成功を収めるスタートアップは、拡大しながら大まかに3つのフェーズを通過します。そしてスタートアップのCEOの仕事は、それぞれのフェーズで劇的に変わります。CEOの最初の仕事は、ユーザーに愛されるプロダクトを作り上げることです。2番目の仕事は、そのプロダクトによって浮上した機会を最大化させることです。そして3番目は、中核事業から利益を刈り取り、斬新な新プロダクトのアイデアに投資することです。このブログ記事では、CEOだけが成し遂げられる最高のレバレッジを持つ仕事に焦点を当てることで、優れたフェーズ2のCEOとなる方法について説明します。YC Continuityチームとして、私たちはフェーズ1のCEOの多くが無事フェーズ2へ移行するのを見てきましたが、中には移行できなかったCEOもいました。あなたのスタートアップの未来は、あなたがどちらの種類のCEOであるかにかかっています。
最初の創造はプロダクト、2番目の創造は会社
CEOの最初の仕事は、優れたプロダクトを作り上げ、そのプロダクトを気に入って熱心に使う少数の人々の集団を見つけることです※1。 フェーズ1のスタートアップのCEOは「実行の人」です。あなたはプロダクトの構築(ユーザーとの対話/観察、コーディング、プロダクト仕様の設計)と、ユーザー/顧客の獲得の両方に深く関与する必要があります。あなたの辞書に「委任」という言葉があってはなりません。もし成功すれば、それはあなたの深い関与と独自のビジョンが、他のほとんどの人が持たない視点と原動力を会社にもたらしたからです。他にフェーズ1のCEOに必要不可欠なことは、プロダクトを繰り返し改善する時間を引き伸ばすため、お金を節約することです。
多くのスタートアップが、ユーザーが既存の代替プロダクトを見捨てるほど大好きになるプロダクトを作り出すことができないために失敗します。この最初のフェーズでの成功は、あなたのプロダクトに対して、小規模なチームでは扱えないほど多くの需要を見つけること意味します。そのような事態が起これば、あなたはCEOとしての重点を、プロダクトによって表面化した需要を捉え、それを最大化できる会社の構築に移す必要があります。会社を作り上げることが、フェーズ2のスタートアップにおけるCEOの第一の仕事になります。そこで作り上げる会社があなたの2番目の創造物であり、創業者としてのあなたが長く持ち続ける遺産となります。
フェーズ2のCEOとして、あなたは「実行の人」から「会社を作る人」に移行する必要があります。これは、あなたがCEOとしていかに拡張するかということです。そしてCEOの拡張は、会社作りの第一歩です。大部分の創業者にとって、これはとても難しいことです。あなたが「実行の人」として成功してきた場合、それを止めるのは簡単ではありません。コーディングやプロダクト仕様の設計、顧客との日々のやり取りを止めるのは困難です。問い合わせに答え、全てのプロダクトデモを行い、最新ビルドをデバッグすることはなかなか止められません。あなたが何年もかけて蓄積してきた、定まりがなく時に単純な作業は「誰の仕事でもなかった」がゆえに、それを委任することさえ難しいでしょう。しかしあなたはそれらのことを全て止めなければなりません。CEOだけができる高いレバレッジを持つ仕事に対し、自分の時間を確保するためです。
この移行はあなたのチームに混乱や、時には摩擦さえ引き起こす場合があります。あなたがもはやコーディングに注力しなくなれば、チームはあなたが何をしているのか、不意に疑問に思うかもしれません。あるいはこれまで何年もあなたがしてきた多くの単純作業をなぜ突然委任しようとしているのか、不思議に思う可能性があります。しかしスタートアップがいったん20~30人規模に達すれば、あなたは指導的な仕事(他の人の活動のディレクション)により多くの時間を使わなければならなくなります。そして時間には限りがあるゆえに、より多くのことを指導するためには、やることを減らすしかありません。仕事を委任しなければ、あなたは会社作りに注力する時間を決して持てず、結局は他の全ての人の仕事をスローダウンさせることになるのです。
最初は不可能なことのように思えるかもしれません。しかし最終的には、フェーズ1で行ってきた全てのことに対する日々の責任を委任することができます。プロダクトに対する責任でさえ、委任は可能です。当然ながら、一晩で全てのことを放棄することはできません。しかし、あなたの仕事は自分より適任な人を雇うことで、あなた自身を指導的立場へと置き換えることです。WeeblyのDavid Rusenko共同創業者兼CEOは次のように言いました。「私はプロダクトの機能を自社のブログで初めて知ることがよくあります。それを聞くとほとんどの創業者が驚きます。しかし私は、自分の仕事がうまく行ったと分かっています。なぜなら、未だにお粗末な出来の機能を目にしたことがないからです。あなたは自分がプロダクトの細かな点に関与する必要のない、非常に優秀なチームを作ることを目指すべきです」
実際のところ、フェーズ2は一般的にスタートアップの従業員が約20~25人になった時に始まり、400~500人に達する時に終わります。フェーズ2が終わる頃、あなたは自分がフェーズ1で行っていた全てのことを自信を持って委任できる、「路上テスト」を重ねた幹部チームを有していることでしょう。あなたの直属の部下は、あなたが最小限の関与をするだけで高いレベルのパフォーマンスを発揮できる、経験を積んだリーダーであるべきです。ただしそのためには、あなたの上手なディレクションが前提となります。そうなれば、あなたは会社作りの重荷を幹部チームに移し、フェーズ3の仕事を始めることができます。中核事業から利益を得て、斬新な新プロダクトに投資する仕事です。1つの例として、Facebookはフェーズ2において上級経営チームを作り上げましたが、その間の事業収支はほぼトントンでした。フェーズ3になって初めて、利益の上がるストリーム内広告のおかげで中核事業から巨額の利益を生み出すようになりました。そうして大きなリソースを別のプロダクトであるMessengerに配分したり、Instagram、WhatsApp、Oculusを買収したりすることができたのです。
CEOが委任できない3つの仕事
簡単に言えば、フェーズ2のスタートアップのCEOとしてのあなたの仕事は、フェーズ1で行っていた全てのことを委任して、CEOだけにしかできない3つの重要な業務運営上の仕事に集中する時間を作り出すことです※2:
1. 幹部チームを雇い、確実に協力して働けるようにする
会社の上級幹部チームを雇い、彼らを確実に協力して働けるようにできるのは、CEOだけです。雇用の際に他の人たちからの助けや意見をもらうことはできますが、エンジニアリングの幹部、営業の幹部、そして取締役会のCFOのような指導的立場の社員を雇う時の最終的な決断は、あなた自身で行う必要があります。妥協して、自分の周りにいるお気に入りの人たちから探して雇うことはできません。選択はあなた自身のものである必要があります。なぜなら、その結果もあなた自身のものだからです。
上級幹部を採用するには驚くほど多くの時間がかかります。もし初めてそれを行おうとしているのなら、必要とするスキル、経験、人柄について適切な判断力を育てられるように、たくさんの人に会いましょう。StripeのPatrick Collison共同創業者兼CEOは、努めて各分野の「世界最高の人物」と会うようにしました。そうすることで、優秀な候補者とはどのような人物なのか感じ取ることができたのです。幹部社員の採用は非常に時間がかかるため、全ての人を一度に雇おうとせず、段階的に採用すべきです。最初の数回の求人活動では幹部社員を対象とした良いスカウト会社と契約して、協力してもらうことをお勧めします。多額の費用がかかるでしょうが、適切な人材を雇う助けとなれば、それに見合った価値があります。
YCでは創業者たちに1週間ごとのマイルストーンを使ってスタートアップを管理し、同じことを確実に繰り返して迅速に物事を進められるように教えます。これはプロダクトマーケットフィットを見つけようとしている小規模な会社に有効なやり方ですが、上級幹部を管理する方法ではありません。上級幹部の管理は週単位での仕事よりも、長期的な成果に目を向けて行います。それを上手に行うためには、まず会社や各幹部に対する四半期および年間単位の適切なマイルストーンを設定する必要があります。また、新しい幹部を会社の文化に慣れさせることもあなたの仕事です。幹部チームを構築しながら、文化やチームワークのために新しい幹部たちと個人的に、およびチームとして、一緒に過ごす時間を余分に予定しておきましょう。新しい幹部たちにはすぐに仕事に参加して物事を変えるようにプレッシャーをかけるよりも、時間を割いて組織のいたる所で関係性を構築するように求めるべきです。
上級幹部の業績評価方法を学ぶことも課題です。その理由の一部は、面と向かってのやりとりだけでは必要な情報の多くを得られないからです。あなたは彼らが上手く組織を作り上げたか、部下たちの生産性と満足度が高いか、そして他のチームや幹部との良好な協力ができているかについて評価する必要があります。採用した幹部の最低でも25%は良い結果を出さないと考えておくべきです。大部分のスタートアップのCEOにとって、最初に雇った幹部をクビにすることはとても難しく、時間をかけ過ぎてしまう場合がほとんどです。しかし、素早く行動して組織に穴を空ける方が、役に立たない幹部社員を無駄に長い時間残し続けるよりもましです。無能な幹部を長く残し続けるほど、チームの他の人たちからの信頼を失います。
幹部チームを全員雇用し、協力して働くように指導して、自分が最低限関与するだけで彼らが高いレベルの事業運営を行えるようになれば、あなたの仕事は終わりです。自分の時間の50%を幹部チームの採用と管理に使うことになったとしても、驚いてはいけません。それは費やす価値のある時間です。
2. 目的とアラインメントを作り出す
CEOが委任できない2つ目の仕事は、会社内で目的とアラインメントを作り出すことです。スタートアップの社員がまだ10人に満たず、全員が一つの場所に座っているなら、人々をアラインさせ続けるためにそれほど懸命に取り組む必要はありません。なぜなら全員が、今何が起きているのか簡単に耳にすることも、自分たちの作業がより幅広い目標と一致しているか把握することも、あらゆる決定に意見を挟むこともできるからです。コミュニケーションはシンプルで、簡単にアラインを作り出すことができます。
しかし、やがてスタートアップが異なるオフィスで幅広い背景や機能(セールスや財務など)を持つ人たちの採用を増やし始めると、アラインメントを作り出すのはが大幅に難しくなります。チームはもはや声が届く範囲に座っていません。あなたは入社した人たち全員と面談することも、あるいは顔を合わせることさえできません。また、新入社員研修に出席することすらできないかもしれません。例えばTwitterでは、世界中のオフィスで月に50人を採用していた時期が18ヶ月ありました。CEOや他の幹部たちの誰もが、入社した人たち全員と会う手段を持ちませんでした。
フェーズ1のCEOとしてのあなたは、ボートで先頭の役目を担う漕手です。しかしフェーズ2のスタートアップでは、あなたの仕事はもはやボートを漕ぐことではありません。漕ぐ代わりに、旅の目的を明確にし、ボートの方向を決め、大幅に増えた漕手のペースとパフォーマンスを評価することが仕事となります。ビジネスの言葉で言えば、CEOの仕事はミッション(目的)、戦略(方向)、メトリクス(ペースとパフォーマンス)を定義することです。これら3つの要素が、成長している企業が実行できなければならない、必要不可欠な物事のつながりをもたらします。
「Mission-to-Metrics」とつながる連携を示す最も良い例の1つが、SpaceXの製造フロアを訪れたある友人から聞いた話です。SpaceXの社員が大きな部品を組み立てているのを見て、彼は足を止めて尋ねました。「SparseXであなたは何の仕事をしているのですか?」その社員はこう答えました。「SpaceXのミッションは火星を植民地化することです。火星を植民地化するためには、再利用可能なロケットを作る必要があります。そうでなければ、人類が火星まで行って帰ってくるコストが、負担しきれないほど高額になってしまいます。私の仕事はロケットが地球に帰還できるようにする操舵システムの設計を手伝うことです。私たちのロケットが打ち上げの後で大西洋にあるプラットフォームに着陸すれば、私が成功したかどうか分かるでしょう。」この社員は単純に、自分はロケットを着陸させるための操舵システムを作っていると答えることもできました。しかしそう言う代りに彼は、会社全体の「Mission to Metrics」のフレームワークを何も見ずに話したのです。それこそが連携です。
あなたは自分のスタートアップのミッションと戦略とメトリクスを、明確で単純で刺激的な方法で定義することができますか?フェーズ2のCEOのほとんどが、すぐにはそれをできません。また、定義しようとすると、考えていたよりも難しいことに気付きます。下の図は目の前の仕事を表したものです:
あなたのミッションは、野心と永続性が感じられるものにすべきです。それは会社を始めた理由に根ざしたものであり、頻繁に変えるようなものであってはいけません。逆に言えば、あなたは年に最低2回はプロダクト戦略と市場開拓戦略に立ち戻り、それらが関連性と適切性を保っていることを確認する必要があります。事業戦略とプロダクト戦略の開発については、膨大な量の文献が存在します。どのやり方を選択しようとも、あるシンプルな実践が常に役立つように思います。それは、文字に書くことです。私たちの経験では、開発戦略やコミュニケーション戦略に最も長けたCEOは、時間を割いて自らの戦略を長々と書き出します。AmazonのJeff Bezos氏とそのチームが行うように、戦略会議ごとに6ページのメモを作成するまでは必要ありません。しかし「Mission-to-Metrics」のフレームワークを長い文章で書くことは、考えをより綿密にし、欠点を見つけるのに役立ちます。
効果的なメトリクスの設定も、CEOの仕事の極めて重要な一部です。よくある誤りは、社内的なメトリクスを、収益やユーザー数の増加などビジネスの最も重要な主要業績と同一視することです。これは間違ったやり方です。なぜなら、「ユーザー増加数」のようなビジネスの主要業績は、一般には直接的に手を下せるものではないからです。その代りに、あなたは主要業績の原動力となるものの理解を深め、それらの原動力を主な社内のメトリクスとして設定する必要があります。優れた企業は自分たちの成長の原動力となるものを理解することに、休むことなく取り組みます。Facebookは新規ユーザーが14日以内に10人の友だちとつながることと、サービスを使い続けることの相関関係を発見したことで有名です。そのためFacebookは、「10人の友だちとつながっている新規ユーザーの数」を主要なプロダクトのメトリクスに設定しました。あなたは粘り強く主要業績の原動力となっているものを追求し、それらの原動力を社内のメトリクスとしなければなりません。もし収益や顧客獲得数、またはユーザー数の増加を推進しているものが何なのか分からなければ、どっちみち成功する可能性は高くありません。
自分のスタートアップの「Mission-to-Metrics」を文章にし、幹部たちや他の主な社員からフィードバックをもらったら、それを全社員に対して定期的に伝え始める必要があります。あなたは自分が合理的と考えるよりもずっと多く、「Mission-to-Metrics」の連携を繰り返し伝えなければなりません。そうすることで直感に反して効果を上げることができます。あなたが繰り返し伝えない限り、社員はそのメッセージを自分のものとして理解しないでしょう。社員がそれを復唱できるか現実にテストするのは簡単ではありません。しかし、あなたがいなくても彼らがあなたの提供した文脈に基づいて適切な判断をすることができるかテストするのは、難しくないはずです。
3. 企業文化を育てる
文化ほど捕まえどころのない会社作りのコンセプトはあまりありません。基本的に、文化は人々が1つの会社の中で互いに接する方法によって定義されます。経営者が社員と接する方法と、社員が互いに接する方法のどちらも当てはまります。文化は、二人目の人物が自分のスタートアップに入社する日から形成され始めます。スタートアップ創業当初における創業者と初期社員たちの互いに対する行動の仕方が、長年続く可能性のある文化的傾向を決定付けます。
しかし、前述した他の仕事とは異なり、優れた文化を作り出すことはCEOだけの仕事ではありません。全ての人に責任があります。だから「Mission-to-Metrics」とは違い、CEOの仕事は静かな部屋に行って全員が従うべき文化的信条を書き連ねることではありません。そのような1人で決めるやり方は、たいてい失敗します。なぜなら、そのようなやり方から生まれる言葉は、社員が全体として体験している会社の現実とはしばしば乖離しているからです。CEOは1人で文化的信条を決める重荷を背負うのではなく、共同創業者や初期社員たちに協力させて、誰もがそこに本物感と熱意を感じる一連の価値基準(バリュー)と行動基準を文章化させるべきです。文化が自主的に実施されるためには、その価値基準が過去に企業の行ってきたやり方と共鳴するものでなければなりません。それが、作られたものではなく本物であると社員に感じさせる方法です。もしあなたが会社に対し、過去の行動を反映していない価値基準を具体化させたいと本当に考えるなら、それを企業の価値基準とすることを検討する前に自ら手本を示し、経営陣の全員にそのやり方で行動させましょう。
役に立つ例をPixarが提供してくれます。多くの映画スタジオと同様に、Pixarはその主要な価値基準の1つを「ストーリーが第一」としています。そして多くの企業がそうであるように、社員が最も大事な資産であると言っています。Pixarの社員はそれらの価値基準を受け入れています。なぜなら、会社がこれまでに行ってきたやり方を確かに表しているからです。その最も強力な例は、1999年の『トイ・ストーリー2』の制作に遡ります。予定されていた公開日までわずか7ヶ月と迫る中、Pixarのクリエイティブ担当首脳陣は『トイ・ストーリー2』がクリエイティビティを発揮できていないと感じました。Pixarの配給パートナーであるDisneyは、アニメーション映画を作るには3~4年かかることを知っていました。彼らはもう一度やり直すには時期を逸しており、Pixarは映画を現状のままリリースすべきであると主張しました。しかしPixarはそれを拒否し、代わりに現状のストーリーを破棄して、最初から書き直すことを決めました。Pixarは自らを崩壊寸前まで追い込み、『トイ・ストーリー2』の新バージョンを公開日までに完成させました。そしてこの映画は、商業的に大成功を収めました。映画が完成すると、経営陣は丸2ヶ月間スタジオを閉め、全員に休養を取らせるという特別な措置を実施しました。
Ed Catmull氏はそれを、同スタジオの歴史の中で最も情熱的で重要な期間だったと言います。「『トイ・ストーリー2』が私たちを定義しました。私たちは名作と月並みな作品の両方を制作するスタジオになることはできないと言われました。私たちの作る作品は全て、名作でなくてはなりませんでした。私たちはストーリーに誇りを持てない映画は決して公開しないということを、自らに証明してみせました。また、社員にそのような犠牲を求める場合は、彼らを大事に扱わなければならないということを実感しました。」Pixarの文化の中核となる信条を次の言葉以上に表現しているものはありません:「クリエイティビティに妥協せず、人々を大事にする」
企業としてのあなたを定義しているものは何ですか?その答えを見つけるには、過去に目を向ける必要があります。それはしばしば、成功が全く確信できていなかった最も初期の日々に遡ります。それは「ストーリーが第一」と同じように、品質に対するコミットメントかもしれません。「迅速に動いて物事を破壊する(go fast and break things)」といった、働き方に関するものかもしれません。それらの価値基準をいったん表したら、CEOは会社の新しい幹部全員に対し、間違いなくそれらの価値基準を反映した行動をとらせる必要があります。しかしここでも、それを守らせるのはCEOだけの仕事ではありません。会社の中の全員が、自らの上司、同僚、そして自分自身に同じ規範を守らせるために、果たすべき役割を持ちます。
成功のシンプルな測定基準
私はかつて、Pixarでの経営会議中にSteve Jobs氏が次のように話すのを聞いたことがあります。「私はベストな状態の時、自分の時間の50%に予定を入れません。その時間を使って考えたり、話をしたい人たちと会ったり、好奇心をめぐらしたりします。それは私がクリエイティブになるための時間です。この自由な時間がなければ、私は会社よりも先んじて進み続けることができないでしょう。会社を率いるためには、常に2歩先を進んでいなければなりません。背後から会社を率いる方法などないのです。」考えるために予定のない時間を多く持てる状態まで到達することは、おそらくフェーズ2のCEOにとって最も明らかな成功の証でしょう。それは、あなたが幹部チームを雇い、日々の活動を彼らに委任して、自分が日常的に関与しなくても彼らが問題なく事業を運営できるようにミッションと戦略とメトリクスを上手く文章化できたことを示唆します。その時にあなたが得られるリワードは、スタートアップの将来について考え、計画を立てるための豊富な時間です。
注:
※1 YCの共同創業者Paul Graham氏の『スタートアップの始め方』や『スケールしないことをしよう』などのエッセイほど、この話題について雄弁に述べた著作はありません。
※2 このエッセイの焦点は、事業オペレーション上のCEOの責任に置かれています。取締役会の構築/管理、資金調達、マスコミとのやり取りなど、事業運営とは直接関わらない一定の責任も存在します。特にスタートアップがまだ小さい時は、それらもCEOの仕事の一部です。一般的には、フェーズ2のCEOが事業運営と関係のないその種の仕事に割く時間は、少ないほど良いと言えます。なぜなら、そのような時間は会社の運営を犠牲にするからです。
このエッセイの原稿を読んでくれたDaniel Yanisse氏、Patrick Collison氏、David Rusenko氏、Ben Holzman氏、Michael Seibel氏、Ed Catmull氏、Sam Altman氏、Leore Avidar氏、Tyler Bosmeny氏、そしてYC Continuityのチームに感謝します。
著者紹介
Michael Seiebl は YC Continuity の CEO であり、グロースステージのスタートアップに対する投資とアドバイスを行っています。Ali はTwitter ではCFOとして、そしてCOOとして。Pixar ではCFOとして、そして戦略策定の上級副社長として二つの素晴らしい会社の成長に貢献してきました。
記事情報
この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: What’s the Second Job of a Startup CEO? (2016)