スタートアップのピッチ方法 (Startup School 2019 #16)

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Kevin Hale
本日の講義は、スタートアップスクール開講直後に私が担当した「スタートアップのアイデアを評価する方法」のパート2です。

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これら2つの講義は共通して、投資家の視点からの評価法を説明しています。投資家によるスタートアップのアイデアの評価法およびその構造を創業者の皆さんに説明することは、創業者が自分たちのアイデアやビジネスチャンスについてより良く理解してもらうのに役立つと思ったからです。

今回の講義は、自分に興味を持ってもらいたい人たちに向かって、いかに効果的にそれらをプレゼンテーションするか、についてです。

前回の振り返り:スタートアップのアイデアは課題、解決策、洞察

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前回の講義で私は、「スタートアップのアイデアとは、なぜ会社が急成長できるのかという理由についての仮説である」と言いました。こうした仮説は、問題、ソリューション、洞察という3つのパートで組み立てる必要があります。

課題は大きく、広いもの

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根本的なポイントですが、皆さんが取り組む問題とは、かなり大きく、広範であるべきです。多くの人が抱えている問題であり、巨大な市場がある、と思えるような特質を多く備えている必要があります。

「課題を探している解決策」にはならないようにする

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ソリューションについて理解しておくべき唯一の点は、テクノロジーありきではなく問題ありきで始める必要がある、ということです。

圧倒的な優位性=洞察

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最後に、他社とは一線を画す独自性と、何らかの圧倒的な優位性を持つ必要があります。圧倒的な優位性とは、私たちが洞察と呼んでいるもので、自社が他社より速く成長を遂げる理由となります。

パート1の講義では、スタートアップが獲得し得る5種類の圧倒的な優位性と、それらを手に入れるためのベンチマークについて説明しました。スタートアップのアイデアを理解・考案する際、「全てを詳細に説明するために、あらゆることをしなくてはいけない」と思わないでください。

これは皆さんに知っておいていただきたい、そして覚えておいていただきたいことですが、本当に優秀な投資家は自分でそれをしてくれます。創業者の話に耳を傾け、推測を立ててくれます。

YC の応募のコツを読み解く

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本日の講義で取り上げるのは、「そうした仮説をどのようにまとめあげるか?」、「自分のスタートアップやそのアイデアについて、自分が理解しているあらゆることを、どのように投資家にプレゼンテーションし、出資を勝ち取るか?」ということです。

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こちらのスライドは、YCスタートアップに応募する際に記入してもらうフォームです。この応募書類で私たちが質問していることは、YCのパートナーが皆さんのスタートアップを評価するために使われます。フォームの下部にはいくつかのリンクがあり、

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そのうちの1つに「合格のコツ」というリンクがあります。

私は非常に多くの応募書類に目を通しているので、全てがそうであるとは言えませんが、どうも創業者たちがこのエッセイを読んでいないように思えます。

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これは2009年にPaul Grahamが執筆したもので、ここに書かれていることの大半は今でも通用し、今も人々はここに書かれていることで間違いを犯しています。

では、皆さんの集中力が途切れないうちに、いくつかのポイントについて説明し、しっかりと覚えていただきたいと思います。

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このエッセイの中に、「YCでは、基本的に面接に到達した全ての会社を信じていますが、同じように優れた会社ながら応募の段階でミスをして私たちの目に留まらなかった、面接に辿り着かなかった会社もあると思います」という一文があります。

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そうした会社は自分のアイデアを明確に説明できていなかった、ということです。それに尽きます。

皆さんは「自分のスタートアップが選ばれなかった理由は、アイデアに関する複雑な部分を説明しなかったからだ」と考えるかもしれません。

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しかし、それは思い違いです。まず皆さんの心に留めておいてほしいのは、YCのパートナーである私に、ピッチをする必要はない、ということです。

優れた投資家は想像してくれる

優秀な投資家についてお話ししましょうか。普通の投資家は、創業者が自らのアイデアについて話をすると、色々と口出しをしてきて、創業者は粗探しをされているような気持ちになります。そういった投資家は、そのアイデアが失敗するかもしれない理由についてばかり聞いてきます。

しかし、優れた投資家は全く反対のことをします。彼らは創業者の言葉に耳を傾け、想像力を働かせ、楽観的主義を駆使します。そして、そのスタートアップが10億ドル企業に成長するためには、ある種の稀有な出来事が発生する必要があるという知識に基づき、創業者に起こり得るあらゆる稀有な出来事を思い浮かべようとします。そして、そうやって得たものを、創業者に投げ返してくれます。

私たちは自分自身を売り込むことに十分長けているため、皆さんがそれをする必要はありません。正直な話、起業間もない創業者の皆さんは、そもそもピッチが下手ですよね?

投資家によるピッチの評価軸は3つ

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皆さんに理解してほしいのは、私が創業者のアイデアを聞く時は、「このアイデアを理解しているか?」、「このアイデアにワクワクするものがあるか?」、「このチームは好感が持てるか?一緒に仕事をしたいと思うか?」という3つのポイントでの評価を心掛けているということです。

驚きですね!皆さんがグループセッションに参加する際、毎週提出していただくアップデートの中で、お互いにこの3つの質問をすることになっていますね。つまり、これらは私たちYC自身も理解したいと思っている質問だということです。

私たちは創業者の皆さんが毎週、他のスタートアップと話をする際、それをフィードバック獲得の練習にしてもらい、他者に自分のアイデアを浸透させることができているか確認してもらいたいと思っています。

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皆さんが目指すべきはとにかく明確さです。それ以外のことは私に任せてください。

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応募書類に話を戻しましょう。

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本日の講義では2つのポイントに絞って見ていきます。その2つは、「『あなたの会社が作ろうとしているものは何ですか?』の欄に何を書くか?」、「いかに効率的に自社の説明をまとめるか?」です。

明確さ

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これらを行うためにまず必要となるのが、明確さです。

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私たちが明確さを重視するのは、明確なアイデアは成長の土台となるからです。YCまたは世界の優良企業は、有機的成長を遂げています。そういった企業は口コミで成長しています。

では口コミとは何でしょうか?

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それは、このスライドが示しているとおりです。

明確さは口コミのもとになり、成長を支えてくれる

例えば、私がディナーの席で、皆さんの会社について、皆さんが何をしているか、作っているかなどについて語ると、同席している人たちに最も注目される人になる、ということです。私が皆さんの会社について誰かに話すと、その相手は自分が聞いた話をまた別の誰かに話したくなる、という流れです。それが口コミです。

口コミとは、私が皆さんのしていることを覚えていて、それについて熱心に語り、その内容が自然に広まっていく、というものです。

私は、マーケティングや宣伝は税金のようなものだと思っています。なぜなら、それらは会社が人の記憶に残るような素晴らしいものを作れなかった対価として払うものだからです。

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ディナーの席で自社について皆に覚えてもらうためには、まず相手に理解してもらう必要があります。

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物事をより良く理解してもらうための非常にシンプルなルールを説明しましょう。

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私が執筆した、「より良いピッチデッキの作り方」というエッセイを読んだことがある方には、馴染みのある内容でしょう。ここでは、ピッチデッキの作り方に関する説明は、実はアイデアや他の多くのことにも応用できる、ということに特化して説明していきます。

明確さのために読みやすくする

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ピッチデッキやスライドで物事をよりわかりやすく表現する方法は、読み易く、簡潔に、そして明確にすることです。

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本日の講義では、皆さんのアイデアを読み易くすることにフォーカスします。

明確さという観点からも興味深い内容でしょう。先ほど挙げたエッセイの中で、私はYCのスタートアップたちがデモデーの日に1,000人もの投資家を前に行うプレゼンテーションについて書いています。

この投資家たちというのはある意味、独特な聴衆です。

第一に、聴衆の大多数は高齢で、どちらかと言えば視力が衰えている人たちです。ここにいる皆さんのように最前列に座ることができず、中には後列に座っている人や立っている人もいます。

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つまり、読み易いスライドというのは、後列に座っている、視力が衰えた高齢の人々にも理解してもらえるものを意味します。

読みやすさのためには、何も知識がない人でもわかるようにする

では、読み易いアイデアにするにはどうすればよいのでしょうか?基本的には、最前列に座る人たちだけではなく、何もわかっていない人、知識の少ない人、室内の全員を対象にした、皆が理解できるスライドを作成することです。

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読み易いアイデアなら、皆さんのビジネスについて全く知らない人々でも理解することができます。つまり、自分のアイデアを明確に理解してもらえる人を最大限に増やすことができるわけです。

創業者は、他の何よりも自分の会社について話をすることが多くなるため、これは極めて重要です。実際、Y Combinatorの人間はこの点にかなり熟達しています。YCに参加するスタートアップ企業は、自社に関する説明の練習を常に続けることになります。

スタートアップスクールのカリキュラムは、自社に関する説明の継続的な練習をサポートすべく、設計されています。なぜなら、10億ドル企業を目指すなら、多くの人々のサポートが必要となるからです。

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共同創業者となる人を見つけようとすることもあるでしょう。相手がユーザーであろうと、投資家であろうと、従業員であろうと、株主であろうと、自社について明確に話せるようになっている必要があります。創業者はこうした説明に熟達し、迅速かつ効率的に行えるようになっている必要があります。

読みやすさのために避けるべきこと

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次に挙げるようなことは避けるべきです。これらは物事をわかり難くし、あなたのアイデアを不明瞭にします。

曖昧さ

1つ目は曖昧さで、これは明らかに明確さや明快さとは対極のものです。少々抽象的であったり、2通りに解釈できてしまうものであったりすれば、聞いている人は皆さんのスタートアップについて理解するために質問をしなくてはならないでしょう。

複雑さ

2つ目は複雑さです。私の中では、複雑さに関する非常に具体的な定義があります。語根を見ると、簡潔さと複雑さは同じルーツを持っていて、撚り合わせたり組み合せたりすることと関係があります。簡潔なものは1本の「組みひも」と言えます。複雑なものは、この組みひもが複数あり、互いに絡み合っています。

簡潔なアイデアとは折り重なっていないアイデアを意味し、複雑なアイデアとは絡み合っているアイデアを意味します。簡潔さとは、説明の中に多くのことを盛り込もうとしないことを意味します。

理解不能なこと

3つ目は理解不能なことです。これはいわゆる異質なものです。創業者が自分の会社について話している時に、聞き手が内容を理解できないと感じる場合を指します。専門用語はまさしくこれに当てはまります。聞いている人が理解できない用語は全てそうです。フェイクであるものも同様です。

不定代名詞のように、「これ」とか「など」といった言葉を使い、それらの名詞が具体的に何を意味するのか説明をしない場合がそうです。何かを示唆するだけで、はっきりとは述べない、という場合も当てはまります。

不要なもの

4つ目は不要なものです。これは何かと言いますと、人々から注目されない言語のことです。UXデザインにおいて、人々が見たくないものや重要な価値があると思えないものには一種のブラインドネスが生まれます。例えば、広告ブラインドネスは一般的に理解しやすい好例です。

自分のアイデアについて話をしている時、簡単に無視されてしまうような言葉を使う方法も存在してしまう、ということです。どうしても聞き手の頭に残らないものがあるわけです。

マーケティング用語のようなものがそうです。これに関しては皆さんも様々な話を聞いたことがあるかもしれません。MBA用語は、使い手が自分を大きく見せるための奇妙なものです。

その他にも、特に情報をもたらさない話やバズワードがそうです。投資家として何度も何度も聞いたことがある、または情報もしくは価値がゼロとみなしている特定の言葉を耳にすると、私はそれらを無視します。その結果、創業者のピッチの一部は私の耳に届かないことさえあり、私の記憶に残ることもありません。

明確さのためにやるべきこと

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会話調であること

創業者は、話し上手である必要があります。優れたピッチとは、自分の母親に話しても理解してもらえるものをいいます。話を聞いた母親は皆さんを誇らしく思い、首をかしげることはないでしょう。

つまり、会話調である必要があり、これは口コミにとっても実に有益です。なぜなら、私たちが会話をする時は、一般的な、くだけた口調で話をするからです。MBAのように話すこともしませんし、常にCEOのように話すわけでもありません。ですから、会話をするように話をするのが最適といえます。

専門用語を使わない

繰り返しますが、専門用語は使ってはいけません。自分の業界でのみ理解または使用されている言葉は避けてください。

前置きは不要

また、前置きは不要です。これに関してはいくつかの事例を紹介しますが、話を明確にする必要がある場合は、自分が話したいことを単刀直入に伝えるようにしましょう。回り道をしながら、徐々に目的地にたどり着く必要はありません。

再生可能なものにする

最後の重要なポイントは、再生可能性です。私が皆さんのアイデアを聞いた時、それを自分の頭の中で想像できるでしょうか?皆さんの会社を立ち上げるために何を作り出す必要があるか、見えてくるでしょうか?

それができない場合、私は頭の中で皆さんの会社が何をするか思い浮かべることができません。そして、それが思い浮かべられるようになるまでは、自分が皆さんの会社にワクワクしているかを確かめるための質問を一切できませんし、皆さんのビジネスに関する、その他の詳細なことについて理解することもできません。

スタートアップのアイデアには名詞が必要

頭の中で思い浮かべるためには、私は「名詞」を知る必要があります。頭の中で思い浮かべる「モノ」を知る必要があります。

スタートアップのアイデアを聞く際、私が理解する必要がある名詞は、3種類あります。

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1つ目は、皆さんの会社が作っているものは何か?です。これは極めて明確である必要があります。そして2つ目が、解決しようとしている問題は何か?で、3つ目が顧客は誰か?です。2つ目と3つ目はいわば市場に関係していますが、私はこれら3つの名詞を思い浮かべる必要があります。

ダメな事例(1)

いくつかの事例で説明しましょう。このスライドを見てください。

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「私たちは、個人と情報との関係性を変革させます」とあります。これは最低です。こうした文章は至る所で見られます。

まず問題なのは、ここに書かれている名詞は全て抽象的であることです。これらはアイデアのはずですが、私はこれをもとに頭の中に何かを思い浮かべることができません。情報としての価値はゼロで、必要とする3つの名詞に関する回答を得るために、私はさらなる質問をしなければなりません。会社の説明としては不合格です。

ダメな事例(2)

次です。「あなたの会社は何を作るのか説明してください」という質問に対して、このスライドのような答えが返ってくることがあります。

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私は、こんなものは読みたくもありませんが、要するに、会社に関する「物語」から始まっているものです。

例えば、このような物語です。「まず始めに、このような問題がありました。では問題をじっくりと見ていきましょう。なんと、悪者が現れました。誰か助けてくれる人はいないのでしょうか?そこで登場するのが私たちです、私たちが助けます!」という感じです。

読んでいる側としては、「あと1,000通の応募書類を読まなくてはならないのだから、これは駄目だ」となるでしょう。

良い事例(1) Airbnb

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このスライドは、Airbnbが実際にYCに提出した応募書類の説明文です。「Airbnbは、旅行者がホテルではなく地元の一般家庭に宿泊予約できる、初のオンラインマーケットプレイスです」とあります。これは簡潔でよくわかる説明です。

私はこの文章から彼らが何を作っているか理解することができます。彼らが手掛けているものを実感し、「このアイデアにワクワクするものがあるか?」、「このチームは好感が持てるか?」というその他2つのポイントへと思考を進めることができます。

良い事例(2) Dropbox

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こちらはDropboxの説明で、「ユーザーまたはそのチームのコンピュータ間でファイルを同期させます」とあります。ここでのポイントは、この説明は新鮮であるだけでなく、見栄もなく、守りに入っているわけでもない、ということです。私はこれまで、「私は○○を懸念しています」、「こうしたフィードバックがありました」といった会社説明を多く目にしてきました。

こうした会社は、自分をより大きく見せ、喧伝または興味をそそる存在であるように見せるために、明確な説明を放棄しています。ずっと先で起こるかもしれない物事から我が身を守ろうとしています。

ここでの根本的な問題は、皆さんがこうした不必要な付け足しをしてしまうと、聞いている側である私は、結果的に皆さんから遠ざかってしまうということです。

良い事例(3) Lumineye

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これは現在のバッチに参加中の、ある会社の説明です。

「Lumineyeは、兵士やファーストレスポンダー(緊急対応者)向けのX線ビジョンを製造しています」とあります。ここから深く掘り下げていく必要はありません。実際にどういう仕組みなのか、といった詳細を理解する必要はありません。この説明が、まず私の好奇心の基盤となる部分を作り上げます。

ここから私は「どのようなビジネスになるのか?」、「このビジネスを手掛けるのに最適なチームなのか?」、「今、どこまで進んでいるのか?」、「トラクションや顧客はあるのか?」などと想像を展開することができます。この説明文1つを基に、私はあらゆる適切な質問を投げかけていけます。これは良い文章です。

良い事例(4) Vahan

もう1つ例を挙げます。

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現在のバッチに参加中の会社のものです。「[Vahan]は次なる10億人のインターネットユーザー向けのLinkedInを開発しています」とあります。この説明は、彼らが何を作っているのかを完璧に理解できる内容ではありませんが、私は興味をそそられました。LinkedInの新機能を開発している人物に心を動かされました。

これはいわばビジネスパーソン向けのソーシャルネットワークであると理解でき、どのような方法でビジネスにするのだろう?と興味が沸いてきます。説明文の中で、こうした「どのように?」という疑問に答える必要はありません。

私はこの会社が何をしているかを理解し、頭の中でこの会社は機能するか、成功するか、有望かといったことを評価するための質問を考え始めることができます。「最適なチームと言えるか?」、「ある程度のトラクションはあるか?」といった質問です。この説明文から、私は、スタートアップのアイデア評価における正しい軌道に乗ることができるわけです。

「XのためのY」が機能する場合、しない場合

今回この事例を紹介したのは、YのためのXという表現を使おうとする会社がたくさん存在するからです。○○のためのLinkedIn、○○のためのUber、○○のためのAirbnbといったものがそうです。こうした、YのためのXという表現は実に便利です。なぜなら、ビジネスモデルやある種の複雑な行動を省略して、その他のバーティカルや自分たちが成し遂げようとしていることに結び付けることができるからです。

YのためのXという表現は、使っても良いですが、大半の人がこれを乱用する、あるいは正しく使っていないため、ここで皆さんにいくつかのコツを紹介したいと思います。

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まず、「YのためにXを使う必要があるか?」です。スライドが読みにくかったら申し訳ありません。

1つ目は「Xはよく知られている名前か?」です。ここに入る名前は10億ドル企業などである必要があります。このXに、あなたの叔父さんが経営するペットシューズショップは使えません。世間の人々は、あなたの叔父さんが経営するペットシューズショップも、その店がうまくいっているかどうかも知らないからです。全員とは言わずとも、なるべく多くの人が知っている名前である必要があり、投資家側としては10億ドル規模の企業または機会であることが明らかである必要があります。

また、「Xは成功を収めている」と、あらゆる人が同意してくれる必要があります。誰もが知っている大企業であるが、悪名高い、という企業を選んでしまうと、世間からは成功をしていると思ってもらえないため、気を付けてください。

2つ目は「YはXを必要としているか?」です。これは、皆さんが狙っているターゲットが、そういったモデルやソリューションが適応されたもの、例えばAirbnbやUberを必要としていることが明らかであるか?ということです。そうしたモデルやソリューションが不足している、十分なサービスを展開している他社が存在しないセグメントであること、そして人々がそれらのモデルを求めていることが極めて明確である必要があります。

3つ目は、「Yは巨大市場である必要がある」ことです。YのためのXを手掛けている時、このYが巨大なビジネスと思えない場合、成功は望めないでしょう。創業者が「我々は○○である」と言っていても、それはサブセットです。私たちは、そのサブセットが本当に大きなものになると思えるかどうかを確かめたいわけです。

とても小さそうなサブセットを選べば、投資家はそれほど興味を持たないでしょう。規模が小さい場合、10億ドル企業に成長するための十分な潜在力がない、と不安になるからです。

うまくいかない事例を紹介しましょう。以前のバッチで、自らを「SnapchatのためのBuffer」と説明してスタートした会社がありました。

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Bufferは素晴らしい企業ですがSnapchatよりは明らかに小さいため、適しているとは言えません。

明確さのためには What から始めよ――WhyやHowではなく

このセクションの基本的な要点です。

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「whyやhowではなくwhatから始めること」です。What以外は不要です。大半の場合、what以外は明確さを低下させることになります。

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私は各バッチで1,000件の応募書類に目を通しますが、それは実に大変な作業です。

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それが自分の仕事とはいえ、様々な内容の応募書類に高い集中力と興味を持って目を通し続けるのは非常に骨が折れます。

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私の苦労をわかってください。私を助けてください。私は皆さんからの応募書類を手にし、目を通すわけですが、そうやって皆さんと繋がっていられる時間をとても楽しいものにしたい、と望んでいます。

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私が皆さんのアイデアについて検討する時間を、非常に効率良いものにしましょう。パッと見て明確に理解できる内容であれば、私は応募書類を読み込んでいけます。「何だか面白いぞ。もしかしたら、これはこういうことかな?」などと思い始め、該当する箇所を見つけて、「おお、やはりそういうことだったか!これはかなりすごそうだ。これは何だ?これも相当面白そうだ」という具合です。

逆に、こちらが望んでいないのは、「何を言っているのか全然わからない」と感じる文章です。そうなると、私はまず、皆さんのウェブサイトを調べなければなりません。そして、「この人たちの言っていることがわからないぞ。これがどういう仕組みなのかもわからない」となり、再度、応募書類に戻って、なんとか内容を理解できないかと考えます。誰か他のパートナーなら、この応募書類が何を言おうとしているのかわかるかもしれない、と相談に行ったりします。

非効率の極みですね。それだけの手間をかけた後、果たして私に心を動かされる余裕が残っているでしょうか?

簡潔さ

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効率的であるためには簡潔である必要があります。

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簡潔さです。これを肝に銘じておくためには、こうした事例を活用するのが最善策と言えます。これらは、皆さんの心に留めておいてほしいポイントです。

簡潔なのは考え抜いている証拠

まずは当然、簡潔さです。使う言葉は可能な限り少なくしてください。皆さんに理解していただきたいのが、私は簡潔さからチームとしての皆さんに関する二次情報を得るということです。それによって、私は皆さんが自分のアイデアについて考え抜いていることがわかります。

皆さんがアイデアについてとことん考え抜き、何度も何度も説明の練習をし、相手に興味を持ってもらい、何をしているかについて素早く理解してもらう術を身に付けたからこそ、短時間で理解してもらえる方法を見つけられたわけです。そこから私は、この創業者は自分のアイデアについて考え抜いているな、と知ることができます。

簡潔であれば、効率的であることを証明できる

簡潔さが良いとされるもう1つの理由は、簡潔さから、効率良く動ける人間であることを証明できるからです。効率的な言葉遣いができる人は、効率的思考、ひいては効率的な行動ができると思われます。

つまり私は、「この人は自分のビジネスに関する最も重要なことを理解している。それを明確に伝える術を理解している。自社を成長・成功させるためにすべきこと、といった最も重要な要素について考える方法も、身に着けているかもしれない」と思い始めるわけです。

ただし最小限の内容は含む

可能な限り簡潔に、と言っていますが、含まれるべき最小限の内容が存在します。

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先ほど説明しましたように、私が理解したいのは名詞です。ですから、簡潔すぎて私がそれらを理解できない場合は、簡潔過ぎるということになります。

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もう1つは、私は、皆さんのビジネスに関する簡単な説明や短縮版に目を通している時点で、この段階に達したいということです。なぜなら、皆さんの会社が素晴らしいものだという理由が10万個くらいあるのは理解できますが、応募書類を読んでいる私には、おそらくその中の2~3つくらいしか、記憶に残らないからです。ですから、最も重要なことが必ず最初に出てくるようにしなくてはなりません。

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このスライドは、現存する、あるスタートアップスクール企業の説明です。「オンラインeコマースストアです」とあります。これが何なのか私は思い浮かべることはできますが、先ほど説明しましたように、これは私がワクワクするような説明ではありません。他の事にまで思いを膨らませていくきっかけになるような内容ではありません。このアイデアが急成長し、ポテンシャルがあるものだということを理解するためには、さらなる作業が必要となります。

さらに、これだけでは名詞も理解できません。顧客が誰かも、はっきり理解できません。彼らが商品を販売している相手が顧客なのでしょうか?あるいは、他のショップオーナー向けにeコマースストアを作ろうとしているのでしょうか?この説明はその辺りが曖昧です。

次のスライドです。

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「ITセキュリティサービス」とあります。スタートアップスクールで目にする説明の大半はこうした感じで、どんな会社か理解するのが非常に困難です。

次です。

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「能力主義の意思決定サポートシステム」とあります。これを見た私は、「何のための?誰のための?」と疑問に思います。これだけでは彼らが解決しようとしている問題が何なのかさえ理解できません。多くの人が損をしていると感じていることがあるからなのでしょうか?なぜこのような説明文にしたのかを理解するために、私は頭の中でたくさんの質問を繰り返さなくてはなりません。

次のスライドです。

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「データサイエンスおよび人工知能に関する学習および知識の共有」とあります。これはどちらかと言うとミッションのように聞こえます。これではこの会社のプロダクトが何なのか、どういう風にビジネスを立ち上げようとしているのかがわかりません。これを読んでも、私は頭の中で具体的な何かを思い浮かべることができませんでした。この説明に基づいて会社を10社立ち上げれば、全く異なるプロダクトが10個生まれてくるでしょう。

会社説明で見られるもう1つのおかしな点は、皆さんが大文字を使って、固有名詞を非常に奇妙な言葉やフレーズにしてしまいがちである、ということです。これは避けるべきです。会社説明は雑誌のタイトルではありませんし、強調すべき箇所が間違っていると思える時もあります。

私がデータサイエンスや人工知能といった言葉にワクワクするだろうと思って強調しているのかもしれませんが、実際、こうした単語はバズワードであり、ソリューションです。これでは「この会社は課題ありきで起業していない」と私は不安を感じることになるわけです。

事例:簡潔にする修正

では、説明文の修正方法に関する事例に移りましょう。

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こちらのスライドは、長めの説明文です。「当社はサブサハラのコミュニティ向けに、人口知能とIoT対応品を活用した低コストかつ低消費電力の医療機器を製造します」とあります。比較的、明確ですね。私はこれを読んで理解はできましたが、簡潔さを突き詰めた文章ではなく、不要な部分がたくさんあると感じました。

私は、会社説明文がより簡潔に、短く改善されるよう、また、最大限活用できるものになるよう、お手伝いをすることがあります。その時の方法を、プロセスに沿って説明しましょう。

まず、説明文内の名詞が何であるかを把握します。

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では見ていきましょう。「当社」、「医療機器」、「サブサハラのコミュニティ向け」です。何ということでしょう!これだけで文がほぼできてしまうではありませんか?

動詞であれ、形容詞であれ、副詞であれ、名詞以外のものをここに追加する時は、かなり注意が必要です。それが最大限の効果を持つものなのか、考える必要があります。動詞は、「何かを作っている」といった場合に使用されます。一般的にはプロダクトに関する部分で使用され、「自分たちが作っているもの」を意味します。

能動態の構造で文を考える場合、主語、動詞、と続き、最後に顧客や市場、ターゲットとする人々といった目的語、という流れになります。これに何かを付け加える場合は、それが何であっても、なぜ付け加える必要があるのか、しっかりと考える必要があります。

これは私をワクワクさせるものでしょうか?「人口知能とIoT対応品」の部分です。これは、彼らがテクノロジーを[聞き取り不能]しているように感じさせるもので、結果的に私は、彼らが会社説明にバズワードを使っていることに不安を感じてしまいます。それが、この会社の秘密兵器のようなものなのだろうとは思いますが、会社が成功しそうかどうかを明確に示す特徴とは言えないでしょう。

文の前半に戻りますが、「低コスト」と「低消費電力」という、医療機器に関する2つの修飾語があります。低コストはすぐに理解できます。非常に興味をひかれます。サブサハラのコミュニティで低コストの医療機器製造、と目にすれば、「これは興味深い。発展途上国向けに何かを作ること自体が困難なのに、それを手頃な価格で販売できるように作るというのか?実に興味深い」と私は思うでしょう。

「低消費電力」の部分については、何とも言えません。この部分が、会社が圧倒的な優位性を持っているかどうかを判断するために本当に必要なのか知るためには、この会社についてもう少し知る必要があります。私がこの文章を作り直すとしたら、

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「当社はサブサハラ・アフリカ向けに手頃な価格の医療機器を製造します」とします。

この文章に眉をしかめる人もいるでしょう。多くの創業者は、「おい、なんてことをしてくれたんだ!文章を削り過ぎだ!私のビジネスは複雑なんだ。私は多くのことを手掛けていて、その多くのことが、私を素晴らしいものにしてくれている。その辺のことを全て、きっちり伝えたいんだ」と不安を訴えてくるでしょう。

ここでの問題は、時間は限られている、ということです。そして、投資家であれば誰でも、「シンプルで楽なビジネスなどない」ということは、よくわかっています。私も同じです。色々盛り込まなかったから過小評価されてしまうかもしれない、といった心配は無用です。

先ほども説明しましたが、会社説明に関する理論武装は、しておく必要があります。なぜなら、私はここまでたどり着いたら、その他の質問をし始めるからです。これが好奇心の基盤となるわけです。

まとめ:明確かつ簡潔に

では、まとめに入りましょう。

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私を助けたければ…ちなみに皆さんがそう思ってくれるとありがたいですが…、その最善の方法は、明確かつ簡潔であることです。

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本日はどうもありがとうございました。

Q&A

では今の講義に関する質疑応答の時間にしましょう。その後、Adoraにも加わってもらい、2人でどんな質問にもお答えします。そこの方、どうぞ。

最初のピッチの目的は興味を引くこと

話者2
ありがとうございました、Kevin。本日の講義では応募書類の表現方法に関して詳しく説明していただきましたが、あなたは多くのピッチを聞く立場にもありますよね。デモデーが特にそうだと思いますが、デモデーに集まった投資家たちに気に入ってもらえるような優れたピッチをするための最大の秘訣は何だと思われますか?

Kevin Hale
私は本日、応募書類へのアイデアの書き方について多く話をしましたが、彼の質問は、「デモデーで投資家にピッチやプレゼンを行う場合のコツと、どう違うのか?」というものでした。デモデーで、投資家は何を求めているのか?ということです。

先ほど紹介したエッセイで、私はピッチの仕方、ピッチデッキの組み立て方、アイデアのプレゼン方法を説明しています。ここで留意しておくべき重要なことは…まず、デモデー当日の様子を説明させてください。Y Combinator主催のデモデーとは、部屋に集まった約1,000人の投資家を前に、創業者が2分間で自社や自社で作っているプロダクトがいかに魅力的であるかをアピールする場です。200社近いスタートアップがプレゼンを行います。

これは極めて困難な課題です。2分間で何を伝えるべきでしょうか?2分間のプレゼンを行ったデモデーの後の平均調達額は、1社あたり150万ドルです。そうなるためには、どうしたら良いでしょうか?

留意すべきは、皆さんの会社が素晴らしい理由が100個あっても、2分間では全てを語り尽くせないということです。集まった多くの投資家との短い会話の中で全てを伝えることは不可能です。2分間で説明できる自社の長所は5つか6つでしょう。その中で投資家の記憶に残るのは1つか2つかもしれません。そのうちの1つは、あなたが何をしているか、である必要があります。

ステージ上の皆さんの目標は、自社の長所を1つ残らず伝えることではありません。「この人と話がしたい」、「この人と話をせずにはいられない」と投資家たちに思わせることです。優れたピッチとはそういうものです。つまり、投資家に覚えてもらう必要があるのは、プレゼン用のスライドではなく、皆さん自身です。皆さんの存在感、話し方、自信、といったものです。

基本的な確認ですが、皆さんは、人から「この人と話をしてみたい」と思われるような方法で自分自身をアピールしているでしょうか?プレゼンとは、それを行う創業者を「只者ではない」、「印象的な人物だ」と思ってもらうための場です。そのためには、誰もが理解できる明確なものでありつつ、無視できない言葉で話す必要があります。きらびやかな内容を目指すのではなく、非常にシンプルで基本的な方法で、誰もが理解できるような話し方をする、というのが目標です。そこの方、どうぞ。

応募のコツ

話者3
私は何度かYCに応募している者です。応募書類内の質問の1つに、「あなたが思う、世の中の驚くべきことや面白いことは何ですか?」というものがありますが、これはいつも私にとって悩みの種です。この質問から、YCが何を得ようとしているのか、詳しく教えていただけませんか?ビジネスに関する何かを見ようとしているのでしょうか?それとも、機知に富んでいるか、といったことでしょうか?私はこの質問に、いつもかなりの時間をかけて悩んでしまうので。

Kevin Hale
質問はYCへの応募に関してで-

話者3
驚くべきことや面白いこととは何なのか[クロストーク]

Kevin Hale
わかりました。「あなたが思う、世の中の驚くべきことや面白いことは何ですか?」という質問についてですね。こちらの男性は、この質問に答えるのに苦戦しているため、「何かヒントはないか?」という質問でした。

先ほど説明しましたように、私たちYCは、アイデアについては、あまり評価をしません。アイデアのプレゼン方法についてたくさん説明をしてきましたが、アイデアとは皆さんが物事をどう考えるかを反映したものです。私たちが応募書類に盛り込んでいることは全て、チームや会社のメンバーをより良く理解しようとするためのものです。あなたが苦戦しているという質問は、その非常に明確な例です。創業者が、物事をどう考えているか、どのようなものを興味深い、面白いと思うかを教えてくれます。

これが必要な理由の1つとして、YCでは毎週多くの人とディナーをして、時間を共にするよう設定されていることが挙げられます。私は、自分が好感を持てる人たちと時間を過ごしたいわけです。嫌な奴らではなく、興味をそそられるような人たちです。この質問はいわば、お見合い用の質問ですね。「お!この人にならディナーをご馳走したいぞ!」と思える人を見つけるためのものです。そこの方、どうぞ。

複雑な事業でも簡潔にするべきか?

話者4
私が取り組んでいるのは、非常に特殊なファイナンス上の問題の解決です。こうした非常に複雑かつ特殊な問題についても、誰もがわかるように話す努力をすべきでしょうか?それとも、この種の問題に精通している、いわゆる適切な人たちを対象とした話し方をすべきでしょうか?

Kevin Hale
わかりました。彼は、非常に複雑なFintechのソリューションまたはアプリに取り組んでいて、「専門用語が通じる適切な人たち、要するにこの複雑な問題を理解している人たちを対象にすべきか、あるいは、あらゆる人に理解してもらえるバージョンでアイデアを表現すべきか、この2つをどうバランスさせるか悩んでいる」ということでした。

答えは「その両方をすべき」です。業界、ユーザー、顧客またはビジネスパートナー、といったあなたが今、話をしている人たちとは、近道を行くことができます。あなたが交流することになるのは、ほとんど皆、そういった人たちでしょう。こうした顧客/ビジネスパートナー向けのスピーチに磨きをかけ、彼らと効率良く話ができるようにしておく必要があります。

しかし、別の視点からも考える必要があります。外部からの投資に興味がある、マスコミに話題にしてもらいたい、などと思っている場合は、専門家でない人たち向けの優れたストーリーテリングを考案しなくてはなりません。この問題は、どちらか一方ではなく、いかに両方をこなすかが重要となります。

Fintech関連のものを手掛けている人たちは、普段、それについて詳しく理解している集団に囲まれているため、この「別の視点」からの練習を、ほとんどしない傾向にあります。彼らはその状態がいつまでも続くと思っているからです。

しかし、彼らはYCに来て初めて、自分たちの業界を理解していないかもしれない投資家からの資金調達が必要となったり、自分たちのしていることを理解していないマスコミと話をしたいと思ったりする、というわけです。そこに座っている方、どうぞ。

良い応募への反応

話者5
最も秀逸かつ印象的な応募書類に出会った時はどんな気分ですか?

Kevin Hale
「最も秀逸かつ印象的な応募書類に出会った時はどんな気分になるか?」ですね。完璧な応募書類に出会った時は、「何だいこれは!この会社に入りたいぞ!」と思うでしょう。そう思えるものが1番ですよね。あるいは、「最高にクールな連中じゃないか。ものすごく賢そうだし、彼らからは多くのことを学べる気がする。彼らのビジネスの一員になるにはどうすれば良いだろう?」と考えるでしょう。自分がYCを辞めることまで頭に浮かぶなんて、最高の応募書類と言えるでしょう。

読んでいて刺激を感じられるというのが次善のケースでしょう。何を言っているのかわからない応募書類を大量に読んでいる時や、「この人たちは間違ったことに多くの時間を費やしている」と感じる時、それは私にとってフラストレーションでしかありません。そのような中で最高の応募書類に突如として出会えた時、その応募書類は私の気分を一新してくれるものであり、この人たちと共に時間を過ごしたい、と思うものとなります。私は彼らにたくさんの質問をしたくなります。好奇心が抑えられなくなり、部屋の中を飛び回りたくなります。

私は非常にアクティブな人間なのでそんな感じですが、Adoraが同じ状況にいるとしたら、水を1杯飲む、という感じかもしれません。最高の応募書類とは、「自分たちがその会社をやっていればよかった」、「その会社に加わりたい」と思わせるような種類といえます。それに尽きます。そこの方、どうぞ。

WhyやHowを含める方法

話者6
自分のアイデアにとってwhyやhowが非常に重要な場合、どのようにそれらを含めますか?

Kevin Hale
それらを何ですって?

話者6
どう含めるかです。

Kevin Hale
わかりました。私はwhatを重視してhowやwhyは含めないように繰り返しお話ししていますが、howやwhyが非常に重要かもしれません。では、それらをどのように含めればよいでしょうか?

まず、会社説明文には含める必要はありません。これらは他の欄に含めることができます。応募書類には、「どのようにしてユーザーを獲得しますか?」、「そのビジネスにおいて、自分にしかないと思う洞察は何ですか?」、「このアイデアに思い至った経緯は?」といった質問が含まれています。howやwhyに言及する機会は至る所にあります。

皆さんに覚えておいてほしいのは、回答は1つ、多くとも2つのパラグラフに収めることです。これは私から強くお勧めするポイントです。なぜなら、簡潔にまとまっていれば私も短時間で内容を理解できるからです。

ここでのポイントは、howやwhyは重要ですが、全てを同時に説明することはできないということです。世の中には、誰かに話をする時に1から10まで全てを一気に説明しようとする人もいますが、それでは聞いている方は息が詰まってしまいますし、何かを考える暇もありません。そうした展開は避ける必要があります。そこの情熱的なカーリーヘアーの方、どうぞ。

PMFの見極め方

話者7
会社がProduct/Market Fit (PMF) に近づいているかどうかを、どう見極めればよいのでしょうか?

Kevin Hale
どのように見極めるかですか?これは、後でAdoraと一緒に答えると言った種類の質問であるようにも思えますが、お答えしましょう。「会社がProduct/Market Fitへ近づいているかどうかを、どう見極めれば良いか」ということですが、「自社はProduct/Market Fitに到達しているか?」という質問を、自分にしなくてはならないような状況でしたら、答えはおそらくノーです。まだ達していない、ということでしょう。

皆さんがものすごく多忙で、「自社製品を求める顧客がこんなにたくさんいたら、会社が回らなくなる」と恐ろしくなり、「スタッフの採用はどうすればいいのか?自社製品を求めてくる全ての人に対応するにはどうしたら良いのか?」と思案しているとします。

どんどん儲かっていて、あまりの忙しさに、「自分はProduct/Market Fitに到達しているか?」などと疑問に思う暇もないとします。それがProduct/Market Fitです。あなたは正しい道を進んでいると言えます。ここでのポイントは、何かが変わったと感じられる、ということです。会社の状態が一変し、制御不能であるように感じられることでしょう。あなたが、自分は会社をコントロールできていて、リラックスしていて、よく眠れていると思うなら、Product/Market Fitに近づいているとは言えません。こうした体験ができる企業は本当に一握りです。後ろの方、どうぞ。

Wufoo 応募時の話

話者8
現在のあなたは応募者を選抜する立場にいらっしゃいますが、差し支えなければあなたがY Combinatorに応募する側だった時に、これを[聞き取り不能]して、ワクワクするようなものにしたのか、経験をお聞きしたいです。

Kevin Hale
では、私がYCに応募した時の話を簡単にお話ししましょう。Y Combinatorに応募した頃の私は、とにかく自社の説明が下手でした。そのため、私たちは2つのアイデアをピッチすることになりました。YCからは両方について準備してくるように言われており、面接が始まるとそのうちの1つは「面白くない」と即座に却下されました。

もう1つのアイデアについては、面接の途中でピボットする、という羽目になりました。初期の頃に私が書いた会社説明は、「私たちはコンテンツ管理システムを作っており、これはバックエンドからのデータのインプットとフロントエンドでのユーザーデータの収集両方を可能にする、リバーシブルフォームと呼ばれるコンセプトに基づいています」というものでした。会社説明としては最悪です。

当時はMovable TypeやWordPressのようなコンテンツ管理システムが流行っていて、私もそういうものを手掛けたいと思ったこともあり、このアイデアに至りました。私たちはそうしたソフトウェアの新しいバージョンを作りたいと思っていました。会社説明には一般的な専門用語でさえない、独自の専門用語を盛り込み、ピッチを行いました。するとPaul Grahamは、「何の話をしているのか、よくわからないなぁ」と呟いていましたが、そのうち、「つまり、フォームビルダーを作っているということかな」と言い出しました。「いいえ!いいえ!違います!」と私たちは答えました。

そして、「この業界を全て見て回りましたが、本当に皆、最低でした。どれも良くありません。私たちは他の人たちが作っているものが気に入らないんです、彼らと同じにはなりたくありません」などと言い、まさにそこにビジネスチャンスがあるということにも気付いていませんでした。

確かに皆がひどい状態の業界でしたが、流行りのビジネスでしたから、それでも成功できていたわけです。これが反対側の視点からの、わかり易い事例です。私とAdoraは、皆さんが作っているもの、手掛けていることについて、かなり多くの時間を費やして、頭の中で修正しています。

皆さんからの応募書類を読んだ後、多くの場合においてパートナーたちは、そのビジネスにワクワクする理由を理解できるように、皆さんが作っているものに関する説明を書き換えたり言い換えたりする必要があります。次の質問を最後にしてAdoraとの質疑応答に移りましょう。そこの方、どうぞ。

複数のステージを経るビジネスをどのように説明するか

話者9
こんにちは。複数のステージが存在するアイデアはどのように説明すれば良いでしょうか?例えば、Zを行うためには、その前にXとYを行う必要がある場合です。

Kevin Hale
「まずパート1を手掛けてからでないとパート2や3に進めない、といった複数のステージがあるアイデアをどう説明するか?」ということですね。私ならパート1が何かという説明に特化するでしょう。その他の重要なフェーズの説明は後回しにします。

私たちは、この手の話によく遭遇しますが、そうした話を聞くとYCのパートナーの頭の中ではすぐにアラームが鳴り始め、創業者に「どうしてもパート1に取り組まねばならない理由」を聞き出そうとします。私なら、「なぜ、最初からパート3に進めないのか」を聞き出そうと強く迫るでしょう。

なぜなら、こうした話は戦略ではなく、言い訳に聞こえるからです。「私の会社が何をしているかこれから説明しますが、皆さんから小規模なビジネスだと思われないか心配です。でも、ご安心ください。これにはパート2、パート3と続きがあり、さらに大きなものになりますから」と言っているように聞こえます。

問題は、こうした説明はピッチとしては非常に弱い、ということです。これでは強い自信を持って取り組んでいるように聞こえません。「私たちがしているのは、まずナンバー…」という説明をしてはいけません。「私たちが取り組んでいるのはナンバー3で、そのためにナンバー1から始めています」という言い方なら、しても良いでしょう。これは非常に効率的である必要があります。

ナンバー3は簡潔に言えるもので、ナンバー1は理に適っているものでなくてはなりません。例えば、「私は自動マーケティングツールを作ろうと思っています」という場合です。本日、たまたま[聞き取り不能]の会社と話をしたので例に挙げます。彼らWhatsAppを使用した小規模ミーティングビジネス用の自動マーケティングソフトウェアを作りたい、と言っていました。まずは美容室を対象に始め、将来的にそのソフトウェアを必要としている他のあらゆる業界にビジネスを広げていくつもり、という話でした。時間が来たようです。どうもありがとうございました。では、ここからはAdoraにも加わってもらいましょう。

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文:  How to Pitch Your Startup (2019)

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