についてどう思うか?」と意見を出し合うことが大切です。リスクだらけの戦場でナビゲーターを務めるのが創業者なのです。

PayPalでよく見られた光景ですが、催促のシステムや他のあらゆるものを発明したMaxは頻繁にPeter Thielのオフィスに顔を出し、「会社の命取りになる問題を見つけた。聞いてくれ!」と言っていました。

つまり、皆が「仲良しこよし」で平和なら良いのではなく、「何が真実で何が解決すべき問題なのか?」、「何が短期的な問題で、何が長期的な問題なのか?」、「それにどう立ち向かうのか?」と意見を出し合いながら解決していくことが重要なのです。こうした集合的な問題解決、集合的な学習が優れたチームを生み出すのです。

判別の方法

Q
様々な創業者がいて様々なビジネスエリアがあるなかで、ものごとをどう見分けていったら良いのでしょうか?

A
この講義の目的は、創業者に特有のマインドセットとは何かを考察することでした。優れた創業者は多くいますが、それぞれに違いがあります。

例えば、ソフトウェアの世界では市場投入の速度、学習速度が非常に重要となります。ハードウェアの世界では失敗すれば終わりですから、正確さが非常に重要となります。間違ったものを作って出荷してしまったら命取りになるのです。

投資家として一般的に言えることですが、多くの投資家は、いくつかの特定のことを学ぶ能力に長けていて、それを繰り返し応用します。これは、分野への深い理解を通じて、その分野においてどの創業者が重要なのか、どうしたらその分野での投資に成功できるか、を見極めようとしているからです。つまり、分野ごとに独自の性質があるのです。

よく聞かれる質問として、マージンやコストの管理などの経営効率に関してどこまでマスターしなければならないか、というものがあります。コマースのようにリアルな世界でビジネスをしているのなら、かなりのレベルにならなくてはいけません。逆にZyngaのようなデジタルゲームのスタートアップなら、まったく重要ではありませんよね?自分に必要なものを身に付けることです。

講義の最初で、全能の人間はいないと言いました。私が最初のスタートアップでSocialNetという会社を立ち上げていた時、一緒に働いてくれていた友人と面白い会話をしたのを覚えています。彼は私に、「Reid、君をMcDonaldsのマネジャーとして雇うことは絶対にないな」と言いました。私は、自分でもその通りだと思います。絶対にうまくいかないでしょうね。

そして、最適なスキルセットも重要なのですが、それに加えて、矛盾しているように見える一連のことを行き来しながら処理できる能力がポイントとなります。ある時はこちらに重点を置き、またある時はこちらに重点を置く。そして、今、していることに適切な判断を下す。そういう能力は、様々なところで通用します。

ピボットのタイミング

Q
ピボットするべきタイミングを見分ける方法について聞かせてください?

A
投資テーマを決めて自信を持って遂行し、それを非常に明確にしておく必要があるのはなぜでしょうか。私が思うに、「長い間測定していると必ず低下してくる」という理由から自分の投資に対する自信をかなり長い間測定していない、あるいは実際に自信が低下している場合、人は自信を取り戻す方法を探して必死になります。

それが失敗した場合、その時がピボットを考える非常に良いタイミングだと思います。資金調達やプロダクトの流通やその成長パターン、バイラル、あるいは他の何かにおいて、うまくいきそうな策があるとします。3つ目までは試したが、4つ目は最初の3つほどうまくいきそうにない、次の2つはもっとうまくいかなそうだ…このようになってくると自信は失われてきます。

こういう時こそ、ピボットを考え始める時なのです。ピボットに関してよくある失敗は、壁に激突して全てが破壊されるまで待ってしまうことです。こうなると、もうどうにもなりません。これは待ち過ぎることによる失敗です。

個人のキャリアゴールについてですが、講義を通じて私が皆さんに伝えたかったことの中で古典的な課題の1つが「バランス」です。

私は創業者にバランスはないと思っています。これについて、コロラド州知事と、非常に面白い会話をしたことがあります。彼は「優れた起業家たちをここに集めるんだ。ここはバランスの取れたライフスタイルが手に入る場所だから」と言いました。

私は、「自分はバランスの取れた生活をしている」と言う創業者がいたら、その人は勝つためのコミットをしていないと見なします。本当に優れた創業者なら、「自分はこれに全てを注ぎ込む」と言うでしょう。わずか数年の話かもしれませんが、「今はこれをやっている」と、ひとつのことに集中している間は、バランスが取れているとは言えません。

つまり、目の前のことに猛烈にフォーカスするのです。寝食を忘れて取り組むのです。失敗に終わる道は沢山あるのですから。

 

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Lecture 13: How To Be A Great Founder (2014)

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