投資家を説得する方法 (Paul Graham)

重いものを持ち上げようとして怪我をすることがありますが、それは往々にして背中を使って持ち上げようとするからです。重いものを持ち上げる時は、足を使うのが正解です。経験の浅い創業者は、投資家を説得しようとする際に同じミスを犯します。ピッチの力を使って投資家を説得しようとするのです。ほとんどのケースにおいて、自分のスタートアップ自体を説得材料にしたほうがうまくいくはずです。つまり、なぜ自分のスタートアップには投資する価値があるのか理解するところから始め、あとはその理由をうまく投資家に説明すれば良いのです。

投資家は大きく成功するスタートアップを探しています。でも、そのテストはそんなに単純なものではありません。その他の多くの分野と同じく、スタートアップの結果の分布はべき乗則に従いますが、スタートアップの場合、その曲線は驚くほどの急傾斜です。うまくいった時の成功の規模は計り知れず、他を小さく見せます。そして、そのような成功を収めるスタートアップの数は毎年一握りしかないことから(一般的には15と言われています)、投資家は「大成功したスタートアップ」を100か0かであるように捉えます。どれほど小さくても、あなたには成功する15のスタートアップの1つになる可能性があると投資家に思わせることができれば、彼らのほとんどはあなたに関心を抱くでしょう。そうでなければ見向きもされないはずです。[1]

(高い可能性でほどほど伸びる会社に関心を持つエンジェルもわずかながらいますが、エンジェル投資家だって華々しい成功には抗えません。)

自分のスタートアップは大きく成長すると感じさせるためにはどうすれば良いのでしょうか?欠かせない3つの要素があります。手ごわいと思わせるような創業者、有望なマーケット、そして(一般的には)これまでの実績です。

手ごわい

最も重要な要素は手ごわい (formidable) と思わせるような創業者です。あなたが勝者と敗者のどちらになりそうか、ほとんどの投資家は初めの数分で判断します。そして一度その判断が下されれば、それを覆すのは容易ではありません。[2] 全てのスタートアップには投資すべき理由と、投資すべきではない理由があります。あなたが勝者になると考えれば投資家は投資すべき理由に、反対に敗者になると考えれば投資すべきではない理由に着目します。例えばマーケット自体は良好であるものの、セールスサイクルは遅い場合。投資家があなたを創業者として評価していれば彼らは良好なマーケットだから投資したいと言い、評価していなければ遅いセールスサイクルを理由に投資を見送るでしょう。

投資家があなたを欺こうとしているわけではありません。彼らのほとんどはなぜスタートアップが好きなのか、あるいは嫌いなのか、自分自身でもよくわかっていません。もしあなたに将来的な成功を感じさせる要素があれば、彼らはあなたのアイデアをもっと気に入るでしょう。でも、こういった彼らの弱さを見て悦に入ってはいけません。あなた自身も含めて、私たちのほとんどにもその弱さはあるのですから。

もちろん、アイデアが果たす役割があります。それは、創業者を気に入ることによって始まる、炎への燃料です。一旦投資家に気に入られれば、「そうだね、Xもできるんじゃないかな」といった具合に投資家がアイデアを求めてくることに気付くでしょう。(気に入られなければ「でもXはどうなるの?」となります。)

でも、投資家を納得させることの基本は手強さを感じさせることです。聞き慣れない言葉なので、どういう意味かおさらいしておきましょう。手強さを感じさせる人とは、どのような邪魔が入ろうとも自分が欲しいものは手に入れる人です。自信に満ち溢れた人とも言えますが、自信満々だけれども勘違いしている人がいます。手強いとはつまり、正当に自信に満ちている様子を指します。

手強さを感じさせることに長けた人はほんのわずかしかいません。実際に手強さがあって否応なしにそれが滲み出る人と、それ以外の多かれ少なかれ詐欺師のような人です。[3] 後に大きな成功を収める企業を立ち上げる人も含めて、ほとんどの創業者は最初の資金調達ではそこまでうまく圧倒的な雰囲気を醸し出せません。創業者は何をすれば良いのでしょうか?[4]

避けるべきは、より多くの経験を積んだ創業者たちの自信たっぷりな態度を真似ることです。時としてテクノロジーの良し悪しについてはそこまで詳しくない投資家ですが、自信を判断することには長けています。あなたが誰かの真似をしたところで不気味の谷に落ちるだけです。誠実さから逸れても、投資家の説得には至らないのです。

真実

経験の浅い創業者が風格を感じさせるには真実に忠実でいることです。あなたがどれほどの風格を感じさせられるかは定数ではありません。あなたの言動によって変わるものです。ほとんどの人は自信を持って「1足す1は2」と言いますが、これは自身の発言が真実であるとわかっているからです。もしあなたがVCに「1足す1は2」と言い、VCが懐疑的な目であなたを見れば、あなたは困惑して少し相手を見下すような気持ちにすらなるでしょう。「1年間で10億ドルを稼ぎ出します」という一文でも同じことができるのが、手強さを感じさせることに長けている人が持つ魔法の力です。まずあなたが自分自身を納得させることができれば、1年間に10億ドルとまではいかずとも、あなたにも同じことができるはずです。

それが秘訣です。なぜあなたのスタートアップには投資する価値があるのか、まずは自分自身を納得させましょう。投資家にも同じ説明ができれば、彼らはあなたを信じてくれるでしょう。自分自身を納得させると言いましたが、自信をつけるためにマインドゲームをやれと言っているわけではありません。自分のスタートアップには投資する価値があるのか、本当の意味で評価してみようと言っているのです。投資する価値があるとは思えないならば資金集めは諦めましょう。[5] でももし投資に値するものであれば、投資家にそう伝える時にあなたは真実を話していることになり、彼らもそれを感じ取るはずです。あることに関して深く理解していて、そのことに関してありのままを話すことができれば、流暢なプレゼンターである必要はないのです。

自身のスタートアップに投資の価値があるかどうかを判断するためには、あなたはその分野のエキスパートでなければなりません。もしエキスパートでないとすれば、あなたがいくら自分のアイデアに自信をもったところで、投資家の目にはそれはダニング=クルーガー効果としか映りません。事実、そうであることが多いのです。また投資家は、あなたが彼らの質問にどれほどうまく答えられるかを見て、あなたが分野のエキスパートか否かを素早く判断できてしまいます。自分が勝負しようとするマーケットを熟知することです。[6]

創業者自身が確信を持てずにいることを、なぜ投資家に納得させようとするのでしょうか?一つには私たちがそのように訓練されているからです。

私の友人であるRobert MorrisとTrevor Blackwellがまだ大学院生だった頃、指導教官が彼らのクラスメイトの1人に質問を投げかけました。私たちがいまだに引用する質問です。このアンラッキーなクラスメイトが自分のプレゼンテーションの最後のスライドに辿り着いた時、先ほどの教授が爆発しました。

それらの結論のうち、君が心から信じているものはどれだ?

学校の編成のあり方が作りだした人為的なものの1つに、何も言うことがなくても発言をするように私たちは訓練されているということがあります。10ページのレポートという課題があれば、例え1ページ分のアイデアしかなかったとしても10ページを書き上げなければなりません。全くアイデアが思い浮かばなくても、です。何かを生み出さなければならないのです。そして、多くのスタートアップが同じような心持ちで資金調達に臨みます。ここで資金を集めなければと思うと、自分のスタートアップの最高の姿をアピールしようと果敢に頑張るのです。その前に立ち止まって、実際のところ自分の言葉に説得力があるのか考える人はほとんどいません。なぜなら私たちは皆、決められたサイズのものを発表しなければならず、それがどれだけ薄くなったとしてもありったけの事実をそのサイズに引き伸ばさなければならないと訓練されているのですから。

資金調達のタイミングは資金を必要とする時でもデモデーのような人為的な期限日でもありません。あなたが投資家を説得できるようになった、その時です。[7]

そしてあなたが凄腕の詐欺師でない限り、自分自身が確信を持てないでいる事柄について投資家を納得させることはできません。無意識であれ意識してのことであれでたらめを並べるあなたの能力以上に、投資家のでたらめを見破る能力は高いのです。自分自身が納得する前に投資家を説得しようとしたところで、お互いの時間を無駄にするだけです。

一度立ち止まって自分を納得させることで得られるものは、時間を無駄にしないことだけではありません。強制的に自分の思考を整理させられます。このスタートアップには投資する価値があると自分自身を納得させる為には、なぜ投資する価値があるのかを考えなければなりません。もしこれができれば、得られるものはさらなる自信だけではないでしょう。どのように成功するのか、暫定的なロードマップも描けるはずです。

マーケット

私が意図的に、スタートアップが成功するかどうかではなく、スタートアップに投資する価値があるかどうかを話していることに気付いたでしょうか。スタートアップが成功するかどうかは誰にもわかりませんが、これは投資家にとっては喜ばしい状況です。成功するかどうかがわかっていれば株価も最初から成功を反映したものになるはずで、投資家が利益を得る余地はありません。スタートアップに投資する人は全ての投資が賭けであること、そしてそれがなかなか厳しい賭けであることを理解しています。

つまり、あなたが自分に投資の価値があることを証明したいならば、将来的な成功を証明する必要はありません。ただ、あなたが十分に良い賭けであることを証明すれば良いのです。何がスタートアップを十分に良い賭けとするのでしょうか?手強さを感じさせる創業者に加えて、大きなマーケットの大きな部分を占めるようになるというもっともらしい道筋が必要です。創業者はスタートアップをアイデアとして考えますが、投資家にとってはマーケットです。あなたが作るものに年間平均Yドルを払うX人の顧客がいるとすれば、あなたの会社にとっての実現可能な最大の市場規模(TAM: Total addressable market)はX×Yドルです。投資家があなたにその全額を回収するよう求めることはありませんが、あなたが最大でどれほどの成功を収められるのかを判断する材料にはなります。

ターゲットとするマーケットは大きく、そして自分が圧倒的な存在感を見せられるものでなくてはなりません。ただし現時点でそのマーケットが大きく、また、あなた自身がマーケットに身を置いている必要はありません。確かに、将来的に伸びを見せるか、あるいはいずれそこから大きなマーケットに移れるような小さなマーケットからスタートするほうが良いケースも少なくありません。必要なのは、数年後には大きなマーケットの独占に繋がるもっともらしい連続したステップです。

何をもってもっともらしいとするかは、そのスタートアップが設立されてからの期間に驚くほど左右されます。デモデーの時点で設立3ケ月目の会社であれば、どのような結果に繋がるのかを見るために資金提供に値する前途有望な試みであればOKです。その一方でシリーズAラウンドを集めようとする設立2年目の会社は、その試みが実際にうまくいったことを証明しなければなりません。[8]

でも、大成功する会社の全てについて言えるのは、その成功の大部分は外的な波にうまく乗ることで生まれるものであり、そういった意味では彼らは「幸運」だということです。したがって投資家に今後の成長を確信させるには、自社の発展を助けるような特定のトレンドを見つけなければなりません。一般的には「なぜ今なのか?」と自問することでこのトレンドは見つかります。もし自分が実行しようとしていることがそんなにも優れたアイデアならば、なぜ今まで誰もやらなかったのか?理想的な答えは、ある変化が起こったことであなたのアイデアがつい最近優れたアイデアとなり、そのことにまだ誰も気付いていないから、です。

例えばMicrosoftはBASICインタプリタを売るだけで大成功することはありませんでした。でもそこからスタートすることで、マイコンがBASICインタプリタ1台を支えるのに十分なパワーを持つようになるにつれてMicrosoftがマイコン用ソフトウェアを拡大していく態勢は完全に整っていたのです。そしてマイコンは結果として大変大きな波となり、それは最も楽観的なオブザーバーが1975年に立てたであろう予測よりも大きな波でした。

Microsoftの現在の華々しい成功を見て、この会社はきっと設立から数ケ月の時点で既に有望視されていたはずだと思いたくなります。でも、そうではありませんでした。良いという評価はあっても、一流という評価はありませんでした。どれほど成功している会社であっても、創業から数ケ月の時点で得られる評価は「十分」です。マイコンは大きな契機となり、Microsoftはその契機を的確にものにし、運にも恵まれたのです。しかし、こうなることが最初からわかっていたわけではありません。設立から数ケ月の時点で良い投資対象と思わせる会社はたくさんあります。スタートアップ全般についてはわかりませんが、私たちが資金提供を行うスタートアップの少なくとも半分は、自分たちがいずれ大きなマーケットでナンバー1になるのだと、Microsoftと同じくらい説得力のある姿を見せられるはずです。誰がスタートアップにそれ以上を求めるというのでしょう?

拒絶

あなたのスタートアップには、設立当時のMicrosoftと同じくらいの説得力があったとしましょう。あなたは投資家を納得させられるでしょうか?そうとは限りません。多くのVCがMicrosoftへの投資を見送ったはずです。[9] 実際に、いくつかのVCはGoogleを蹴りました。投資を断られることであなたは微妙なポジションに立たされることになります。資金調達を開始すればわかるようになりますが、投資家から最もよく尋ねられる質問は「他には誰が投資しますか?」です。資金調達を開始してしばらく経っているのに誰からも投資を取り付けられていない場合、あなたは何と答えますか?[10]

手強さを感じさせることに長けている人はしばしばこのような状況を、まだ投資は取り付けられていないものの投資をしようとしている人が複数いるという印象を与えることで切り抜けます。議論の余地はあるかもしれませんが、これは許容される戦術です。スタートアップの内容そのものよりも他に誰が投資するのかに気を取られる投資家も間抜けなわけで、そんな彼らに対して創業者が他の投資家とどこまで話が進んでいるのか誤解を招くような発言をするのも当然の対抗手段だとも思えます。詐欺師を騙すようなものです。ただし、ほとんどの創業者はこのアプローチを避けるべきです。嘘を演じ続けられる創業者は多くありません。これは投資家が最もよく耳にする嘘であり、何らかのプロフェッショナルである彼らに対してそのような嘘をつくには、よほどの嘘つきでなければなりません。

あなたが交渉のプロでないならば(もしかすると、例えプロであったとしても)、最良の策はそのような状況に真正面から向き合うことでしょう。なぜ他の投資家が投資を見送ったのかと、なぜ彼らのその判断が間違っているのかを説明するのです。もしあなたが自分は正しい方向に向かっていると確信していれば、なぜ投資を見送った人が間違っているのかもわかるはずです。経験豊富な投資家は、最も優れたアイデアは同時に最も恐怖を感じさせるアイデアであることを理解しています。みんなGoogleを振ったVCのことを知っています。投資の取り付けに至らなかったことを隠したり恥じたりせずに(そうすることで結果的には断った投資家の判断に同意していることになります)、自分のスタートアップの何が投資家を怖気づかせたのかを率直に語ることで、投資家に好印象を与える自信があなたに生まれ、また、投資家を怖気づかせた部分についてもより上手にプレゼンテーションができるようになるはずです。少なくとも断られたという事実は今や白日の下に晒されたわけで、現在交渉している投資家に後からバレる心配もありません。投資家にしても自分が発掘したスタートアップを誇りに思い、それゆえより強い思い入れを持ってくれるようになるはずです。[11]

この戦略が最もうまく作用する相手は一流の投資家、つまり、ハッタリが効かず、他の投資家は頭が固いだけの怠け者で大きな外れ値を見逃してばかりだと信じている投資家です。資金調達は、例えばマサチューセッツ工科大学に受かる頭脳があればどんなFランク大学にも受かると推測できる大学受験とは違います。なぜならば一流の投資家とそうでない投資家の間には歴然とした頭脳の差があるうえ、一流のスタートアップのアイデアは一見悪いアイデアのように映ることから、一流の投資家を除く全てのVCに断られたというスタートアップも珍しくないからです。Dropboxも同じ状況でした。Y Combinatorはボストンでスタートしましたが、最初の3年間はボストンとシリコンバレーで交互にバッチを行いました。ボストンの投資家があまりにも少なく、また、あまりにも慎重だったため、私たちはボストンのバッチを2度目のデモデーのためにシリコンバレーに送り込んでいました。Dropboxはボストンのバッチなのでボストンの投資家たちはDropboxを誰よりも早く知る機会に恵まれたわけですが、誰もディールを結ぶことはありませんでした。また同じようなバックアップと同期のやつが出たのか、と考えられたのです。その数週間後、DropboxはSequoiaからシリーズAラウンドの取り付けに成功しました。[12]

違うこと

投資家にとっての投資が賭けであることを理解しないことは、どれだけ内容が薄くても10ページのレポートを書かなければならないというメンタリティーと結びつきます。そして、創業者が自分の言葉に確信が持てるのかふと振り返ることすら妨害します。創業者は、自分のスタートアップは成功するのだというとんでもなく不確かなことを、投資家相手に説得しようとしているのだと考えます。こんなことを誰かに信じてもらうためには、明らかに優れたセールスの技術が必要です。でも実際には、資金調達の際、あなたは投資家にもっと地に足の着いたことを確信してもらおうとしているのです。自分の会社が十分に良い賭けとしての要素を全て持っているか、そして、そのような問題にあなたが質的に異なる方法でアプローチできるということです。もし自分を納得させられたならば、次の相手は投資家です。

また投資家と話す際には、自分を納得させた時に使った率直な言葉を使いましょう。内輪で話している時に漠然としていて大げさなマーケティング用語は使わないでしょう。投資家に対しても使わないこと。無意味なだけではなく、投資家に対してあなたが無能であるかのような印象を与えてしまいます。簡潔を心がけること。多くの投資家は明白にそこを見ています。自分の計画を簡潔に説明できない人は、その計画自体をよく理解していないという(正しい)論理です。例えこのようなルールを課していない投資家がいたとしても、不明瞭な説明には退屈と苛立ちを覚えることでしょう。[13]

手強さを感じさせることを得意としない人が投資家に好印象を与える方法を紹介します:

  1. 投資に値するようなものを作ること。
  2. なぜそれが投資に値するのかを理解すること。
  3. その理由を投資家に明瞭に説明すること。

自分が確信を持っていることについて話す時、私たちは堂々としているものです。逆に言えば、ピッチに飲まれてでたらめを並べないことです。事実から逸脱しない限り、あなたは強くいられるはずです。事実を磨き上げ、それを伝えれば良いのです。

 


原注

[1] この数が不変であると信じる理由はありません。むしろY Combinatorはこの数を増やすことを明確にゴールとして掲げており、そうでなければ創業を躊躇するような人にスタートアップを始めることを促しています。

[2] より正確に言えば投資家はあなたが敗者なのか、それともあなたには勝者としての素質があるのかを判断しています。自分には勝者としての素質が備わっていると投資家に思わせることができれば、あなたの調達している金額次第では彼らは続けて何度か面談を行い、当初の印象が変わらないかどうかを見極めようとするかもしれません。

逆に敗者の印象を与えてしまえば、少なくとも次の1、2年はチャンスはないでしょう。そして投資家がそのような判断を下す時、彼らが判断に要する時間は初回の面談のためにとった50分間に大きく満たないものです。VCのやる気のない態度について聞くびっくりするような話にも納得です。スタートアップがプレゼンテーションを行っている間もメールをチェックしていて、この人たちはどうして投資の有無を判断できるのでしょうか?その時点で既に結論は出ている、というのがその謎に対する答えです。

[3] この2つが並立しないわけではありません。本当に手強さがあり、なおかつ上手にそれを醸し出せる人もいます。

[4] 将来的に巨大企業を創業するような人が、スタート時点では手強さを感じさせていないなんてことがあるのでしょうか?私が思うに、これは、これまでの経験が彼らに翼を隠すことを教えてきたことが主な原因です。家族や学校、仕事が良しとするのは協力することであり、征服することではありません。そして、それでちょうど良いのでしょう。なぜならばチンギス・ハーンのようであろうとしたとしても、その99パーセントは恐らく協力することなのですから。でも、ほとんどの人は20代前半で幼少期からの躾というチューブから孵化し、そのチューブの影響を色濃く受けたまま生きていきます。自分に翼があることに気付き、その翼を広げ始める人もいますが、それには数年を要します。スタート時点では、彼ら自身も自分にどんな能力があるのかわかっていないのです。

[5] むしろ、今あなたがやっていることを変えましょう。あなたは、自分のスタートアップに自らの時間を投資しているのです。もし自分が今やっていることが十分に良い賭けだと確信が持てないならば、なぜそれを続けるのでしょうか?

[6] 投資家からの質問に答えられない時、最良の対応はでたらめを言うことでも諦めることでもなく、どうやって答えを見つけるかを説明することです。事前に準備した答えをその場で言えるほうがベターなのは当然ですが、答えを見つけようとしていることを説明しましょう。

[7] 私たちYCでは、スタートアップの創業者にデモデーのおよそ1週間前までは投資家のことは気にせずに自分の会社のことだけを考えるようにアドバイスし、そうすることでデモデーの時点で資金を集める準備が整っていることを確実にしています。この方法でいけば、デモデーを迎えるまでにほとんどのスタートアップが投資家を納得させられるだけの十分な説得力を身に付けます。しかし全てのスタートアップではないので、そういった場合は希望するスタートアップにはデモデーへの登場を先延ばしにするオプションを与えるようにしています。

[8] 創業者はしばしば、次のラウンドを調達することのほうがどれほど難しいのかに驚きます。投資家の態度に質的差異があるのです。子どもとして評価されるのか、それとも大人として評価されるのかといったような違いです。2度目以降の資金調達では有望であるだけでは足りません。実際に結果を出していなければなりません。

いずれのステージでも成長グラフを見せることは有効ですが、投資家はそれらを同一のものとしては扱いません。3ケ月時点での成長グラフは創業者が実際に機能しているというおおよその証拠です。2年が経った時点での成長グラフにはマーケットの今後の成長と、会社がそのマーケットを活かせるという証が必要です。

[9] ここで私が言いたいことは、現代に創業から3ケ月目のMicrosoftと同等の会社があってその会社がデモデーでプレゼンテーションを行ったところで、なかには関心を示さない投資家もいるということです。Microsoft自体は外部から資金を集めておらず、確かにMicrosoftが設立された1975年にはベンチャービジネスはほぼ存在しませんでした。

[10] 一流の投資家が他の誰が投資しているのかを気にすることは滅多にありませんが、ほぼ全ての二流投資家は気にします。したがって、この質問から投資家としての質を探ることも可能です。

[11] このテクニックを使うためには投資家があなたを振った理由か、少なくとも彼らが理由としたことを突き止めなければなりません。投資家がいつも自発的に詳細を話してくれるわけではありませんから、あなたから尋ねないといけないかもしれません。この時、自分の計画に改善すべき点があるのならば知っておきたいと話し、決して彼らの判断を覆そうとしているわけではないことを明確にしましょう。いつも本当の理由が返ってくるわけではありませんが、少なくとも試してみるべきです。

[12] 東海岸の全てのVCがDropboxへの投資を見送ったわけではありません。投資を申し出たファームが1つありましたが、Dropboxを安く見積もろうとしました。

[13] Alfred Linは、スタートアップの説明が明瞭かつ簡潔であることは二重に大切だと指摘します。あなたが直接話すパートナーだけではなく、そのパートナーから話を聞いた同僚も納得できるといったように、創業者と投資家との面談から切り離された場面であっても説得力を必要とするからです。
私たちYCでは意識的にこれを心がけています。自分のアイデアを聞いた投資家がそれをどのように同僚にピッチするのかを想像すること。私たちが創業者と協力してデモデーのためのピッチを作る際に踏む最後のステップです。

 

この原稿の草稿に目を通してくれたMarc Andreessen、Sam Altman、Patrick Collison、Ron Conway、Chris Dixon、Alfred Lin、Ben Horowitz、Steve Huffman、Jessica Livingston、Greg Mcadoo、Andrew Mason、Geoff Ralston、Yuri Sagalov, Emmett Shear、Rajat Suri、Garry Tan、Albert Wenger、Fred Wilson、Qasar Younisの各氏に感謝します。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: How to Convince Investors (2013)

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