私たちは従業員向けハンドブックの作成法に関するGustoの新しいガイドについてGusto (YC W12) のKatie Evans-Reber氏およびSteffi Wu氏 (YC W12) から話を聞きました。こちらからダウンロードできます。
Craig Cannon: 従業員向けハンドブックを作成していない企業があまりに多い理由は何だと思いますか?
Katie: 私の経験から言えば、忙しいスタートアップにおいて起きるべくして起きる他のあらゆる物事を考慮すれば、残念なことにその優先度が低くなってしまいます。また、実際に従業員向けハンドブックが必要となるタイミングについての誤解もあります。それが実際に必要になる時期と、それを行う時間が実際にある時期とはトレードオフの関係にあります。非常によくあることですが、下手をすると従業員が100名前後になるまでスタートアップは豊富な人事経験をもつ人事担当者を雇わないんです。
Craig: では、いつそれをすべきなんでしょうか?
Katie: 早ければ従業員が25名の段階から、極めて基礎的なハンドブックを作り始めてもいいでしょう。職場での規則や規定はハンドブックの最も重要な部分ではありません。最も重要な部分とは、自社で発展しているカルチャーを文書化することです。それを行う場として、ハンドブックはまさにうってつけと言えます。
Craig: なぜ25名の段階で行うのですか? 1名の段階で行わないのはなぜでしょうか?
Katie: 確かに1名の段階でもできるかもしれませんが、自社のカルチャーがどんなものであるかは25名または25名以上になるまで正確にはわからないかもしれません。その時点では、あなたのバリューはおそらくまだ発展途上でしょうし、あなたの目的は25名を超えて発展し得るスタートアップを確実に手に入れるべく、具体的な何かを市場に出す点にこそあります。
Craig: なるほど。では、アーリーステージにおいて企業が考え始めるべきことは何ですか?
Katie: 私たちの従業員向けハンドブック作成ガイド内にはヒントとアドバイスがまとめられています。自分がこのハンドブックを必要としている理由、つまり何を実現しようとしているのかについて、自問する必要があります。単純に午前中の出勤時間や有給休暇規定を明確にしようとしているのでしょうか? それとも、自社のバリューやカルチャーをまさに文書化しようとしているのでしょうか? その取り組みには全く異なる2つの面があります。
Gustoでは会社のバリューが重要だと考えているため、ハンドブック作成の着手はテンプレート内に提示している方法で行うことを推奨しています。すなわち、それが重要である理由、それを読むべき理由、その根底にあるバリューと動機が何かを説明することです。
Craig: では、自社のバリューを定義するうえで、プロとしてのアドバイスは何かありますか?
Katie: 私が思うに、創業者としてビジネスを始めた動機が何であるかを理解した上で、その会社が自分にとってどういう意味を持つのかをはっきりとさせることに時間を費やす必要があります。その後、自社のカルチャーが発展し、自分自身も成長するにつれて、そういったバリューに立ち戻らなければならなくなるかもしれません。ですが、必ず自分にとって本当に重要な4つか5つの中心的なことから始めるようにしましょう。
Steffi: ここで付け加えさせていただきたいのは、それが企業ごとに異なるという点です。私たちは「さあ、これこそあなたの企業のバリューとすべきものです」とは決して言いません。このハンドブックは企業が「ここで働く意味とは何か」について一歩離れた場所からじっくり検討するための方法だと私たちは考えています。
一方において、それはコンプライアンスと方針であり、これらが規則および指針となります。そして他方では、 「私たちはこれらの指針をなぜ定めたのか? なぜなら私たちはXを尊重しているからだ」という、より本質的なものが存在します。私たちは何がその「X」なのかを語ることはありませんが、企業はその規定を定める理由について慎重に考慮すべきだとは考えています。
Katie: Gustoでの良い例はその無期限の有給休暇規定です。シリコンバレーではどの企業も無期限の有給休暇規定を定めているように思えるかもしれませんが、私たちはそれに関連する企業としてのバリューを具体的にもっています。すなわち、オーナーシップの精神です。自分の仕事、自分の時間に対するオーナーシップを感じて欲しいと私たちは考えていますし、自分と向き合い、休養するために必要な時間の長さに対してもオーナーシップをもてるようにあって欲しいとも考えています。
Steffi: ですが、無制限の休暇はどんな会社でもうまくいくとは限らないかもしれません。そのため、それは企業のバリューや人々がビジネスを遂行するうえで採りたい方法によって決まります。私たちが定めているような規定について一つ言えるのは、時にそれが人々の休暇を取得しようという気持ちをかえって削ぎかねないということです。ですので、Gustoの創業者や経営者たちは定期的に休暇を取ることで、「ほら、私たちは皆にこうして欲しいんだ。休養するための時間は誰でもとれるし、とるべきなんだ」と示しています。そのため、Gustoの全員が必要に応じてそうしています。
Craig: ええ、それは理にかなっています。ある人が企業に勤務していて、有給休暇、無期限有給休暇、その他もろもろに関して具体的に定めた従業員向けハンドブックが存在していない場合についてはどうでしょうか。 そういった人々がすべきことについて、どういったアドバイスをしますか?
Katie: それはその企業がどんなステージにいるのかによって決まるでしょう。もしあなたの企業が25名の段階にあり、有給休暇規定について書かれたものが何もなく、それに対して人々が疑問を抱き始めているのであれば、それこそがハンドブックを作成すべき時が来ていることを示す非常に良い目安となります。
Craig: それでは、今まさにハンドブックが欲しいと考えている従業員についてはどうですか? そのような人々が首脳陣にそう伝えることについてどのような提案がありますか?
Steffi: あなたの企業にそうしたいと考える人がいる場合、その人の言い分の本質は「私は自分がもっと良い仕事をするのに役立つ規定について実際のところわかりません」というものになります。また、「私はこの会社に適切なカルチャーを築き上げることに参加したいと考えていますし、その体制が実施されることを本当に願っています」ということにもなります。
私たちはこれを早くから経験することを推奨します。あなたの企業が正しい形で成長するうえでそのことが役に立つからです。
Craig: では、よくある落とし穴についてはどうですか? 初めてハンドブックを作成している人々が考えていない物事は何でしょうか?
Katie: そこに書かれていなければならない義務的な規定、そして使わなければならない実際の言葉づかいにも引っかかっていることがよくあります。その2つは重要ではあるものの、ハンドブックの作成を始める際には自社のカルチャーや職場の規範やバリューを文書化することもまた念頭におくべきです。
正しい法律上の言葉遣いについてはそれほど気にしないでください。人々が咀嚼して話せる形で書こうとすることは、人々にそれを実際に読んで内容を理解してもらう上で大切な部分です。
Craig: 従業員たちにその内容を実際にしっかりと覚えてもらうことについて、何か企業に対するアドバイスはありますか?
Katie: あります。私たちは提供する福利厚生の理由を見極めた上で、それについて何度も話しています。そのため、新入社員が入社すると、そのハンドブックを読み、そこで説明を受けるとともに、その後の新人研修会でそれについて議論する機会を得ることになります。さらに、全員参加の会議ではそれに関する話し合いを継続的に行いながら、自分たちのあらゆる行為の根底にある意図と理由を強化しています。
Craig: ではあなたの企業が成長するにつれ、その全てを書き直すようなタイミングは存在しますか? 単に改訂し続けるだけですか? そこをどう扱うのかについてお聞かせください。
Katie: はい、それは間違いなく見直します。法律上の観点から追加や修正を行わなくてはならない点を確実に無くしていくべく、私たちはハンドブックを年に2回見直しています。FMLA (育児介護休業法) は毎年変わります。更新やメンテナンスの必要なものも存在します。また、私たちは企業として、自らのカルチャーについて記してあることを徹底的に信じるようにもしています。
Craig: すばらしいことです。できたばかりの企業が皆さんに尋ねる質問のうち、他によくあるものは何ですか? ここでそれらについて取り上げたいと思います。
Katie: わかりました。そのような企業は通常、どんな規定を含めるべきなのかを知りたがります。そして幸いにも、それに関しては情報源が数多く存在します。私たちのハンドブック作成ガイドは利用できる素晴らしい情報源の一つです。これには必要なあらゆる情報や存在している規定へのリンクが含まれます。また、SHRMこと米国人材マネジメント協会からテンプレートをダウンロードすることもできるでしょう。
上位に来る質問はおそらく「そこにはどんな規定があった方がいいのか」、「私たちの規定はどんなものであるべきか」、「私たちは休暇についてどう考えたいと思っているのか」だと思います。
Steffi: 「誰かが辞めたときにはどのような状態になるのか」というのもあります。
Craig: それは業界全体でかなりありふれたものではないんですか? それとも、大きな差異があるのでしょうか?
Katie: いえ、ありふれてはいません。時には、州固有の規則もあります。とは言え、「この退職しようとしている人物に給与を支払わなければならないのか」とか、「次回の給与計算まで最終支払いを実行しなければならないのだろうか」といったような疑問もあります。その上、「私たちが退職金契約を導入したいのはいつか」についても企業として判断すべきでしょう。その特定の話題について浮かんでくる疑問はいくつもあります。また、「退職金支払いに対する会社としての見解は何だろう」といった疑問もあります。
業界全体にわたり、それどころかシリコンバレー全体にわたって、企業がこれを行う方法は大きく異なります。退職金を支払うべきか、それとも退職金を支払わないべきかについて、企業は異なる哲学をもっています。そのため、その疑問は実のところ、企業哲学にまで行き着きます。Gustoでは、誰かが退職するときには、まさに入社しようとする人々と比較して、それ以上とはいかないまでも、同じくらいの扱いをすべきだと感じています。ですから、その退職過程をできるだけ円滑に進ませることに対し、特に重点を置いています。もちろん、それが不可能なことも時にはありますが。しかし、そういったこと全てをハンドブック内で文書化しておくべきです。
Craig: 自分に関係する州レベルの規則について知りたい人は、どこへ行けばいいのでしょうか?
Katie: 自分に関係する州の雇用局を訪ねるのであれば、そこのウェブサイトを開くと、賃金、業務時間、労働法などに関する全規定の記載されたリストがあります。ざっと目を通すことができるでしょう。ですが、私たちのガイド内にも良いリストが載っています。
Craig: 素晴らしいですね。本日はお二人ともありがとうございました。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: How to Create an Employee Handbook (2017)