プラットフォーム vs バーティカル、そして次の大きなアンバンドル

スタートアップに共通の、達成困難とも言える聖杯の1つは、おびただしい数の隣接産業の需要にうまく応えるデジタルプラットフォームを構築し、その世界における決定的なプラットフォームになることです。今では業界の標準となっている、こうしたプラットフォームの初期の例は、私たちにとって馴染みのあるものです。Amazon、eBay、Craigslistです。また、私たちは、その新しいデジタルプラットフォームという達成困難な聖杯がひとたび獲得されれば、競争者がすばやく参加することも知っています。

そのような競争者の最も効果的な形の1つがスタートアップであることはよくあります。スタートアップは、台頭しつつあるプラットフォーム内の具体的な産業分野の需要によりよく働きかけることによって、そのプラットフォームの中から一部をアンバンドル(分離)しようとします。つまり、ユーザー体験やその産業分野の独自の特性にさらによく合わせた事業モデルを創出しようとします。例えばStubHubは、eBayから大きな部分を取り出しました。チケット認証、会場マップ、高速配送を実現し、そのような特定の売り手や買い手の需要に見合うチケット購入体験を創出したからです。結果としてStubHubは、eBayの課金よりも実質的に高い料金にもかかわらず、強力なトラクションを獲得することができました(これによりeBayは2007年にStubHubを買収しようとしました)。

この力学が働いた古典的な例は、Craigslistのアンバンドリングを示したこの図表によく現れています:

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画像著作権:Andrew Parker

私たちは今や、この力学が何度も機能しているのを見てきました(そして、そのGMVや、抱えている魅力的な産業分野の市場のおかげで、Craigslist、Amazon、eBayは依然とし格好の的であり続けています)。実際に、この戦略は時としてあまりにも強力であるため、これらの新興の事業のいくつかは、自らが崩壊させた元の産業分野よりも大きく成長するだけでなく、全体としてのプラットフォームよりも大きく成長することがあります。言い換えると、彼らは自らの産業分野で、他社よりもユーザーの需要にずっとうまく応えることができ、そのためアナログとデジタルの両方の主要企業に対して、自らの産業分野のかなり大きなシェアを競うことができます。

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*ここに掲載されている収益の数値に関しては、a16zは独自に検証を行っていません

このお話の教訓はこういいうものです——ほとんどの状況下において、広範囲に渡る産業分野は最終的には崩壊します。彼らは自らの成功の犠牲者になります。プラットフォームの成長に伴って、二次市場も成長します。これはその製品が百万もの別々の方面に引っぱられることを意味します。ユーザーは必要最低限の要求を満たすだけのエクスペリエンスや事業に対して、いらいらするようになります。そしてあるとき突然、以前は気にすることもなかったような小さな市場が、スタンドアロンのスタートアップのための非常に興味深い場になります。時計仕掛けのように、革新の新しい波が大きくなり、業界をまたぐ新たな主要企業が取りこぼしてしまうような魅力的な産業分野を牽制しています。

「どのプラットフォームが、こうした変化の瀬戸際にあるのかがわかれば、機会と革新をどこに求めるべきなのかがわかります。」

例えば、YouTubeが現在これを経験しています。YouTubeは動画のモンスタープラットフォームで、約13億のアクティブ・ユーザーがおり、現在、年間収益40億ドルを創出しています。多くのスタートアップが、より大きな一般的プラットフォームの中で、特定のカテゴリーと大衆を標的にすることによって、その活動の一部を獲得しようとしています。Twitchはゲーム動画で多くの成功を収めてきました(Amazonは2014年にわずか10億ドル未満でこの会社を買収しました)。TikTokは短編のモバイル動画を急増させました。MasterClassは教育動画に的を絞って、OvertimeはZ世代を対象にスポーツのハイライトとオリジナル・コンテンツにゼロイングを行なって、急成長しました。そして現在、多くのスタートアップが子供向けの動画コンテンツの領域を求めています(YouTubeは子供にとって不適切なコンテンツが多く、最近、罰金を科されたほどです)。

Zillowもまた、アンバンドルの標的になりました。Zillowは、アメリカ合衆国の主要なデジタル不動産プラットフォームで、住宅の売買から住宅やアパートの賃貸、住宅ローンの手配、仲介業者の手配まで、不動産業界の多くの副次分野をまたぐ需要に応えるサービスの提供をしようとしています。現在の市場のキャップは、70億ドルです。しかし、そこには様々な標的が含まれており、異なる事業モデルと異なるユーザーが存在しています。またZillowは、このカテゴリーのアナログからデジタルへの転換に、ようやく対応しはじめたばかりです。そのためデジタル領域での競争者である複数のスタートアップが、市場の一部を獲得しようと狙っています。例えば、CompassやOpenDoor、FlyHomesは、住宅の売買の分野を標的としていますが、その手法はZillowが真似できないような独特のものです。

私たちが目の当たりにしている最も魅力的な「プラットフォーム」の標的の1つで、まさに少しずつ取り分けられ始めているのは、LinkedInです。2009年から2016年までのLinkedInの売上を見てみましょう。LinkedInは、2016年6月にMicrosoftに262億ドルで売却されましたが、彼らの当時の売り上げの四半期収益は最高で10億ドルでした。

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業界をまたぐ他のすべての主要企業のように、LinkedInは、異なる領域の仕事に対して、本質的に同じユーザー体験を提供しています。このサイトは、ホワイトカラーなどの仕事に関しては、うまく機能しています。しかしそれ比べ、その他のより専門的な領域に関しては(例えば、ブルーカラー、エンジニア、医療従事者など)、断然、その需要を満たすことができていません。こうした状況に、LinkedInが、世界的な最大手の企業の関連会社として、革新的でなくなったり、リスクをおかさなくなったりする可能性があるという認識が加わったとしましょう。特定分野に合わせた取り組みをする先駆者が、革新をもたらす条件が十分に整ったことになります。

ビジネス向けプラットフォームの空間で、スタートアップが特定分野に着目する戦略を利用し、革新を沸き起こしているのを、私たちはすでに目にし始めています。エンジニアリング(Hired)やブルーカラー(Merlin, Wonolo)、オイルサービス(RigUp)、接客(Pared、Instawork、Qwick)、簿記(Paro)などです。これらの各スタートアップは、求職者と雇用者の双方にとって、一般的なLinkedinのモデルよりさらにうまく機能する事業モデルとユーザー体験を構築しようとしています。言い換えると、LinkedInの本格的なアンバンドリングは、すでに始まっている可能性があります。

手腕のある創業者は、適切な市場を適切な時機に見つけることが、スタートアップの成功のためのチートコードのようなものになり得ると知っています。広範囲の分野にまたがるプラットフォームのうち、崩壊寸前のものに注目し、その中における業界分野に目を向けることは、チートコードのためのチートコードのようなものです。注意を払えば、次の大きなアンバンドリングを指し示してくれます。それにより、次の機会と革新の波がどこから来るかがわかるはずです。

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Jeff Jordan

Jeff Jordan は Andreessen Horowitz のジェネラルパートナーです。彼は以前 OpenTable の CEO であり、会長でした。彼は OpenTable を率い、国内外の成長を加速させ、IPO に導きました。OpenTable の前には、Jeff は PayPal の社長を勤め、オンライン決済のグローバルスタンダードの会社として樹立させることに責任を負っていました。

D’Arcy Coolican

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Platforms vs Verticals and the Next Great Unbundling (2019)

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