永続的な企業を作ることについて (a16z)

最高の創業者またはCEOは、永続する力強い会社を作りたいと願っています。しかしそれは願いというよりは必須のことです。会社が非上場企業で長く居続ける昨今では特に。

会社が「手っ取り早いイグジット」として買収されることを期待するCEOにとって、それは容易なことではありません。それが特に困難になるのは、安定した売上やマーケティング、人事、法務、顧客サポート、会計、財務を備えつつ、緊急を察知する感覚を失わずに、成熟し、よく管理された会社を育てることをCEOやアドバイザーが学ぶ必要のなかった場合です。彼らが「単に」必要としたのは、成功する製品を作り上げ、より大きな会社と統合し、残りは相手に任せることでした。

これは現在の創業者やCEOにとって、大変な知らせであり、また良い知らせでもあります。良い知らせというのは—— 根本的に重要なテクノロジーの長寿会社を育てるかつてないほどの大きなチャンスに恵まれているという点です。大変な知らせというのは—— そのためには、個人的にも職業上でも、今までの人生で経験したことのないほど高いレベルまで成長しなければならない、という点です。これを成し遂げるということは、自分が携わって、徹底的に自力でやり尽くす会社を育てなければなりません。

以下に、私自身が今までの経験から学んだことを共有したいと思います。私がSuccessFactorsを経営していた頃、私たちは「Lambeau Fieldのような会社を作る」と言っていたものです(ウィスコンシン州グリーンベイにあるLambeau Fieldスタジアムは、NFLのGreen Bay Packersの本拠地です。コーチであるVince Lombardiの下、このチームは、連勝と、ひどい雪の中でも決定的な勝利をものにする能力で知られていました。チームは悪天候にも対応できるように訓練されていたからです)。手っ取り早いイグジットとは反対に、長期的に会社を育てる場合は、極めて多様な決断を下さなくてはならないことが、瞬く間に明らかになるでしょう。その決断は、雇用や企業文化から売上や顧客の扱い方にいたるまで、あらゆる種類のものです。明らかに、すぐに成果が出ることを意図している決断を、「長期的にも私たちを強化してくれるものだろうか?」という観点で一つひとつ検証する必要があります。

成功する会社は買われるものであって、売られるものではない

あなたの会社が買収される結果になったとしましょう。仮にそうだとしても、売却価格を上げるための最善策は会社をうまく育てることです。SuccessFactorsの売却交渉をしていた時、バリューや議論の方向が気に入らなければ、ただ交渉をやめて、会社を育てることに戻ることができると分かっていました。私たちは、はったりをきかせるようなことはしませんでした。ごまかすこともできません。なぜなら、良い会社は買われるものです . . . 決して売られるものではありません。犬が恐れを嗅ぎつけるように、経験豊かなM&Aチームは、遠くからでも、あなたが会社を売りたいと思っていることを嗅ぎつけ、その結果、価格は下がります。もしあなたが売るのでなければ、そしてあなたの会社がしっかりと確立され、「悪天候」も乗り切ることができて、独立性を保つ力を持っているのであれば、買収者よりも長く交渉期間を持つことができるので、あなたの会社の価格は、あなたが思う価値にふさわしい価格まで上がっていくでしょう。

では、近道なしにどのようにこのような規模まで育てることができるのでしょう。まず最初に、創業者が焦点を当てるべき領域が少なくとも5つあります。

  1. 素早く学ぶことを学ぶ
  2. 良い時も悪い時も、会社を持続させる企業文化を育てる
  3. 本物の取締役会を編成する . . . そしてそれを活用する
  4. 適正な会議の開催頻度を確立する
  5. 心の中の化け物を退治する

1. 素早く学ぶことを学ぶ

あなたの会社の成長が速ければ速いほど、CEOとして何をしていいかわからないという状況に早く直面します。そしてそれは時間が解決してくれるものではありません。困難はどんどん大きく膨れ上がり、次々に押し寄せます。大きなアイデアを持つ多くの創業者たちは、大きな会社を育て上げた経験がほとんどないからです。すべきことについて、ここにいくつかの考えを挙げます。

積極的に助けを求める不変の考え方を発達させる

これは単なる自助的な決まり文句ではありません。これは毎日、目覚めた時に、「私は何を知らなくて、誰がそれを教えてくれるのか」と自問するということです。そして、顧問や取締役会メンバー、上級管理職、社員、コーチ、顧客、その他の誰であっても、あなたが必要とすることを知っている人を見つけるのです。これは当然かつ簡単なことのように思えるかもしれません。しかし、ほとんどの創業者たちはこれを避けようとします。なぜならこれは、彼らを不安な気持ちにさせるからです。

これまでの人生で万事がうまくいっている場合—— 自分の会社を始めるという動機の背後にある現実的な側面の現れとして、自分の世界観で物事を進めたいということがある場合—— 誰かに助けを求めるという行為は自然に生じません。しかし、もし素早く学びたいのであれば、恐れと自尊心はひとまず忘れることが必要です。普通の速度で自分流に学ぶことは、あなたにとっても会社にとっても費すものが大きくなるでしょう。

大きな会社と小さな会社とでは経営方法が異なることを知る

10人規模の小さな会社の経営は—— 皆が小さな台所に収まり、誰が何の仕事をしているか一目瞭然です—— 1000人規模の会社の経営ほど面白くはないでしょう。

大規模な会社を経営することは最初は不慣れで疎外感を感じるかもしれません。だからこそ、問題に真正面から焦点を当てる価値があるのです。そうすれば様々な点で面白味も出てくるでしょう。1000人規模の会社では、小規模な会社では手にすることができなかったようなすばらしい仕事がたくさんあります。しかし、そのやりがいのある立場にたどりつくためには、退屈ではあるけれども極めて必要性の高い要素がたくさんあります。大きな一歩は、自分の大きな組織を運営するために必要なシステム、人材、プロセスを受け入れなければならないという事実を認め、これに抗わないことです。特にその理由の一つとして挙げられるのは、それが1000人に同じ認識を持たせ、やる気を起こさせ、全体が一つとなって行動して結果を得るための方法だからです。

犯しがちな間違いで、最もしてはいけないことは、小さな会社を経営するように大きな会社を経営することです。それは、あなたの頭の中では郷愁的で気分の良いことかもしれません。しかし現実的には、そうしてしまうとビジネスのあらゆる人にとって、面白く思えるものを惨めなものに変えてしまうのです。

継続的、体系的、かつ明白なフィードバックを共有し、強く求める

私がCEOとしての手腕をSuccessFactorsで磨いていた時に、私の助言者で親友でもあったJack Welchから直感に反する最たるものとして学んだことは、パフォーマンス管理に関するものでした。彼が言うには、人事は会社で最も重要な役割を担っていますが、その理由は、過去を振り返るCEOとは異なり、力強いVPや人事は常に未来を見ているからです。Jackからの最高の言葉は、誰かが解雇される時、それはあなたを含めて誰にとっても驚きであるはずはない、というものでした。

学ぶ組織は成長する組織です。世界クラスの学びの組織を作ることは、経営者と社員が明瞭なフィードバック(個人として、あるいは分散された労働力として)を交換することができる意思疎通の枠組みを設定することを意味します。フィードバックは彼らがうまくやっている点、改善すべき点、どのように成長すべきか、についてのものです。人々のおかげで意思疎通の枠組みが成立するだけでなく、これには時間と労力をかける価値があります。なぜなら、互いにうまくやっていくことを前提として、会社は大きくなるのですから。確かに、それが痛みを伴うことも多いでしょう。他にやるべきことは山ほどあり、加えて、これらの対話は容易ではありません。しかし幸運なことに、この種の骨折りを取り除くオンライン・ウェブシステムが数多く開発されています。これらのシステムはまた、組織図や後継者育成計画、給与の改革に役立つデータを生み出してもいます。これは組織として生み出す最も興味深い「ビッグ・データ」の一部と言えるでしょう。これらのデータがうまく分析され、活用されれば、あなたの会社の経営会議は非常にためになり、生産的なものとなるでしょう。

補足—— CEOは、このフィードバック・プロセスを取締役会との間でも実施すべきです。

コーチに投資する

取締役会や他の顧問に加えて、上級管理職 / リーダーシップのコーチは、CEOに対し、難題や混乱、疑惑を内密に議論するための場を提供します。その場は安全で、ある程度格式のあるものです。会社が有償で雇用してはいますが、コーチは「正式」な役割がなく、誰かに報告する義務もありません。その背後には、定期的で一貫した会議の開催を強化する形式がありますが(まさに取締役会のようなもの)、それによってCEOは頼ることのできるもう1つの柱を得るとともに、自社の業績について独立した展望を持てるのです。

例えば、コーチは、取締役会と直属の部下の匿名の参加者とともに、あなたを全方向から審査することから取り掛かります。これは通常、あなたをさらに上のレベルに引き上げるための個人的かつ職業的成長を促す大きなきっかけとなります。これが、早い時期にコーチを雇うことをすべてのCEOに私が提案する理由です。これを「仕事」のセラピーと呼ぶ人もいるくらいです。(あなたがもしこれを嘲笑うようなら、今すぐコーチを見つけるべきです。あなたは誰よりもコーチを必要としています。)私が紹介したコーチで、誰一人として解雇された人はおらず、実際のところ、皆がCEOに愛されています。

早急に特定分野の専門家を雇用する(手遅れになる前に)

技術畑の創業者の多くは、売上やマーケティング、法務、財務、人事、他の重要な会社の機能についてよく知りません。そして学ぶだけの頭を持ちながら、その時間を全く持ち合わせません。これらの機能のすべてを自分で学ぶことは、競争相手に取って代わられること、または会社を失うことを意味します。上級管理職がリーダーシップや構造、洞察、スピード、経験に与える直接的な影響や、会社を構成し、大きくする機能を育む能力の方が、彼らを軌道に乗せるために必要な時間をかけるより(正しい姿勢で臨んでいれば)、はるかに重要なのです。

ですから、あなたが技術畑の創業者であってもなくても、世界クラスの上級管理職チームを作らなくてはなりません。これは、あなたが行っていないことを実行する方法を知っている人々を集めるということになり、あなたは恐怖を感じるかもしれせん。それらの新規雇用者が企業文化に合わないなどの懸念を共同創業者や初期の雇用社員と共有することで、その恐怖心はさらに悪化するでしょう。これらの人々に対し、誰一人として、自分たちの間にあるような親近感を抱いていないのですからなおさらのことです。これはある意味、真実と言えるでしょう。社風に合う人もいればそのまま合わない人もいます。しかし、いずれにせよ、このように多様化をもたらすことはよいことです。

問題の一部はコントロールです。ほとんどの創業者兼CEOはすべてをコントロールしたがります。なぜなら、そもそもそうすることで彼らはここまでたどり着き、彼らは自分自身に対し、また、今まで行ってきた仕事の質に対し、非常に高い水準を設定しているからです。彼らは、他人にコントロールを任せた場合に、自分たちのバリューと水準に達するものになるかどうかの確信がありません。ですから、「ならば、最初から自分でやってしまった方がいい」という考え方になります。これはわかります。そしてこの直感によって、すばらしいことがたくさんもたらされると私は信じています。しかし、助けなくして、権力の一部を放棄することなく、長寿会社を育てることはできません。ですから、選択しなくてはなりません。

内部の昇進だけでなく、多様な人材を雇用する恐怖を克服する

私のスタートアップで、格闘すべきもう一つの感情的障害は、内部でのみ昇進することにより、自分たちは会社の破壊的根源と魂にただ忠実でいるというアイデアでした。なぜなら初期雇用の社員は本物の「エッジ」を持つ「本物の」人員だからです。当然の帰結は「すばらしい経歴を持つこれら新規雇用者は私たちの会社とその文化を理解していない」というものでした。すばらしい経歴の持ち主で、大きな失敗をした人材を採用したことがあったでしょうか。はい、ありました。けれども、初期雇用の社員で、会社の価値を崩壊させた後、長きに渡ってその職に居続けた社員もいます。何十人ものエンジニアが、リーダーを尊敬できないという理由で離職したこともあります。

問題は三重です——

まず、その役割に最も適したものが実際にどのように見えるかわからないのに、どの役職を雇用すべきか、分かるわけがありません。最善の方法は、多くの候補者に会い、枠組みを作り、素早く検証することです。

次に、輝かしい経歴を持ちながらも失敗した人たちのほとんどは、単に会社と十分に同化していなかっただけです。弁解の余地はありません。あなたは組織が新しい人材を吸収するために時間をかける必要があります。明らかにうまくいかないケースもあり、その場合は素早く行動をとる必要があります。

三つ目に、「見た目と感覚」で雇用しないことです。本当に必要なことを見極めて雇用するのです。雇用すると決めた人物がすばらしい経歴や学歴、職歴を持った人ではないこともよくあります。もしあなたが、すばらしい経歴を持ち、会社にエネルギーを吹き込んでくれるような人材を見つけたならば、それがあなたにまずどのような恐れを抱かせ、躊躇させているのかを自問しましょう。多くの場合、それは変化への恐れです。

ある年齢、文化、学歴、経歴にターゲットを絞るべきというアイデアは、私にとっては完全に破綻しています。それは非多様性に与するものです。生まれながらの脳の能力、職業倫理、使命のために闘う意志の最高の組み合わせを手に入れるためにすべてを賭けるべきです。そして、真の専門家を見つけて雇用することもその一つに挙げられます。

2. 良い時も悪い時も、会社を持続させる社風を育てる

企業文化はCEOから発信されます。誰かに代わりにやってもらうわけにはいきませんし、無視することもできません。

企業文化の発信はCEOとして行う最も重要な任務です。それがあなたが本当に会社に対して望むものでなければ、社員はそれを決して受け入れないでしょう。もしあなたが、会社がどのように事業を行い、どのように社員が振る舞い、どのように社員同士が接し、また、顧客に接するかを定義しなかったら、あなたが定義されることになります。このアプローチの問題点は、「クラウドソーシングによる」よく管理されていない社風が流れ着く先が、低レベルな最大多数の集団だということです。

あなたは市場シェアや製品体験と同じように、企業文化を厳密に守らねばなりません。AirbnbのCEO兼共同創業者のBrian Cheskyは、「滅茶苦茶の」企業文化はある一定の規模になれば必ずしも必至ではないとここで述べています。そしてただ既存の文化を守らねばならないのではなく、育てることができます。特に、Chesky の「情熱を持って何かを一緒に行う方法」という定義で企業文化を定義し、運用する場合は。

意義深く、バリューに容易に結びつく形での決定—— 特に「嫌な奴は無用」

会社のバリューを書き出すのは安っぽく見えます。しかし、そうではありません。それは明白性と鍛錬を必要とするエクササイズです。バリューを書き出して壁に掲げるよう求めらる時に最も奇妙だと感じる難題は、「前の会社では誰もバリューを読まず、失敗し、それは冗談になったよ」という意見です。そうですか、それなら、人が気にかけず、覚えもしないようなバリューは書かないことです。もしあなた自身がこれらのバリューを思い出せない、あるいは、暗唱できないなら、書き直すべきです。もしあなたが書いたバリューがあまりに事務的で筋の通らないものなら、それはあなたが悪いのです。それもやり直しです。分かりやすい言葉で書き直してください。バリューに面白味を加えてもよいのですが、それは心に響き、真剣なものであるべきです。

SuccessFactorsにおける第一のバリューは「個人に対する敬意、嫌な奴は無用」でした。しかし、会社が成長するにつれ、顧客の中には世界でも屈指の大会社も出てきて、この言葉を軽蔑的だと受け止めたのです。そこでこれらの顧客の声を尊重し、「嫌な奴」の「asshole」を「jerk」に変えました(スタンフォード大学のBob Sutton教授による事例記事に書かれています)。

バリューは組織と新規雇用者にとってのみ重要なのではありません。困難な状況に直面する時、私はバリューに立ち返ります。人事のVPによってここにまとめられた指導を求めて立ち返るのです。それは試練の時に通用します。

バリューの例

企業文化はあなたが発信するべきですが、SuccessFactorsを育てる上で役立ったいくつかの例をここで紹介します。

Kaizen(改善)または持続的改良

何が間違っているのか分からないのに間違いを正すことができるでしょうか。悪い知らせに耳を傾け、共有しましょう。初めは苦痛かもしれませんが、甲斐があり、すばらしいことです。どの会社にも何かしらの問題はあり、誰かがそれを共有すると会社は少しだけ良くなります。トヨタが用いた最も有名な持続的改良の概念を借りて、私たちはこのプロセスを「Kaizen」と呼んでいます!

この永続的な完璧の追及に命名することで、驚くほどの安心感がもたらされました。同僚がどんなに一生懸命働いても、あるいは、どんなに物事がうまくいっても、より良い方法を求める際に、誰も傷つくことがないように、私たちはいつでも「ここでの改善点は何か」と言うことができました。常に向上することに胸を踊らせ、会社で常に顧客のために努力を重ねて、市場でも際立つ存在となることが可能になるのです。

感謝と敬意

投資家、顧客、提携先、そして相互の、共に働くすべての構成員に心から感謝の念を持つ会社は必ずと言っていいほどすばらしい会社であり、すばらしい職場です。正直に言えば、破壊的テクノロジー企業で人が成し遂げたことで、人々に感謝するものを見つけるのはそう難しいことではないはずです。一緒に仕事をする人の価値を認め、尊敬することを社員に教えていきましょう。

これらとともに明らかに重要なのは、顧客にも敬意を払うことです。もし顧客が成功しなければ、自身の事業も失敗することは、皆、頭では分かっています。しかしこれを実際に、彼らの企業文化の一部として本当に実践しているでしょうか。顧客を大事にする一環として、社員を最優先すべきという話は世間にはたくさんあります。では、顧客と社員のどちらを優先するのでしょうか。これは私には無駄な話題に思えます。鍵となるのは、顧客と社員はすべての中心に存在するという点です。彼らを責任と気遣いをもって扱わないなら、立派な長寿会社を作り上げることは忘れてしまって良いでしょう。

人間性と謙虚さ

事業において私が学んだ最大のことはあえて人間らしくいるということです。基本的にあなたの個人的な弱さをさらけ出し、心を開いて取り組み、同僚と真の意味でつながることは何と力強いことでしょうか。この記事は私の物語と見解をよく共有するものです。

ここで1つ付け加えます。あなたの会社の目的は他人に尽くすことであり、あなたの自尊心のためではないことを常に覚えておいてください。この点において納得する必要があるならば、私の友人の一人(テコンドーの世界チャンピオンでした)の言葉、「どんなに成功しても、いつも誰かしらあなたをやっつけに来ることができる」を紹介しましょう。私が現在敬愛する事業指導者たちは、個人の信念に自信を持ち、規範に挑んでいます—— 私はその個性と自由を受け入れています。しかし、その一方で、彼らの多くは、自分の成功やより大きな世界で自分が担っている役割に関しては謙虚です。

3. 本物の取締役会を編成し . . . それを活用する

いわゆる起業家たちは新しい方法を好み、取締役会を官僚的な必要悪と考えがちです。実際には、取締役会は、自己妄想、破産、そしておそらく刑務所行きからあなたを守る最後の一線です。あなたが成功すればするほど、力のない取締役会はあなたにこの一線を超えさせてしまう可能性が高くなります。そうならぬよう、本物の取締役会を編成しましょう。その方法をここにいくつか示します。

取締役会を早期に拡大する

あなたのスタートアップを小さくまとめておくことはとても心地よいことでしょう。典型的な取締役会は、単純にベンチャー投資家と創業者のみで構成されています。これは悪いアイデアです。素早く学ぶという私が先程挙げた要点に戻ると、その最善の方法の一つは、あなたが学ぶことができそうな人物を取締役会に配置することです。最近、私は、それぞれが異なる業界の全く異なるタイプのCEO3名を招いてのパネルディスカッションを開催しました。彼らはそれぞれ、事業の1年目から3年目までに、VCではない取締役を補充しました。私も強くこれをお薦めします。VCが嫌がったとしても、取締役会を早期に、かつ注意深く拡大する必要があります。

取締役を選ぶ基準は、会社のことを本当に考えて、CEOと会社を助けたいと思っている人物であるべきですが、それと同時に完全に自律性を保つ人物でもあるべきです。会社の初期、売上1000万ドルまでは、1名か2名の社外からの取締役を目標にしましょう。その後、売上が1000万ドルを超えたら、社外の取締役は3名から4名を目標にしてください。私の場合、社外の取締役を選ぶ基準は、私の個人的または以前の事業からの知り合いでないことでした。後に何人かとは友人関係になりましたが、取締役会に入った頃は一人も知人はいませんでした。

これらの「社外」取締役たちは、CEOの視野を拡大し、取締役会で他の皆(社内の者)に挑戦することに加えて、会社に新たな戦略の視点を示してくれます。多くの会社は株式公開の準備が整うまで待ち、最後に慌てる結果に陥ります。いくつかの委員会において社外取締役がいることが必須条件だからです。SuccessFactorsでは、取締役会によって会社はさらに専門性に磨きがかかり、必要な構造とコントロールを適所に置くことに大きな助けとなりました。また何よりも、レベルを引き上げる助けとなり、様々な有益な視点をくれ、私たちの大きな仕事のいくつかを触発する貢献をしてくれました。

取締役会の会議に規律を定める

CEOに、結果が好転するまで取締役会の日にちを延期できるかと聞かれたら、これは危険信号です。

個人の非常事態を除いては、いかなる理由であっても取締役会を中止することはお薦めしません。会社の規模にかかわらず、取締役会は強制的な機能を持ち、CEOと経営は待望の事業の概略を把握して会社の状況に対して現実的になります。しかしこれは単なる検証ではありません。取締役会は会社が直面する大きな課題について考え、解決策を講じるのを内密に助けることができます。

本物のデータによる本物の取締役会を開催する

取締役会のための数値とデータは、収入、成長、売上総利益、利益などの財務から始まります。データは包み隠さず、1年ごとの比較、また、計画と業績の対比で提示する必要があります。CEOが犯し得る最大の過ちは、事業の変化とともにこのデータを変化させることです。それはまだいいのですが、時間上の継続性を示さなかったり、その変化の理由などを説明せずにそうすることは良くありません。これは、取締役会が「真実」を維持する手助けができる唯一の方法だからです。

データは取締役会の少なくとも3日前に発送されることで20倍以上の生産性を発揮します。事業は最後の瞬間まで変化し続けるので、これは常に難題です。しかし、取締役会メンバーにこれらの資料を事前に提供することの価値は、直前に変更があったとしても、重要なのです。

最後になりますが、財務データよりも、役割、性別、地理などで、企業文化の発展、自由意志、人々の無自覚な解約について議論すべきです。基準や趨勢線に用いる期間が長ければ長いほど、事業で起きていることについて、誰もがより多くを洞察することができます。これは複数の事業分野と複数の地理的要素を加えた場合、特別に重要になってきます。SuccessFactorsの製品は世界150カ国以上で販売されました。時間とともに売上がどのように伸びたかを比較することで、市場がいかに顧客を惹きつけたかを洞察することができます。

取締役会にあなたのフィルターとバージョン以上のものを提供する

それぞれの主要な任務を担う人が少なくとも1年に1回、確実に、取締役会にそれぞれの領域の詳しい現況を示すようにするべきです。

あなたが多くの時間をともに過ごしたチームの質を取締役会が理解し、「感じる」ことが重要であるだけでなく、取締役会は、自分たちが強みや弱み、機会を見出した箇所を評価し、共有する助けとなることができます。そうです、あなたほど詳細は知らないでしょうが、あなたが夢中になり過ぎて、あるいは近すぎて見落としていることについて、良い洞察を与えてくれるでしょう。

CEOが同席する非公開取締役会とCEOが席を外す非公開取締役会

初めて2つの異なる非公開会議を経験した時(一方は経営陣不在、他方はCEO不在)、私はそれらがとても役立ち、啓発的なものであったことで、少し衝撃を受けました。前者は、取締役会がチームに関してあなたに質問するのに安全な環境でしたし、あなたが取締役会の進み具合を尋ねるのにも安全な環境でした。その一方、後者は、取締役会にあなたへの信頼を抱かせ、誰かの気持ちを損ねる心配をすることなく、自由に話ができる環境、そして、CEOの解釈を恐れることなく堂々と発言するチャンスを与えてくれました。

これらすべてが役に立ち、事業の真の課題を扱うために公明正大で、活力に満ちた取締役会が守られます。

4. 会議の適正な開催頻度を確立する

会議は無意味です。真っ先に言います。大企業が会議を開いている間に、その競合が外部で戦いを展開して、あなたを負かすだろうと。会議文化をなくすことについてはこれまでも十分に書かれてきました。その多くは有益です—— 必要のない会議を開く必要性はありません。しかし、私はここであえて、会議を大切にすべきだと言います。取締役会から顧客までのすべての人々、つまり、あなたの会社の支えとなるであろう利害関係者との定例会議は特に重要です。

取締役会メンバーとの 1 on 1 の会議

なんと!取締役会メンバーと取締役会以外の場で会えるんです。でも彼らと事前に「事前販売」や「警告」、「同じ理解の上に立つ」ための会議をすることができるとは思いません(取締役会を脱線させる可能性のある特に繊細な話題を除いてですが)。では、すでに取締役会があったにもかかわらず、再び会議をする理由は何でしょうか。

もしあなたが妥当な取締役会メンバーに巡り会ったら、あなたは彼らに事業の最新情報を報告し、挑戦を受けたいと思うでしょう。これはあなたの感性をより鋭くし、あなたの根拠のない理屈を浮き彫りにするだけではありません。あなたが扱いにくい困難な道のりに向かっている場合に、素早く軌道修正するのを助けてくれます。

経営会議

もしあなたが、製品を作る、または、販売する、もしくは、会社を前進させることだけを望んでいるのなら、経営会議は苛立つものかもしれません。

そこで、「最新情報」のための会議ではなく、会社の生き残りにとって重大な話題や改善会議の悪い知らせに対策を講じることに焦点を絞った会議にしてみましょう。 リーダーたちが、会社の足跡や問題に関するあなたの最新の考えや視点にこれほど聞き入ったことはなかったと気づくでしょう。彼らはつながりを感じ、自分のチームメンバーにメッセージを効果的に広めることでしょう。

SuccessFactorsでは、例外として、私たちの会社の中核をなす集計目標指標を検討することから経営会議を開始します。そして、私は、会議の主題を顧客の成功、再生、ネットプロモーター・スコアに絞りました。なぜなら、これらは私にとって、製品の問題、市場破壊、売上の課題、モラルなど、他のすべての要素を生み出す最も具体的な視点を提供してくれるからです。

直属の部下との1 on 1 の対話とスキップ・レベル経営—— 耳2つ、口1つ!

これは他の何にも増して、官僚的で時間の無駄に思えます。なぜなら、「どちらにしても私はいつも彼らに会っているし、重要なことを議論している」からです。でもこれは、あなたの問題ではありません。これは、あなたより、とはならなくても、あなたと同じくらい彼らに大きく関わっているのです。ここで「人は2つの耳と1つの口を持って生まれてくる」という言葉が思い浮かびます。なぜなら、私の知る最高の経営者は、ほとんどの時間を直属の部下と1対1で過ごし、彼らに話を聞かせるのではなく、彼らの考えや問題に耳を傾けるからです。

もう1点の注意事項として、直属の部下に、彼らのリーダーとだけ時間を割きたいと告げることは、事業をうまく経営する能力を非常に力強く洞察することになります。公明正大な企業文化においては、あなたの会社の上級管理職は、あなたが自分のチームと直接話すのを誇りに思うはずです。そして、もし彼らが自分たちの役割を確立することにすばらしい成果を上げれば、彼らの直属の部下は、喜びに満ちて、支持するように彼らについて話すでしょう。

顧客との定期的な交流

企業文化は、社員と同じくらいに顧客に関係があります。私は会社を設立して、SuccessFactorsを率いて10年以上経ちますが、最も説得力があって驚くべきデータは、顧客と対面した会議で得られました。

あなたがGartner Quadrantのトップにいたとしても、あなたの顧客は氷に穴を開けて飛び込むほど新鮮な洞察をあなたに与えてくれるでしょう。しかしそれは、あなたが心から聞きたい、彼らから学びたいと思う質問を正直に尋ねた場合に限ります。このような洞察を聞き飽きたことは一度もありません。開かれた企業文化を育めば、その顧客が誰であろうと、会社全体が彼らからの成長すべき箇所についてのフィードバックを熱心に待ち望みます。私たちはそれを贈り物と捉えています。

5. 精神は保ちつつ、心の中の化け物を退治する

もしあなたが幸運にも、市場を大規模に破壊するアイデアを特定したなら、他の誰も信じないことを信じ、他の誰も手にしなかったチャンスを手にしてここまで来たわけです。では、なぜここで立ち止まるのでしょうか。あなたと会社に経費がかかるからです。私なら絶対に力への意志、あるいは、起業家自身の確信の強さを押し殺すことはしないでしょう。しかし、あなたの心があなた自身の最悪の敵ではないことや、あなたとあなたの会社がそのすべての能力を認識し得るために注意を払うべきことがいくつかあります。

自分に嘘をつかない

あなたは会社について誰よりもよく知っているので、会社について美しく語ることはお安い御用でしょう。しかし会社を最もよく知っているからと言って、あなたが自分自身に嘘をついていないとは言えません。注意すべき顕著な兆候は、何かがしばらくはうまくいっていると思っていたのに、今ではそれがうまくいっていないという証拠が数多くあることです。

代わりの道がまだ見つかっておらず、思いつく道はすべて困難そうに見えるため、「心の化け物」はしばしば、今すぐに損失を切り上げて新たな道を切り開くことを躊躇させます。これは製品から販売まで、会社のあらゆる分野において起こり得ます。

あなた自身が正直でいるために、メトリクス、KPI、予測や結果を使用して、現状のチェックを頻繁に行います。創業者が測定したいことをよく変更する場合、それは大抵、彼らが本当の問題が何なのかを把握しきれていないからです。しかしながら例外はあります。あり得ることとして、事業が本当に大きく変化して、古いKPI が無関係になった場合です。しかし、これは成功を収めている会社でそれほど頻繁に起きることではありません。新しい後期ステージのパイプライン生成や顧客採用、平均取引規模、 本当の意味での勝敗、新規純売上高の増加など、最も重要な指標は、計画と比較して歴史的に足跡をたどる上で古すぎることは決してありません。最もよく物語るのがデータなのです。

勝者の考え方はジレンマ状態であることを覚えておく

ここに重要な事実があります。起業家を成功に導く真の「力への意志」の資質は、最初のうちはあなたを成功に導いてくれます—— 頑固で、規範に挑戦し、不可能を信じ、誰もできると思わなかったことに取り組み、現職の「専門家」すべてにすでに役立っている事柄に対するあなたの理念を信じることです。それは、いかに会社を派手に登場させるか、いかに初めてメディアで取り上げられ、報道、ベンチャー投資家、熱心なリクルーターからの注目を浴びるかということです。

ですから、あなたの直感をもう信じるなとは絶対に言いません。現に、会社の成長過程で自分の直感に迷いを抱く時こそが、ほとんどのCEOにとってそれを信じるべき時なのです。ただし . . . あなた自身が常に自分の考えに挑戦させることを学び、耳を傾け、内容を理解すること、そして、それを活かすことを学ばなければ、Lambeau Fieldのチームのような天候に左右されない会社を育てることはできません。

あなたが最も尊敬する外部の会社は、そのアイデアを常に破壊し、妥当性の耐性を検証することで地位を確立してきました。多くのインフラとプロセスを構築しつつ、創業当初の起業精神と使命感を注意深く保ち続けているのです。

この投稿を読んでいる人が1つだけ身につけたものがあるとするなら、それは、この過酷な仕事をしなければ、この成功を導く考え方そのものが裏目に出ることもあり得るということです。近道はないのです。

画像—— ウィスコンシン州グリーンベイのLambeau Field [RedditeMercedesBenzより]

 

著者紹介

Lars Dalgaard

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: Thoughts on Building Weatherproof Companies (2016)

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