共同創業者の口説き方

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スタートアップの共同創業者は結婚以上の関係とも言われています。そんなスタートアップの共同創業者同士の馴れ初めを聞いていると、「共同創業者になってほしい」と一世一代の告白をするよりも、自然と「自分たちなら共同創業して当然だよね」となるような状況を作るほうがうまくいっているようです。まるで大人の恋愛のようですね*1

そこで今回の記事では、そうした自然な状況を作った共同創業者のストーリーから、共通している方法を解説します。

1. ご飯に誘う

共同創業者候補が皆さんの周りにすでにいる前提でお話しします。昔からの知人や友人、同僚などがその候補です。もしくは同じ起業家向けプログラムに参加している、相性の良さそうな人も良いかもしれません(FoundX Fellows Program などがあります)。

まずはその人をご飯やZoom飲みに誘ってみてください。一度目のご飯でアイデアの相談をする必要はありません。次からアイデアの話をしても遅くはありません。

ただ、ご飯に誘っても来てくれないようであれば、共同創業者とするにはまだ少し関係性が成熟していないかもしれません。

2. アイデアを相談する

もう一度ご飯に誘ってみて、「仕事がすこしつまらなくなってきたから、お金を稼げるサイドプロジェクトをしたいと考えている。うまくいけばスタートアップにできるかも」「ちょっと起業しようか迷っていて、今考えているアイデアの相談をしたいんですが」などと言って、アイデアの相談に乗ってもらいましょう。

この時点では一緒に起業をする、という話はしないほうがよいでしょう。あくまで気軽な相談という体で話しかけてみてください。

3. 定期的なアイデアの壁打ちを提案する

アイデアの相談がうまくいったのであれば、もう一度アイデアの壁打ちに誘ってみましょう。さらにうまくいきそうなら、定期的な壁打ちの予定を入れるようにしてください。毎週土曜日の17時など、日程を決めましょう。Zoomなどでも構いませんが、近くにいるのなら、土日に使いやすいカフェや作業スペースなどを選びましょう。

実は似たような流れで始まったのが PlanGrid です。定期的に毎週数時間、アイデアを話し合っていたそうです。その他のスタートアップでも類似の事例を複数聞いています。良さそうなアイデアが見つかるのは、一人で考えるよりも、壁打ちのような密なコミュニケーションを誰かとすることを通してが多いようです。

こうしたアイデアの壁打ちをやっていくと、二人の会話の中で盛り上がるアイデアに辿り着きます。すると「これだ!」となって、その候補の人のやる気も徐々に出てきます。

機は熟してきました。

4. サイドプロジェクトとして始める

とはいえ、ここですぐに起業へと進むのはお勧めしません。まずはサイドプロジェクトを始めてみることをお勧めします。そうすることでお互いのことがもっと知ることができますし、アイデアの可能性も検証できます。昔からの友人と言っても、お互いの働き方は知らないはずなので、そのあたりもサイドプロジェクトを通して確認できます。

なお、サイドプロジェクトを始めるときには「三か月後までに作ろう。そこでうまくいきそうかどうか判断しよう」などタイムボックスを区切っておくと、アイデアがダメな時や相性が悪かった時にも撤退しやすいでしょう。

サイドプロジェクトを通して、お互いの相性を確かめていきながら、アイデアも進めていくことができます。つまりこれは、共同創業者候補を探しながら、アイデアを磨くことができる、一石二鳥の方法です。

もしうまくタイミングが合わず共同創業につながらなくても、アイデアを深めることにはなります。そして深まったアイデアがあれば、別の人を誘うことも以前より楽にできるはずです。

シンデレラ症候群か、婚活か

共同創業者探しにこれほどまでに手間と時間をかけることは普通なのでしょうか? 私の知る限り、かなり普通だと思います。

それに起業してしばらくすると、CEOが採用にかける時間が50%程度になることも多いと言われています。週40時間働くなら、週20時間も採用に充てることになるのです。将来それぐらい採用に時間をかけることになるのなら、最初の共同創業者を探すのにももっと時間をかけても良いはずです。

単に待っているだけでは、白馬の王子様(共同創業者)がやってくることはありません。大人になってから自然な出会いなどは、ほとんどないでしょう。だから婚活が必要なように、共同創業者を探すのにも、地道な活動を行っていく必要があります。

古くからの友人や同僚を誘うことを少し躊躇する気持ちもあるかもしれません。友人関係から仕事仲間へと変わることで、その関係性は変わってしまうでしょう。それは避けられません。友人関係を取るか、スタートアップと言う挑戦の成功率を取るかは、その人の選択次第です。しかしそれは、会社を始めるための正しい最適化ではありません

共同創業者を見つけるのにかかる時間は思っている以上に長い

私たちの周りを見ていると、共同創業者を探すのにかかる時間は、アイデアを決めるのと同じぐらい時間がかかっています。もしまだ候補者すらいないのであれば、1年ぐらいかかることを考えていたほうが良いかもしれません。

そして共同創業者が早く見つかったチームは、アイデアの進みも早い傾向にあります。おそらく共同創業者がいることで、壁打ちが頻繁に行えて、アイデアを改善するスピードが速まるのではないかと思います。

なので、「アイデアを見つけてから共同創業者を探す」と順序立ててやっていくよりも、アイデア探しと共同創業者探しのプロセスを並列させて走らせることをお勧めします。

起業を考え始めた人は、アイデアを磨くだけではなく、共同創業者を探すことにもぜひ時間を使ってみてください。そのためにもさっそく今日からZoom飲みと称して、アイデアの相談に乗ってくれそうな人を誘ってみてはいかがでしょうか。

共同創業者の候補と壁打ちをしていれば、きっとアイデアも進むはずです 😃

 

著者情報

馬田隆明

東京大学 FoundX ディレクター。University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリストとしてスタートアップ支援を行う。2016 年 6 月より現職。 スタートアップ向けのスライド、ブログなどの情報提供を行う。著書に『逆説のスタートアップ思考』『成功する起業家は居場所を選ぶ』。

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