もっと時間が必要なのか、プロダクトマーケットフィットがないのか? 技術系創業者のための「市場がない時に市場に向かう」方法 (a16z, Martin Casado)

多くの象徴的なテクノロジー企業が業界にとって新しいコンセプトから始まりました。後から振り返って考えると、そのストーリーはこんなふうに語られます。「創業者はXというものを作り上げました。Yがそれを購入しました。すると突然、Zがそれを使い始めたのです。気が付くと、コンピューティングの世界は永久に変わっていたのです……歴史が生まれる瞬間でした! 」

現実はこれほど魔法のようにも、まっすぐにも、円滑にも進みません。創業者の抱くとても大きな勘違いの一つは、「自分たちの作り上げた製品は人々に内容を理解されたり、買ってもらったりすれば、すぐにその価値を認められるだろう」というものです。これは「キャズム前」の市場で特に当てはまります。その状況では、製品を完全に理解している少数のアーリーアダプターが存在しているかもしれません。ですが、その人々と後発の人々 (より主流派のユーザーたち) との間には深いキャズムも存在します。ほとんどのスタートアップはこのキャズムを無事に越えることなく、はまり込んでしまいます。私はこれを知っています…なぜなら、自分自身の会社で直接的にも、また投資家として間接的にも経験したからです。

実のところ、世界的なレベルのチームが開発した極めて魅力的な製品でさえも、最終的にうまく行くまで、成長の低さ、あるいは成長の無さに何年も苦しむことは珍しくありません。では、自分たちがこういった「市場の準備が整った状況」や「市場が生まれる状況」(つまり「もっと時間が必要」な状況) にあるのか、それと反対に、自社の製品に Product/Market Fit が存在していないのかは、どうやって見分ければいいのでしょうか? 残念ながら、ここに単純な答えはありません。一方で、よくある矛盾したメッセージや指標はいくつか存在します。これは (ちょうどかつての私のように) 自分のスタートアップがいい線をいっているのかどうかを早期に検証しようとしている創業者にとって役立つ可能性があると考えています。

#1 「イノベーションを受け入れやすいゾーン」にはまり込んでいる

10年前、私は博士課程をちょうど修了したところで、2人の教授 (Scott Shenker教授とNick McKeown教授) と一緒にその研究に基づいた会社 (Nicira) を立ち上げました。基本コンセプトはシンプルでした。すなわち、「(その当時) 大半のネットワーク構築を変更する際にどれほどの労力と費用と時間がかかっているかを考慮すれば、ソフトウェア定義ネットワーク (SDN) を使ってみればいいのではないか」というものです。その機能の多くをハードウェアから引き剥がすことは、ネットワーク構築をいっそうユーザーフレンドリーにしたり、より高度な機能性も可能にしたりするだけでなく、その全てをソフトウェア内に収めることで企業もさらに速やかにイノベーションを行えるようになるはずでした

より手軽に、より安く、より速く――かなり単純なバリュープロポジションです。そのため、私たちはそれに関する企業を築くこともまた単純に進むだろうと思い込んでいました。ところが、市場を引き込むための私たちの取り組みは最初の2、3年間、ほとんど何の進展ももたらしませんでした。さらにいっそう当惑させたのは、誰もが私たちの講演にワクワクし、しかも多くの人が概念実証 (PoC) やパイロットテストの参加料を支払ってもいたという事実です。

人々が自分たちの専門知識にお金を払うということは、自分たちが Product/Market Fit に向かっていることを示す強いシグナルであると見て間違いない、はずでは?

それが1つ目の矛盾したメッセージでした。人々が自分たちの専門知識にお金を払うということは、自分たちが Product/Market Fitに向かっていることを示す強いシグナルであると見て間違いない、はずだからです。誤解は次のようなことです。 大きな話題になった新しいテクノロジーの領域では、企業がスタートアップから喜んで知識を得たがるというだけの理由で、市場が大きくなる前のスタートアップが高額なPoC、さらにはいささか大きな契約までも成立させることが珍しくありません。

なぜ、このような企業は知識を得るためだけにそれほど多くを支払うのでしょうか? その答えは「スタートアップにとって高価なものが実のところ、実験、学習、賭けを外部で行おうとしている大企業にとっては (内部でそれをやる構造的コストと比較して) 安いから」です。同様に、多くの大企業がコーポレートベンチャリング部門やその他の内部起業 (社内起業) 部署 (組織名や名刺の肩書に「イノベーション」「ラボ」「デジタル」「トランスフォーメーション」「インキュベーター」といった言葉を冠していることがよくあります) を設けています。それらはその企業全体に入り込むための魅力的な入口のように思えます。しかし、こういった企業ラボの大半は販売の媒体としてはうまく行きません。その企業に対する中心的影響力を有していないためです。私はスタートアップに対し、確立されている購買中心点 (例えば、中核的IT部門) や事業部門でない限り、企業内の部署や組織と (少なくともセールス目的で) 関わり合うことには懐疑的な態度を取るようにアドバイスするつもりです。

では、人々が単に知識を得ているだけで、買うことに関心がない状態だと知るにはどうすればいいのでしょうか? 実のところ、見分けるのはそれほど簡単ではありません。キャズム前のスタートアップにおいて、このような場合によく見られる兆候の一つは建設的かつ有意義と思われるようなミーティングがぎっしりと詰まっていることです。とは言え、ある人がお金を払ってそれを生産してもらう意思がある場合をはっきりと知る (すなわち、「見分ける」) ことはほとんど、あるいは全くできません。その意思がない場合は、サービス契約が結ばれても、ライセンス契約についての話し合いは頻繁に延期され続けます。重要なのは、エンゲージメントを売り上げに変えるという現実的な行いについて、自分自身にどこまでも正直になることです。あなた自身も学ぶつもりでも構いませんが、大企業は100万ドル以上の契約という可能性をちらつかせることで、スタートアップを何年間も惹き付けておくことが可能です。そのため、もはやその関係性から知識やそれ以外の価値を引き出していない時には立ち去る準備をしておきましょう。

#2 顧客が価値に納得しているときでさえ、その顧客はまだ買うことができない

Niciraの創業当初、私たちはいつも自分たちの製品が実際に軌道に乗るまで「もうあと四半期」だ、といった感じでした。私たちにはパイプラインがありました。販売チームからの興奮も伝わっていました。顧客からははっきりとした関心を示されていました。それにもかかわらず、四半期ごとに契約が失われたり、縮小されたりしていましたし、社内の優れた人材は組織を去り、業務は障害に阻まれていました。そして、予算も乏しくなっていました。

私たちがとっさに思ったことはセールスの丹念な検査でした。私たちはあらゆる重要なエンゲージメントを検査したのち、大半のケースで、企業は私たちのテクノロジーに対して強く関心を抱いているものの、採用する準備ができていなかったことがわかりました。このような関心と先述した「知識を得るためのつまみ食い」との違いは何でしょうか? その違いとは、前者の企業は買えるのであれば買っていたという点です。しかし、その組織に (首脳陣から調達部門、生産部門にいたるまで) あなたたちと協力することにより、破壊的な新技術の採用に対する企業の典型的な抗免疫反応を克服する意思と能力がない限り、どれほどの販売知識や特有の製品価値があったとしても、契約を締結することにはなりません。

私たちは自分たちの製品が実際に軌道に乗るまで常に「もうあと四半期」だ、といった感じでした。私たちにはパイプラインがありました。興奮も伝わっていました。顧客からははっきりとした関心を示されていました……

Niciraでは、自分たちのアプローチを逆転させることでこれに対処しました。私たちはできるだけ多くの機会をトップ・オブ・ファネルに投じて、優良そうな顧客を生み出していました。ですが、そのことが私たちのセールスチームを数か月間 (時には数年間)、利益を生まない大口顧客に釘づけにしていました。ところが、私たちが販売することから事前の製品説明を改善することへと方向転換してすぐ、状況は劇的に変化しました。私たちは一握りの適切な顧客を求めて業界内を捜し回り、そうではない多くの人々を拒絶していたせいで、供給経路をほぼ半分にまで減らしていたのだと思います。その後、そのような少数のターゲット顧客に対し、相手の人生を変えてしまえそうなほどひたすら懸命にセールスする代わりに、私たちはあらゆる失敗の可能性を最初の数回のミーティングで伝えるように心がけました。そうすると、予測される契約と結ばれた契約のどちらも好転し始めました。

ですが、これはセールスに関することだけではありません。マーケティングにおいては、キャズム前のスタートアップがリードを生むことに注目し過ぎる傾向もあります。また、多くのテクノロジー系起業家にはマーケティングの専門知識がないため、リードの生成に着手するためにフィールドマーケティング担当者やイベントマーケティング担当者、さらには外部委託のマーケティング会社まで雇ってしまいます。フィールドマーケティングはアーリー段階よりもキャズム後のグロース段階の最中 (Product/Market Fit の確立後) に、それを渇望している営業チームに与えた方がはるかに効果的です。なぜなら、フィールドマーケティングは大規模な顧客獲得に最適化されているためです。キャズム前の市場において、 マーケティング活動はよりいっそう的を絞った教育的なものでなければなりません (したがって、この活動は外部委託することがより難しくなります。製品の理解に深く根差しているためです)。うまくいけば、教育によって市場が引き付けられる可能性があります。そのため、私の助言は「キャズム前のスタートアップはプロダクトマーケティング (とりわけセールス・イネーブルメントとテクニカルコンテンツマーケティング) に注力せよ」ということになります。理由は、それがセールス活動を見込み客に適合させるのに役立つだけでなく、全ての人が正確なストーリーを語ることによって取引を進める (そして企業を一歩前進させる) ことの助けにもなるからです。

#3 最大のライバルは他の企業ではない……現状である (本当に?)

Niciraは幸先の良いスタートを切った、と私たちは考えていました。 自分たちのソリューションに関する論文を執筆し、講演を行い、特有の機能を開発し、複数の試験展開を行っていたためです。けれども、私たちは顧客に対してソリューションではなく、問題点について説明する羽目に陥いることがよくありました。

私たちは顧客に対してソリューションではなく、問題点について説明する羽目に陥いることがよくありました。

私たちがこの準備をしていなかった理由の一つは、自分たちのソリューションを投資家、アドバイザー、新入社員に向けて、差別化して語ることに慣れ切っていたからです。必然的に、その人たちにはよく「あなたちのソリューションが他のあらゆる人々よりも優れている理由は何ですか? 」と尋ねられました。そして、そもそも解決するだけの価値がその問題点にある理由を証明するのではなく、私たちの方が優れている理由を説明するように話の方向を変えられたものです。ところで、似たようなことはプレゼン資料内の競合状況を表した4象限マトリクスが描かれたスライドについても起こります。つまり、創業者は作らざるを得ないという気持ちを抱きながら、実際のセールスコンテストに含まれる可能性の低い「競合他社」が入っていることも多い比較データセットを使いながら、そのスライドを作っていくわけです。初期の市場ではこのような競合への着目が大きな誤解を招くようなこともよくあります。なぜなら、現場の実情として、顧客がその問題点に気付いてすらいない可能性もあるからです。ですが、あなたが本当に立ち向かっているのは「現状維持」です。

これは裏を返せば、一部の創業者が直接的な競合相手は存在しないと主張することになります。たとえそれがおおむね真実である可能性があるとしても、競合する逆風は常にあります。あなたが起こしているさざ波に影響を受けた他のスタートアップによるピボットに (完全にマーケティング上のものにすら) 直面するかもしれません。もしくは、その企業が問題点への対処として社内で間に合わせに作ったものの寄せ集めや、「自前主義」(そして、自分たちの手で作り上げられるという信念) という恐ろしいものに立ち向かう必要が出てきます。そして (現状やそれ以外の) 競合相手が本当に存在しないのであれば、その時点で市場 (さらには問題点すら) も存在しない可能性が高まります。

顧客はその問題点に気付いてすらいないかもしれません……時として、あなたはまさに現状というものに立ち向かっています。

肝心なのは、キャズム前の市場では競争上の位置づけが困難だということです。怠惰過ぎるせいであなたのしていることを正しく理解できない人々は、自分たちが分かるものにあなたを位置づけられるように、大手の「競合する」既存企業を探すことになります。その他の、あなたが抱えているような問題点について考えていない人々は問題点が存在することに気付く可能性がほとんどありません。また、あなたがその分野で若干の成功を収めていたとしても、他の企業が同じ事を自分たちもしていると主張し始めるでしょう。たとえそれが、全く正しくなかったとしてもです。

では、その時にすべきことはなんでしょうか? それは顧客の目線に立って理解することです。つまり、「自分は顧客にとって既知の問題を解決しているのか? 」ということです。答えが「イエス」であれば、それに対処するための現在の取り組みに対抗する形でセールスを行いましょう。 (そして、セールス中には潜在的な社内のステークホルダーを積極的に排斥してしまわないように注意しましょう。)そうでない場合、その問題点が存在する理由を説明しましょう。(これにより、その人々がこれまでいつもやってきた方法に効果的に対抗できます。)これこそ、私が初期に製品マーケティングを強化することを好むもう一つの理由です。速やかに発売したいと思うのは世の常ですが、新製品は一筋縄ではいかないものだと位置づけながら、プレスリリースをしっかりと出し、ブランディングを開始しましょう。企業のキャズム前では、初期のトラクションは多数の顧客との非常に細かい話し合いにまで及びます。まずはそこに集中しましょう。

#4 あなたがその価値を分かっていても……人々がそれに支払う価格を分かっていない時に起きる、価格決定のパラドックス

私たちのケースでは、巨大な既存市場が存在していました。ところが、それはハードウェアを購入し、ハードウェアに基づいて価格を決め、パフォーマンス基準と信頼性に最も価値を置く市場でした。そこにやって来た私たちは、より良い機能、より迅速なイノベーション、より低コストを提供すると自負するソフトウェアを販売しようとしましたが……それはまるで言葉も話せず、顧客も分からず、価値基準も理解できない外国に足を踏み入れたかのようでした。その後10年間は、そういった事柄全てを苦労して一から学ばなければならなかっただけでなく、Niciraの考え方、習慣、価値基準をこの市場に教えることも試みなければなりませんでした。

では、それはキャズム前の市場における価格決定にとって何を意味するのでしょうか? それは少し「卵が先か、鶏が先か」といった問題にも似ています。つまり、一方では市場が存在しないために市場リサーチをすることが難しく、他方では、先にその市場と実際に関わり合ったり、価格決定について話し合ったりすることもなしに、価格決定の方法を知ることは大変難しいのです。しかし、不適切な価格を設定すると、市場創出の可能性に対して驚くほどのダメージを与えかねません。多くの事業において、長期間にわたって最大の変動費は売上原価であるため、価格決定は粗利益に直接の影響を及ぼします。

このようなケースでの一般的な助言は類似品を探すこと、あるいはROIを計算することです。ですが私の経験上、自分のしていることが本当に革新的である場合、適切な類似品は存在しません。またほとんどの類似品は成熟市場から出ているため、コモディティ化などの価格圧力にすでに直面しています。そのような類似品は製品の重大な欠如の結果として生まれているという事実は言うまでもありません。それこそが、そもそもあなたが新しいソリューションを思い付いた理由のはずです。たとえ何が起ころうと、既存の価格と一致させるとなると、あなたの製品は自動的に最初から低価格になります。とは言うものの、顧客にROIを納得させることも困難です。新製品の採用は苦労もリスクもあり、ある程度の短期的コストも生じるうえに、そうするメリットは抽象的でよく分からず、はっきりとしないからです。測定は困難です。

自分のしていることが本当に革新的である場合、適切な類似品は存在しません!

今から、このための大まかなやり方を2つほど紹介します。一つ目は、そのソリューションの価値を実際に示すまでは価格決定について検討しないことです。そして、その価値を証明する最善の方法とは、PoCとそれに続く実際のシステムまたはデータを使ったパイロットテストの実行です。これが終わり、顧客がその価値に気付いた (顧客を「技術的に近づけた」、という言い方もされます) 時点で、価値をベースとした価格決定の話し合いにより良い武装で臨めます。ここで覚えておくべき大まかなルールの2つ目とは、多くの企業顧客は従来の調達プロセスを考慮して割引を期待しているため、定価は高く保ちつつも、必要に応じて早期の顧客トラクションのために割引を行うべきである、ということです。ただし、くれぐれも継続期間、規模、地域、ユースケースによってその割引に制限を設けるようにしましょう。

#5 どのプラットフォームも島のようには孤立しておらず、あなたのプラットフォームの周りには大海のような多くのパートナーたちも存在しない

企業による購買は、販売業者からの直接購入やマネージドサービスプロバイダー (MSP) ではなく、付加価値再販売業者 (VAR) によって行われることが多くあります。そのうち、大半の企業向け製品の戦略にはそのような (再販業者、専門的サービスからサードパーティの販売業者にまで及ぶ) エコシステムのスケール調整が必要になります。ですが私は初期のNiciraで、「自分たちの労力とコストをほとんど使うことなく、どうにかしてそのエコシステムに私たちの売上を加速させられはしないだろうか」という望みを抱き続けていました。私たちはその製品の縮小版を技術的なパートナー企業のものとの抱き合わせ販売したり、VARや販売業者を訓練したり、OEMと緊密に協力したりすることによって、売り上げの円滑化を試してさえいました。その取り組みからクオリファイドリードを手に入れるまでには長い時間がかかりました。そして私がNiciraを去る10年近く後でも、顧客と関与している自社の販売員抜きでそれらの提携チャネルから製品を販売することは依然として不可能でした。ですから、私が望んだような、販売員費用の節約は実際には起こりませんでした。

このようなことが新しい市場で展開するのを私は繰り返し経験しています。すなわち、キャズム前の企業向けスタートアップが、どこか他のセールスチームの方が自前でやるよりもいい仕事をできると思いながら、時間とリソースを (OEMなどを含む) 間接販売チャネルに投下するといった状況です。あるいは、それが売上を加速させると思い込み、そういったスタートアップは技術的パートナーやチャネルパートナーに対して多大な時間を費やしていきます。ですが、技術的パートナー企業がその時間を共にしている理由は、自分たちの取り組みを実際以上に大きく見せるために企業のロゴを集めたいがためです。もちろん場合によっては、その価値が自明で、チャネルが取り扱うこともできる破壊的新製品が存在します。ですが、そんな風にうまく行かないことの方がよくあります。企業向けの間接チャネルが自社以外の製品を市場で普及させるのに自社の基本的資源を充てることはめったにないからです。VARに関して言うと、それらは通常、キャズム前の製品を取り扱うような (例えば、ピッチや教育を行い、適切な販売員を雇うような) 構造にはなっていないため、初期のフルフィルメント (そしあなたが本当に運が良ければ、クオリファイドリードのための案件登録制度) しか提供しません。VARが得意とするのは、知識を有した顧客ベースがすでに存在している場でのモノの流通です。

実のところ、企業向けソフトウェアおよびハードウェアにまつわる市場開拓エコシステム (VAR、再販業者、OEMs) の大多数は、巨大な既存市場を対象としています。どれだけ事業開発ミーティングや関係構築のタッチポイント、会社横断的な配属や統合を行っても、パートナーからあなたが望むような、目の前にある大市場をちらつかせているときほどの行動を引き出すことはできません。キャズム前の企業はそういったパートナーが生むメリットを本当に引き込めるようになる前に、(プッシュ型ではなく) プル型市場を作らなければなりません。誤解のないように言うと、このようなエコシステムの関係性を早くから発展させることもやはり重要です。力強いビジネスは力強いパートナーシップと密接に関連しているためです。ですが、これはロケットの軌道で言えば第2段階にあたるもので、大半のケースでは第1段階をスキップできないと知ることが重要です。

早期市場の開拓では会社作りに関する全てが異なります

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Niciraでは、私たちが自分たちのアイデア、製品、企業に抱いていた確信が報われました。ですが、真の成長を経験するまでには何年もかかりましたし、そのステップは私のような技術系創業者から見ると、驚くほど直感に反したものでした。その当時、私が多くのアドバイザーから受けた助言が間違っていたことは言うまでもありません。その助言は成熟市場から得られたものだったためです。今日でさえ、創業者の間での言い伝えやそこに由来する方策の多くが、もっと成熟した市場かキャズム後の市場に注目したものです。しかし、早期市場の開拓では会社作りに関する全てが異なります。最後に、見識はCEOを務めたSteve Mullaney氏、そして取締役会メンバーのBen Horowitz氏とAndy Rachleff氏に由来したものです。彼らのおかげで、私たちはそれを理解することができました。私たちは最終的に今日も成長を続ける巨大企業を作り上げました。昨年、私たちの仕事が (VMwareでの内部作業と組み合わさることで) 生み出した製品ラインはランレートで10億ドルを超え、現在も増え続けています。ですが、それは10年後だからこそ見える景色です……なぜなら10年前の私たちには自分がどういう状況にいるのか、まるで見当もつかなかったのですから。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Martin Casado

Martin Casado は Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーです。彼は以前、2012年に VMWare に買収された Nicira の共同創業者で CTO でした。VMWare で、Martin はNetworking and Secruity Business のVPならびにGMでした。

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: “Need More Time” or Lack of Product-Market Fit? Guideposts for Tech Founders Going to Market When No Market Exists (2018)

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