2020 年に FinTech が立ち向かう大きなアイデア (a16z)

年の瀬も迫り、a16zのFintechチームは、自分たちが来たる年にFintechに取り組んで欲しいと思っている、大きなアイデアについて意見を述べました。住宅危機への対応から、CFOスイートの自動化まで、幅広いアイデアが挙げられました。

製品を売り、広告を売り . . . そしてFintechを売る

昔から言われる冗談があります。2匹の豚が小屋の中にいて、1匹がもう1匹に言いました。「この家はすばらしい!なんでもタダで食べ物もおいしいし、とっても快適!」字幕にはこうあります。「あなたが顧客ではないなら、売られる製品です。」

従来、B2C企業は顧客に製品を売るか広告を売るかして収益を得ています。後者は、基本的には広告主に顧客を売っていることになります。一般的なB2B企業は顧客に製品を売っています。数多くのB2B企業が決済手続きによって収益を得ています。2020年にはさらに多くのB2B企業やB2C企業を目の当たりにすることが予想されます。そこでの主要な事業モデルは、金融サービスをホワイトラベル化し、顧客に対してそれを無料で提供し、バックエンド経済の利ざやを手にすることです。LyftやAmazonなどの企業は、デビットカードや当座預金口座の提供でネオバンクに参加する可能性が高いです。(Uberはすでにそうしています。) そして、主に決済によって収益を得ているToast、Eventbrite、Mindbodyなどの企業は、融資に参入したり、他の金融サービスにウェブサイトを提供したりするでしょう。「あなたの事業モデルは何ですか?と聞かれたら、答えはFintechです。」

—a16z Fintech ゼネラルパートナー、Alex Rampell


最もワクワクすることは?基盤整備です。(本当です、信じてください。)

ますます多くの企業がFintechの事業モデルを追求し始めるでしょう。しかし、これには許認可や法令遵守をはじめとした、非常に多くの複雑な基盤整備が必要です—— この基盤整備には通常は社内開発のための費用と時間がかかりすぎます。ですから、Amazon Web Servicesに計算やストレージをアウトソーシングするのと同じように、企業はいまや、Fintechの基盤整備を支援するための特別なサービスを求めるようになるでしょう。

消費者とB2B製品の両方に向けた金融サービスの追加に力を入れている企業は、この分野で最も刺激的な投資機会に入ります。消費財会社に関しては、「サービスとしてのインフラ」の高まりが、既に、カード発行、法令順守、資金移動、サービス、回収など多数のことを可能にしています。多くのB2B企業が(第三者の提供者の手助けを得て)既に決済を受け入れていますが、その取引の収益のほんのわずかな割合しか獲得していません。

社内にそれらの決済の能力の一部を持ち込むことにより、さらにその収益を手にするための機会が存在します。どのようにして?新たに登場したインフラ企業は、ソフトウェア会社に対して、決済ファシリテーターになる能力を提供しています。これは、かつては複雑で非効率的、かつ費用のかかる過程だったものを円滑にしています。

—a16z Fintech ゼネラルパートナー、Angela Strange


B2Bの市場が返り咲く

歴史的には、B2B市場はトラクションを得るために奮闘して来ました。事業モデルはその本質からして価格重視で、製品採用をややこしくしています。あなたがサプライヤーと取引のある会社であるとして、なぜ仲介業者に利益幅分を支払うのでしょうか。

2020年は、Fintechの進歩のおかげで、B2Bの市場が第二の波を迎えます。新しいB2Bの市場は、買い手と売り手を単純に結ぶのではなく、需要と供給を十分に視覚化して、縦割業務体系のようになるでしょう。新しいB2Bの市場は、通常のテイクレート(月間SaaS料金または売上高の一定の比率)ではなく、決済のファクタリングやファシリテーティングによって収益を得ます。このような収益獲得方法が可能であることは、非常に厳しい事業に追加のマージンを創出します。顧客にとっては、これは、旧体制よりもはるかに望ましい状態です。これらのプラットフォームは、現金の流れの問題を解消し、作業の流れを自動化し、無料のソフトウェアで効率化を加速させることによって、事業に独自の価値を付与します。

例えば、Faireはオンラインの市場で、メーカーと販売会社を実店舗へとつなげています。プラットフォームに乗っている小売店は、決済とロジスティクスを扱い、メーカー向けの登録を管理しています。別のスタートアップであるSiloは、ソフトウェアを展開し、さらに費用効果を高め、無駄をなくして、農家と農産物流通業者の間のサプライチェーンを合理化しています。 Restaurant CheetahやFresh Nationなどの企業は、ハイテクを活用し、農家とレストランの間のブローカーとしての役割を果たしています。さらに、AmazonのB2BであるAmazon Businessの売上は、2023年には520億ドルに達すると予想されています。さらに多くの企業が、買い手と売り手に独自の価値を提供するための方法を見つけており、B2Bの市場分野は、これからの一年で成長する準備ができています。

—a16z Fintech ゼネラルパートナー、Anish Acharya


Fintechが住宅危機を引き受ける

アメリカでは、手ごろの価格の住宅は720万棟不足しています。最近、アメリカ人(特にカリフォルニア州の住民)は、住宅製品が厳しく制限されていることの影響を認識しました。10月に、ミネアポリスはアメリカで初めて、単一世帯の区分けを廃止しました。オレゴン州とカリフォルニア州もその流れを追い、三世帯や四世帯向けの棟を州内全域で許可しました。

2020年には、企業が時代の風潮に乗り、ハイテクを活用することで、大規模に住宅を提供する方法を模索する機会が訪れます。一部の企業は既に新しい生産手段を開発しています。Mighty BuildingとIconは3D印刷の住宅です—— 建設作業員が手作業で建物を組むのではなく、ソフトウェアが可動式クレーンに搭載されたプリンターに指示を出し、特別に成形されたコンクリートを押し出します。FactoryOSは組み立て式複合型アパートを作っています。これはわずか10日間で組まれます。United Dwellingはタイニーハウス(ADU)を追加するために住宅を改造しています。新しいリスク共有管理(United Dwellingは新しい棟の賃貸料を分割しています)により、 ADU は住宅所有者の前金が不要です。Cul De Sacは、アリゾナ州テンピに自動車のない1,000棟の賃貸コミュニティを作ると発表しました。駐車の最低条件に関する従来の区分け条件が、劇的に費用を上昇させ、住人の数を制限し、近隣の歩きやすさを制限する可能性があることを示すデータに基づいています。また、Terner Center for Housing Innovationが9月にHousing Labを開始した時には、150組以上の応募がありました。Housing Labは、住宅費用縮小を専門に注力する国内初のイノベーション研究所です。

ここ最近、企業は、0を1に変える様々な方法を探求してきました。2019年はその実験的な局面において、転機だったかもしれません。2020年は、新しく台頭する建築や金融のモデルのうち、ゼロを720万ドルに変えることのできるモデルがどれであるかを、私たちが目にし始める年になるでしょう。

—a16z Fintech パートナー、Rex Salisbury


CFOスイートの自動化

口座の確認や決済開始の手続きから、予測の確立まで、あまりにも多くの金融関連の作業が手動で行われています。作業の流れを管理するソフトウェアを持つ会社であっても、過程が分断されていることがよくあります。データがサイロ化され、回顧型で、文脈から切り離されていることもありますし、システムは同期しません。この不恰好な状態が放置されているのは、単に腹立たしいだけでなく、根深い問題であり、事業の決断に直接影響を与えます。欠陥を抱えたツールは、CFOが企業や産業をまたいで基準を設定し、社内の指標をより広い背景との関係で考える能力に影響します。

解決策は自動化です。この場合は、テクノロジーにより、CFOとそのチームの業務を、繰り返し作業を完了することから、事前の自社の財務データのリアルタイムの解釈および機会の特定へと切り替えることができます。このような自動ツールは作業の流れを合理化するだけでなく、決断やリスクの予測の助けとなります。2020年には、Fintechによって、労働者が手動のせせこましい作業に使う時間が短縮され、より多くの時間をリアルタイムのデータ解釈に使うことができるようになることを、私たちは望んでいます。そのようにして得た洞察を用いて、労働者は新規事業を生み出すことができるようになります。

—a16z Fintech パートナー、Seema Amble 


a16z Fintechチームのその他の情報

『銀行の未来: なぜ最も嫌われている組織が最も愛されるようになるのか由』
テクノロジーは内側から預金体系を改造しています。
執筆者 Angela Strange

『ニュースについての16分—— 代替信用データ』(podcast)
5つの連邦規制機関が、最近、代替与信の利用に関する共同声明を発表しました。消費者と企業に対して、どのような影響があるのでしょうか。
執筆者 Seema Amble、Rex Salisbury、Sonal Chokshi

『住宅市場がアメリカンドリームを殺している』
高騰する住宅価格は人々を機会から遠ざけています。今、スタートアップがソフトウェアを使ってこのトレンドを反転させようとしています。
執筆者 Rex Salisbury

『手数料無料のトレーディングはうまくいくか?』
既存大手の銀行にとって手数料カットが実際に賢い戦略になり得る理由。
執筆者 Anish Acharya、Seema Amble

『お金の自動運転: Fintech は私たちを私たち自身から救う』
私たちは皆、心の底は非論理的な浪費家です。今、Fintechの起業家が、お金をめぐる私たちの不合理な行動に対処する、新たな取り組みを開発しています。
執筆者 Anish Acharya
 

記事情報

この記事は原著者の許可を得て翻訳・公開するものです。
原文: The Big Ideas Fintech Will Tackle in 2020 (2019)

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