解雇が早すぎる、なんてことはない (Lars Dalgaard, a16z)

私は誰かを時期尚早に解雇したことは一度もありません。

上級管理職を雇う立場にある創業者で、面接、リファレンスチェック、取締役会の承認、交渉のすべてを経て雇った人物が働き始めた途端に疑念が芽生えるという経験をした人がどれだけいるでしょうか。あなたの雇った人が面接で行った約束を果たせていない、もしくは、自分のネットワークを使って引き入れると大胆にも約束した人を実際には雇い入れることができていない、ということが起こっているかもしれません。会社の皆と上手くいっていないみたいだとか、その人物の行動が、あなたが非常に苦労して作り上げてきた価値とは一致しないように感じることもあるかもしれません。

しばらくの間もっと成果を上げるようにと直接要求し続けた後に、あなたは悟ります。面接で「経験がある」ように思われ、リファレンスチェックでも確かめられたものが、実際に行った(もしくは内側から本当に理解した)ことではなく、単に見ていただけで、そのせいで同じことはできないということを。疑問をぶつけようとすると、彼らは曖昧な言葉で巧みに異議や懸念に対して返答してきます。時には、責任を追及されるようなミーティングを避けているようにも見えます。一つずつの問題があなたのエネルギーを消耗しますが、それはすでに一杯一杯の状態にあるスタートアップのCEOとしては、そういった事態に対処する余裕は無いでしょう。

では、あなたの野心的でビジョンにあふれた大切なスタートアップを次なるレベルへと引き上げてくれるはずだと、あなたが物凄く期待していた上級管理職がその期待に答えてくれていないと感じた時に、どうすれば良いのでしょうか。

解雇するのです。

成功のNPV(正味現在価値)を上げよう

少し挑発的な物言いをしてみます: 解雇が早すぎる、という人はいません。これは経験豊富な創業者やCEOがよく口にする言葉で、それに反論する人を見たことがありません。それを成功NPV、つまり「成功の正味現在価値」と考えてみてください。特に財務計画上の判断のためではなく、才能ある人物に対しての成果だという風に。解雇するのを先延ばしにすればするほど、NPVは低くなります。誰かを解雇しないということは、適切な人材と先に進むことがそれだけ遅れるということです。一旦期待以下のパフォーマンスの時計が進み始めれば、長く待てば待つほど、失われた機会の時計が時を刻み続けます。解雇するまで待てば待つほど、失われる成功という事態は悪化します。

このことは、誰かが仕事を上手くできるよう手助けするために、トレーニングプログラムや説明責任の明確化、専門的能力開発などを行って共に働くという、一般的な常識と相反するものです。しかし、スタートアップの世界では、素早い判断を行うこと、素早く解雇することが重要です。「私たちに本来的に備わっている善」に訴えることがあなたの会社をダメにする可能性がある稀な事態の1つなのです。直属の部下に問題があることがわかっているCEOと話したことは数え切れないほどありますが、どのように対処しているのかと問い詰めると、CEOはたいてい、「部下にあと1分/1時間/1月/四半期のチャンスをあげたいんだ」といったことを言います。そしてそれが1年、または数年になるのです。あらゆるサイズのほとんどの企業で、このようにして足を引っ張っている人がいます。しかしスタートアップでは、こんなことをしている余裕は誰にも無いのです。特に幹部に関しては。

他人がどう思うかは心配するな。彼らはすでに分かっている

CEOや創業者がこのような懸念を抱える頃には、若手の従業員たちも疑念を感じていることは間違いありません。実際、ずっと考えを巡らせていたせいで、問題の人物が解雇されるべきとの結論に最後に至った人物は、おそらくCEOであるあなただといっても過言ではないでしょう。一方で、結果を出せない幹部の下で働いている人たちは、ずっと前から分かっていたのです。これはあなたが新しく採用した幹部にも、あなたと一緒にしばらく働いているけれど結果を出し続けていないことをあなたが見抜けていない幹部にも言えることです。

組織全体がその人物が解雇されることを待っているのです。重要なプレゼンや営業訪問、主要なローンチがあるたびに、従業員たちはあなたがこの幹部の何をおとがめなしにするのかを見守っています。あなたの優柔不断さを我慢できない優れた同僚を失うことは間違い無いでしょう。彼らはあなたの会社のために働きたいと思っていますが、あなたがクオリティのレベルを十分に高く保てないなら話は別です。彼らも面目を失うのです。彼らはあなたの指導力を疑わざるを得なくなります。

私は人目を引くテクノロジーを担当させなかったり、会社の潜在力が尽きたりしたせいで才能あるスターのような従業員を失ったことはありません。初めて極めて優秀な社員を失ったのは、その社員の上司を解任しなかった時で、私もその上司が期待するほどの成果を上げていないことは分かっていました。その優秀な社員たちは私のところへ来て、辞職すると言いました。私は驚いて、会社を辞めたくなるほど面白いものは何かと尋ねました。彼の答えは、私がその上司をあまりに長くそのままにしておいたせいだ、というものでした。

経営陣はどうしてこんなひどい事態をそのままにしているんだ?という、信頼の崩壊を引き起こさないように

NPVの例えを使うと、あなたが何かをしないでいる間ずっと、(お金や時間だけに限らず)マイナス成長を増大させているのです。なぜなら、人々はリーダーとしてのあなたへの信頼を失っているからです。実際、それは他のどの損失よりも高い犠牲を払うことになります。なぜなら、それは構造的な組織全体の問題になるからです。従業員が信頼しない企業は、彼らに最高の業績を求めないし、その価値も認めない企業となるのです。

「こんなひどい事態を許したままにしているんなんてどんな会社で自分は働いているんだ?」(誰でもどこかの時点でこんな風に感じたことがありませんか?)または「こいつらは大金をもらっているのに、仕事を全部やっているのは自分だ!」それから「ここでは働きたくない。はやく家に帰りたい」となり、最後には「一緒に仕事できる誰かを見つけに行こう」となる。信頼の崩壊モデルが始まってしまうと、下方スパイラルを止めることは非常に困難になりるためにもう確実に負け始めているのです。

こんなサインに気を付けよう

スタートアップのCEOは誰でも不安を抱えています。この仕事の性質自体が不確かさでいっぱいです。そこで、それらの一般的な疑念から、幹部に関して抱えている疑念をどのように選り分けるのでしょう。気を付けておくべきサインは何でしょう。足を乗せるととバラバラになって、表面を粉々にしてしまう氷の小さな裂け目はどこにあるのでしょう。

壊れた信頼。

このことは伝説のビジネスマンでありコーチのBill Campbell氏の励ましから学びました。私たちは彼のアドバイスを受けている5人のCEOと一緒に、朝食を兼ねたミーティングに参加していました。1人のCEOが「チーム内に信頼できない人がいたら、どのように対処しますか」と聞くと、Campbell氏は私の方をまっすぐに見て、笑いながら大声で言いました。「Lars、これは君が答えてくれ。」そこで私が真実だと思うことを伝えました。「チームに信頼できない人はいません。」Billは笑って、うなずき、「次の質問」と言いました。もし誰かを心から信頼できないなら、それが最初のサインです。

回避、虚勢、政治的駆け引き。

あなたの会社の幹部が1対1のミーティングを避けていますか?責任を問われそうなミーティングや議論へ参加することに抵抗を見せていますか?「反論」を機械的に答えるマシーンのようになっていますか。時に、あなたの組織の上級管理職は「マネジャーに対して、彼らがやらないなら私が自分でやると伝えました」という決まり文句で答えます。それでわかるのは、彼が適切な人材を雇わなかっただけではなく、この人物が十分な仕事ができていないこと、そして彼がそのことについて何も対処していないということです。さらに、彼らをサポートして、力を引き出してあげるのではなく、彼は自分を持ち上げるために部下たちのことをとても軽んじています。トリプルパンチです。

プロジェクトに対する投資や熱意の欠如。

私は幹部が取締役会から「私たちはこのエリアで非常に苦戦していて、このエリアの担当者はあなたのためにその仕事をこなすことができていないようです。この人は、この役割を果たしてもらうためにあなたがこの会社に引き入れた人物として最高の人物なのですか」と訊かれているのを見たことがあります。「もっと適任だけれども、この会社に加わりたくなかった人はいないか」ではなく、「あなたが引き入れられることのできる人々の中で、最高の人物か」と訊かれたのです。そしてその人物は、まばたき一つせずに「いいえ」と言いました。この幹部が全力を尽くしていないことの重大なサインです。なぜ最高の人材ではないのでしょうか。なぜこの幹部は適切な人を引き入れるために全力を尽くさなかったのでしょうか。

これらのサインが1つでもあるようなら、すぐに対処が必要です。もう1つのミーティング、もう1四半期、もう1度の営業訪問まで待っていないでください。言い訳や状況を理想化するのはもうお終いです。もし働きが「不十分」なだけだとしても、この先には氷山が待っています。待ち受けているのは、ひどい事態という氷山なのです。

あなた自分の心理や動機も理解しよう

誰かを素早く解雇しない理由の多くは、理解できるものですし、私たちを人間たらしめるものの一部でもあります。私たちは皆、自分ではできないことを任せている人たちの失敗を恐れています。それは私たちがその人たちを信じるという失敗を犯しただけではなく、自分で彼らの仕事をやる方法を見出さなければならない(または採用プロセスをもう一度最初からやり直し、すべてを著しく減速させる)ということなのです。初めて起業した人間として、雇ってすぐに解雇することで、仕事ができないとみなされてしまうことを恐れるかもしれません。

求人、出だしでの失敗、経歴紹介、面接、ミーティング、交渉、研修等のすべてのプロセスを最初からやり直す時間の余裕はないと、あなたは自分に言い聞かせます。スタートアップでは、時間がすべてです。今の状態でなんとかしなくては、そんなに悪くないと自分に言い聞かせます。彼らは良い決定もいくつか下しています。いい人だし、おそらく他の分野では有能です(この分野がダメなだけなのです。)きっと私がもっと良く仕事ができるように教えてあげられるでしょう?

私たちの会社は私たちの「赤ちゃん」です。

私たちの心理の一部として、私たち起業家は「私たちの」会社は自分自身の反映だと、時には自分の子供と同じくらい大切だと考え、しばしば子供と同じように扱います。理想化してしまうのです。全身全霊で彼らの勝利を望み、彼らが勝つのを助けるためならば、果てしなく犠牲を払うことを厭わないのです。私が娘の幼稚園の入園のために面接を受けた時、自分が面接官に娘の素晴らしさをどれだけ熱心に語っていたかを思い出して笑ってしまいました。もちろん娘は素晴らしいのです、私の心の中では。自分の赤ちゃんはみんな完璧で、そうではない時や何か問題があった時にそれを認めたくはないのです。そして同じことを自分の会社に対しても行うのです。

「大物幹部」との恐ろしい会話。

私たちの心理の大きな部分占めているのが、誰かを解雇するべきだ、上手くいっていないと心の奥底では分かっていても、ただ単に難しい会話を恐れる気持ちなのです。先日ディナーの後でこの問題が持ち上がった時に、この問題で苦労しているCEOが私に「でも、どうやってこの大物幹部を解雇すれば良いのですか」と聞いてきました。解雇しなければいけないかどうかではなくて、実際にどうやって解雇するのかが問題でした。

その瞬間の恐怖に立ち向かうこと(臭い息でも息をしないよりはマシということではありません)。

大きな割合を占めるのは、その瞬間の恐怖に正面から立ち向かうことです。もっと楽になることはありません。どんどん悪化するだけなのです。臭い息でも息をしないよりはマシという古いことわざがあります。しかしこの場合には、それは当てはまりません。職務を果たせていない不適任の幹部がいては、会社の息が止まってしまうかもしれないのですから。

解雇の仕方

ではどのように対処すれば良いのでしょうか。私の考えでは、重要なのは解雇される側の立場に立ってみることです。あなた自身が彼らの人生を厳しいものにするのですから、彼らの気持ちに注意を払い、上手くいかなかったことに対して自分の果たした役割も認めつつ、礼儀と思いやり、明確さが伴わなくてはなりません。そして、より良い状況に向けた道を見つける手助けをしてあげましょう。退職の際にどれだけ憤慨していても、解雇された人のほとんどが、思い返せばばその経験がどれだけ彼らにとって良いものだったかと振り返るようになります。長期的に見れば、彼らに合った仕事をした方が彼らももっと幸せになるのです。

1. 自分の直感を信じるようにしましょう。

気持ちが揺れているなら、すでに答えは出ています。行動が必要です。

2. 問題の細部まで立ち入りましょう。

これはシリコンバレーでの決まり文句ですが、結局すべては具体的な目標、期待、タスクに行き着くのです。現実的にやりましょう。目標や期待との隔たりについて質問をして、その隔たりを埋めるために何がなされたのか尋ねましょう。それを解決する可能性があるどんな人を採用したのでしょうが。質問し続けましょう。誰かを反論マシーンにしてしまわないようにしましょう。

3. 聞き回りましょう

(そして聞き回らないようにしましょう。)あなたの幹部の役割について、会社内の誰にも聞くことはできませんし、聞くべきではありません。休憩所の会話を評価に持ち込まないようにしましょう。しかし、名前を挙げずに今ある問題にそれとなく言及できるような自由回答形式のポジティブな質問をすることはできます。採用した人自身に無礼なことをしたり、他の人に採用した人について失礼な言動をしたりするのはやめましょう。

4. 対話をしましょう。

メールなし、携帯電話のメッセージでの口論なし、憂さ晴らしなし。座って、(実務的で具体的な)質問をしましょう。感情的にも対決的にもならずに、簡潔ではっきりとした態度でのぞみましょう。「これはうまくいっていません」や「答えが得られないので困っています」というようなことは、言ってもまったく問題ありません。正直に、あなたが目の当たりにしている事態が意味するところを伝えましょう。「改善がまったく見られず、あなたがここにいることでこの組織が良くなっているように思えません。」

5. 個人攻撃はしないようにしましょう。

誰かのスタイルや能力が別の会社では非常に成功を収めるものであるけれども、この会社では上手くいっていないという可能性は大いにあります。仕事を続けて、会社のスーパースターになり、またダメになって、もう一度浮上するということも現実にあり得ます。新しい会社を興すために必死になって、感情的になって相手を傷つけるような態度になってしまうことはよくあることです。彼らのことを優れた人物として考えましょう(実際に採用されたのですから)。ただ状況が合わなかった、この会社には合わなかっただけだと捉えましょう。その人物にその理由を説明するのはあなたの仕事です。

どれくらいの時間チャンスを与えれば良いのでしょうか?

もちろん私が「解雇が早すぎる、という人はいません」という一文でこの記事を始めたのは少し挑発的でした。私は大抵の場合、軌道修正をするチャンスを与えてきましたし、あなたにもそうするようにおすすめします。Jack Welch氏から学んだ最高の言葉は、誰かが解雇されたとしたら、それは彼らにとって驚きであってはならない、つまり、フィードバックを聞いて、反応するチャンスを与えられるべきということです。

そこで次なる大きな疑問は、軌道修正のためにどれくらい長く待つべきかというものです。これはもちろん、役割や責任範囲、数字、その他多くの要素に左右されます。しかし、重要なのは是正を求めるタイミングを早めて、介入に対する対応を増やすということです。

フィードバックや介入に対する最初の反応からはたくさんの情報を得ることができます。最高のケースは、その人物が何をしていたか(というより何をしていなかったのか)を自分で分かっていなかったという場合です。「それについては考えていませんでした。それがあなたの見解だとは理解していませんでした。」この最初の反応よりもあやふやで、ポジティブさに欠け、より非難的で不明瞭なものは何でも、迷いは終わらせて、双方が次に進むべきということを証明するものです。これらのほとんどは2週間で分かります。なぜならすぐに全力で取り組むか否かが見えるからです。大切なのは必ずしも即座にすべての目標を達成することではなく、目標達成のためにみせる仕事ぶりと態度です。

これはあなたに反論し、議論が好きで、あなたをイラつかせる部下は望ましくないということではありません。優れたCEOはイエスマンを求めません。望ましくないのは、自分自身、部下、そして関わっている会社内のすべての人の信頼を損ない始める幹部です。性格のタイプに関わらず、協力的ではなく、得ている以上のものを与えず、是正措置に素早く反応しない人を採用したことが分かったら、その人は解雇されなくてはなりません、すぐにでも。

現実を直視しましょう。ここで話題にしているような幹部のほとんどは、仕事を見つけるのに苦労しません。他の会社にとって魅力的な人材です。彼らの望みに反して、仕事に対する義務を感じているのかもしれないのです。CEOが留まることを望んでいる、もしくは必要としていると感じたために、不満を感じている仕事に留まった管理職の人たちを知っています。しかし、評価されていなかったり、合っていると感じていないと、最高の仕事はできないものです。あなたを必要としてくれる人、秀でた仕事をしたいと動機づけてくれる良いエネルギーを発している人、いつ終わってもおかしくないような窮屈な環境にいた時よりも自分らしくなれる人と一緒にいる時には、物事は必ずより上手くいきます。

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究極的には、解雇というのは私たち誰にでも起こることです。私はStanford Business Schoolを卒業して就いた最初の職場を9ヶ月で去りましたが、創業者がCEOに対して私の復帰を要求したため復職し、その1ヶ月後にCEOは私を解雇しました。関係が壊れていることは分かっていましたが、私は打ちひしがれて、パロアルトの道をCEOと歩きながら泣きました。

しかし、そこから私はSuccessFactorsを立ち上げCEOとなりました。そこで、人生で作り上げた中で最高のものの1つとして、私とそして他の何千もの人たちの中に今でも生き続けている文化を築き上げました。最初に解雇されてから10年後、私たちはSuccessFactorsをSAPに37億ドルで売却しました。それから1年少しした後、私が解雇された会社は1億5000万ドルで売却されました。私が解雇されたことは、私と私の同僚により良い経済的結果をもたらしただけではなく、私が好きなことをできるように、私の心を自由にしてくれたのです。

 

 

著者紹介 (本記事投稿時の情報)

Lars Dalgaard

 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: It’s Never Too Early to Fire (2017)

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